2005年09月28日
顧客指向とビジョナリー
■次世代の映像規格に見え隠れするユーザー不在の論理
ソニーについて野次馬的に語っていたら、いつの間にか話題がBlu-ray Disc対HD DVDの規格争いの話になっていました。先の記事で、コメント欄でねねこさんに紹介していただいたのですが、デジモノに埋もれる日々さんのエントリーが素晴らしかったので、本記事でも紹介しておきたいと思います。
WintelがHD DVD陣営に参加表明 - 全面戦争は必至?
Blu-rayか? HD DVDか? 「統一こそ正義!」を叫ぶ前に考えること
私自身は、高画質化はもはや第一優先ではない(それはメインのウリにはならない)、という考え方を持っていますし、データがメディアに束縛される世界は早々に終わりにして欲しいと願っています。だからこそ、Blu-ray陣営の描く世界が示唆する 「大量のメディアに囲まれる未来」 に対して不安を抱いています。
本当にその通りですね。
供給者側の理屈でしかない、行き過ぎた著作権保護の問題については、AV評論家の麻倉さんも、まさに全く同じ指摘をしています。
ITmedia 「ブルーレイは大好きだがコピーワンスは大嫌い」
「コピーワンスというDRM技術は、あまりにもコンテンツホルダーよりで過去の遺物。ユーザー=悪人視は絶対におかしいということは、CCCDの失敗でも証明されている。ハイビジョン文化を健全に発展させるためには、ユーザーを大事にするDRMを作ることが必要」
これほどまでに識者に指摘されていることが何故実現できないのかというと、恐らく規格策定の関係者が「企業全体の利益最大化」、いえ「業界全体の利益最大化」を「商品ごとの最適化」よりも優先しているからです。
こういう事をやっていると、アップルのような思わぬ刺客に、せっかくの市場を根こそぎかっさらわれてしまいますよ、業界人の方々。これからは地上波デジタルだ!と思っていたら、10年後にはIP経由でのテレビ放送に取って代わられたりとか・・・。
■ビジョナリーの存在
なんて思っていたら、また次世代ディスクの話に戻りますが、業界の方にも「消費者の利便性」をメインで考えている方がおられました。東芝の藤井さんです。
Phile web 「東芝が年末新商品を発表:次世代映像製品のカギは「明確なコンセプト」」
色々な方から規格を統一して欲しいといわれているが、我々が0.1mmの保護層をサポートするのは困難。しかしながら、議論の中心が物理規格になるのはおかしいと思っている。なぜなら、「次世代DVDでは何ができるのか」「ディスクがどれくらいのコストで作れるのか」「ユーザーにどんなメリットをもたらすものなのか」を議論することの方が大事だと思うからだ。今後長きに渡り、消費者に何を提案できるフォーマットなのかを考えるための議論であれば、私は交渉を再開する準備をいつでも整えたいと思っている。
保護層を何ミリにするのかというのは、まさに企業側の都合。ユーザーには関係無いことです。
そうではなくて、まずは次世代DVDでユーザーにどんなサービスを提供すれば喜んでもらえるのかというところから考えて、その後、それを実現するための規格を考えていくべきだ、というのが藤井さんの言いたいことだと思います。そして暗に、Blu-ray Disc側は、どんな議論よりもまず先に0.1mmありきで話を進めたがっているということを示唆しています。
もちろんあくまでHD DVD側の話ですから、真実は分かりません。しかしこの藤井さんと言う方、家電業界では有名な方なのでしょうが、卓越したビジョンを持っておられる方なのではないかと思いました。最近の東芝のAV機器には一本筋が通っていると感じていたのですが、もちろん現場の方々の力が大きいと思いますが、こういう方の存在も寄与しているのかなと推察します。
■顧客指向とビジョナリーの関係
先の記事で「顧客志向が大事」と書きましたが、書くのは簡単なのですが、実行するのはとても難しいと思います。既得権益や守らなければならない売上がある大企業になるほど、小回りが効かなくなり、惰性に流されれば簡単に「企業指向」になってしまうと思います。人間は楽な道(より儲かる)の方に流されるものだからです。ゲーム業界が続編指向になってしまうのと同じです。
大企業でその惰性を断ち切るのは、明確な顧客指向へのビジョンを持つリーダーシップが必要です。それがビジョナリーの役割だと思います。
顧客指向は、企業指向と正逆の方向性であるため、時として社内の既得権益や売上を破壊してしまう場合があります。ベンチャー企業ならともかく、大企業では口で言うほど簡単なことでは無いはずです。オラクルの先日の発表も、ラリー・エリソンさんのビジョンが無ければ、到底実現できないものでしょう。
だからソニー復活は、そのようなビジョナリーが登場するかにどうかにかかっていると言えますね。「カスタマービューポイント」を掲げる中鉢さんがそうなれれば良いのですが、リストラには反対姿勢っぽいので、どうなることか・・・。って話がそこに戻る(笑)
まあつまり、「顧客指向」の実現には、ベンチャー企業並のビジョンのトップダウンが必要だよ、というお話でした。
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http://www.asahi.com/digital/av/TKY200509270490.html
こうした流れを受け、BD採用を表明していた韓国のサムスン電子は27日、両方式を再生できる「兼用機」の開発に業界で初めて着手したことを明らかにした。規格が統一されない場合、来年中にも発売するという。BDに固執せず、次世代DVDプレーヤー市場でシェアを確保する狙いとみられる。
ニュースや情報なんかは新聞とネットでも充分ですし
BDに固執すると危ない、という認識がBDAに加盟している協力企業に広まると、思わぬ勢力変化が起こる可能性は否定できませんね。前記事のコメント欄にも書きましたが、BDA加盟企業は皆、DVDフォーラムにも加盟していますから、HD DVDの情報も同じように持っていますからね。
>akio
地上波打ち切りは、たしか一度延長されましたよね。普及率によっては、再度延長ということもあり得るかもしれません。
何がやりたいんですかね、真剣に理解不能
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/25862.html
本当に「だから?」っていう新規格ですね・・・。
これからのソニーの携帯は、これに対応しなくてはならないとすると、商品力ダウンですね。
・ソニーグループ内でどこが何をやっているか?現場レベルでの情報共有ができていない。
・同じような事をやろうとしている時/矛盾する事をやろうとしている時にどうするか、決定する組織(管理職)がいない。
日産や松下の経営改革ではこの2点が重視されました。ソニーもこの点を見直して欲しいです。
「横串になる組織」は作ると言ってますが、具体的な内容が未発表なので、不安ですね。まだそんな事も決まってないのか。
単に情報共有するだけではダメなので、どこが決定権を持つか?でしょうね。
http://it.nikkei.co.jp/business/news/index.aspx?i=20050928aa002aa&cp=4
現在ソニーは音楽、動画、配信、プレーヤーをハードからサービスまでエンドツーエンドで事業展開することを目的とした「コネクトカンパニー」を設立している。今後、これらの商品企画を統合させていくという話だが、実際に配信サービスの現場に話を聞くと、今この危機的状況に至っても典型的な「船頭多くして船山に上る」状態で、現場が何か新しいことを考えてもまったく物事が進まない状態だという。いくらコネクトカンパニーに経営資源を集中したからといって、それまでカンパニー制で自由にやっていたものがすぐにまとまるわけがない。集中したことで内部に「船頭」ばかり増えてしまい、物事が何も進まないというのでは本末転倒だ。結局のところ、コネクトカンパニーには確固たる思想を持って物事を完全にトップダウンで進められるカリスマ(もしくはそれだけの権限が与えられる存在)がいないのだろう。
別に独裁者に権限を集中させろというのではなくて、リーダーは1人で、そのリーダーがスタッフにビジョンをきちんと示す、それだけです。
しかし人は皆、自分のビジョンが一番正しいと思ってしまいますから、誰もがビジョナリーになりがたってしまうものです。そういう中で、リーダーが組織のビジョンを統一させるのは、並大抵のことではないと思います。組織が大きくなればなるほど、難しくなるんでしょうね。

