2005年08月06日

次世代での7つの競争ポイント

GAME WATCH 「スクウェア・エニックス、和田洋一CEO記者懇親会を開催」

和田社長の嘆息
次世代機については、従来はマルチプラットフォームに非常に消極的だったスクウェアエニックスが、マルチプラットフォーム化を強く示唆するなど、状況が非常に混沌としています。

その中で、僕は和田さんの次の発言が印象に残りました。

「次世代機はマーケティング次第ではないだろうか。売るのは本当に難しいと思う」と和田氏はコメントした。こういった背景から、常々和田氏は「次世代機を判断することはできない」としている。

僕はワールドワイドでPS3有利と、何度も当ブログで書いていますが、それは野次馬としてお気楽な立場だから言えるのであって、スクウェアエニックスという大企業の舵取りをしている身からすれば、今の状況はどう転んでもおかしくない、非常に先が見えづらい状況なのだと思います。

現行機から次世代機への移行
そしてそれ以上に、そもそも次世代機はPS2ほど急速に普及するのだろうか、という根本的な疑問を持っているようです。これについてはEAも、次世代機の世代になっても現行機種は売れ続けるだろうという見解を取っています。

Nintendo INSIDE 「GCD2004でEAカナダ社長が次世代機について講演」

実際、EAでは、ドル箱である「MADDEN NFL 06」や「Tiger Woods PGA TOUR 06」などの定番スポーツゲームでは、現行機種と次世代機でのマルチプラットフォームを明言していますし、「ゴッドファーザー」などのアクションゲームでも同様です。もちろん最新ゲームで遊びたい層はすぐにでも次世代機を購入すると思いますが、移行期間は従来よりもかなり長くなる、というのはおおいにあり得る可能性です。もちろん競争のためには、常に最新技術を取り入れたソフト開発をしていく必要がある訳ですが、そういった競争から降りることを決断して、ソフトのアイディア勝負でいこうと決めたソフトメーカーなら、現行機種でソフトを作り続けるという選択肢もあるだろうと思います。

そのように、従来は1年以内に主力ハードが切り替わった過去の家庭用ゲーム機とは違い、まるでPCのOSの移行期間のように、現行機と次世代機が共存していく期間が長引くようになります。そしてあるいは、次世代ハードは最終的にも現行機種ほどの普及はしない可能性すらあります。5年後は携帯電話やWeb上のゲームコンテンツのクオリティが上がり、市場を食っている可能性があるからです。携帯ゲーム機のポジションも、過去のそれよりもかなり向上して、携帯ゲーム機ばかりを遊んでいる、というゲームマニアも珍しくなくなってきた昨今です。あり得ない未来ではありません。

7つの競争ポイント
そうなると、今後の5年先を見据えた場合、他社とどこで差別化していくのかというのは、実は現状でも7つぐらいの選択肢がある状態になっています。

  1. 最高の技術でユーザーを魅了する
  2. オンライン
  3. 斬新なアイディア
  4. プレイヤーがより気軽に、簡単に遊べる
  5. ゲームをより早く安く作る
  6. ワンコンテンツ・マルチユースの推進
  7. 強力なIP(自社IP、有力な版権を独占的に獲得など)

この中で、実は最高性能を必要とするのは1番のみで、他は現行機種でもさほど問題はありません。性能が高ければ高いほど良いのは確かなのですが、スポーツゲームやキャラクター物などは、現行機種でもかなり満足すべきクオリティに達しているからです(映画版権物は、まだクオリティが充分ではありませんが)。

もしも次世代機で本当の争点が2番以降だとしたら、性能は他社から圧倒的に劣らない程度に付いて行ければ良くて、それ以外の点に投資する必要があるということになります。ともすれば最高性能を引き出すことに投資を集中しがちなゲーム業界ですが、投資対象のトレンドが違う方向になってきている可能性があるということです。

もちろん大手の場合、7つの選択肢の中から、最低でも3つぐらいは同時に目指しています。EAに到っては、全ての項目を目指しているぐらいです。「SPORE」のような斬新なゲーム、携帯電話ゲームPogo.comのような無料ゲームポータルサイトの買収など、ほぼ全方位戦略と言える規模です。また映画やスポーツなど他社からの版権のライセンス獲得ばかりしているとゲームマニアから批判が多いEAですが、将来的にはNFSのような自社フランチャイズの拡大を目標と置いているように、キャラクター開発、ストーリーテリング力の開発にも力を注いでいるそうです。

CNET Japan 「次世代の成功モデル確立へ積極的にリスクを取る」

40%がスポーツ作品、30%が『ハリー・ポッター』などの映画作品、そして30%がEA自体が持つIP、つまり「シムズ」「コマンド&コンカー」などの作品をライセンス供与することによって得ています。われわれのゴールは、この最後の収入をできるだけ100%にまで近づけ、他の会社へライセンス料を払わずにすむようになることです。

もちろん次世代機で最高性能を引き出すゲームを開発できるということは、ゲーム会社のブランド力向上に大きく貢献しますし、軽視はできない分野です。しかし今年のE3を見ても分かる通り、各社が3Dゲームの開発ノウハウが溜まってきたため、もはやパッと見ただけでは技術力の差は分からなくなっています。それよりもむしろ、オンラインの技術力や、市場から求められているソフトを出すことができるマーケティング力、商戦機に必要なソフトをきちんと発売できる開発マネージメント力などで差が付いているのが現状ではないかと思います。特にEAは、マルチプラットフォーム戦略を推進してきたため、各ハードの最高性能を引き出すということについては、実は消極的なパブリッシャーだとも言えるのです。

冒頭の和田社長の嘆息は、実はこの、どの分野に投資することが次世代に向けてスクウェアエニックスを成長路線に載せるために必要なのかという問題を考えた結果、「最高の技術でユーザーを魅了する」ということに特化するのは危険で、むしろそれ以外の点に重点的に投資していかなければならないのではないか、という危機感の表れではないかと思うのです。特に旧スクウェアは、まさにその「最高の技術でユーザーを魅了する」ことで成功体験を重ねてきた会社ですので、舵取りに失敗すると、まさに「イノベーションのジレンマ」に自らがはまりかねません。「次世代機はマーケティング次第」というのも、つまり「最高の技術でユーザーを魅了」できる時代は終わった、ということを別の表現で言い換えているだけのように聞こえます。

そしてその考え方はそのまま、EAが予測するように、次世代機は現行機ほど急速には普及しないという可能性を、より後押しします。

新しいタイプの競争へ
そしてゲームソフトの競争は、次世代ハードでの最高性能のアピールという派手な舞台の裏で、実は先に挙げた7つの競争ポイントのうち、残り6つをめぐって熾烈な競争を繰り広げる世代になると思います。その流れはすでに現行機でもあらわになっていましたが(バンダイのキャラクターゲームの成功、EAとTAKE2によるESPNのライセンスの争奪戦など)、それが次世代機では主戦場になるということです。

そのような時代に成功するのはどこなのか、恐らく現行機とも違う新しい展開が産まれるだろうと思います。そしてそれは新しいタイプのプロデューサー、ディレクターが必要とされる時代になるだろうと思います。他分野との関係も変わってくるでしょう。そのような時代に自分は何ができるのか、どこに向かって走ればいいのか、各ソフトメーカーだけでなく、開発者1人1人の資質が問われてくる時代になると思います。


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この記事へのコメント
次世代のシュア争いは既世代の争いに比べより複雑な戦いになりそうですね。
数日のあれれさんの記事を元に考えるとやはりPS3が有利なんだなと思います。
特に次世代への転換が緩やかになった場合キーとなってくるのがまさに「ロングテール資産」ですからね。
まさかとは思いますが10年先を見越した仕様にしたPS3はそこまでのマーケティングを見越してなのかもしれません。
こうなってくると360の普及に欠かせないキーはやはり価格が一番ですね。なんと言っても消費者にとって一番分りやすいですからね。これを実現できてしまうMS。
これが他の会社であれば、PS3の一人勝ちで決定ですが、MSだけにより複雑になっているのではないでしょうか。
Posted by white at 2005年08月06日 13:39
クタタンの下位互換性に対する強いこだわりは、ビジネス的な理由も大きいと思うのですが、それ以上に「プレイステーション」というブランドを、文化の領域にまで持って行きたい、という理想があるのだろうと思います。多様性こそが文化である、と考えですね。

対してMSは、明らかにキラーコンテンツ重視派です。80:20(80%の売上は20%の商品から)ですね。XBOXでのHALOを見れば、その考えに傾くのも無理はありません。かつては任天堂が、まさにその考えの急先鋒でした(少数精鋭主義)。

しかし任天堂が突如として過去の膨大な資産を生かすロングテール主義者に変貌し、MSだけがトレンドから置いていかれる事態となってしまいました。

しかしご指摘のように、価格競争でもっとも有利な立場にあるのがMSですので、本当にどんな未来になってもおかしくない状態だと思います。もしも360が$199に値下げしてきたら・・・、という未来をSCEは恐怖していると思います。
Posted by あれれ at 2005年08月06日 14:39
http://www.radiumsoftware.com/0506.html#050627
SCEJの中の人から見ると、任天堂だけでなくMSもロングテール派のようです。実際、XBOXのMarket PlaceはMS流ロングテールでしょう。

あれれさん、時々感じるのですが、MSのXBOX Live戦略を意図的に過小評価してません?
Posted by どーぱみん at 2005年08月06日 20:39
Radium Softwareさんも書かれている通り、マーケットプレイスの方は、まず大前提として、大元のソフトが売れて、それに対応してアイテムやステージなどを小口販売していく形態ですから、微妙に違いますね。

ただマーケットプレイスで儲けることを前提として、大元のソフトをかなり低価格に、あるいは無料にするという方法も考えられます。最近のオンラインゲームと同じです。そうしたビジネスが成功すれば面白い存在になるなと思っています。

ロングテールについては、そもそも過去のソフト資産をロングテールと説明することにちょっと無理がありますので、一度整理して記事にしようと思います。
Posted by あれれ at 2005年08月06日 23:08
>どーぱみんさん
おっと、そう言えば書き忘れていましたが、XBOX Live戦略については、ちゃんと書いたことは無いのですが、実は僕は最大級に賞賛している立場です。

当ブログのコメント欄でも、「PS3にHDDが付いたとして、ゲームを作るならPS3と360どっち?」という質問に「HDDあるなしに関わらず、ネット接続率が高そうな360」と返答したぐらいですから。

それに何といっても、XBOX Liveは敬愛するアラードたんが陣頭指揮を執って成功させたプロジェクトですからね!(笑)
Posted by あれれ at 2005年08月07日 00:41
XBOX Liveにはすでに XBOX Live Arcade があって、カジュアルゲームのダウンロード販売をしていると思うのですが?
新作ゲームを完全ダウンロードで販売しないだけで、カジュアルゲームは販売し「続ける」つもりでしょう。

A) 最新のゲームはディスクで供給(振るダウンロードは実際問題、現実的ではありません)
B) 軽量のカジュアルゲームはフルダウンロード
C) 最新のゲームは追加データはダウンロード販売する

その点では、任天堂のレボリューションと大差ないと思いますが。レボはAとBのみですが、MSはABCすべてサポートするわけで、ロングテール的なオンライン販売はMSが一番積極的なのだと思います。

> そもそも過去のソフト資産をロングテールと説明することにちょっと無理があります

この点が、私があれれさんのご意見に違和感を覚えた理由だと思います。新しい記事を期待しております。長文失礼しました。
Posted by どーぱみん at 2005年08月07日 01:04
>どーぱみんさん
はい、XBOX Live Arcadeは存じています。ただ使ったことは無いのです。スミマセン。

XBOX Live Arcadeについては、ソフト資産の魅力がまだまだ無いのが問題だと思います。過去の人気ゲームという資産が無いですからね。

ただ360が過去のソフト資産を切り捨てた設計になってしまったのは、互換性とコストと次世代の性能とを秤にかけて、コストと性能向上を優先したためです。その背景には、HALOが他のソフトを圧倒して飛びぬけた成功をしたという成功体験が間違いなくあります。だからMSは日本においても、坂口氏による2大RPGの開発に巨額の資金を投じているわけです(数十億円とも言われています)。

これらはMSが80:20理論に基づいて戦略を決定していることの現われです。
Posted by あれれ at 2005年08月07日 02:26
しつこくてすみません。
互換性を維持する事と「80:20」の逆のロングテール戦略をとる事は、そもそも直接関係あるのでしょうか?

SCEにしても、発表会ではサードパーティの豪華な大作タイトルを並べてみせるわけで、それも80:20理論という事になってしまいます。任天堂にしても、ゼルダの伝説のような大作はつづけるわけで、それなら任天堂は80:20戦略をとっている企業で、ロングテール戦略を取っていない事になるのでしょうか?
HALO等の大作タイトルに資金を投じている点をもって、XBOX Live Arcadeのロングテール性を否定する根拠にはならないと思います。
Posted by どーぱみん at 2005年08月07日 05:07
>どーぱみんさん
Live Arcadeのロングテール性を否定している訳ではないのですよ(ロングテールというほど広大なソフトラインナップがあるかどうかは別として)。ソフト戦略についても、MSが過去の任天堂のような極端な80:20戦略(少数精鋭)をとっているとは思いません。

つまるところ、未来のソフトを信じるか、安心感を取るか、という話なのですが、これについては改めて記事にしますね。
Posted by あれれ at 2005年08月07日 12:06


 
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