2005年12月31日

ゲームデザインのこれから(13) 戦略キャンパス

FIFTH EDITON:ゲーム業界のイノベーションのジレンマ

戦略キャンパスを描いてみる

FIFTH EDITIONさんが、ゲーム業界の現状を考察するために、実際にブルーオーシャン戦略のツールの1つである「戦略キャンパス」を描いておられます。楽しげでかつ興味深い示唆も得られて、面白いですね。刺激されて僕も描いてみました。

ちなみに各競争要因は、FIFTH EDITIONさんの物でも適切だと思うのですが、自分なりの独自性を出してみようと思い、以前書いた「次世代での7つの競争ポイント」という記事で挙げた7つの競争ポイントをそのまま使ってみました。戦略キャンパスとか全然知らない頃に書いた記事ですので、意図された戦略キャンパスを描くための恣意的な競争要因では無いことだけは保障できます(笑)

さて、どんな価値曲線になったか・・・?

あくまで僕個人の主観に基づく戦略キャンパスですが、いくつか面白い点が見つかりました。

  • MMORPGはゲームとしては非常に特異的だが、戦略キャンパス上だと、「オンライン、コミュニティ」以外を除けば、実は大作ゲームや中堅ゲームと価値曲線が非常に似通っている。
  • ハンゲームとタッチジェネレーションシリーズも、斬新なアイディアがあるかどうかだけを除くと、非常に似通っている。アソビ大全のようなゲームがあることを考えると、それも当然なのかもしれない。
  • 大作ゲームは、価値曲線の形状こそ中堅ゲームと似通っているが、中堅ゲームよりメリハリはある。
  • ハンゲーム以外は、自社IP、他社版権への依存度が非常に高い。
  • コンテンツのマルチユースが、まだ手薄であること。

特にMMORPGが大作ゲーム、中堅ゲームと似たような価値曲線を描いたのは驚きました。もちろん「アイテム課金」など項目が増えればまた違った戦略キャンパスになると思いますが、もしかしたらMMORPGというジャンルの限界は、意外とオンラインならではの特性をビジネス戦略上で充分に活用できていないだけなのかもしれません。

あとハンゲームと一連のタッチジェネレーションシリーズも、「斬新なアイディア」以外は似ているという結果になりました。もちろんビジネスモデルは方やサービス事業、方やパッケージ販売と全く異なりますが、根底にある思想には似通った物があるのかもしれません。ちなみにタッチジェネレーションのオンライン性を比較的高いところに置いたのは、WiFiコネクションとどうぶつの森を考慮したためです(どうぶつの森はタッチジェネレーションシリーズではないかもしれませんが・・・)。

コンテンツのマルチユースは、ポケモンやムシキング、ロックマンなどの成功例があるものの、まだ未成熟な分野のため、どのジャンルも高い所に置くことができませんでした。ちなみに今、この分野にもっとも熱心なのがスクエニの和田さんだと思います。

Web2.0的ゲームの戦略キャンパス

さて、以前から僕が書いている、Web2.0的ゲームについて、戦略キャンパスを描いてみるとどうなるか?実際に描いてみました。こちらについてはあくまでも妄想なので、こうなったら成功するだろうという甘い見通しの元に描きました。

「オンライン、コミュニティ」「斬新なアイディア」「気軽に遊べる(価格、難易度)」の3点に全力を注いで、他のポイントは切り捨てるか少なくする、という価値曲線です。そして恐らくこれを実現してしまったのがどうぶつの森だと思われます(唯一、シリーズ作という点で自社IPを有効に使っているのが、上記の価値曲線との相違点です)。

Web2.0だと「ビジネスモデルも開発モデルもライトウェイト」という項目もあるのですが、それはそうだったらもちろん良いけど、必須では無いと考え、戦略キャンパスでは半分ぐらいの高さにしておきました。しかしビジネスモデル、開発モデルが共にライトウェイトだと、損益分岐点が劇的に下がりますので、リスクが非常に低くなり、結果的に実験的な試みに手を出しやすくなるという、圧倒的なメリットがあります。

「ブルーオーシャン戦略」について

さて、今回は話題の書「ブルーオーシャン戦略」のツールを野次馬的に使ってみましたが、それは半分お遊びとして、本自体も非常に示唆に富む本だと感じました。話題になっていたので、僕も丁度読み終わったところなのです。

ただ主張として書いてあることは、意外と普通というか、皆が考えるようなことです。主張に何らかの飛躍や意外性を求めて読むと、肩透かしを食らうかもしれません。というか本書を読んでみて強く感じたのですが、新規戦略の立案は、ゲームの新規タイトルの企画立案と非常に良く似ているのです。

たとえば立案した新戦略の戦略キャンパスが成功するかどうか判断する決め手として、以下の3点が挙げられています。

  • 価値曲線にメリハリがあるか?
    • 全ての競争要因に力を注ぐのではなく、力を注ぐところと切り捨てるところのメリハリを付け、競争力と低コストを同時に実現させる。
  • 価値曲線に独自性があるか?
    • 他社と違う価値曲線を描くことで、ブルーオーシャンを創出する。同じ曲線だとレッドオーシャンに漂うことになる。
  • 戦略をシンプルで魅力的なキャッチフレーズで表現できるか?
    • 消費者に伝わりやすい明確で魅力的な戦略ならば、それをシンプルで伝わりやすいキャッチフレーズで表現することができる。

このうち「メリハリ」「キャッチフレーズ」については、僕が書いた以下のエントリーと共通点があります。

ですので「ブルーオーシャン戦略」を読む価値は、そのコンセプトではなく、むしろ本書が提供してくれるツールやフレームワークの方にこそあります。そして実際、著者は新規事業開拓(ブルーオーシャン戦略)を、なるべく少ないリスクで行うために開発したツール、フレームワークを提供することが本書の目的であると述べています。

ですので「なぜイノベーションを起こしたエクセレントカンパニーが失敗するのか?」を精緻な解説で解き明かした「イノベーションのジレンマ」のような、推理小説を読むような面白さはありません。人によっては論理が飛躍しすぎていると感じたり、楽観的な箇所があると感じる方もいると思います。

ちなみにゲーム業界におけるイノベーションのジレンマについては、下記エントリーにおいて非常に分かりやすく説明されているので、お勧めです。

デジモノに埋もれる日々:「キレイ」はユーザの需要を飛び越した? - 評価の機軸が一変するとき

しかし「イノベーションのジレンマ」では、その大半がなぜ市場を支配していた優秀な企業がジレンマに陥ってしまうのかの分析に割かれていて、そこから抜け出す方法については余りページが割かれていません。一方ブルーオーシャン戦略では、まさにそのようなジレンマに陥らないための実際のアクションプランを解説した本であるため、より実践的だとも言えます。たとえば新規タイトルを考案中のプランナー、プロデューサーの方には、非常にお勧めできる本です。先にも書いた通り、新規事業の立案と、新規タイトルの立案は、非常に似た点が多いからです。

個人的にはお勧めの一冊です。


 

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