2005年10月03日

ゲームデザインのこれから(2) コンセプトは単語で

コンセプトって何だろう?
前回の記事で、コンセプトを1点に絞って、そこのクオリティアップに注力する一点豪華主義について書いてみました。

ただ一点豪華主義にするのは良いのですが、そもそも何を豪華にするのか、つまりコンセプトの決定がままならないと、プロジェクトはにっちもさっちも進みません。たとえ進んだとしても、コンセプトが曖昧だとプロジェクトは迷走してしまいます。

しかし、そもそもゲームデザインにおける「コンセプト」って何なのでしょうか?
今回はそれについて考えてみたいと思います。

シリーズタイトル、版権タイトルの場合
まずシンプルな例から考えてみます。ゲーム制作が迷走しづらいパターン、つまりシリーズタイトルや続編タイトルにおける「コンセプト」についてです。

これは誰にとっても自明だと思うのですが、シリーズタイトル、版権タイトルにおいては、ゲームのタイトルそれ自体がそのままコンセプトを表しています。「ファイナルファンタジー」「ガンダム」などですね。つまりファイナルファンタジー、ガンダムというタイトル名が、そのままゲームのコンセプトになります。もちろん続編、版権物として、独自のサブコンセプトも設定されますが、それでも芯になるコンセプトはタイトルの方です。

たとえば「ファイナルファンタジーX」のコンセプトを推察してみると、まずファイナルファンタジーの正統な続編であるということがメインコンセプトになります。そしてPS2ならではのグラフィックスを実現すること、特に水の表現に注力することがサブコンセプトだったであろうと思われます(もちろんそれ以外にも複数のサブコンセプトがあったと思われます)。

同じように「機動戦士ガンダム 連邦VSジオン」のコンセプトを推察してみると、まずガンダムゲーであることがメインコンセプトで、その次にカプコンらしさを活かしたアーケードの対戦ゲームであること、2対2のチーム戦を実現すること、などがサブコンセプトだったのではないでしょうか。

もちろんメインコンセプトだけではゲームは作れません。しかしサブコンセプトも基本的にはメインコンセプトから派生して発想されるものです。「PS2でファイナルファンタジーの続編を作ることになった。さてどんなテーマにしよう?」とブレインストーミングが繰り返されたに違いないのです。

つまりメインコンセプトはあらかじめ決まっていて、決めるべきなのはサブコンセプトからになるのです。だから続編物や版権物は、サブコンセプトの設定に余程失敗しない限り、基本的には迷走しづらいのです。

新規タイトルの場合
ここまで来ればお分かりかと思いますが、新規タイトルというのは、このメインコンセプトを決定するところから企画検討がスタートするのです。「次世代機の性能を活かした新規タイトル」や「新規RPG」などの指定はあるかもしれませんが、それらはメインコンセプトにはなり得ません。

それは何故なのかというと、ここからがやや暴論になるのですが、的確なゲームコンセプトは、そのままタイトル名になり得るというのが、僕の考えだからです(コンセプトが常にゲームタイトルになる訳ではありません。念のため)。

たとえば「幻想水滸伝」というRPGのシリーズタイトルがあります。このゲームのコンセプトはタイトル名の通り、「ファンタジー風味の水滸伝」です。もっとシンプルにすれば「水滸伝」でしょう。一方「次世代機を活かした新規タイトル」「新規RPG」では、タイトル名にはなり得ません(タイトルにしてしまう豪気な会社もあるかもしれませんが、それはそれとして・・・)。

メインコンセプトは、そのままタイトル名になり得るのだとしたら、メインコンセプトは常に短い言葉に収まるということになります。そうなのでしょうか?はい、僕はそう考えています。そしてなるべく短い言葉、できればたった1つの単語だけで、他のゲームと差別化できていることが望ましいと考えています。その理由は以下の通りです。

  1. コンセプトはシンプルであればあるほどユーザーに伝わりやすい
  2. シンプルなコンセプトだけで他のゲームから差別化できているということは、それだけ従来にない新鮮なコンセプトを発見したということを意味する

1)については、たとえば「玉を転がして塊を大きくする」という言葉だけで他のゲームから差別化できているコンセプト(塊魂)と、「大河ドラマ「義経」をベースに、義経と弁慶の両方をプレイヤーキャラとして使える時代劇アクション」というところまで説明して初めて他のゲームと差別化できるコンセプト(GENJI)の両者を比較してみれば、ユーザーに対するインパクトの差は自明だと思います(GENJIについては、これだけ説明を費やしても、まだ他のゲームと差別化できていない恐れがあります)。

2)についても、上記の比較で示されていると思いますが、少ない説明だけで他から差別化できているということは、それだけ垢にまみれていない新鮮なコンセプト、テーマを見つけたということに他なりません。これは、特に新規タイトルにとっては非常に重要なことです。ネームバリューが無い新規タイトルにとっては、まず題材の新鮮さでユーザーにアピールすることが大事になるからです。前出の「塊魂」だけでなく、他にも「蚊」をコンセプトとした、そのものズバリの「蚊」、「大災害」をコンセプトとした「絶体絶命都市」などです。

こうしたゲームに特徴的なのが、最初のゲームは話題性からそこそこのヒットになるのですが、それに気を良くして続編を作ると、想像以上に売れないことがあることです。ネームバリューは第1作よりもあるのにです。この場合、最初の売上が「新鮮さ」という魅力に大きく依存していたことを表していると考えられます。そして、もしも第2作以降も売れ続けるのなら、そのゲームはすでに新しいジャンルを築いたと言えるでしょう。

コンセプトは単語で
こうした事から、僕は新規タイトルの企画を考える場合、ゲームの面白さやゲームルールのデザインよりも先に、まず単語によるコンセプトを探すことから考えます。単語だけで他のゲームと差別化できるようなコンセプトを見つけることができれば、それは間違いなく新しいジャンルを生み出し得るコンセプトだからです。

もちろんその次に、その単語によるコンセプトを元にゲームを作ったとして、どれだけのターゲット層にアピールできるか、ゲームとして遊べる程度には面白くなるか、ということをシミュレートしてみます。ほとんどの単語は、そこでふるい落とされてしまいます。

しかしそれでも、新規タイトルを手がけるチャンスがあるのなら、僕はコンセプトをたった1つの単語だけで説明できるようなゲームを目指すべきだと思います。もしもゲームとして成功すれば、非常に大きなリターンを得られるのは間違いないのですから。


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