2010年12月05日

あるいは、もっと深刻かもしれない(追記あり)

前回のエントリーを書いている最中に、日本熊森協会は下部組織が所有している富山県内のトラスト地(670ha)に、ヘリを使って1トンものどんぐりを運んだことが報道され、賛否両論が巻き起こりました。

■読売新聞ークマさんドングリ食べて!餌不足は人災と1トン - くまもりNews -
■熊森は大変なことをしてくれました - ならなしとり -
■ドングリまき(置き)の言い分 その1 - 日々是雑感 -
■ドングリまき(置き)の言い分 その2 - 日々是雑感 -

これまでの「どんぐり置き」批判に加え、富山県のトラスト地が自然林であることから、外来種による環境への影響(病害虫被害、植生に対する遺伝子の攪乱など)が懸念されています。

今日、日本熊森協会、石川支部のblog過去記事を読んでいて気がついたことがあります。ひょっとすると富山の『ドンヘリ』より影響が大きいことかもしれないと思い急遽エントリにすることにしました。
(何度か読んでいたはずなのに気づかなかったのは、私の問題意識が欠けていたのだと思います)

まずは、問題の記述を引用します。

ドンプレ大作戦?(2010-11-05)
昨日は本部から奥山に運ぶクマたちのえさが500キロ届きました(^^;
(中略)
7日は広葉樹の植樹も考えています

山の調査&ドンプレ(2010-11-06 Sat 21:49)
明日は、奥山に500キロのクリを運びます。
もしできたら、実のなる木を40本ほど植樹してきたいと思います。
(中略)
11月6日現在までのドンプレ総量:2087キロ

11月5日4日に協会本部から送られてきた「クマたちのえさが500キロ」は、京都の業者が熊森に提供した6トンの栗の一部だと思われます。
そして、「実のなる広葉樹の苗木40本」の植林も行う予定であると…。
この「奥山」とはいったいどこなのでしょう。

奥山ドンプレin白峰(2010-11-08 Mon 05:30)
昨日はトラスト地に本部から送られてきたクリを500キロ運びました。
(中略)
何度も繰り返し、クリとカキを運び上げることができました。
(中略)
ドンプレ総量:2707キロ

11月8日の記述から、白峰にあるトラスト地に運んだということが分かります。
では、白峰のトラスト地とはどのような場所かというと

石川県白山市 22.3haの自然林の取得に成功!!
 2008年7月9日、特定非営利活動法人 奥山保全トラストは、石川県白山市白峰の自然林22.3haを取得しました。

 今回、取得した土地は、潜在的自然植生の残る原生的な自然林であり、野生動物の生息地としても、奥山水源域としても貴重な森林であることを事前の調査で確認しています。

ここに、京都から送られた栗の他、どんぐりや柿を合わせて620キロを撒いたようです。記事中の写真や動画を見ると、運ばれたどんぐりも大量なようです。

(白峰に撒かれたのは11月7日で、11月6日21:49の記述ドンプレ総量:2087キロ、11月8日05:30の記述ドンプレ総量:2707キロとなっているので、差分の620キロを白峰に撒いたものと考えられる)

富山県のトラスト地670haには1トンのどんぐりでしたが、この白峰の「原生的な自然林」22.3haには、栗、柿、ドングリを合わせて0.62トンを撒いた上に「実のなる広葉樹の苗木40本」を植林した可能性があります。
(「奥山ドンプレin白峰」の記事中には植樹の記載はありませんが)

「奥山ドンプレin白峰」の記事中に、トラスト地には自生の栗の木があることが書かれています。例え、芽が出なかったとしても栗の実につく害虫もいますので、その影響が懸念されます。
その上、もし、40本もの苗木を植樹していたとしたら…。

苗木がどこから来たのかが気になり、さんざん探しましたが、このトラスト地からドングリ等を採取して苗木を育てたという記録はどこにもありません。この苗木40本は外部から持ち込まれたものだろうと推測しています。
というか、自然林に植樹して人工林にしようとしているのですよね。

日本熊森協会(奥山保全トラスト)は白峰のトラスト地についてこう書いています。

私たちは、この森を、自然保護の拠点として、野生動植物の聖域として、永久に保全していこうと決意をしています。

日本熊森協会にとっての『保全』とは、いったいなんなのでしょう。

(※引用文中の強調は、全て筆者による)


追記(12月5日02:45)

11月28日にも同じ場所に、240キロものどんぐりを運んだようです。

お知らせ(2010-11-30)
一昨日(28日)の日曜日に、石川県の奥の方の山に再び
ドングリを運びました。以前運んだ360キロは全て食べてありました(*^ー^*)

追加で約240キロを10名で運び上げました。



2010年11月05日

熊森とひっつきもっつき

日本熊森協会が熊さん達を救うべく、森にドングリや果物を運んでいることが問題になっています。
なぜに餌をまいてはいけないかとか、ことの経緯などは、こちらの記事がとてもよくまとまっていて参考になります。

くまともりとひと


熊森協会の活動すべてを批判するわけではありませんが、熊にドングリを届けるという活動は、生態系の破壊だけでなく結果的に餌付けすることになってしまい、人と熊との境界を壊す行為だと私は考えています。
安易に熊などの野生動物に餌を与える行為の問題点は、すでに多くの方が言及されていますので、私はちょっと違う方面からこの問題を見てみようと思います。

宇多田ヒカルさんのTwitter が話題になった直後に、偶然、熊森協会の会員という人と知り合いになりました。いただいた名刺の裏に所属としていくつかの福祉団体などと共に「日本熊森協会○○支部」と書いてあったのをみつけて、目が点に・・・。

その方のことをよく知っている友人の話によると、その方が熊森協会に入会されたのは数年前で、自分も会員になるように勧められて、会費等をその方が払って友人の家族まで会員になったとのこと(いわゆる幽霊会員ですね)。相当な入れ込みようです。こういった熱心な(?)会員に支えられて現在の熊森協会の活動がある訳ですね。

また、名刺の裏には「養心の会」という名称も。
で、ピピピッとアンテナが立ってしまったのですね。鬼太郎の妖怪アンテナみたいな(^^; 素直にアンテナに従って、どんな会なのか検索してみました。

養心の会ふじblogより
『養心の会とは』毎月1回、【出会いと感動のオアシス】を合言葉に素敵な生き方をされている方を講師にお迎えし、 感動のお話をお伺いし、同時にお集まりになられた方々相互の出会いを楽しみ、〔心〕を養うことを目的にした会です。
方々に支部があるようですが、説明文を読んでも会の実態はさっぱり。
んで、検索を続けているうちに、こんなん見つけました。

■宇宙の香り
養心の会世話人の方々
ブログタイトルに軽いめまいを覚えつつ、内容を一部引用。
 この11月には、兵庫の「養心の会 播磨」と小豆島の「養心の会 小豆島」のお招きで三輪先生が講演され、同行することになった訳ですが、各会の世話人の方々は本当に良く学び、よく実践をされておられます。

一方は超御多忙の中、ボランテア活動や毎朝の町内のお掃除、小中学校にに出掛けて子供たちと一緒にトイレ掃除を毎月一回等など。 毎朝の吸殻拾いの自分へのノルマが50本。私もウォーキングの帰り道ではいつもこの話を思い出しながらやってます。

あのぉ…。
「小中学校にに出掛けて子供たちと一緒にトイレ掃除を毎月一回等など」って、ひょっとして、素手でトイレ掃除をして精神修養をするという、碧猫さんがエントリーをあげていらっしゃった「あれ」ですか?
掃除でカルト(その1)
掃除でカルト(その2)
掃除でカルト(その3)

そして、同blogには、こういうエントリーも。
山口養心の会 会報誌『養黙』の記事の要約を紹介されているのですが
養心の会よりの便り
日本熊森協会という自然保護団体を立ち上げられ、
全国規模で活動されておられる森山まり子先生の活動内容と支援活動に付いてです。

山口養心の会の2月例会に日本熊森協会の森山氏を招いて講演会を行ったらしいのです。熊森協会と養心の会の関係って?ということで、合わせ技(おおげさ)「熊森協会」&「養心の会」で検索。

するっていと、こんなんがぞろぞろと出てきました。
「森山まり子 講演会」

日本熊森協会 過去の活動2008年5月(14日(水)会長講演 富士市初 主催:養心の会、19日(月)会長講演 三重県 主催:養心の会 )

第160回記念例会『神渡良平 講演会』(PDF注意) 

『森山まり子講演会』〜クマが棲める豊かな森を次世代へ〜

これらの全ては主催が「養心の会」ですが、下2つのイベントの、共催・後援に注目してみましょう。

第160回記念例会『神渡良平 講演会』では
後 援 : 枝光元気の会、北九州掃除に学ぶ会、NGOしらゆり会ハミングバーズ、 日本熊森協会福岡県支部、ゆり根の会

「森山まり子講演会」では
共催:日本熊森協会福岡支部 後援:足立山麓文化村、北九州掃除に学ぶ会、しらゆり会ハミングバーズ

・・・。
ひっつきもっつき、後援やら共催やらしあっていますね。
そして、上の方で書いた「ひょっとして?」は、やっぱり、あの「掃除に学ぶ会」のようです。

そんでもって、こんな会社もあったりして、どうも、熊森協会、養心の会、掃除に学ぶ会(日本を美しくする会)の会員の一部は重なっているらしい。そして、「養心の会」と「日本熊森協会」、「養心の会」と「掃除に学ぶ会」は非常に近しい関係にあるといって良いと思います。
これらの団体の共通点は「善意」でしょうか。

熊森協会は「善意」から森の生態系を乱し、養心の会は「善意」でとんでもない講演者を呼び、掃除に学ぶ会は「善意」で行った素手のトイレ掃除で感染症による被害者を出し…。

亡くなった祖母がよく言ってました「悪気がないのが一番悪い」と。
あと「他人が痛いのは3年でも我慢できる」とも。

ちなみに、小豆島「養心の会」では、こういう方(リンク先、最下部真ん中より少し下に養心の会へのリンクあり)も講演に呼んでいるようです。養心の会各支部の例会に誰を呼んでいるのか調べてみたらおもしろいかもと思いますが、今は熊森協会関係でお腹いっぱいなので、またいつか。

2010年10月20日

「医療ネグレクト」という名付け

前回のエントリで、医療ネグレクトの定義についての私の考え方と、医師がホメオパシーを積極的に使用することの弊害を一緒に書いてしまったため、非常に分かりにく文章になってしまいました。はてブその他の反応に対するお返事もしなければと思いながら、いろいろなことを考え続けていました。

NATROMさんがお書きになった「医療ネグレクトの定義」と「ホメオパシーはまた人を殺すだろう」というエントリを拝見して、少し考えがまとまってきたので忘れないうちに書いておこうと思います。

まずは前のエントリのブクマでの反応を2つ

triggerhappysundaymorning 宗教カルトの「自分の子供に輸血させない」がネグレクト認定されてんだから当然こっちもネグレクトだろ.

north-pole ホメオパシー 「誤った信念に基づいて必要な医療を受けさせない」のは「医療ネグレクト」に入るというのが一般的では


また、NATROMさんの「医療ネグレクトの定義」では、東京都福祉保健局のサイトにある医療機関のための子育て支援ハンドブックからの医療ネグレクトの定義を引きながら
医療ネグレクトとは、医療水準や社会通念に照らして、その子どもにとって必要かつ適切な医療を受けさせないことです。

親の意図を問わないのがポイントの一つである。子を嫌って医療を受けさせていないのではなく、子が治ることを一心に願っていたとしても、必要かつ適切な医療を受けさせなければ、医療ネグレクトとされる。

と書かれています。皆さんのご意見は、その通りだと思います。

個人的には医療ネグレクトといわれているものの一部には「医療を使った身体的な虐待」としか形容できないものが含まれていて、ネグレクトと考えることで介入の遅れや困難を招いているのではないかと考えています(特に年長児の場合は一般的に身体的虐待よりネグレクトのケースの方が介入が遅れがち)。
しかし、具体的な介入や対応を考える上で定義や言葉の問題に余り拘るべきではなかったと思いますし、一般に使用されている定義にまで踏み込むべきではありませんでした(その他の一般によく用いられる定義も参考に。注1)。そして、当事者の抵抗感を和らげたいという思いから「強いていえばabuse」と、もにょってしまった末に論の展開が強引になってしまったことを反省しています。

ある事象に「医療ネグレクト」という名付けが行われ、認知されたことで公的な介入が行われるようになったのは良いことだと思っています。被害の掘り起こしも行われるでしょう。今後は具体的にどのような対策がとられるかが重要な問題となります。

いまのところ、親による医療拒否と医療ネグレクトとの概念の区別がされていないことによって関係機関の対応が場当たり的になっていたり、「代理によるミュンヒハウゼン症候群」を医療ネグレクトに含めるなど概念の混乱も起きています(注2)。法的な対応としても現行では「親権喪失の宣告の請求及び保全処分として親権者の職務執行停止・職務代行者選任の申請」という緊急避難的な対応でまかなっている状態で(注3)、これによって不都合も起きています(注4)。

前回エントリを書く時に、どのようなケースが医療ネグレクトとして扱われているのか調べてみたのですが、日本では事例や判例、その研究も殆ど蓄積できていない状態のようです。医療拒否事例の多くは医療ネグレクトととしては扱われておらず、虐待死亡事例としてもカウントされていませんでした(注5)。また、先天的な障害や疾患を持って生まれた新生児が親などによる医療拒否によって命を失っていますが、公になっていないケースもあるようです。医療ネグレクトという概念の中には生命倫理や憲法問題も含め深遠な問題が横たわっているのですね。

児童虐待やネグレクトへの対応について、現在のような親権の全面的な制限だけではなく監護権の一部あるいは一時的な停止ができるよう議論が行われてます。来年には児童虐待防止法の付則に掲げられた民法の親権規定が改正される見通しです(注6)。

現実的な問題として、ある事例に医療ネグレクトと名付けたとしてもケースとしての報告が上がらなかったり対応策がなければ何の意味もありません。
親権規定の改正案が本決まりになれば一波乱ありそうですが、子ども達を救済するためには法案を通さなければなりません。是非とも皆さんのお力を貸していただければと思います。そして、ホメオパシーを含めて現在行われている医療ネグレクト問題の議論が具体的に実を結ぶことを切に願っています。

余計なことまで書きすぎたかもと内心びくびくしていますが…。
これを読んでくださった方々が、今後の法改正の経緯に関心を持ってくだされば幸いです。





注1
法務省HP医療ネグレクトの定義(PDF)より引用
1 .厚生労働省 雇用均等・児童家庭局総務課長名による通知
「 医療ネグレクトにより児童の 生命・身体に重大な影響がある場合の対応について」
(雇児総発第 0331004 号)(平成20年3月31日)

『保護者が児童に必要な医療を受けさせることを怠る医療ネグレクト』
『医療ネグレクトにより児童の生命・身体に重大な被害が生じ得る事例が対象となる。なお、児童の精神に重大な被害を与える事例についても対象になり得る。』

2.子ども虐待防止学会(JaSPCAN)(1999 年)「子どもの健康に関することで、医療的ケア、健康ケアが必要であるにも関わらず、適切なケアが施されない結果、心身の障害をきたすもの、あるいはきたす可能性のあるもの」

3.研究班(2009年) 医療ネグレクトの考え方は多様であるが、法的対応も含めた介入を緊急あるいは積極的に行う必要がある状態としては、以下のような操作的定義が考えられる。

 医療ネグレクトとは、以下の1~5の全てを満たす状況で、子どもに対する医療行為(治療に必要な検査も含む)を行うことに対して保護者が同意しない状態をいう。
1 子どもが医療行為を必要等する状態にある
2 その医療行為をしない場合、子どもの生命・身体・精神に重大な被害が生じる可能性が高い(重大な被害とは、死亡、身体的後遺症、自傷、他害を意味する)
3 その医療行為の有効性と成功率の高さがその時点の医療水準で認められている
4 (該当する場合)子どもの状態に対して、保護者が要望する治療方法・対処方法の有効性が保障されていない
5 通常であれば理解できる方法と内容で子どもの状態と医療行為について保護者に説明がされている。

注2
わが国における医療拒否に関する調査(PDF)
V.児童相談所対象の調査(2008年、山本)
2)主な医療ネグレクト内容
「継続治療が必要な慢性疾患の通院中断・断続状態」:22%
「風邪や軽い疾病の放置」:17%
「医療管理のための定期的検査未受診」:12%
「乳児の軽度栄養障害」:11%
「生命の危険を伴わない代理ミュンヒハウゼン症候群」:9%

上記報告書によれば「代理ミュンヒハウゼン症候群」などが医療ネグレクトとして扱かわれているのは、子どもの健康状態が脅かされる状態の放置と広く受け止めているとのことだが、その様態からいっても積極的に子どもの健康に害をなす「代理ミュンヒハウゼン症候群」は身体的虐待に分類されるべきものである。

注3
子どもの虐待対応の手引き(PDF版)21年度改正
5. 保護者による治療拒否の事例への対応
保護者による治療拒否は,保護者の果たすべき「治療を受けさせる義務」を怠るネグレクトの 一形態(医療ネグレクト)であるが,児童相談所や施設が子どもを保護するだけでなく,子ども が必要としている医療を受けられるようにすることも求められる。治療拒否の理由が保護者の信 念(宗教的信念等)に基づく場合も多い。医療ネグレクトの事例は家族や地域からだけでなく, 医療機関からの通告で明らかになることも多い。
医療行為は原則として事前に患者の同意を得て行われるが,低年齢の子どもの場合は有効な同 意能力がないと判断されるので,保護者(親権者)が代わりに同意することになる。子どもに医 学的治療が必要な疾患があり,治療を行わなければ子どもの健康が著しく損なわれたり,生命に 危険が及ぶことを保護者に説明しても保護者が治療を承諾しない場合,保護者に代わって医療を 承諾する対応が必要になる。合理的な理由なく子どもの治療を拒否している場合は親権の濫用に 相当するので,児童福祉法第33条の7に基づいて児童相談所長が親権喪失の宣告の請求及び保全 処分として親権者の職務執行停止・職務代行者選任の申請を行い,職務代行者又は未成年後見人 が親に代わって承諾することができる。施設に入所している子どもの医療に保護者が同意しない 場合は,児童福祉法第47条第2項において施設の長が監護については必要な措置をとることがで きるとされているので,親権者に代わって承諾することができる。
実際には,子どもの重症度と医療の緊急性,保護者の治療拒否の理由や背景によって,慎重か つ迅速な対応が求められる。医療機関との連携が重要であることは言うまでもないが,法的,倫 理的な問題も含んでいるので,家庭裁判所や弁護士などとも緊密な連携を持ちながら対応するこ とが大切である。

注4
中日新聞2003年8月10日朝刊より要約
2000年6月、先天性の心臓病を持つ男児の手術に同意せず民間療法等を用いて自分の手で治したいと主張する両親に対して、児童相談所は「生命に危険を及ぼしかねず、親権の乱用に当たる」として、一時保護の後、親権停止の保全処分を家裁に請求して認められた(請求して1ヶ月半後)。職務代行者である親族が手術に同意し2度の手術の後回復。記事が掲載された2003年当時、男児は児童養護施設で生活し、児童相談所は術後の経過確認の検査があるとして親権喪失宣言及び保全処分請求を取り下げていない。(この種の審判例として公になった最初のケースである)

注5
資料1:わが国における医療拒否に関する調査(PDF)より、医療拒否がすなわち医療ネグレクトとは扱われているわけではなく、信仰による拒否が医療ネグレクトではなく医療拒否事例として扱われているなど

資料2:子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第6次報告)
2008年4月1日から2009年3月31日までの12か月間を対象とした調査で、この間に子ども虐待による死亡事例として厚生労働省が把握した事例は107例(128人)中、心中を除いた64例(67人)であるが、医療ネグレクトとされたケースは1件もない。
(資料1で、医療ネグレクトによる死亡13例とある「III.全国小児医療機関対象の調査(2008、柳川)」の調査期間と重なっている)

資料3:被虐待児の法医解剖剖検例に関する調査 2000年〜2006年(PDF)
4-2-2.ネグレクト事例(P3)より引用
死因は医療ネグレクトである12歳児と15歳児を除いた 25例中全身衰弱7例、熱中症6例、窒息5例、脱水症3例、その他4例となっている。

以上のように、この調査での虐待死113例中、医療ネグレクトとしてあげられているのはわずか2例である。

注6
虐待防止へ親権制限…民法改正方針 子供保護しやすく(2010年1月5日 読売新聞)
児童虐待防止のための親権制度研究会報告書等の公表について(法務省)
児童虐待防止のための親権制度研究会 議事要旨および資料
児童虐待防止のための親権制度研究会報告書(PDF)


参考資料
日本における医療ネグレクトの現状と法的対応に関する文献検討
新生児医療と治療拒否に関する医療系関連論文
宗教的輸血拒否に関するガイドライン 宗教的輸血拒否に関する合同委員会報告(PDF)
児童虐待による死亡事例等検証報告書 (平成21年10月 生後7か月児死亡事例)(PDF)
子どもの医療に対する親の決定権限とその限界 永水 裕子 (その1)(その2・完


参考図書
1.子どもの医療と法(小山剛,玉井真理子 編,尚学社,2008)
2.子どもの医療と生命倫理(玉井真理子,永水裕子,横野恵 編,法政大学出版局,2009)
3.メディカルネグレクトの対応について(子どもの虐待とネグレクトVol.2-1,日本子どもの虐待防止研究会,2000)

2010年09月30日

ホメオパシーは医療ネグレクトなのか…?

私のはてなブックマークをご覧の方はお気づきだと思いますが、ここ数ヶ月、ホメオパシー関連の情報を追い続けていました。きっかけはこちらの記事

読売新聞の記事(魚拓)より引用
生後2か月の女児が死亡したのは、出生後の投与が常識になっているビタミンKを与えなかったためビタミンK欠乏性出血症になったことが原因として、母親(33)が山口市の助産師(43)を相手取り、損害賠償請求訴訟を山口地裁に起こしていることがわかった。助産師は、ビタミンKの代わりに「自然治癒力を促す」という錠剤を与えていた。錠剤は、助産師が所属する自然療法普及の団体が推奨するものだった。

 母親らによると、女児は昨年8月3日に自宅で生まれた。母乳のみで育て、直後の健康状態に問題はなかったが生後約1か月頃に嘔吐し、山口市の病院を受診したところ硬膜下血腫が見つかり、意識不明となった。入院した山口県宇部市の病院でビタミンK欠乏性出血症と診断され、10月16日に呼吸不全で死亡した。


亡くなった赤ちゃんのご冥福を祈りますと共に、提訴された親御さんに感謝と支持を表明します。

このケースの場合は、レメディを投与した助産師が「ホメオパシー、レメディ(記事中の『「自然治癒力を促す」という錠剤』のこと)は、ビタミンKと同じ効用があると思っていた」と話しているようで、医療従事者としての最低限の知識も持ち合わせていなかったのかと怒りを覚えます。また、今回のことだけでなく一部の助産師の間ではホメオパシーを初めとする代替医療が蔓延しているようですが…。

続きを読む

2009年02月17日

「水の結晶」撮影風景

前々回のエントリ「波動カウンセラー?」で、次回は「波動ビジネスへの権威付けにどんな人達が絡んでいるかなどを書く予定です。」と、予告していたのですけど…ちょっと寄り道します。

水伝の問題点は様々ありますが、個人的には、科学でないものを科学と装っている(ニセ科学)ことを特に問題視しています。
「水からの伝言」シリーズの著者である江本勝氏は、AERAの記事で「水伝は、ポエムでありファンタージー」だと言っています。つまり、科学ではないので科学的な批判にはあたらないと言いたいようですが・・・。

江本氏は最近、遠隔地から送った思念に水の結晶形が影響することについての科学的検証実験の論文を発表したということです。
■kikulog
「水伝」の科学的検証実験("科学的"かどうかはともかく) より引用
内容はさておき、重要なのは、この論文が江本・木津両氏との共著であることと、triple-blindで統計処理した「科学論文」であることの二点でしょう。
「水伝は科学と称していないからニセ科学ではない」という考え方もあり、また江本氏自身もそれをひとつの「逃げ道」にしているのですが、科学論文を書いておいて「科学ではなくポエムでファンタジー」とは言えません。

私も上記の菊池氏の意見に賛同します。
上記エントリで紹介されている論文は、今のところ内容は不明のようですが、江本氏自身のサイトで同じような実験の結果を発表しています。
■masaru-emoto.net
水の結晶の形に遠隔地からの想いが与える影響についてのダブルブラインドテスト
また、以前にも、日本物理学会で九大の研究者と共に研究発表をしています。
■学問の黒板
9/23 日本物理学会 言葉が水の氷結状態と水中元素濃度に及ぼす影響

となると、やはり、科学実験としての正当性が問われる事になると思いますが、実際、どのような施設や設備で、どのような手順で実験(と写真撮影)を行っているのかは、著書の内容に依るしかありませんでした。

「水の結晶」がどのような手順で撮影されているかは、「ほたるいかの書きつけ」「水からの伝言」はどうやって作られているのかシリーズ(1)〜(5)がとても参考になります。

今回、波動ビジネスについて調べているうちに「水の結晶」撮影風景の動画を見つけました。全部で30分ちょっと映像の中に実験と撮影風景が、かなり出てきます。

Masaru Emoto - 1 of 4

Masaru Emoto - 2 of 4

Masaru Emoto - 3 of 4

Masaru Emoto - 4 of 4

この映像を見た感想を一言でいうと「相当杜撰だな」に尽きます。

プラスチック製のシャーレに、検体(水)をスポイトで垂らすシーンでは、化粧品をつめ替えるようなちゃちなスポイトを使っていますし、垂らす量も一定してはいないようです。
また、一度にいくつもの検体を凍らせるようですが、一つの検体(サンプルは50ずつ)のシャーレを重ねてカゴに入れて運び、1検体が終わって次の検体の準備をするようで、その凍結の時間差をどのように調整しているかは謎です。
撮影中も特に時間は気にしていないようでした。(シャッターのタイミングなども)

ここで一つ注意が必要なのは、ここでいう「水の結晶」とは凍らせた水自体の結晶ではなく空気中の水蒸気が凍ったもの、つまり雪と同じものだということ。(冷凍庫から出したばかりの氷には、白い霜が付きますが、あれと同じです。)

ですから、撮影を行っている冷蔵庫内(2畳程度)の温度や湿度を一定に保つのは、非常に基本的な事だと思いますが、撮影中の温度や湿度のデータはありません。(映像の中には湿度計は出てきませんでした)
いくつもの検体を続けて撮影するのだろうと想像しますが、庫内温度や湿度は撮影者の体温や呼気からの湿度の影響をもろに受けるのではないでしょうか。最初に撮影した時と最後に撮影した時では、庫内の環境はかなり変わっているものと考えられます。

もし本当に、水が言葉や聞かせた音楽の影響を受けるのだとしても、言葉を見せる時間、音楽を聞かせる時間は影響しないのか。
もし、水に文字を読み取る力や聞く力があるとして、室内の他の風景や音、実験者の会話は影響しないのか。
(まじに考えているわけではないので念のため。苦笑)

などなど、ど素人の私でさえ、いくつもの疑問が出てきます。
水伝がポエムやファンタジーなら、こんな事を考える必要はないのでしょうけど・・・。

そして、この映像には、水に言葉をかけ撮影を見学している子どもたちが出てきますが、子供たちのきらきらした瞳がとても印象的でした。この体験をどう受け取ったのでしょうか。とても気になります。
(ちなみに、この映像のカテゴリーは「教育」です。どうしたもんだか)

2009年02月13日

波動カウンセラー?

久しぶりに「水伝」のお話しです。

以前、「水伝」と波動ビジネス【追記有り】で、少し触れましたが、「水からの伝言」の著者であり、波動測定器を日本に紹介した江本勝氏が経営している「株式会社 IHM」では、HADOカウンセラー資格認定講座というものを行っていて、カウンセラーの認定もしています。
「HADOカウンセラー」がどのようなものなのか、カウンセラーをしている私にはとても気になる資格でした。

資格認定講座案内の中では、しきりに「カウンセラー」という言葉を使っていますし、共同して訓練している機関が「NPO法人 日本心理カウンセリング協会」となれば、一般的な心理カウンセラー養成講座のような気もしますね。

昨年始まったばかりなのに、もう4・5期の募集をしているところを見ると、よほど人気のある講座なのでしょう。養成講座の内容がどのようなものなのか(つまり、波動カウンセラーとはどのような仕事なのか)、HPから見てみることにしましょう。

HADOカウンセラー資格認定講座 第4期・第5期生募集
HADOカウンセラーは、波動の測定、改善を通じて、相談者が抱えている生活、人生、生命全般の問題に相談者と協働して対応し、相談者の豊かで幸福な人生をサポートしていきます。

カウンセラーといえども、あくまでも波動の測定と改善をするのが仕事のようです。
自ら、最も高次の波動を持つと言われる「愛・感謝」をベースにした生活、人生、生命観を持ち、実践し、その「波動」が周りに共鳴(響命)していくことによって、「大和(だいわ)」の世界の実現に貢献していきます。

カウンセリングだけではなく、私生活も常に「波動」中心の生活をしなければならいのですね。
う〜ん。
それは大変そうです。
こんな方にお勧めします
● 波動のことを学びたい方、体感したい方、掴みたい方
● 新しい時代のカウンセラーとして活躍したい方
● 現在、波動測定機器HADOアストレアをお持ちの方
● 将来的に、HADOアストレアのご購入をお考えの方

確かに、波動の測定や調整をするには、波動測定器を持っていなければできませんね。HADOアストレアを購入する事が前提となるのは致し方のないことかと。

講座内容は画像による表示なので、あえて引用はしませんが(HPをご覧ください)一般的なカウンセラー養成講座のような心理学の学習や傾聴訓練はないようです。
期間は3ヶ月(7日間)
10:00〜19:00まで(日曜日は18:00まで)の講座を7日間は休み時間を引いても53時間です。意外と長時間だと思います。
(といっても最終日は、認定証授与や懇親会も含むって、普通は講座時間には含めないよな)

この講座は実際に実践でのカウンセリングの技術向上に役立つことを目的とし、クライアント様の人生に成果を創ってもらうために必要な技法を学び、結果的に人の魂ともいうべき本質を見抜く、仕事と人生のアドバイスができる本物のカウンセラーを目指します。

「本物」のカウンセラーですか。船井さんがお勧めするだけのことはあります。
しかし、一般的に、カウンセラーはアドバイスはしません。
カウンセラーというものをかなり誤解しているのではないでしょうか?

以下「HADOカウンセラーとは?」からの抜粋にツッコミ
通常の心理カウンセリングは、心理分析法に基づき心の分析をしていきます。

分析しないカウンセリングもあります。
というか、その方が多いかも。
それはそれで、様々な気づきをもたらし、カウンセリングとしては重要な意味を持ちます。しかしながら、心の問題は心自体の概念が明確にされておらず、ともすると、非常に曖昧なままなんとなくカウンセリングが終わってしまう傾向も否めません。

「それは、それで」とかいっちゃう?

確かに、現在の心理学は、心はどういうものかという仮説でしかありません。ですからカウンセラーは、ずばり「解決します」「治せます」とはいえないし、また言ってはいけないと思っています。
(そういうカウンセラーが居たら、それこそ、疑ってかかった方が良いと思う。「カウンセラーの資格」を参照)
そもそも、問題の解決をするのも、治っていくのもクライアントご自身ですから。私達カウンセラーはほんの少しお手伝いをするに過ぎません。
この講座では、基礎となる心理的なカウンセリング技法を学んでいただきながら、

おいおい…
基礎的な心理学なんて基礎講座のどこにも入っていないぢゃぁないですか。
更に、心の奥にあり、不動の存在であるわたしたちの魂にアプローチする手法を学んでいきます。

魂にアプローチする手法
魂にアプローチする手法
魂にアプローチする手法・・・

>心の問題は心自体の概念が明確にされておらず
と、さっき書いてあったはずですが、魂にアプローチする手法があるのだとしたら、「魂」がどういうものか解明したということになります。それはものすごいことですよ。
IHMひいては江本さんが解明した、心や魂とは、いったい!

「女心」「浮気心」など「心」はコロコロ揺れ動くもの。それに対して「職人魂」「スポーツマン魂」などいう言葉が示すように、魂には力強くそして不動のものがあります。


おーまいが!

もう、ツッコム気にもなれませんって。
カウンセラー資格認定講座というより、波動測定者養成講座ですね。
一般的なカウンセラーを想像して資格を取ろうと思うなら、余所を当たった方が賢明でしょう。

最後に肝心なことを書いておきましょう。

養成講座参加費 350,000円

買わないとお仕事ができない「HADOアストレア」は
¥2,625,000円
(税込み、HADOカウンセラー養成講座受講料込み)

今回は、ちょっとふざけ気味のエントリーでしたが、次回は、HADOカウンセラー養成講座を行っている「NPO法人 日本心理カウンセリング協会」や、波動ビジネスへの権威付けにどんな人達が絡んでいるかなどを書く予定です。

2008年09月02日

「水伝」と波動ビジネス【追記有り】

『水伝騒動』の本筋は、そろそろ治まってきたようです。
なのに、いまさら「水伝」でもないでしょう。(と自分でも思う)
今日、私が書こうと思っていることは、水伝関連ではありますけどもネット上で話題になっている騒動とは余り関係ないかも。

「水からの伝言」の著者である江本勝氏の本を10数年前に読んだ事があります。
確か「波動の人間学」だったかな・・・。
他にも「波動」関連本を数冊読みました。
もう手元に残っていないので、何が書いてあったか正確には思い出せないんですが・・・。

続きを読む