2007年08月19日

「商道」49〜最終回

サンオクとお嬢様達は釈放されたよ。
松商の社長のもとには、チス派だった支店長達が、続々と集まってきたわ。借金まみれのチス様に愛想をつかしたのよ。
急きょ秘密の会合が開かれることになったんで、社長は夜道を足早に歩いていたの。
ところが先回りしたコバンザメが、腕っぷしの強そうな男達に何か指示を出してるのよ。実は社長を殺すつもりなの・・・。チス様には反対されたんだけど、単独で犯行に踏み切ったようね・・・

とつぜん社長は道の途中で男達に囲まれたわ。
そして体を切られて地面に倒れてしまったのよ。男はとどめを刺そうと刀を振り上げたよ。
そのとき男の背中に、ぷすっ・・・て何かささったの。お嬢様の護衛、めっぽう強いやつの風車みたいなのが当たったのよ。
男らは、へっぴり腰でめっぽう強いやつに刀を向けたわ。めっぽう強いやつも、忍び足でゆっくりと警戒しているよ。目はふせたままだけど、気配はわかるの。
男達が、その周りをハイエナのようにぐるぐると回りはじめたよ。その隙に社長は、おつきの者に引きずられて、ずるずると木の陰に隠れたわ。
それを合図に、めっぽう強いやつの反撃がはじまったの。
回転キックとパンチが炸裂したのよ。手にしてる刀はお飾りみたいなもんで使わないの。ジェントルマンね。
やがて、めっぽう強いやつが動きを止め、鋭い目つきで辺りを見回したわ。どうやら全員片付いたみたい。
でも社長の胸は赤く染まっていたわ・・・

社長を襲った話は、すぐチス様の耳に入ったよ。
チス様に呼ばれたコバンザメは、涼しい顔して前に座りこんだわ。
ところがペン立てを思いっきり投げつけられたのよ。チス様、かなり怒ってるみたいなの・・・。
コバンザメは額に手をあてて、恐る恐る自分の指を見たよ。血が垂れてるのよ・・・
チス様を見るコバンザメの目つきが、いつもと変わったわ。心の中で、チス様を見限ったのよ・・・

チス様は一人でかなり追い詰められたよ。パク様への裏金問題では、成果をあげられないまま、借金だけが山済みに残ったわ。それに前回偽造した手形が期日を迎え、サンオクのところに請求書が回り始めてる頃よ。

この修羅場を乗り越えるために、チス様は倭銀作りに手を染めることにしたわ。ニセ金よ・・・。何だかどんどん商売から道が外れていくわねえ・・・
チス様の指示で、偽金は順調に製造されたわ。
すすき野原にぽつんと建つ、一件の小屋の中で行われたの。
溶かした銀を、型に流し込んで固めるのよ。するとウイスキーボンボンみたいな形の銀が、たくさん出来たわ。本物と区別がつかない出来栄えよ。
上司の指示で、木箱に詰められた銀が、せっせと表へ運び出されているよ。

でも残念ながらニセ金作りは失敗に終わったの・・・
チス様の怪しい動きに気づいたお嬢様が、めっぽう強いやつに小屋を襲撃させたのよ。偽金が市場に出回るようになれば、役所にすぐバレるわ。そうなると松商が再起不能におちいるのよ。

夜もふけてから、チス様の屋敷を、サンオクとその部下達が訪ねて来たよ。
実は最終通告をするためなの。悪事は全部バレてるのよ。
偽造した手形をサンオクが肩代わりすることを条件に、チス様を商界から完全に追い出すことにしたの。
サンオクは、チス様に最後にこんな話をしたよ。
「昔、チス様が金物を綿に変えて利益を得たとき、あなたの優れた商才に私は劣等感を持ちました。しかし、湾商の社長を裏切ったとき、その劣等感は消えたのです・・・」

しばらく沈黙が続いたわ・・・。チス様はずっと顔をそらしたまま考え込んでいるよ。でもやがて、搾り出すような声でささやいたの。
「1日だけ猶予を下さい・・・」

サンオクが去ると、チス様は一人でぽつんと酒を飲み干したよ。今までの人生が、走馬灯のように、脳裏にかけめぐっているわ・・・

翌日、サンオクが返事をもらいに再び屋敷を訪れたよ。
屋敷を案内した男は、手を小さく前に合わせて扉の外からチス様に声をかけたよ。
「サンオク様がお見えです。チス様・・・。チス様・・・?」
男はサンオクの方を気にして、ちらりと振り向いたあと、そのまま部屋の中に姿を消したわ。
中に入ってみると、なんとチス様が仰向けになって死んでいたの・・・
横にころんと白い器が転がってるわ。毒を飲んだのよ・・・

事件は過ぎ去り、何もかもが元に戻ったように見えたよ。
コバンザメは、風呂敷包みを抱えて国外にとんずらしようとしたけど、結局、捕まったわ。

心配してた松商の社長は、起き上がれるまでに回復したよ。
社長はお嬢様にぽつりと呟いたよ。
「私の過ちをお前が洗い流してくれ。私はもう退く・・・」
お嬢様は唇を揺らしたわ。でも社長の意思は固そうなの。それで、ついに自ら松商再建への道を歩みだすことに決めたのよ。

出来る限りの協力をするってサンオクも申し出たよ。そうすることに喜びを感じているの。まるでお嬢様との縁が、戻ってきたみたいな気分なのよ。
2人は夜、古い大木のそばにたたずんでいたよ。
おもむろにサンオクが口をひらいたわ。
「お嬢様を忘れようとしていますが、上手くいきません・・・」
お嬢様は、目に涙を浮かべながら答えたよ。
「私はサンオク様にお会いする度に息が詰まりそうです。でも、それはすれ違った運命の儚い夢・・・もう忘れるべきなのです・・・」
そういい残すと、またいつものように、ひっそりと姿を消したよ・・・

町の市場で、たまたまお嬢様を見かけることがあったわ。お嬢様は、活き活きした顔で、商品に目を光らせながら、はりきって仕事をしてるの。
「声をかけましょうか?」
おとぼけ男がサンオクに聞いたよ。でもサンオクは微笑んでそのまま通り過ぎたよ。

サンオクは、郡様を辞職したわ。
和尚様からいつか貰った盃を見ながら、おとぼけ男に、そのワケを話したよ。
〜この盃を欲望で満たせば、空っぽになる〜
盃には、そんな意味が込めらていたの。だから権力を捨てることにしたのよ。
「盃が何やらと意味不明なことを・・・」
おとぼけ男から、さっそくその話を聞いた絹屋の男は、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして残念がったよ。

王様も、かなりガッカリされた様子だったわ。サンオクにもっと上の役職を用意してたのよ。
でもその後もサンオクからは、こまめに手紙が届いたのよ。
その手紙にはサンオクの活躍ぶりが書かれてあったわ。彼は民のために一生をささげたの。

そうこうしているうちに、何十年もの月日が過ぎ、サンオクの顎にも白いヒゲが生えたよ。
サンオクは、ホンの墓の前にいたわ。山の頂上にひっそりと葬られていたの。
そばには相変わらずおとぼけ男がいるわ。通りすがりの若い旅人も立っているよ。
若者は、まだ悟りを開く途中の詩人で、昔、自分の犯した失敗を恥じて、かさ地蔵みたいな帽子で顔を半分隠していたわ。
サンオクは、この若者に語ったよ。
「ホンは民のために命を捨てた。だから私は民のために生きようとしたのだ」
若者はとっさに顔を上げたわ。たったいま、深い悟りを開いたような気がしたのよ。
「ご老人・・・!」
名前も知らない老人の後姿を、若者は目で追ったよ。
サンオクは切り立った山の中を、おとぼけ男と仲良くおりていったわ。
Posted by d_nose00 at 19:26  | 商道 あらすじ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月12日

「商道」47〜48

明け方、サンオクの妻は庭でお嬢様に出くわしたわ。まだ空気は薄っすらとした青色なの。鳥もちゅんちゅん鳴いているよ。
妻は不思議に思ったわ。引き裂かれた2人のために、昨晩せっかく部屋を用意したのに、なぜお嬢様は一人で庭に出てきたのか―?
お嬢様は妻の前に来ると、目をふしがちにして言ったよ。
「郡様は外出されました・・・」

妻が職場に様子を見にいってみると、サンオクは役人用のツバの広い帽子で顔に陰を作ったまま、沈み込んでいたわ。
「私に気を遣ったのかも知れないが、今後はやめてほしい・・・」
サンオクがささやいたよ。なんだかすごく辛そうなの。
「あなた・・・」
妻は心配のあまり肩を揺らしたわ。

妻の他にも客が来たよ。なんとチス様とコバンザメよ。わざわざこんなところに足をのばして何の用かしらね?
用件はコバンザメから手短に伝えられたわ。
「ホンをご記憶で?そやつに天銀2万量をお渡ししたそうで・・・」
言うことを聞かないとバラしますよと言っているのよ。脅迫とも言うわ。取引条件は天銀10万と失った松商の店舗の返還よ。

家に戻ったチス様は、サンオクの返事も聞かないうちに、商売が再開できるよう、早々と商品を大量に仕入れはじめたよ。借金取りもたくさん押しかけてるっていうのに大丈夫かしら?
実は急場しのぎにちょっとやばい手をつかったの。サンオクの名前で手形を偽造したのよ。この大胆な手口にはあのコバンザメでさえ、ちょっとひいたくらいよ・・・。

チス様は確信していたの。サンオクが提案を断るはずがないのよ。もし朝廷に2万両のことがバレたら、サンオクは打ち首になるはずよ・・・

ところが困ったことになったわねえ・・・。サンオクが自ら出頭したのよ。
チス様は少し興奮気味に、コバンザメに状況を説明したよ。
「ホンを黙認し、あいつらに金が渡ったことは同調したも同罪。サンオクは尋問される」
確かに立派な解説だったわ。でもコバンザメは心に浮かんできた不安を、素直に口にしたよ。
「すると、我々の計画は水の泡です・・・」
チス様は下唇を噛んで頷いたわ。確かに痛いところをつかれたのよ・・・

間もなく、チス様はワイロでごひいきにしているパク様のお屋敷を訪れたよ。
サンオクの取調べをするのが、よりによってこのパク様なの・・・。
まんまとサンオクを失脚させることができれば、湾商の人参交易権は他の商団に割り当てられることになるわ。
チス様はこの割り当て分を狙っているの。そこから生まれる利益の半分を、パク様にワイロとして納入するってワケよ。

サンオク逮捕の知らせはお嬢様にも届いていたの。お嬢様はすぐにデスクの下から白い紙を取り出すと、筆を走らせはじめたわ。そしてその手紙を、めっぽう強いやつに託したの。

依然、収容先で労働中の松商の社長は、お嬢様の手紙を一読したあと、それを折りたたんで、早口でささやいたよ。
「今から渡す手紙をピョン様、イ大房、ユン都房に渡せ」
これは朝鮮商会の大物達の名前よ。
松商の社長から手紙を受け取った大物達は、すぐにサンオク釈放の署名にサインしたわ。
そしてこの動きは民の間にも広がり始めたの。

その頃、朝廷は大騒ぎになっていたの。清の使臣が、いきなり紅人参を5千斤もくれって言い出したのよ。しかも一ヶ月以内なの。
パク様は、チス様にとっておきのチャンスを与えたよ。
もしこれを用意できれば、チス様は莫大な利益と信用を得られるわ。でも出来なければ逆に打ち首なの・・・。朝鮮人参の評判は地に落ちてその価値を失うことになるわ。朝廷や朝鮮商界に大打撃なのよ。
「可能か?」
パク様は、祈るような目つきでチス様の顔を見たよ。実は断られたらパク様が境地に立たされるの・・・
でもチス様の顔色はかんばしくなかったわ。こんな大量の人参、湾商でも無理なのよ。


その話は、牢に面会に来た右様から、サンオクの耳にも届けられたよ。
オリをのぞきこんだ右様は、変わり果てたサンオクの姿に胸を痛めたよ。白い着物に、首には長い板をはめられているの。でも顔つきは、しっかりとしていたわ。
サンオクは右様に即答したよ。
「私がやり遂げてみせます」
これがどれだけ朝廷にとって重要な問題か、サンオクにはよくわかっていたのよ。

「サンオクが、最後の悪あがきをしているようです・・・」
サンオクの一時釈放の知らせを受けたコバンザメは、チス様に言ったわ。
チス様も薄っすら微笑んでいるよ。5千斤なんてしょせん無理な話なのよ。

確かに難しかったの。幾らフル稼働で動いても、蒸し工場自体が足らないのよ。それにカリスマ人参職人のじいさんが一切妥協を許さなくて、ちょっとでも出来の悪いのは取り除いてしまうの。
各商団の協力も得て、人参が掻き集められているわ。もちろんチス様は一本も出しゃしないの。
出来上がった人参が浅箱に詰められて、どんどん荷馬車で運ばれていくよ。そこから川岸の小船に乗せられるのよ。

チス様の期待を裏切って、サンオクは見事、人参5千斤を用意したよ。
でもなぜ用意できたのか、サンオク自身、わかってなかったのよ。蒸し工場で生産できる量を全部足したとしても、4千斤が限界のはずなのよ。あとの千斤はどうしたのかしら?

サンオクがある小屋を訪れてみると、カリスマ人参職人のじいさんが布団に横たわっていたよ。もう力尽きたの・・・
残りの千斤はなんとわざわざセイロで仕上げたらしいわ。その昔、じいさんは毎日セイロで人参を蒸していたの。最上の人参を作る技術をあみだしたのは、このセイロのおかげだったのよ。
「老いぼれの死にぞこないだが、君の役に立てたから思い残すことはない・・・」
じいさんは何とか声を絞り出したよ。サンオクは感激したわ。じいさんが、朝鮮商界を救ったのよ・・・

王様がおえらい達を部屋に招いたよ。机にはサンオク釈放を願う嘆願書が積み重ねられているわ。
サンオクの活躍を耳にした王様は、この機会にホンの乱に協力したとして捕まった民の再調査を右様に命じたの。
「再調査は混乱を招きます!」
任務を外されたパク様はすぐさま反論したよ。でもいまいち説得力に欠けてるのよ。
「罪のない民を救うことがなぜ混乱を招くのだ!」
王様はパク様の訴えを厳しく退けたよ。

再び牢に戻ったサンオクの隣の部屋に、新入りの囚人が入ってきたよ。
なんとそれは、再調査を控えたお嬢様と松商の社長だったの・・・
Posted by d_nose00 at 13:45  | 商道 あらすじ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月05日

「商道」45〜46

王様の宮殿についたサンオクと他の功労者達は、庭のアーケードに参列したよ。
そこで一人一人、王様にお褒めの言葉を頂いたの。王様は特にサンオクの前では長く足をお留めになっていらっしゃったわ。
一応これで儀式は終了のはずなんだけど、なぜかサンオクだけあとから王様の部屋に来るよう呼ばれたの。
よほど興味が沸いたのか、サンオクと一緒にパク様と右様もついてきたわ。パク様は先日10万両の裏金を受け取って、チス様を牢から救い出した男よ。

王様はなんの用かと思ったら、いきなりサンオクを縣様に任命したのよ。
パク様は裏金はOKでもこれにはさすがに反対したわ。商人が官職につくなんて前例がないのよ。
でも王様にはちゃんと考えがあったの。
サンオクが赴任する先は、王様も頭を抱えるほどの貧乏地帯だったの。土地がやせて農業が思うようにいかないのよ。なのに両班達が土地のレンタル料を跳ね上げて、おまけに税もたっぷり搾り取ってるっていうから始末が悪いわ。
サンオクならこれを何とか解決できるって思ったみたい。
「恐れ入ります・・・」
パク様と右様は、王様の思慮深いお考えに思わず頭を下げたよ。

でもサンオクは赴任の前に、一つやっておかねばならないことがあったの。
松商の社長に会いに行こうと思ったのよ。
その頃、社長は粗末な着物を着て、背中にたくさんの薪を抱えていたの。足元がおぼつかなくてすぐに転んでしまったわ。崩れた薪が体の上に持たれかかって苦しそうよ・・・
おつきの男が慌てて飛んできて、何とか起してくれたんだけど、どう見ても無理な重労働なのよ。でも官奴として送り込まれてるからブツブツ言ってられないの・・・
そんなとき、社長に面会したいって人が現れたの。
「早く挨拶せんか。縣様だ」
役人の男に急かされて、社長は丁寧に頭を下げたわ。そして渡り廊下から自分を見下ろしている縣様の顔を見たの。
縣様の正体を知って驚きを隠せない社長に、サンオクはゆっくりと会釈したよ。

サンオクが来たのは、松商の大部分の店舗を買収するためだったの。
清国商人が借金の肩に、松商を狙ってるって噂を耳にしたからよ。無理な計画がたたって、チス様にはもう金を返す余裕がないの。松商崩壊寸前なのよ・・・
「縣様にお任せ致します・・・」
社長はかつての威厳をわずかに漂わせながら、覚悟を決めたように頭を下げたよ。

深夜、サンオクが屋敷の庭先で物思いにふけっていると、屋根から目にも見えぬ速さで男が飛び降りて来たよ。背後に立っていたのは、お嬢様の護衛、めっぽう強いやつだったわ。逃亡中の身なの・・・
行方不明になったお嬢様をまだ探し歩いてるみたい。

サンオクはお嬢様の安否に思いをはせながらも、おとぼけ男を連れて赴任先へおもむいたわ。
それからしばらくして、地方のおえらい様の宴会に呼ばれたの。
庭に設置された渡り廊下のホールで、夜の宴が始まったわ。サンオクもお膳の前でおえらい衆と肩を並べているよ。
「芸子を呼んで来い!」
盃を持ったおえらいがひと声かけると、ゾロゾロとマゲを結った女達が入ってきたわ。
その列の中央に、やけに浮かない顔をした芸子がいたの。なんとお嬢様よ・・・。
実はあれから捕まって役所直属の芸子にされたのよ。ちょうど今夜が初日なの・・・
膳の前に座ったお嬢様は、ようやくまぶたを上げたわ。ところがよりによって目の前の客がサンオクだったの・・・。サンオクはお嬢様をじっと見ているわ。本当は辛いんで目をそらしたいんだけど、見ずにはいられなくて、歯を食いしばっているのよ。その訴えかけるような眼差しには、悔しさがにじみ出ていたわ・・・

そのあとサンオクはおえらい様にお嬢様を開放するように交渉してみたのよ。でも反逆者に資金を渡した罪は重くて、さすがのサンオクでもてんでダメだったのよ。

ある夜、めっぽう強いやつが縣様の屋敷の庭にこそこそと足を忍ばせて入ってきたよ。
サンオクは、ちらちらと周りの気配を伺いながら、すぐに部屋に招き入れたの。
そして力強い目でヒソヒソとささやいたのよ。
「船を手配しておく・・・」
お嬢様とこの男を清国へ逃がすつもりよ・・・

深夜、茂みに覆われた岸辺で、サンオクが手を後ろに組みながら、そわそわとお嬢様の到着を待っていたわ。
やがて土を踏みしめる音がして、影が一つ現れたよ。
でもそれはお嬢様ではなく、めっぽう強いやつだったの。
「お嬢様はお断りになりました・・・。ご迷惑をかけたくないそうです・・・」
めっぽう強いやつの言葉に、サンオクの胸は張り裂けそうになったわ。頑固なお嬢様を責めてやりたいくらいよ。
サンオクは寂しそうに背中を向けて夜道を引き返していったの・・・

そんなある日、サンオクは再び王様に宮中に呼ばれたよ。
王様の座敷には5人のおえらい衆の顔ぶれも一同揃っていたわ。おえらい達はそれぞれセリフをバトンタッチしながら、サンオクの地方での活躍ぶりについて報告したよ。
王様は満足そうに頷いているよ。

漆の生産は実に上手くいったの。痩せた土地でも栽培できるのよ。
漆工房も作ったわ。漆の幹に、ねじみたいな切り込みを入れて茶色の汁を回収し、いったん粉末状にしたものを、水で溶かして木のハケで塗るのよ。
こうして出来た製品を湾商で売りさばくの。

すっかり感激した王様は、今度はサンオクを郡様に任命したよ。さらに大出世よ。
他にもめでたい知らせがあるの。サンオクの妻がついに妊娠したのよ。これを機会に妻は単身赴任の夫のもとで暮らすことに決めたわ。

でも一つ気にかかることがあるの・・・。チス様のかつてのご学友の男がサンオクの粗探しをはじめたのよ。もちろんチス様に頼まれたのよ。オリにまで収容されて、こっぴどい目にあったっていうのにまだ懲りてないようね・・・
そうして辿りついた成果が、反乱軍に寄付した富裕層の名簿だったわ。2万両を寄付した大物が陰に潜んでいるようなんだけど、肝心の名前の欄のとこが空白になってるのよ。
2万もの大金を確保できるのは、京商と湾商くらいしか考えられないの。ここに目をつけたってワケよ・・・

そんなこととは知らずに、サンオクは新しい赴任地へ出発して山を越えたよ。その列の中にはお嬢様もいるわ。表面上はサンオクの赴任先に務める芸子なの。でも実のところ、サンオクが芸子に溺れたらしいって噂が流れ始めていたのよ・・・

夫の屋敷へ着いた妻は、すぐにお嬢様が屋敷にいることに気づいたわ。嫌でも目につくのよ。おまけに親戚の女が、あれはサンオクがかつて思いを寄せていた女だって、余計なことを耳に吹き込んだわ。
それでも夫のことを理解しようと、身重の妻は縫い物などをしながらささやかな日々を過ごしていたの。
そんなある日、お盆を手にして廊下を歩いていたら、向かいの部屋でたそがれてる夫を見かけたの。
夫は体を庭に向けて、しきりに何かを眺めているわ。妻は思わず微笑みながら、何を見てるのかしらって夫の目線をたどったよ。そこにはお嬢様がいたわ・・・

「奥様がお呼びです」
夜、部下からこんな連絡を受けたサンオクは、小部屋にあがったよ。
でも中に入ってみると、なぜかお嬢様が座り込んで待ち構えてたのよ。こざっぱりした寝床も用意してあるの。サンオクはこれが何を意味してるのかってすぐに気づいたわ。心の広い妻の精一杯のはからいだったの・・・
サンオクの妻は小部屋の外に置かれたある物を眺めていたよ。夫の靴とお嬢様の靴が仲良く並んでいたわ。自分が仕組んだこととはいえ、なんだか切なくなるのよ・・・

部屋の中は静まりかえっていたよ。2人とも何もしゃべらないの。サンオクは料理の膳を挟んで、お嬢様を見つめていて、お嬢様は目をそらしたままなの。
そのうちに、お嬢様の目からポロポロと涙がこぼれてきたわ。こんな状況で向かい合っているのが哀しくてたまらなかったのよ・・・
Posted by d_nose00 at 12:39  | 商道 あらすじ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月29日

「商道」43〜44

ホンの軍は追い詰められたのか、とりでの中にたてこもる作戦に入ったよ。
中にはお嬢様もいるの。通りすがりに連れてこられたのよ・・・

荒地にところどころ白いテントがはられてるんだけど、民衆や子供達も大勢いるのよ。
お嬢様はむすびをせっせと子供達に配っているわ。
高い城壁を越えようと、官軍がはしごをたてかけているよ。その様子を心配そうに見ているのはサンオクよ。実はお嬢様が閉じ込められてると聞いて、官軍に米を支援するとかなんとか理由をつけちゃ、すっ飛んで来たのよ。

はしごは、ホウキみたいな長い棒で突付かれたり、石を投げつけられたりして、どんどん倒されていくわ。ひときわ威勢のいいのはホンよ。仲間達はみんな、首に仲良くおそろいの赤いスカーフをしてるのよ。

でも形勢は次第に官軍に有利になってきたの・・・。ついに城壁を突破して、中の敷地にも兵がゾロゾロ駆け込んできたわ。
民衆の間をぬって、大砲や鉄砲の弾も飛んできて、煙だらけなのよ。
なんだか雲行きが怪しくなってるんだけど、ホンはそれでも城壁から顔を出しては、何か叫んで長い棒を振り回してるわ。
ところが草むらから狙いをさだめた5人組の男の鉄砲の弾が、ついにホンの胸を貫通したの・・・
ホンは手を羽ばたかせながらワラの上に倒れ込んだわ。
そして晴れた空を見つめながら、一人、静かに目を閉じたの・・・

戦乱が終わると、サンオクはお嬢様を探しに急いで城内へ入ったよ。
辺りはまだ煙がくすぶっていて、むき出しの土地に、死体がごろごろしているの。風も強いからサンオクの衣装がひらひらとひるがえっているわ。

でもどこを見渡してもお嬢様がいないのよ・・・。似たような服の女を見つけて、夢中でその女の体を裏返してみたんだけど、似てもにつかぬ顔で、申しわけないけど思わずため息をついてしまったくらいなの。

あとから聞いた話によると、隅の方に死体がたくさん積み上げられていたそうよ。お嬢様はその中にいたんじゃないかって噂だったわ・・・

失意のうちに屋敷へ戻ったサンオクのもとに、一通の手紙が届いたよ。
それはお嬢様のおつきの男からだったの。お嬢様と城ではぐれたあと、捕まって牢獄に入れられたらしいのよ。
お嬢様の名前は、ホンに寄付した富裕層の一覧って名簿にしっかりと記載されているの。もし消息がつかめたとしても、実は監獄行きなのよ・・・

サンオクがお嬢様のおつきの男のところにさっそく面会にいくと、薄汚れた壁の隅に、ぐったりと体を傾けて、松商の社長が目を閉じていたわ。
白い着物で、すっかりやつれ果ててるのよ・・・。壁にうつってる陰も、はかなげなの・・・。

役人のはからいで、面会には特別な小部屋が用意されたよ。ほんの少しだけど、酒と小料理も用意されたわ。
粗末な着物をきた松商の社長は、改まった顔で、とつぜんサンオクの前に正座したよ。
謝罪の言葉を述べながら、背を丸めて深々と頭をさげるのよ。
「あなたの言った通りだ。私の築いたいしずえは、砂上の楼閣のようにもろかった・・・」
社長は声を絞り出して、床から決して顔を上げようとしないの。
サンオクは社長のその姿があまりに痛々しくて、歯をくいしばってたのよ。

ほとぼりが冷めると社長はようやく顔を上げたわ。今度は声に少し怒りがこもってるのよ。よほど言いたいことがあるようね。何かしら?
「チスが、わしと娘の金鉱を横取りした・・・」

どうやら戦争のどさくさに紛れて、チス様が汚い手を使ったらしいの。ちょいと役人にワイロを渡したのよ。

サンオクは社長に頼まれてチス様を訴えることにしたよ。
そうとも知らず、チス様はのんきに支店長達を引き連れて金鉱見学に行ったわ。
またでかい金脈が見つかってルンルンなのよ。

小屋の中では職人達が金塊を製造していたよ。
しめ縄みたいなワラに入れた鉱石を、金づちで砕いてるの。そのあと石臼に入れて、もっと細かくガンガン叩くのよ。
それから今度はふるいにかけて、砂のようにさらさらにするの。
その砂を水を張った鉢に入れて落ち着かせてから、ハンドルのついた石の上にスプーンでのせるのよ。ハンドルを回すと石の重みで水分がぬけていくわ。
ねとっとした泥が出来るんで、それを布でこして小さな金の丸い粒のシャワーをしぼり出すの。それはヤシの実の器に入れておくのよ。
その金をまるめて汚い石の器に入れて、火の熱でやわらかい液状にするの。それをいよいよ饅頭の型みたいなのに流し込んで、固まったら出来上がりってワケなの。

出来たてホヤホヤの金塊を手にしたチス様が、支店長達の顔の前に差し出して、見せびらかしているわ。
「ホーッ!」
支店長達は、口をあけて感動の余り息を漏らしているよ。
チス様も笑顔が止まらないのよ・・・

それから間もなくして、薄暗い牢に新しい囚人が加わったよ。チス様よ・・・。
チス様はオリの隙間から顔を覗かせたわ。コバンザメが面会にきてくれたのよ。その後ろで、たいまつを手にした警備の男達が常に監視しているの。
チス様があることをささやくと、コバンザメはすぐにパク様のお屋敷へ向かったわ。
パク様は、ろうそく1本の暗い部屋で、コバンザメから10万両のワイロを受け取ったのよ・・・

チス様はおかげでまんまと釈放されたわ。でも残念ながら金鉱は没収され、人参貿易権も3年間剥奪されることになったの・・・
どうにも腹の虫がおさまらなくて、チス様は唇を噛みっぱなしよ。そしてなにより悔しいのは、サンオクが戦争功労者として、自分を差しおき、このたび王様に謁見する名誉を授かったことなの・・・
Posted by d_nose00 at 16:23  | 商道 あらすじ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月22日

「商道」41〜42

サンオクとホンが、お役人に連行されていると、とつぜん村の衆が集まってきたよ。
「サンオク様をお助けください!どうかサンオク様を・・・」
皆、土の上にひざまずいて、おがんでるのよ。
あら・・・ガラの悪いやつらまで駆けつけてきたわ。サンオクから塩の施しを受けて、改心した盗賊たちよ。サンオクの人気は相当のもののようね。
盗賊まで更正させたと聞いちゃ、ほっとく訳にもいかなくて、ついにサンオクは釈放されたわ。

ホンはそのあと、すぐ休暇を貰って山のアジトへ戻ったの。
資金集めのためよ。ホンの本当の狙いは革命を起すことなのよ・・・

お嬢様の山小屋に、とつぜんホンが訪ねて来たよ。
自分も鉱山を開発しているが、上手く行かず、貧しい民を救済するため力を貸して欲しいって言うのよ。
「500両差し上げます!」
お嬢様は即答したわ。そのきっぷの良さにはさすがのホンでさえ、連れの男と顔を見合わせたくらいなの。
お嬢様のおつきの男が不安そうにしているよ。社長は留守っていうのに、見ず知らずのこんな男達に勝手に金を渡してしまって、ちょっとお嬢様にしては軽率じゃないかって思ったの。
でもお嬢様は自信満々だったわ。ホンが悪そうには見えなかったのよ・・・

ところがそのうち、嫌な噂が、お嬢様おつきの男の耳に入ったの。
この辺りで、怪しい一味が資金と人材を掻き集め、力をたくわえてるって言うのよ。
もしこれが本当だとしたら、そんなやつらに金を渡したってことで、こっちがやばいのよ・・・
そんな話をしていると、出先から社長が戻って来たよ。何か雰囲気がいつもと違うと勘付いたらしくて、留守中の様子を聞きたがるのよ。
「問題ありません・・・」
お嬢様は手を小さく前に合わせて、素知らぬフリをしたよ。

お嬢様が久しぶりにサンオクのいる町へ帰って来たのは、金の加工業者に、天女の瓶を作ってもらうためだったわ。今、清国で神秘的な工芸品が人気らしいのよ。費用は気にせずに、最高級品に仕上げるつもりなの・・・

満足そうな顔をしたお嬢様が工房から出てきたよ。しばらく懐かしの市場を見物したあと、山へ帰るの。

そのお嬢様の足が、ふと止まったわ・・・。店先にサンオクがいたの。
サンオクは部下達と立ち話をしているところだったわ。
仕事に打ち込むサンオクの真剣な眼差し・・・。それを見ているうちに、胸の奥にせっかく畳み込んでいたお嬢様の思いが、再びパラパラとめくれ始めたの。
でもサンオクは部下達を連れて、店の奥に姿を消してしまったわ。
お嬢様は寂しそうに目をふせて、また歩きはじめたよ。

ところが変なの・・・。お嬢様を護衛していためっぽう強い男が、鳩が豆鉄砲食らったみたいに首を傾げてるのよ。
実はサンオクの隣にいた男に見覚えがあったのよ・・・
「サンオクの隣にいた男ですが、あれは先日鉱山を訪れたホンですね・・・」
めっぽう強いやつの指摘に、お嬢様はなんだかざわざわと胸騒ぎを覚えたわ。
なぜホンが、ちゃっかりサンオクと一緒に顔を並べているのか―?
うさん臭いわ・・・。すごくうさん臭いのよ・・・

お嬢様は予定を変更して、サンオクにこのことを密告することにしたわ。
約束より少し早めに来たサンオクは、緊張した顔つきで、池のほとりに、たたずんでいたの。
月の明かりが水面で揺れているわ・・・。サンオクが婚礼を挙げたのは、とつぜん行方をくらましたお嬢様の捜索を断念したすぐあとのことだったの・・・

久しぶりに見たお嬢様の姿に、サンオクは感無量だったよ。いろいろと聞きたいことがあったのよ。
でもお嬢様は用件だけ述べるとマントをひるがして、そそくさと松林の中に消えてしまったわ・・・

ホンの計画は最終段階にきていたの。物資も人もだいぶ揃って、あとはサンオクの協力を得るだけなのよ。サンオク人気にあやかれば、民衆を味方につけることが楽チンよ。
でもいざとなると、なかなか言い出しにくいの・・・。サンオクのことが結構気に入ってるのよ。
「拒否されたらどうするつもりですか」
部下がホンに聞くと、ホンは袖の中に手を入れたまま答えたわ・・・
「サンオクの舌を切る・・・安心しろ」

ある晩、ホンがとつぜんサンオクの部屋にあらわれて座り込んだよ。
「将棋をさしませんか」
こんな夜更けにどうしたのかと思いつつも、サンオクはホンの誘いを受けたわ。
でも本当のこというと何となく怖くて落ち着かなかったの。サンオクはホンが謀反を起そうとしてるって薄々勘付いていたのよ。

ホンは将棋の卒のコマを、いきなり将の場所に置いたよ。
サンオクは明らかに動揺したわ・・・。こんな下克上みたいなルール聞いたことがないのよ・・・
「いけませんか? 」
ホンは意味ありげに笑ったよ。そしてしばらくサンオクの目を見つめたあと、ようやく裏の顔をあらわにしたの・・・

ホンが部屋から去ると、サンオクはロウソク一本の暗い部屋の中で沈み込んでいたよ。
仲間になれって正式に頼まれてしまったの。断ったら殺されるのよ。
サンオクの手が、和尚様に貰った袋の手に伸びたよ。
この中には、和尚様の書がしたためられていて、ピンチを救うヒントが隠されているの。
中には三本脚の器を示す文字が書かれてあったわ。どういう意味かしら?

日がかわって、ホンが再びサンオクの部屋に入ってきたわ。返事を貰いに来たのよ。
テーブルの上には、彼を待ち受けていたように、金属製の三本足の香炉が用意されていたの。
サンオクは、ホンにこの器を持つよう指示したよ。
ホンは早速その器にイソイソ手を伸ばしたわ。
コテン・・・
あら・・・変ねえ。ホンがちょっと脚に触れたとたん、いたずらでもしたみたいに、器の脚がポキンと折れてしまったよ。
実はこれがサンオクの答えなの。
三本の脚は、それぞれ物欲、権力欲、名誉欲をあらわしてるのよ。もしホンの誘いを受ければ、権力が大きくなりすぎて、バランスを崩して倒れてしまうって意味らしいの。

ホンの顔つきが変わったわ・・・。手の中に隠し持っていた小刀をスルリと握りしめたの。
サンオクはそのとがった刃先を見ると、覚悟を決めたように、静かに目を閉じたよ。
ナイフをゆっくりと抜きながら、ホンはサンオクを睨みつけたわ。そして刃先を高く振り上げたの・・・
ブスリ
何かに刃物が突き刺さったような鈍い音がしたわ。サンオクが再び目をあけてみると、床の上に顔を埋めたホンが、帽子のつばから恐ろしい目を光らせていたよ。
サンオクのそばにあった置物が、ぺしゃんこに潰れているの・・・。ホンのナイフが縦に突き立ってるのよ。この置物がサンオクの身代わりになったんだと思うと、冷え冷えするわね・・・
「あなたは私に殺された・・・」
ホンは低い声で呟くと、サンオクの前に、二度と姿を見せることはなかったわ・・・

朝がきたとき、サンオクの倉庫から銀2万両がごっそり消えていたよ。
ホンは予定通り乱を起し、町は戦乱で大騒ぎになったわ・・・
Posted by d_nose00 at 13:36  | 商道 あらすじ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月15日

「商道」39〜40

松商の社長とお嬢様が失脚し、行方をくらましてから間もなく、サンオクが結婚式をあげたよ。お相手は湾商の社長の娘よ。
美しい着物を羽織った花嫁とサンオクが盃を交わすのを、屋敷の塀の向こうから覗いてみている女がいるよ・・。あら・・・お嬢様ね。かわいそうに、下唇が揺れているわ・・・
お嬢様は、霧のかかる山と川のそばを歩いて、松商の社長と、ひっそりと街を去ったの・・・。どこへ行くのかしら?

家庭も構え、仕事も順調なサンオクの元に、新顔の男が弟子入りを申し込んできたよ。
男はバタバタと、ひともんちゃくしたあと、サンオクの部下に門前払いされてしまったわ。
「人相を見る限り大物になるかも知れん。もしくはその逆じゃ・・・」
一連の騒動を横目で見ていたカリスマ人参職人のじいさんは、サンオクにそんな感想を漏らしたよ。

サンオクは、カリスマじいさんが太鼓判を推したその男を、下働きとして雇うことに決めたわ。ホンという名前の、がっしりした体つきの男よ。

その頃、村では飢饉が続いていたわ。
サンオクがハンサムなお役人に呼ばれたのは、そんな時だったのよ。
お役人の話によると、今、町では暴動が起きていたの。ここぞとばかり商団が物資を買占めて、値を吊り上げてるせいよ。でも朝廷内にワイロがはびこってて、取り締まることもできやしないの・・・

お役人は、サンオクを屋敷に迎え、小粋な料理でもてなしながら、妻を部屋に呼んだよ。
妻は障子の後ろから声をかけ、そろりそろりと部屋に入ってきたわ。
ふと顔をあげたサンオクは、驚いて息を呑んだよ・・・
「チェヨンです・・・」
ちょっと恥ずかしそうに、お盆を抱えたその女は、かつてサンオクに身を焦がした、あのチェヨンだったのよ・・・
今では両班に身分を回復させ、若く誠実なお役人と、幸せに暮らしているようなの・・・

米の買占めをして、高値で売り抜けようとしている商団の顔ぶれには、チス様率いる新生松商もいたわ。
松商は高利貸しもはじめたのよ。貧しい民に高い金利を押し付け、土地や建物をどんどん奪うのよ。
ところが米の買占めは、定価で民に米を施しはじめたサンオクに邪魔されたわ。それから高利貸しも、急きょ手を引かざるを得なくなったの・・・

サンオクに入れ知恵をしたのは、新入りのホンだったわ。
「サンオク様、松商の高利貸しによる被害を食い止める方法があります・・・」
深夜、ロウソク一本の暗い部屋に入って来ると、ホンはサンオクの前に、きちんと正座してこう言ったの。
サンオクは思わず身を乗り出したよ。この件に関しては例のお役人も、なすすべがなくて、サンオクにボヤいてたくらいなのよ。

ホンは、一部の大金持ちが、しこたま貯めこんでる金を使って、サンオクに低金利の高利貸しをすることを勧めたの。サンオクに預けた金が、戻ってきた時には増えてる仕組みだから、欲の皮のしたたる金持ち連中にとっても悪くない話よ。

サンオクはすぐさまこの案を採用することにしたよ。ホンと一緒に、お金持ちの屋敷を訪ねては、金を借りて回ったのよ。
ある時は、土に埋まった瓶の中から、またある時は、屏風の裏のつづらから、小判がざっくざっく出てきたわ。
そして、その大量の小判を、ホンは意味ありげにじっと見ていたの・・・

忙しいサンオクは、久しぶりに家に帰って、妻と2人切りになったわ。
でも妻にはちょっと気がかりなことがあったの。サンオクとの間に、まだ子供がいないのよ。近所の新婚さんは、待望の男の子が産まれたばかりだったわ。
サンオクは妻が昔描いていた蘭の絵に、思いをはせていたよ。
「またランを描いてくれないか?是非その蘭に詩を添えてみたい・・・」
そう言って、妻の手を取ったの。留守がちな自分を、いつも家で待ち続けるこの健気な妻のことが、不憫でならなかったのよ・・・

「今回採取した金です」
お嬢様は松商の元社長に頭を下げたよ。
松商の社長は、丸い団子状の金を、指でつまんで品定めをしたわ。
「いいだろう・・・」
血のにじむような思いで発掘したこの金の一粒・・・。ここまで来るのには相当の試練があったわ・・・
今では労働者を大勢雇って、加工するところまでこぎつけたの。
お嬢様は収穫した金を、幾つも小箱に納めて、大事げに抱えると、暗い山道を歩きはじめたよ。
ちょっと物騒な場所だとは思ってたんだけど、案の定、すぐにガラの悪い盗賊達に取り囲まれてしまったわ。
でも運が良かったの・・・。とつぜんヒーローみたいな男達が目の前に現れて、助けてくれたのよ。
「あなたは命の恩人です。お名前を聞かせて下さい」
お嬢様は、ボスと思われる男に声をかけたよ。
あら・・・でもこの男、ホンよ。こんなところで道草食って、何してるのかしらねえ?しかも背後に見知らぬ部下達をたくさん従えてるのよ。
ホンは名も告げないまま、お嬢様をぽつんと山に残し、風のように去っていったわ・・・

怪しげなアジトの中では、ホンを囲んだ部下達が秘密の会議を開いていたの。
鉱山の裏で、隠れて毎日100本の矢を作り、オム様から20頭の馬も手に入れたと、部下の一人がホンに報告したよ。
「役人の目につかぬよう慎重に運べ」
ホンは部下に指示したわ。どうやらこっちがホンの本当の顔のようね・・・

チス様は次の一手を考えていたよ。相変わらず金儲けのことしか頭にないの。飢饉が続いてる時には、塩が値上がりするのよ。飢えた体には、塩が効くらしいの。
それで、塩田ごと買い占めようとしたんだけど、残念ながら塩田は王室の持ち物だから、買うことができないのよ。

まもなく、最大の塩田を所有するイ様の元へ、チス様とコバンザメが現れたよ。
イ様はアゴヒゲを手で掻いたよ。売りたくても売れないのに、随分おかしなこと言う男だねえって思ったのよ。
チス様は、そんなイ様に、ある男を紹介したの。さっきから、チス様の横に大人しく座ってる男よ。実はチス様の部下で王族出身者なの。
「イ様には跡継ぎがおられないかと。この者を養子に・・・」
チス様の顔色が変わったわ・・・

まんまと塩田を手に入れた松商が、塩の値段を吊り上げている噂は、すぐサンオクの元にも届いたよ。
一方、チス様の耳には、サンオクが大量の塩を探しているとの情報が入ってきたの。でも理由はわからなかったわ。
「今すぐ5両に値上げしろ!」
チス様はコバンザメにすぐ指示を出したわ。
まもなく、直接サンオクがチス様のところに交渉にやって来たよ。
「10両だ」
チス様は、ここぞとばかりさらに値を上げたよ。
サンオクは渋々、その値で大量の塩を買ったわ。おかげでチス様には、大金が転がり込んできたってワケよ。

チス様が、一人、お酒をたしなんでいると、コバンザメが部屋に入ってきたわ。そのコバンザメの口から、サンオクが塩を購入した理由を初めて聞かされたの。貧しい民に、塩を施してるって言うのよ・・・
〜せっかく勝ったと思ったのに、モヤモヤするこの気持ち〜
チス様は、すっかりほろ苦くなった酒を、ヤケ気味に口に運んだよ。

サンオクはホンと将棋をさしていたよ。ホンはすっかりサンオクの信頼を得て、書記になっていたの。
「お話があります・・・」
ホンは丁寧に頭を下げたよ。塩を山の民にも施したいって言うの。
サンオクが快く承知すると、ホンはさっそく山へ旅立ったわ。

「この人だかりは何だ?」
松商の社長は、手にカゴをさげて、俺も私もって我先にと列を作っている労働者達を見たよ。
「塩を配っているそうです。サンオクの施しのようです」
お嬢様は、とぼとぼと山小屋へこもると、何もないテーブルの上に手を置いたわ。
この山の中で、サンオクの名を久しぶりに聞いたの・・・
「もう忘れます・・・」
サンオクにそう告げたあの日のことが、昨日のことのように蘇ってくるわ・・・。戻ることの出来ない胸の痛みに、今、ヒシヒシと耐えてるとこなの・・・

そんな時、とつぜんサンオクとホンが逮捕されてしまったのよ。容疑は盗賊に塩を売った罪よ。
ホンの裏の顔を知るアジトでも、対策が練られていたわ。
「ホン様は簡単には釈放されないようです!」
「慎重になろう。牢屋破りぐらい簡単だが・・・」

ホンの部下達が、ゾロゾロと山を下りはじめたのは、それからまもなくのことだったわ・・・
Posted by d_nose00 at 13:51  | 商道 あらすじ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月08日

「商道」37〜38

サンオクは晴々とした顔つきで故郷に戻って来たよ。
人参でボロ儲けして、ついに湾商は朝鮮一の商団にのしあがったのよ。

それに比べて松商の社長は、てんでついてなかったよ。
帰ってきたそうそう逮捕されたの。密貿易がらみの湾商社長殺人事件の容疑者よ。
暗いオリの中で、社長は一晩神妙な顔して過ごしたわ。あら・・・。隣に座ってるのはチス様ね・・・
でもとりあえず、証拠不十分だったんで釈放されたのよ。

会社に戻ってみたら、今度は各方面の支店長からの抗議が相次いだわ。人参を安売りしたせいで、資金難にあえいでいたのよ。
支店長の中には、社長交代を望む声まで出ていたわ。こっそり仲間を集めて会議を開いてるようなの。
「支店長達の動きを見張れ!」
その気配を察した社長は、チス様を呼び出して、顔をキリキリさせながら指示を出したわ。

そんな時、あるお役人が松商の視察に訪れたの。若くて素敵なお役人様よ。
社長はさっそくご自慢の人参畑に連れてったわ。
ところがどうしたのかしらねえ・・・、お役人は感動するどころか、なんだか渋い顔してるのよ。
確かに畑は立派なんだけど、人参を叩き売りしたんじゃ意味ないのよ。せっかくの人参貿易独占権が、宝の持ち腐れなの。
サンオクは今回の儲けで、税金をたっぷりおさめたわ。国の財源の半分にもなる額よ。
なんなら松商の貿易権を優秀な商団に引き渡してもいいとまで言われてしまったわ。若いけど結構手厳しいのよ。

お役人は松商の屋敷に帰ると、引き続き今後のことについて社長と話をしたの。
ところが、しおらしく横に座っていた女が、意見を述べたいと言うのよ。
社長は止めようとしたわ。でもお役人のはからいで、女は遠慮がちに口を開きはじめたの。
聞いてみると、なかなかのアイデアだったわ・・・。どの商人も皆、人参人参って、視野が狭くなってることをズバリ指摘したのよ。
清国の人参は徐々に質が向上するはず・・・。それに対抗するには、今のうちに、他の物にも目を向けておかなければならない・・・
〜未来を見据えたこの女〜
お役人は、清楚ながらも頭の良いこの美女に、ただならぬものを感じとったわ。

「あの女は何者だ?」
話を終え、庭へ出たお役人は、さっそくコバンザメに尋ねたよ。
「官庁にいたユン様の娘、チェヨンです。松商の社長の配慮で奴婢でなくなりました・・・」
チェヨン・・・。サンオクにほのかな恋心を寄せながらも、彼を助けるために、松商の社長に身柄を預け、イカダに乗って去っていった悲しい女・・・

間もなく、チェヨンは部屋に呼び出されたよ。
お役人はチェヨンの父親のことを良く知っていたの。それどころか、随分尊敬してたのよ。朝廷の仲間達が立ち上がって、謀反の疑いをかけられたチェヨン父の名誉を、ちょうど回復してるとこだったの。

お役人から連絡を受けたチェヨンの親類が、すぐ松商に飛んできたよ。かなり前から探し回ってたみたい。
「この娘はソウルに連れて行く」
親類の男は松商の社長にこう告げると、嬉しさをあらわにしたよ。
あら・・・どうしたのかしら?社長の顔色が暗いわね・・・

その晩、松商の社長は暗い部屋にとじこもり、チェヨンとの日々を思い返していたわ・・・
それからチェヨンの部屋にも顔を出すと、ねぎらいの言葉をかけたの。
「辛い思いをさせたな。過ぎた日々は忘れるが良い・・・」
社長は別れを惜しむように、チェヨンから顔をそらしたよ。心に隙間風が吹いてるようね・・・

サンオクの縁談が決まったよ。サンオクの母さんの我慢も、もう限界だったのよ。
朝鮮一の金持ちになったし、そろそろ身を固めて欲しいってそれの一点張りなの。日取りも勝手に決めたわ。
母親の押しの一手がぐいぐいきているのを感じながら、サンオクは諦めきれずにもう一度お嬢様に会ったよ。

場所はお嬢様いきつけの個室だったわ。ロウソクの炎が一つだけ揺れているの。テーブルには気の効いた小料理も並んでるわ。
「夢中でしか愛せない我が運命・・・。夜ごとに行き違う夢・・・」
お嬢様はある詩を口ずさんだよ。夢の中でしか愛する人に会えないって意味らしいの。最初からこんな調子で嫌な予感がする中、お嬢様はその後も淡々と話し続けたよ。
サンオクは大きな商団を背負う人・・・皆の手本とならなければいけないのに、自分のために全てを投げ打つワケにはいかないのよ。
サンオクにも言いたいことは痛いほどわかったわ。残念ながら2人が結ばれて喜ぶ者は誰もいないのよ。松商の社長がサンオクの義父になるってのが、どうしてもネックなの・・・。
お嬢様は歯を食いしばって涙をこらえたよ。でもそのうち、とうとう耐え切れなくなって、辛そうにうつむいてしまったの・・・

サンオクが暗い夜道をトボトボと歩いて家へ帰っていたら、亡くなった社長の娘に出くわしたわ。
軽く会釈すると、控えめなその娘も、目を合わせないままお辞儀をして、通り過ぎていったの。母親が縁談を勧めている娘よ。

松商の社長はチス様を再び呼び出したよ。気になっていた支店長らの動きを把握するためよ。
「特に問題ありません。ご心配なく・・・」
チス様は顔を上げずに答えたよ。

ところが別の男から、社長の耳に気になる情報が入ったの。支店長達が集まって、こそこそ会合を開いてるっていうのよ。しかも社長びいきの支店長2名が、半月前から行方不明になってるの。
「ふざけておるのか!会合の首謀者を直ちに調べろ!」
社長はふがいないチス様を叱り飛ばしたよ。そしてひとまず支店長らを集めて、会議を開くことにしたの。

チス様が部屋をあとにすると、さっそくコバンザメ達が寄ってきたよ。
子分達を鋭い目で見据えたチス様は、いつもより緊迫した口調だったわ。
「社長が会合に気づいた。決行の日を早めるしかない・・・」

松商の社長は目を丸くしたよ。こんな遅くにお嬢様が部屋を訪れるなんて珍しいのよ。何か重大な話があるみたいなの。
「チスが支店長らに金を配り、手なづけたそうです」
どうやら首謀者はチス様だったようね・・・

会議の日がやってきたわ。上座は社長、その横がお嬢様、そして両サイドに支店長らが整列しているよ。
「社長、退かれる時が来ました」
チス様はいつもと変わらずしっとりとした口調で言ったよ。でも決して逆らえない雰囲気を漂わせているわ。
頭にきて社長が立ち上がると、急に障子が開いたよ。
現れたのは、腕っ節の強い男達を従えたコバンザメだったわ。コバンザメはドカドカと座敷に踏み込むと、振り返りもせずに男達に指示を出したの。
「連れ出せ!」
その瞬間、社長とお嬢様は、脇を抱えられて引きずり出されてしまったよ。
そして、社長の座っていた上座が、ぽつんと空白になると、その席にチス様が滑りこんだの。
ついにチス社長の誕生よ・・・
Posted by d_nose00 at 12:16  | 商道 あらすじ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月01日

「商道」35〜36

清国製の人参が薬材市に出回るという噂が流れたよ。
これじゃますます値下がりは避けられないのよ。

この緊急事態を受けて、松商の社長は威厳を込めて朝鮮の商団を一同に集めたよ。
人参の値段を、1斤105両から一気に70両に抑えて、ギリギリのとこで勝負に出たのよ。
でもサンオクは納得しなかったわ。あくまで正規の値段で売るって言い張るのよ。
良かれと思って一肌脱いだつもりの社長のアイデアは、おかげでお流れになったわ。
「サンオクめ、理性を失っておる・・・」
松商の社長は、いぶかしげな顔をしたよ。

でもチス様の頭には不安がよぎっていたよ。実際に清国製の人参を見たわけじゃないし、もう少し様子を見た方がいいんじゃないかって思ったのよ。
そんなチス様に、松商の社長がアドバイスを贈ったよ。
〜もう少しすれば正月になるんだ。そうなったら清国商人は、波が引くようにさーっと引き上げる。だから出来るだけ早く売った方がいい。サンオクは、そこんところがすっぽり抜けてるんだよねえ〜
チス様の表情が穏やかになったよ。どうやら納得したようね。

柳商の女社長の焦りはかなりの物だったわ。ことあるごとに、早く売れ売れって口やかましいのよ。自分の人参が入ってるから無理もないの。

それなのに、サンオクときたらどっかに出かけてしまって、しばらくアジトを留守にしてしまったのよ。
もったいつけて、決して理由を言わないの。どこに行ったのかしらねえ?

そうこうしてる間に、噂になっていた清国製の人参が、市場にようやくお目見えしたわ。
なんと40両と破格な値段なの。しかも量も半端じゃなくて、とても太刀打ちできそうにないのよ。柳商の女はサンオクがいない隙に値段を下げて売ってしまおうって、また息巻いてるわ。だけど湾商の部下が反対するんで、渋々、もう少しだけ辛抱することにしたの・・・

松商の社長は、頭の堅いサンオクのことは放っておいて、自分のところだけでもと、人参を安値で売ることにしたよ。
どうしたのかしら?談合していたはずの清国商人が、値段を下げた途端に、松商に群がってきたよ。どうやら単に値を下げるための作戦だったようね。
最終的に65両にまで下落したけど、一応全部さばけたんで、松商の社長は内心ホクホクだったの。

ところがそんな松商の社長の耳に、おかしな情報が飛び込んできたよ。
清国商人に売りさばいた自分の人参が、せっせとサンオクのところに運ばれてるって言うのよ。
ただでさえ、持て余してるはずなのに、買いまして一体どういうつもりかしら?
「サンオクの動きに目を光らせろ!」
社長はコバンザメ達に指示を出したわ。
チス様も警戒したよ。
「サンオクはそんな無謀なことをする男じゃない・・・。何か魂胆があるはず・・・」
でもいくら考えても、わからなかったわ・・・

人参を松商から安く買い取ったのにはワケがあるの。
サンオクは、噂の清国の人参とやらを一箱手に入れて、部下に見せたよ。
木箱から出てきたその干からびた人参をポキンと折ってみると、何と中はスポンジのようにスカスカだったわ・・・。こんなんじゃ、香りや効能が少ないはずなのよ。

実はサンオクは、このことに早くから気づいてたのよ。
出張に行ったのは、清の人参畑を見るためだったの。朝鮮の畑とは気候が微妙に違ったわ。繊細な人参の栽培には、適してるとは言えなかったのよ・・・

「新しく値段を提示する!」
ついにサンオクの重い腰が上がったよ。柳商の女社長の女も、期待で微笑んでいるわ。サンオクの話で、すっかり心が落ち着いたようね。
掲示板の前に、噂を聞いた清国商人や、松商のやつらまで、ざわざわと集まってきているよ。いくら値段を下げてくるか、見ものなのよ。
一人、部屋にこもったサンオクは、真っ白な紙の上に、墨を落としたわ・・・

「一斤、150両!」
サンオクが新に書いた紙が、掲示板に貼り出されたよ。
誰もかれもが驚いているわ。下がるどころか上がってるのよ・・・
もちろん誰も買う者なんていやしないわ。

でもサンオクの判断が正しければ、清国は今、この人参が喉から手がでるほど欲しいはずなのよ。
正月がせまってきて、ぼちぼち薬材市から清国商人が手を引くってことはわかってるわ。
そう・・・。チス様を納得させた松商社長のとっておきの情報は、すでに計算済みだったの。

「150両は決して無謀じゃありません」
チス様は社長にこう結論づけたよ。噂のスカスカ人参をようやく手にいれたの。
こうなると、ますます朝鮮の人参の価値があがるはずなのよ。

正月まであと1日・・・
さすがのサンオクも、清国商人がちっとも手を出そうとしないんで、焦ってきたよ。
それで、ふと和尚様のくれたお札のことを思い出したの。
そこにはとっておきの助言が書いてあるはずよ。
サンオクはついに一番目のお札の封を、ビリビリと破いてみることにしたよ。
「死」
不吉ねえ・・・。これが助言かしら?
でもサンオクは、小窓の景色が夜から朝に変わるまで、じっくりとその意味を考えてみたの。そして、やがて小さく頷いたのよ。すごいわねえ。何がわかったのかしら?

サンオクは値段を再提示したよ。
「1斤、160両!」
ますます値段が上がってるわ・・・。
噂を聞きつけて直々に登場した松商の社長の顔が、驚きに変わったよ。
掲示板の人だかりの前で、なんとサンオクがキャンプファイヤーをしてるのよ。
しかも見間違いじゃなければ、薪がわりに燃やしてるのは、朝鮮の最高級の人参よ。
サンオクはブチ切れた顔して、観衆の前でこれでもか、これでもかと火の中に人参を叩きつけてるわ。
どうやらサンオクにこうまでさせた「死」の真相は、死に物狂いってことのようね・・・

慌てたのは人参を欲しがってた清国商人達よ。とたんに欲望をあらわにしてきたわ。
「200両払う!」
サンオクの迫力に押されたのか、燃えた人参代もあわせた値段よ。不当に人参を安く買おうとした代償が高くついてしまったようね・・・

勝利を噛み締めるサンオクの目に、松商の社長とチス様の姿が映ったよ。
度重なる松商の社長のこの失態・・・。チス様の心に、暗雲が垂れ込めていたわ・・・
Posted by d_nose00 at 13:27  | 商道 あらすじ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月24日

「商道」33〜34

サンオクの家に突然見知らぬ中国人が現れたよ。
最初に対応したのは、サンオクと馴染み深いサダンペのおじさんだったわ。
カタコトの中国語をちょっとばかり得意げに口ずさんでみたの。
「こんにちは。あなたきれいですね」
相手はただのつるつる坊主の男よ。どうやらこのおじさんも他の連中と同じで、清に行っちゃ、くだらないナンパ言葉を覚えて帰って来たようね。

サンオクが戻って来たんで、おじさんの出番はあっけなく終わったわ。
サンオクはベラベラと教養溢れる中国語で、何やら重要な話をしたよ。
これはまだ極秘情報なんだけど、どうやら清で大規模な薬剤市が開かれるらしいのよ。


一方、清から来る使節の品をめぐって、役所では入札が行われていたよ。一番高い金額で落札した商団がその品を購入し、見返りに自分達の品を使節団に売ることが出来るのよ。
松商の社長は、落札した品を朝廷に納入して、さらに松商の威厳を高めようと企んでるわ。
柳商の女社長は、清との取引にむけて、あちこちから無い品を掻き集めていたよ。品数が足りず、社員のある男は、女社長に平手打ちまで食らったわ。前回、人参貿易権で散々だっただけに、ちょっとばかり気が立ってるようね。

でも実のところ、この度の入札はもう松商の手の中にあったの・・・。朝廷を牛耳るパク様に、すでに根回し済みなのよ。それに入札担当役人が、チス様のかつてのご学友らしくて、他の商団の入札額が松商に筒抜けだったの・・・

ところが松商の社長は、どうも腑に落ちない顔をしているよ。サンオクの入札額が低すぎなのよ。入札は見せかけだけで、何か企んでるとしか思えないの。それでサンオクの動きに目を光らせてみたら、役所で3万両もの大金を借りてることが判明したわ。うさん臭いわね・・・

予想通り、サンオクは、清の使節団のことなんて、眼中になかったの。どうせ松商が入札するだろうってことは、百も承知だったのよ。


サンオクは清の薬剤市で、人参を5000ほど売りさばくことにしたの。役所に申請して、すでに人参蒸工場をレンタルしたのよ。
あとは噂のカリスマ人参職人を手配するだけだったわ。引退して田舎に引っ込んでるらしいのよ。

サンオクはさっそく、その職人とやらに会いに行ったよ。
「お前らと話すことはない!」
ところがすぐ門前払いされてしまったわ。かなりの頑固じいさんよ。以前、雇われてた会社に使い捨てにされたらしくて、何か相当しこりが残ってる感じなの・・・

自分は金ではなくて人を残す商売をしたいんですって、サンオクお得意のフレーズをもってしてもダメなの。自分の野良仕事に精を出すばかりよ。

そうやって何日か経ったある日、枯葉が舞い散る地べたの上にサンオクが土下座していたら、足元にそっと何かが近づいてきたの。なんとじいさんよ。
「立ちなさい。あんたを信じよう・・・」
カリスマじいさんは、威厳のある顔でサンオクを見下ろしたよ。じいさんの心の扉がついに開かれたの・・・

清の使節団の入札は、松商がほとんどの権利を獲得したよ。柳商の女社長には酷な結果だったわ・・・
でも罰が当たったかのように、松商の社長の狙いは見事に外れたの・・・。独り占めした品をせっせと朝廷に納めようとしたんだけど、拒否されたのよ。担当役人がユン様に代わったからよ。ユン様は不正を一切認めない、竹を割ったような性格なのよ。さすがのパク様も、もてあまし気味なの・・・

ようやく松商側も、サンオクの狙いに気づいたよ。清で薬剤市が開かれるなんて、寝耳に水なのよ。
慌てて役所に人参蒸工場の申請をしにすっ飛んでったんだけど、全部サンオクに押さえられていたわ。それに松商で働いたことのあるカリスマ職人を起用してるってわかったの。カリスマじいさんの心にわだかまりを植えつけたのは、どうやら松商だったようね・・・

「人参蒸工場を作れ!」
松商の社長は見境を失ったように、大金を使って工場を建設したよ。相手がサンオクなんで、余計ムキになってるのよ。すぐに生産体制が整えられて、ホヤホヤの人参が順調に作られていったわ。

ところがこんな事があるものねえ・・・。あろうことか、大金を投資したその工場が火事で焼け堕ちてしまったのよ。とんだ災難なの。
「工場を立て直せ!」
社長は周囲の心配をよそに、また工場を建設し直したわ。でも諦めずに頑張ったおかげで、遅ればせながら、サンオク達の2日後には、清に出発することができたのよ。

チス様の耳に、悪い知らせが届いたよ。実は密貿易の真相を握る湾商の大行首が生きてたの・・・。てっきり柵門で始末できたと思ったのに、戻って来たのよ。
「社長も運が尽きたようですな・・・」
一連の事件を横目で見ていたコバンザメ達は、チス様にヒソヒソ呟いたよ。
チス様は目を小刻みに泳がせながら、コバンザメの言葉をひっそりと噛み締めていたわ・・・。


清に到着した松商は、人参を105両で売ることにしたよ。これは相場より10両高いの。密貿易が禁止されたから、これから値はグイグイ上がると読んだのよ。
社長直々に清まで同行して、かなり力が入ってるようね。

同じ頃、サンオク達も売値の相談をしていたよ。あら・・・?柳商の女社長もいるよ。サンオクに人参を提供したのよ。わりと元気そうで何よりだったわ。
サンオクは強気の110両の値をつけることにしたよ。なにしろカリスマ製だから、そんじょそこらの物とは品質が違うのよ。

さっそく市場の壁に、貼り紙を貼り付けてみたよ。ところが何日待っても、誰も寄り付きゃしないのよ。
サンオクもさすがに顔色が曇ってきたわ。3万両もの金をつぎ込んだのに、ここで失敗するワケにはいかないのよ。
松商も同じ状況だったよ。変ねえ。

サンオクは、薬剤市開催の情報を送ってくれた薬剤商の主人に面会してみたよ。
嫌な予感がするわね・・・。主人がなんだか面目なさそうな顔をしているよ。
それもそのはず、あれから重大な事実が発覚したのよ。
薬剤商達が、朝鮮から来た人参を買わないよう談合していたの・・・

Posted by d_nose00 at 10:14  | 商道 あらすじ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月17日

「商道」31〜32

柵門についたサンオク達は、さっそくチンと名乗る薬剤商を訪れたよ。
ところが人参120両の提示に対し、チンは90両ぽっきりしか出さないって言うのよ。
しかも随分と強気なの。
それもそのはず、すでに極上の人参をたっぷり手に入れてたのよ。密貿易なの。自慢げに証拠品も見せてもくれたわ。
しかも、お宅は人参諸経費がかかるし、資金繰りも苦しいでしょうなあって、事情通らしくて、痛いところをチクチク突いてくるのよ。
さすがのサンオクでも、渋々、赤字覚悟の90両で売るしかなかったのよ・・・・・



その頃、松商の社長は、政治の権力を操るパク様を屋敷に招いていたわ。どうやらキム様から乗り換えたようね。
「湾商のサンオクを知ってるかい?あんな鋭敏な男に会ったのは初めてだよ。今に大商人になるだろうよ。はっはっはっ」
パク様はご機嫌な様子でお喋りを楽しんでいるわ。
松商の社長は、泥を塗られたような気分でしょうね。でもなんとか取り繕って冷静な顔をじりじり保つと、一つ、あるお願いをしたの。
実はこれから清国の使節団が来るのよ。その折には、是非とも良きお取り計らいをってワケなの。パク様もまんざらでもない顔だったわ。

本拠地に戻ると、サンオクに煩わしい縁談が待っていたよ。母さんのお勧めは相変わらず湾商の社長の娘なの。まあ母さんも特に他に思いつかないのよ。
ところがサンオクったら、こんなめでたい話なのに何が不満なのか、すごく苦しそうにもがいてうつむいてるのよ。
とたんに母さんの穏やかな顔から笑みが消え、怒りに変わったわ。
「松商の娘だけは絶対にダメよ!」
実は、お嬢様の店に押しかけたあの夜の出来事を、よりによって近所の女達に見られてたのよ。女達はそれを、ちょいと母さんに告げ口したってワケなの。

お嬢様とサンオクは、あの晩、激論を飛ばしたわ。でもお嬢様は頑なに自分の気持ちを押さえ込んでばかりで、心を解くことはなかったの・・・・・
サンオクの胸の中に、柵門で会った湾商の元社長の言葉が渦巻いていたわ。自分の娘を嫁に貰ってくれって頼まれたのよ。

密貿易の知らせは役所に届いたわ。家宅捜査は松商にも及んだの。
でもサンオクは松商を疑ってないの。松商は正式な貿易権をすでに持っているし、何よりバレたら自分の首を絞めることになるのよ。そんなくだらないことするワケがないの。

松商の社長も一刻も早い犯人の逮捕を心待ちにしていたよ。密貿易に市場を牛耳られたら、こっちだって大損なのよ。
ところがチス様が、こっそり社長に真相を打ち明けたの。ろうそく1本の暗闇の中で、2人は濃い話を繰り広げたわ。チス様の狙いは、サンオクの出鼻をくじくことにあったのよ。
松商の社長のまぶたがピクリと動いたよ。そしてこの熱意ある若者に、最後に言葉少なにこう告げたの。
「下がれ・・・・・」
どうやら今聞いた事は、胸の中にそっと収める気ね・・・・・


サンオクは柵門にいる社長に手紙をしたためていたわ。お役人がてんで役立たずで事件が迷宮入りしそうなのよ。犯人はチリ一つ証拠を残してやしないの。

元社長は可愛い弟子のために、さっそく一肌脱いだよ。
犯人は簡単に尻尾を出したわ。例のチンの店に、密貿易の代金を頂戴しにイソイソやって来たのよ。
元社長は、すぐ大行首をサンオクの元に送らせると、自分は朝鮮から派遣されているお役人様のところへすっ飛んでったの。
でも、犯人が松商だと聞いても、お役人の態度は、あまり乗り気じゃなかったわ。どっちかっていうと、面倒くさそうなの。犯人を逮捕すれば、お手柄になるのに、どうしたのかしらね?

チス様の部下のコバンザメと、金物店の男はチンとの新たな密貿易のため、宿屋に滞在していたわ。
そこに、少し慌てた様子の訪問者が現れたの。
「大変だ!密貿易のことを気づかれた」
あら・・・・・?このお客の顔はどっかで見たことがあるわねえ。さっきのお役人よ。どうやらグルだったようね・・・・・
コバンザメは案外冷静だったわ。そして、こざっぱりした顔つきを、ますます淡白にして、こんなことを言い出すの。
「手を打ちましょう・・・・・」
お役人は不安そうに目をきょろきょろさせたよ。コバンザメの口の端が、意味ありげに微かに上へ持ち上がったわ・・・・・

まもなく、お役人に呼び出された湾商の元社長は、ひとけのない林の中へ連れて行かれたの。随分、寂しい場所で話をするのねえ。
ところがお役人の両脇に、突然、エスキモーみたいな帽子を被った豪腕の男達がずらりと肩を揃えたわ。
そして、そのまま湾商の元社長を刀で切り殺してしまったのよ。どうやら口封じのようね・・・・・

密貿易の犯人をサンオクに知らせるために旅の途中だった大行首も、同じ頃、似たような男達に囲まれていたわ・・・・・

湾商の元社長の訃報は、帰国したコバンザメからチス様の耳に、速やかに届けられたよ。
「役人を止めることが出来なかったんです。仕方がありませんでした」
コバンザメはイケシャーシャーと、無念そうな顔をしたよ。
チス様は絶句したわ・・・・・。まさか自分のせいで、師匠が死ぬなんて考えてもみなかったのよ。でも幾ら嘆いてみても、あとの祭りなの。
チス様は、涙を呑むと、静かに部屋に引き上げたわ・・・・・

サンオクにも知らせは届いたよ。捜査を依頼した自分を責めまくって、そりゃもうひどい悲しみようよ。大行首は行方不明のままで、サンオクはまだ真相を知らないの。

お葬式が開かれると、家族と共に淡い黄色の衣装を着たサンオクが、祭壇の横に並んだよ。
奥さんはショックで寝込んでいるわ。訃報を聞いた途端、ころんと倒れたの。指輪とかんざしを手にして、朗らかに笑っている時だったわ。贅沢を知らない夫が、珍しく柵門から送ってくれた物だったの・・・・・

屋敷の門のところで立ち往生してる人達がいるよ。チス様と松商の社長のようね。
実は松商の社長には、ちょっとばかり心に引っかかっていることがあったの。
元社長が殺されたのは5日前、そしてその頃には確かコバンザメが柵門にいたはず・・・・・

サンオクに許しを得て、ようやく2人は会場に通されたよ。
松商の社長は一瞬、驚きで体をのけぞらせたわ・・・・。なんと社長の自分を差し置いて、チス様がかつての師匠の眠る位牌の前で、ガックリ膝を落として泣き崩れたのよ。チス様は周囲の反応そっちのけで床に埋もれているよ。
そんなチス様を、サンオクが、カーッ!と睨みつけていたよ・・・・・
Posted by d_nose00 at 10:53  | 商道 あらすじ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月10日

「商道」29〜30

人参貿易権を見事獲得したサンオクは、一人、闇夜の中でほくそ笑んでいたよ。
松商の社長の屈辱的な顔を思い出していたの。
「見るがいい。貴様の富がいかに虚しいものかを・・・」
和尚様が聞いたらガッカリするでしょうねえ。

資金繰りが良くなったんで、人手に渡っていた湾商の社長の屋敷も取り戻したわ。
屋敷に戻った社長は、久しぶりに部下達の前に腰を下ろしたよ。
これで全てが元通りになったの。皆、それは嬉しそうに胸を弾ませたよ。
ところが社長の口から飛び出た言葉は、意外なものだったわ・・・
「今日から湾商の社長はサンオクだ!」
部下達は驚いているようだけど、社長にとっては当然のことだったの。ここに座るべき人間は、もう自分じゃなくてサンオクだと悟っていたのよ。
もちろんサンオクは、社長を差し置いて、のし上がる気はなかったわ。
でも結局は渋々引き受けるしかなかったの。社長が小荷物を抱えて、こそこそ旅立ってしまったのよ・・・


その頃、松商の社長は悔しそうにしていたよ。
今回サンオクが手に入れた人参貿易権は、松商全店を上回るほどの高利益を出すはずなの。
「やつをこのまま生かしてはおけん・・・」
サンオクの商才を惜しむばかりに、小さな芽を摘んでおかなかった自分を、心の中で責め立てたくらいよ。
そんな社長の耳に、さっそくサンオク昇進の知らせが入ったわ。

松商の社長は次の1手を打つことにしたよ。使いもしないのにせっせと人参畑を買い集めたのよ。
困ったのは京商だったわ・・・。せっかく人参1万の権利を手に入れたのに、これじゃ確保しようがないのよ。
そんな時に現れたのが、松商の社長だったの。4千分だけ権利を譲ってくれって言うのよ。救世主みたいな顔してるけど、実は横やり同然の汚い手口よ。
京商の社長は渋々、松商に権利を譲ったわ・・・

これで松商は湾商と同じ量を確保することに成功したのよ。
あとの作戦はチス様に任せたわ。チス様はこの度、商団2番手の座に上り詰めたの。チス様の隣にいるコバンザメみたいな男は、チス様の独断で図々しくも大行首に抜擢されたわ。

サンオクは、松商に取り上げられていた店舗や船団の運営権を取り戻すことに決めたよ。
かつて湾商が取り仕切っていた港の露店は、松商が利用料を引き上げて以来、物価高で実のところ、人気もなくなっていたの。
資金繰りに困った松商は、この際、魅力の無くなった店舗と船団の運営権を手放すことにしたわ。
そんな時よ。ちょうどサンオクがチス様の元を訪ねて来たのは・・・

「売る気はさらさらないね」
でもチス様は、商談を断ったよ。
なぜかしら?本当は手放す気満々の癖して、わざとじらしてるの。
何か企んでいるようね・・・

サンオクは柳商の女社長に頼んで、代わりに交渉してもらうことにしたよ。もちろん表向きは柳商になってるけど、あとでそっくり譲ってもらう気よ。手に入れやすいよう、柳商の露店の利用料を引き下げて、松商の露店の人気の降下ぶりに拍車をかけておいたわ。

「私の予想では、じき柳商の女社長が交渉に来るはずだ・・・」
そろばんをパチパチしながらこう呟いているのはチス様よ。なるほど一秒も経たないうちに、もう来たわ。すごい読みねえ。
交渉は上手く行って、まんまと運営権を手にし、柳商は引き上げて行ったよ。
でも思ったより高かったの。サンオクは2万とふんでいたのに、5千も上乗せされてしまったわ。
まあこれでやっとカタがついたんで、サンオク達は遅ればせながら、人参貿易の仕事に取り掛かったよ。
とりあえず5百ほど柵門で売るつもりなの。恐らくその町に行けば、湾商の社長にも会えるはずよ。

「表向きは柳商だが、店舗を買うのは湾商さ」
チス様は部下にそう自慢げに説明したわ。どうやら何もかもお見通しだったようね。
でも変ねえ。どうしてそんな余裕ぶった態度なのかしら?

あら・・・?チス様も柵門に大量の人参を運び込んでいるよ。
正規の割り当て分は、ちゃんと北京に持ってったのに、これは何かしらね?
実はこれ、密貿易なの・・・
サンオク達が遅れを取ってる隙に、価格の大暴落を引き起こそうってワケなの・・・

旅の前に、サンオクの母さんは、息子に結婚話を持ちかけたよ。頭にあるのは、湾商の社長の娘よ。
でも息子はやけに神妙な声で、こんなことを言うの。
「私には心に決めた人がいます・・・」
母さんは、まんざらでもなさそうな顔をして、この話を胸に仕舞い込んだよ。サンオクの色恋沙汰なんて、初耳なのよ。

夜も更けて、松商の絹屋の前に一人の男が現れたよ。店の中ではお嬢様が、そろばんを弾いて仕事に精を出していたわ。そのお嬢様の姿を、ある決意を顔に漂わせながら見つめてるのはサンオクだったの・・・
Posted by d_nose00 at 17:25  | 商道 あらすじ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月03日

「商道」27〜28

誰かが多額の懸賞金まで賭けてサンオクのこと探してるって言うんで、北京まで行ってみたら、いつか助けてやった芸子だったよ。ちゃっかり大富豪の妻の座にのぼりつめていたの。
女はサンオクに未練たっぷりだったわ・・・。お礼を受け取れってしつこいのよ。
それでもサンオクが頑なに断るとようやく諦めて、忍ばせていた手紙を差し出したわ。
ところが、してやられたわねえ・・・。あとで手紙を開いてみたら、銀2000両分の手形が入ってたのよ・・・


これでサンオクはこの辺りじゃ一番のお金持ちになったわ。
その話聞いて、湾商の社長の妻は、是非サンオクを娘婿にしたいものだと、ちょっとした欲を見せ始めたの。実のところ、最近の貧乏暮らしにはもうウンザリなのよ・・・

チス様は唖然としたよ・・・。目の前を通り過ぎていくやつれ果てた女は、あの湾商の社長の娘だったの。どうやら川で洗濯をしてきたらしくて、小荷物を脇に抱えてるわ。
自分が汚い手を使って湾商を潰した結果がこれなの。
よほど気になるのか、振り返っちゃ不憫な娘の姿に後ろ髪をひかれてるのよ・・・

それからまもなくして娘が家に帰ってみると、縁側に米俵が積まれていたの。
母親は、きっと夫の仕業だろうって、突然降って沸いた幸運に、すっかり浮かれてるけど、娘は複雑な表情よ。
そして、そんな貧しい親子の姿を、少し離れた木の陰から顔を出して、覗いてる男がいたの。そう。米俵の送り主、チス様よ・・・


待ちに待った湾商の社長がついに戻って来たよ。久しぶりに部下を集結させて、小規模ながらも得意の密貿易で、活動を再開させたわ。

ところがよりによって、その密貿易が、急に法で禁止されることになったのよ・・・
今までは国が黙認していたの。税収入の恩恵をちゃっかりこうむっていたからよ。
もちろん大事な収入源を、このまま見逃すはずもないわ。
対策は練ってあるの。あらかじめ4社に人参の貿易権を正式に与えとくのよ・・・
もしその4社から外れると、この先、朝鮮での商売は難しくなるわ。
湾商の社長は、この重大な任務をサンオクに任せることにしたよ。

一番取引量の多い会社は、1万、2番目は7千、3番目は3千、4番目は千と定められているの。
なにしろ湾商は密貿易が得意だから、実績からいえば一番なのよ。
でも実のところ、勝負はおえらい様の袖の下に入れるワイロ、それ1本にかかってるの・・・
「5万両だ!」
松商の社長はキム様へのワイロに、破格の額を提示したよ。今の時点では、京商と松商が、し烈なトップ争いを繰り広げてるわ。

決定権を持つ役人は2人いるの。キム様とパク様よ。
パク様の父の訃報が流れると、今度は俺も私もって、香典競争が繰り広げられたわ。

「一万両を!」
柳商の女社長は、目力を込めて部下に指示したよ。この勝負に賭けたようね・・・

「千両を・・・」
あら・・・?こっちは随分とケチねえ。しかも松商の社長よ。部下は、この大事な時になぜって、目を白黒させているよ。

サンオクは、この香典の動きにずっと目を光らせていたの。
どうも腑に落ちない点があるのよ。京商と松商が、そろいもそろって香典をケチってるの。何やら事情がありそうねえ・・・

調べてみると、パク様の弟が脱税事件を起していたの。とんだとばっちりなんだけど、パク様が、その座を奪われるのも時間の問題だったわ・・・
松商の社長らは、とっくの昔に見切りをつけていたってワケなの・・・。ドライな世界ねえ。

この情報を受けて、サンオクも遅ればせながらパク様に香典を送ることにしたよ。
香典を受け取り、目録の中を確認した係の男は動揺したよ。
でもサンオクはクールな顔して、スタスタその場をあとにしたの。
一体、いくら入ってたのかしら?

まもなくパク様からサンオクにお呼びがかかったよ。
「幾らくれるのかな?」
パク様は、まんざらでもない顔をしたよ。サンオクから貰った白紙の手形を手にしてるわ。
金額は、どうぞお好きなだけってことを意味しているの。

サンオクは、ある話をはじめたよ。それは、崖っぷちのパク様を救う方法だったわ。
パク様のライバル、キム様をワイロの罪で訴えるのよ。そうすれば、朝廷に功績を認められるだろうって言うの。
もちろん受け取った香典は、それまでに全て返却しておくつもりよ。いかにも自分はクリーンですって顔しとかなきゃ、揚げ足を取られかねないのよ。


いよいよ人参貿易権の発表の日になったよ。
その場にはサンオクや、松商の社長、その後ろにチス様もいるわ。
取引額トップは予想通り京商よ。松商の社長はいささか顔色が雲っているようね。でも内心、次には呼ばれるだろうと思ってるのよ。
「7000斤の取引量の商団は・・・湾商!」

ところが2番目は湾商だったの・・・。公正に審査された結果よ。松商はなんと3番目なの・・・。
気の毒に、香典代に一か八か賭けた柳商の女社長はめまいを起して倒れてしまったわ。
松商の社長は思わず顔をそらしたよ。満面の笑みを浮かべたサンオクと、目があったからよ。
お互い、これが何を意味するかわかってるの。
湾商復活への扉がついに開かれたのよ・・・
Posted by d_nose00 at 09:27  | 商道 あらすじ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年05月27日

「商道」25〜26

サンオクは1年間、柳商に身柄を預けて行商の旅に出たの。
荷物は重いし、寒さは痺れるしで、夜は焚き火で疲れた体を癒す毎日だったわ。
仲間の男が、ちょっとした自慢話を聞かせたよ。行商ひとすじ数十年らしくてプライドがあるのよ。内心、あんた新米だろ?って顔に書いてあるの。

その証拠に、サンオクの斬新なアイデアを柳商の女社長が受け入れたのを知ると、とたんに鼻息を荒くしたわ。この道数十年の男の意地が、柳商をやめるとまで言わせたのよ・・・
もちろん男はタカをくくっていたの。何しろこの道数十年の筋金入りだから、てっきり女社長が引き止めると思ったのよ。
ところがとんだ失敗だったわ・・・。あっさり退職を許可されてしまったのよ。

壁に手をもたれて、しょんぼりしていた男のそばに、サンオクが近づいてきたよ。
威勢を失った男は、サンオクのアイデアの良さに、今さらながら気づいていたのよ。
柳商は小さな商団なの。だからデカイ商売はできないけど、その利点を生かして小人数にわかれて小回りをきかせようってものなの。その方が、うんと効率がいいのよ。

「あんた、一体何者だい?」
恐れ入った男は急に身を乗り出したよ。ここぞとばかり、柳商の女社長はサンオクの正体を明かしてやったわ。
湾商の行首を務めたこともあるんだと聞くと、男は最後には満足そうに頷くまでになったの。

でも残念ながら、女社長が止めるのも聞かずサンオクは柳商を去ったよ。
1年経ったら、必ず湾商を再建するって社長の言葉が、まだ胸に深く刻み込まれていたのよ・・・


久しぶりに故郷へ戻ったサンオクは、さっそく社長の行方を捜したわ。
社長の娘と母親は貧しい小屋に引っ越していて、肝心の社長はどっか行方をくらましていたの。
サンオクに不安がよぎったわ・・・。心を患って亡くなってしまったって噂まで流れてるのよ。

社長を待ち続ける間、寺で薪を運びながら心を整理することにしたの。
そんなサンオクの姿を、木陰からのぞいて見ていた和尚様は、ついにサンオクを部屋に呼び出したよ。
和尚様の口から、意外な言葉が飛び出したわ。
ここはサンオクがいるべき場所ではないの。サンオクは商売をしていなければならないのよ。そうするうちに、真実が見えてくるの。

そう言って、和尚様は手元にちゃっかり用意していた黒い袋と、緑のおちょこを取り出したよ。
そしてある予言をしたの。
絶体絶命のピンチがこれから三度も訪れるらしいの。その解決策がなんとこの袋の中に入ってるのよ。だからそう簡単に開けて見ちゃいけないのよ。なんだか昔話みたいなお話ねえ。
おちょこはその中でも、一番最後の難関に使うらしいの。やけ酒でも飲むのかしら?


サンオクは松商のお嬢様と密会したよ。この1年でさらに想いが深まったようなの。
ところがお嬢様は、どうしてもダメの一点張りなのよ。
ここまでこだわるのにはワケがあったの。
今日はその秘密のベールがはがれたわ。
実はお嬢様は、松商の社長の娘ではなく、息子の嫁だったの・・・

木がうっそうと生え茂る林のそばで、お嬢様は語ったわ・・・。ちょうどオレンジ色の夕日が落ちてきて、シュチュエーションはバッチリなのよ。


まだあどけなさの残るお嬢様は、貧しい衣装に身を包み、慎ましやかにお茶畑で葉を摘んでいたよ。
そこに、今ではお嬢様の右腕となっているお馴染みの松商の男が訪ねて来たのよ。
なぜか男は娘を、ひとけのない空き地に連れてったわ。
娘が不思議そうにしていると、手を後ろに組んだ松商の社長がすでにお待ちかねだったよ。

「いいだろう・・・」
娘の顔をちらりと見た社長は、それだけ言うと引き上げたの。
人の顔を勝手に見といて、えらそうにいいだろうとは、どういうことかしらねえ?

仕事を終えて、いつものように帰宅した娘の目に飛び込んできたのは、家の前に積み重ねられた4ぴょうの米俵だったわ。まるで正月が来たみたいに浮かれてるのは、幼い兄弟達よ。かと思えば家に入ってみると、母さんが悲しそうに涙を浮かべてるのよ。
そう・・・。娘は米4ぴょうで売られたのよ・・・

娘は松商の社長の息子と結婚式を挙げたわ。
ところが式の最中からどうも婿の様子が変なの・・・。
「ゴホーッゴホーッ・・」
なんと血を吐いてるのよ・・・

それから何日経っても、夫は妻の部屋に近寄りゃしないの。
それどころじゃなかったのよ・・・。今も下働きの女がせっせと煎じ薬を寝室に運んでるわ。

10日目、シビれを切らしたお嬢様が書物に目をやっていると、突然障子を開けてふらりと夫が入ってきたよ。
か細い体つきの夫は、お嬢様に腹を割って話をしてくれたよ。
松商の社長と違ってすごくデリケートで素朴な人なの。
この結婚は、死んでいこうとしてる息子のために、最後に一花咲かせようと、社長が仕組んだらしいんだけど、結果的にお嬢様を苦しめることになってしまって、大変申し訳ないって謝ってるのよ。
言い終わると、そこで一服でもしていくのかと思ったら、夫はまた幻のように姿を消してしまったわ・・・

お嬢様はある決意をしたの。妻として、せめて薬だけでも自分の手で渡そうと思ったのよ。
さっそく下働きの女から煎じ薬の入ったお椀を取上げると、部屋に入ったわ。

でも手遅れだったの・・・。すでに死んでたのよ。
紙の上に顔をうつぶせにして口から血を流し、その血が白い紙の上で赤く染まっていたの。まるで殺人現場のような光景だったわ・・・

こうして今のお嬢様が誕生したのよ。


それでもサンオクは諦めきれずに、お嬢様のおつきの男にラブレターを手渡したの。
人の気配がして、お嬢様はとっさに受け取った手紙を、引き出しへ仕舞い込んだわ。

日もとっぷりと暮れてから、2人はまた密会したの。
サンオクの熱意におされるように、お嬢様はサンオクとついに抱き合ったわ。

だけどそのあとサンオクは突然の襲撃を受け、うんと痛い目にあったよ。実は松商のワル男に監視されていたの・・・
Posted by d_nose00 at 13:45  | 商道 あらすじ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年05月20日

「商道」23〜24

牢に閉じ込められた社長とサンオクは、身動きとれずにかなり切羽詰っていたよ。せっかく冬至の使節団のために全財産をつぎ込んだのに、参加できないどころかこのままじゃ、店舗まで根こそぎ取られるのよ。

サンオクが下した決断は、周囲をあっと驚かせたわ。
取調べの席で、なんと罪を認めたのよ・・・
せめて社長だけでも釈放してもらって、商団を生かす方を選んだの。

チス様の元に、ワル男がバタバタと駆け込んできたよ。湾商に致命傷を与えるはずが、とんだ抜け穴があったのよ。
「今度は何を企んでる?」
聞かれてもないのにチス様がワル男に話をうながしたよ。ワル男は待ってましたとばかりに、次の計画を耳に吹き込んだわ。米事件の噂を民衆に流しちゃおうって作戦なの。

この期に及んでチス様は、ちょっとやり過ぎなんじゃないかって戸惑いを見せたよ。なにしろ社長に内緒で事を運んでるのよ。
でも一度弾みをつけたワル男の勢いは、尖ったナイフのように不気味さを増していくばかりで、もう止められなかったのよ・・・

すぐ噂は広まって湾商の評判はがた落ちになったわ。
湾商の社長は解決策のために、無料で米を施すことに決めたの。また痛い出費よ。

今回ばかりは松商の社長には世話になったわ。湾商に米を貸してくれたのよ。
湾商のメンバーが帰った後、腑に落ちない顔をするチス様に、松商の社長が冷静にこう答えたよ・・・
「どうせ倒れる相手の首を絞めるのは愚かなマネだ・・・」

でも余裕たっぷりだった松商の社長が一転、今度はぶち切れたよ。米騒動の真犯人像が浮かび上がって、チス様の仕業とわかったの。
もちろんチス様はこっぴどく怒られたわ。社長が言うには、卑怯にも卑怯なりのわきまえってのがあるらしいの。それにもし役人にこのことがバレたら、火の粉がこっちに飛ぶのよ。

そんな松商の社長のところに、一人の女が訪ねて来たよ。
サンオクに想いを寄せてるチェヨンよ。彼女の踊りを一目見てからというもの、社長は気品漂うこの女の世話を是非してみたいものだと常々考えていたの。
女は社長にある頼みごとをするために、ここへやって来たのよ。

頼みごとを終えたチェヨンは、松商のイカダに乗せられて、寂しげな目をしてこの町を去って行ったわ。サンオクの救出と引き換えに、自分の身柄を松商に預けることにしたのよ・・・


まもなく松商の社長が、おえらい役人を訪ねたよ。
お役人は、どうもサンオク達は犯人じゃないような気がするって、首を傾げているところだったの。
もし陰謀だとしたら、湾商を潰して利益を得られるやつの仕業じゃないかって、なかなか鋭い読みをみせてるのよ。
まずいわねえ・・・。顔色一つ変えずにご機嫌伺ってるように見えるけど、実は松商の社長も内心、ヒヤヒヤしてるのよ。

そこでここぞとばかり、松商の社長はある話を切り出したよ。
都にまで報告が行くと、お役人様の足を引っ張ることになるだろうから、さっさと事件を片付けて、サンオクを釈放してはどうかって言うの。
役人の男は一理あるとみえて頷いたわ。これからちょうど都へ華の転勤が決まってるとこだったのよ。
これで終わりかと思ったんだけど、社長はうやうやしい表情で、もう一つ、ある願いごとを口にしはじめたよ・・・
どうやらこっちが本題のようなんだけど、一体何かしらね?

屋敷に戻った松商の社長は、部下に冬至使節団の商品の仕入れを増やしておくよう指示を出したわ。
皆、不思議そうにしてるんだけど、松商の社長は今にわかるって、そっと胸の奥にしまってるのよ。


突然、湾商の社長が例のお役人に呼ばれたよ。サンオクを助けてやるからワイロをくれって、あからさまに要求してくるのよ。しかも百両単位じゃすまない額よ。

役人はまんまと袖の下に、それ相当の金額の書いた小切手をするりと滑らせたわ。
湾商の社長が、生まれて初めて自分の信条を破ったのよ。

米の施しとサンオクの保釈金で、湾商はますます窮地に陥っていたよ。
でもサンオクが戻って来たんで、冬至の使節団の準備が再開されたの。
これさえ上手く行けば、難関を乗り越えられるのよ。

でもまたお役人から呼び出しがかかったの。今度は何かしらねえ?
お役人は、湾商の社長に朝廷からの命令を淡々と伝えはじめたよ。

社長は耳を疑ったわ・・・。冬至の使節団から外されたのよ・・・
多額のワイロについで今回の駄目押し・・・どうやらこのからくりの裏には、松商の社長が深く絡んでるようね。

帰り道、湾商の社長は川べりに立って景色を眺めていたよ。
そのうちに、頬から一筋の涙がこぼれてきたの・・・
これまで仲間達と築き上げてきた熱い思いが、胸いっぱいに広がってるようね。
湾商は、ついに倒産したのよ・・・

湾商の店舗に、松商の人間をゾロゾロ従えたチス様がやって来たわ。
チス様は笑みを浮かべてるし、ワル男は他人の店の前で、えらそうに資料をペラペラめくってるの。
湾商の店員たちは、不満げな顔してザワザワと集まってきたよ。
チス様は紙切れを見せびらかすように前に差し出すと、堂々とこう告げたわ。
「松商がこの店を引き取った!」
Posted by d_nose00 at 11:38  | 商道 あらすじ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年05月13日

「商道」21〜22

湾商の社長は、部下を連れて松商へ繰り出したよ。
ついに返済の期限が来たの・・・。払えなければ、船団の運営権を譲るってことになってるのよ。

松商の社長が庭に出てきたよ。用件は重々承知よ。ノドから手が出るほど欲しかったあれが、いよいよ手に入る瞬間なのよ。
「船団の運営権を・・」
言いかけて、湾商の社長は、ふと口を閉じたよ。
旅から戻って来たサンオク達が、急に駆けつけて来たのよ・・・

サンオクは、2400両分の銀をその場で払ったわ。
「確かめて下さい」
湾商の社長は、何食わぬ顔をして言葉をすり替えたよ。
その瞬間、松商の社長は、全てを悟ったの・・・
船団の運営権の約束を交わした夢の証書を、目の前でビリビリと破かれたのよ・・・

サンオクは、事の成り行きを説明したよ。
チス様がもてあましていた魚を、残金で買い占めて利益を得たのよ。
この大活躍で、サンオクは行首に昇進したわ。

そうは言っても、ピンチを完全に脱したワケじゃないの。密貿易の渡し場は、まだ閉鎖されたままで、足踏み状態だったのよ・・・

ちょうど、清に派遣される冬至の使節団の季節がやってきたんで、この機会を利用して一儲けして、朝鮮全土に商売を広げようとは思ってるのよ。

各商団の代表が、都に集められたわ。扱う商品の銘柄と量は、お役人が決めるのよ。
その場にはサンオクや、例によって、お嬢様も来ていたわ。お嬢様は、この度昇進して、松商の社長から大役を任せられたのよ。

お嬢様の背後から、サンオクがそっと声をかけたよ。
折り入って話があるから、ちょっと夜、抜け出して来てくれって言うの。この重々しい雰囲気は何かしらね・・・?

サンオクは、もう自分の心に嘘をつくのをやめにしたの。
松商の社長への憎しみから、これまで抑えよう、抑えようとしてたんだけど、お嬢様のことが好きなのよ。

だけどお嬢様は、ある時はサンオクに近づいて来たかと思えば、手を差し伸ばそうとすると、すぐ波のように引いてしまうの・・・
お嬢様自身も、実は胸が張り裂けそうだったのよ。決して結ばれてはいけない・・・あんなひどいことをしたのに・・・。そんな風に自分を抑えていたの。

案の定、サンオクと密会しつつも、お嬢様はこの日も、後ろ髪をひかれながら、スタスタと逃げていったわ・・・


チス様も、湾商の娘と密会していたよ。
チス様のことを忘れられなくて、娘が押しかけて来たのよ。
裏切り者の自分が、これ以上、お嬢さんを傷つけるワケにはいかない・・・
チス様は、苦し紛れに、娘から顔をそらすばかりだったわ・・・

湾商の社長は、あることを考えていたの。チス様の代わりに、サンオクを婿にする気よ。4人の恋模様には、問答無用なの。


いよいよリストを持ったお役人達が、各商団の前に現れたよ。
松商は、どの商団よりも、一番多くの量を獲得したわ。ござ、絹、虎の皮、金物、そんなたぐいの物よ。

一番最後に、湾商の取り分の発表があったよ。
ところが驚いたことに、どの商団よりも、一番少ない量だったの・・・。これじゃ、市場の商人並なのよ・・・


とんだお粗末な結果に、湾商の社長は焦りの色を見せ始めたよ。
そして、ある大勝負に出たの・・・
なんと、他の商団の分を譲ってもらって、一攫千金の大商団を結成するのよ。

サンオク達は、止めようとしたのよ・・・。いくらなんでも無謀なのよ。
品物を集めるだけでも2万5000両は必要なの。松商に返済する2500両でも、あんなにバタバタしたのに、一体どうするつもりかしら?

サンオクの心配をよそに、社長は2万5000両をさっさと確保してしまったよ。
店舗や船団の運営権を担保に入れたのよ。

社長は正気を失っている・・・

不安に襲われながらも、サンオクは言わるままに、仕事をこなして行くしかなかったわ・・・

サンオクは、船での仕入れのため都へ行ったよ。
そのついでに、役所に頼まれた救援米を運んであげたの。非常食なのよ。

ところがこの米を利用して、一儲けようとする悪徳商団がいるらしいの。米の中に米や水をこっそり加えて、量増しするのよ。

松商の中でも一番ワルそうな顔したやつが、ここに狙いをつけたよ。
湾商の米の中に、ちょいと砂を足しといてやろうって、お世話な作戦なの・・・


突然、湾商の屋敷にお役人がバタバタと駆けつけて来たよ。
なんと社長とサンオクが逮捕されてしまったのよ・・・
Posted by d_nose00 at 10:40  | 商道 あらすじ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年05月06日

「商道」18〜20

息吹を吹き返しつつある湾商・・・松商の社長はここでチス様にゴーサインを出したよ。
再び伸び始めた芽を、根腐れするまで踏み潰す気なの・・・

サンオクは紙を買い占めて、一儲けしようと考えていたよ。近々、科挙の試験が行われるから確実に値が上がるはずなのよ。松商さえも知らない極秘情報なの。


サンオク達は、紙を仕入れに旅に出ることにしたよ。
チス様は気が気じゃなかったわ。サンオクの動きが、さっぱり読めなかったのよ。
警戒したサンオクが、全て極秘に事を運んでいたからよ。

そんな時、湾商の絹屋の男がチス様に呼び出されたよ。一体何の用かしら?
この男を買収する気なの。
絹屋の男は、あっさり袖にワイロを滑らせたわ。
実はこの男、今借金まみれだったのよ。もちろんチス様は、ちゃんと知ってて弱みにつけこんだのよ・・・

サンオクは、旅立ちの前にようやく仲間達に計画を公開したよ。
うさん臭い目つきになった絹屋の男は、すぐにコソコソと松商に足を忍ばせたわ。


報告を聞いたチス様は、綿密な計画をひねり出したよ。まず紙の原料を買い占めることにしたの。

サンオク一行は、都に着くと、紙の製造業者を手当たり次第に回って、注文しまくったわ。原料の相場で日によって、多少の値段の違いはあるものの、それも、びびたるもんらしいの。


ところが驚いたことに、紙が出来たって言うんで、取りに行ってみると、値段が一気に跳ね上がってたのよ。これじゃまるきり話が違うわ。
紙の製造業者でさえ、こんな事は始めてだって、目を白黒させてるくらいなのよ。不思議なことに、原料の価格が突然、高騰したのよ・・・


でも科挙があるから、それでも何とか利益は残せるはず・・・。サンオク達は気を取り直して、都の試験会場へ足を伸ばしたよ。

予想通り、宿屋は科挙を受けに来た男達で、わんさかしてたわ。これが全部、金のなる木だと思うと、サンオク達はもう笑いが止まらなかったよ・・・


その頃、チス様は第2段階に進んでいたの。なんと科挙を中止させる気よ・・・
戦乱の噂を流すのよ。その前に、ワラジを買い占めることを決して忘れちゃならないわ。
戦乱の時には、ワラジがバカ売れするのよ。サンオクをむしばんでいく一方で、確実に利益を吸い取って、がっちり儲ける気よ。一粒の取りこぼしもないの。

まもなく都は大騒ぎになったわ。当然、科挙どころじゃなくて、紙の値段もどんどん下降していくばかりなの。
仲間達は、早く紙を手放した方がいいんじゃないかって、サンオクをけしかけたよ。でもサンオクは、噂の真相を確かめようって、ぐずぐずしてるのよ。

ワラジで一儲けしたチス様は、部屋の一室で、静かにそろばんをパチパチはじいていたよ。全てはデーター通りのようね・・・

次は第3段階よ。サンオクから紙をなるたけ安く買い叩いて、戦乱の噂がデマとバレた途端に、値を一気に吊り上げるつもりなの。


本部で連絡を待っていた湾商の社長の元に、悪い知らせが入ったよ。
松商が2500両払えって、手形の回収に来たのよ。各店舗から現金を掻き集めてみたんだけど、全然足らないの。

湾商の社長は、松商の社長に一ヶ月だけ待ってもらうよう頼み込んだよ。サンオクが紙を売って帰ってくれば、まとまったお金が手に入るはずなのよ。

松商の社長は特別に了承してくれたよ。なぜならサンオクが商売に失敗するって知っていたからよ。もちろん今この時期に、手形を回したのも全て狙い通りだったの・・・

湾商の社長の元に、サンオクからの手紙が届いたよ。
商売が上手くいってないって知らせなの。これまずいわねえ・・・


町の様子を見物していたサンオクは呆然としたよ。俺も私もって、皆、争うように草履買ってバタバタ避難していくのよ。

紙の値段は下がる一方なんで、サンオクはついに見切りをつけて、紙を問屋に全て売り払うことにしたよ。
でもサンオクが入っていったその問屋、実は松商の店だったの。サンオクが紙を手放すのを、チス様が背後で、今か今かと首を長くして待ってたのよ・・・
サンオクは、そのクモの巣に、まんまと引っかかったってワケなの・・・


1500両も損したサンオクは、店からとぼとぼ出てきたよ。
ところがその時、サンオクの子分が、切羽詰った顔して駆けつけて来たのよ。なんと戦乱の噂がデマだったって、今頃わかったの・・・

サンオクは、大慌てで紙を買い戻しに行ったわ。
ところがほんの数分前まで2銭1文だった紙が、もう5銭になってたのよ・・・

おかげでサンオク一行の所持金は150両足らずになってしまったよ。
サンオクはこのわずかなお金で、何としてでも利益をあげて、本部に戻らなければ、立つ瀬がないのよ。どうするつもりかしら?

でも子分の一人が、あることに気付いていたの。さっきの問屋の店員の顔ぶれの中に、絹屋の男とコソコソ立ち話してたやつがいたのよ・・・

チス様と内通していたのがバレた絹屋の男は、ワラ布団に柏餅みたいにくるまれて、拷問されたよ。
もともと悪いやつじゃないから、かなりしょんぼりしてたわ。


チス様は、相変わらずソロバンをパチパチとはじいていたよ。紙を高値で売った利益も足すと、これでしめて3000両以上の儲けになったの・・・

遠出したついでに、今度は正月用の生魚を押し目買いして、さらに利益を伸ばす気よ。
本当は魚は大手企業が取り扱う商品じゃないんだけど、根こそぎ買い占めるつもりなの。
そこらの小さな商店が潰れようが、知ったこっちゃないのよ。


そんな銭のことしか頭にないチス様のところに、絹屋の男が訪ねて来たよ。
「この男、味をしめたな・・・」
チス様は内心そんなことを思いながら、絹屋の男を快く迎えたよ。
すっかり気を許したチス様は、この絹屋の男にこれからの計画をベラベラ話して聞かせたよ。

予定通り、チス様は、ニベとイシモチの仕入れに取りかかったわ。
でも今回ばかりは少し難航したのよ。古い行商人との付き合いがあるからって、なかなか譲ってくれないのよ。

それでもチス様は高値で、ごっそり買い占めを強行したの。
ちょっと無謀なんじゃないかって、チス様の部下達は、顔色を変えはじめたわ。
さすがのチス様も、チラッと顔に焦りを見せたんだけど、正月用だからどうせ利益がでるだろうってタカをくくったの・・・


ところが変なの。いくら駆けずり回っても、肝心の輸送用の船が一隻も手に入らないのよ。何者かに、先に予約を押さえられたのよ。
よりによって魚は全て生よ。このままじゃどんどん腐ってしまうわ・・・

冷静に判断を下したチス様は、魚を元通り、行商人達に、安値で手放すことにしたよ。
せっかく儲けたうちの2000両が、これでムダになったの・・・

まあこれはこれで割り切ろうって、チス様もある程度、納得してたんだけど、ある光景が目に入ってきて、そんな思いは吹っ飛んでしまったわ。

なんと行商人達が、チス様から買い取った魚を次々と船に運び始めたのよ。

そして満足そうにその様子を見つめていた船の持ち主は、サンオクだったの・・・

Posted by d_nose00 at 13:38  | 商道 あらすじ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年04月28日

「商道」16〜17

サンオクの公金着服事件は、ついに社長の耳にふれたよ。
皆、これからサンオクに襲いかかる運命に興味津々だったわ。クビはまず間違いないだろうって口々に噂してるのよ。

社長は、おとぼけ男の顔をじろりと見たよ。もしやこの男が一枚噛んでるんじゃないかって考えが頭をよぎったの。でも首を横に振ったわ。おとぼけ男に200両使い切る肝っ玉はないとみたのよ。
ということはやはり犯人はサンオク・・・

一通り事情を聞いた社長は、サンオクにズバ!っと指を差したよ。ついにクビを宣言する時が来たようね。
「お前、今日から書記をやれ!」
あら?何かの聞き間違いかしらねえ?なんと華の昇進よ。しかもいきなりチス様のポストなの。チス様が置手紙を残して松商に移ったとこだったから、ちょうど良かったわ。


社長はさっそくサンオクに任務を与えたよ。湾商のピンチを救う方法を探れって、しょっぱなから荷が重いのよ。

サンオクは、渡し場が封鎖されたんなら、別の渡し場で取引してはどうかって提案したよ。
でもそれにはちょっと問題があったの。資金が底をついてたのよ・・・

でもちゃんと資金をゲットする方法も考えてたみたい。さすがね。
絹屋で抱えてる在庫を一斉処分するのよ。もちろん資金集めが目的だから、そう高い値段をつけるわけにもいかないの。せいぜい12両くらいよ。
ちょうどいい具合に、宮中の買い物係の男が、絹を買いに町に来てるのよ。

ところが買い物係の男は、松商の屋敷に入ってしまったよ。どうやらごひいきみたい。毎回、取引とは別に、松商が袖の下にワイロを滑らせるのが気に入ってるようなの。
これじゃ、さすがのサンオクでも交渉すらできやしないのよ。

あら・・・?松商の社長がしばらく旅に出るみたい。留守を預かって取引を任せられたのはお嬢様よ。
社長は、取引を必ず成功させるようにって、お嬢様に念を押したわ。実は絹の在庫がたっぷり余ってて困ってたのよ。でもいつもの調子でいけば軽いもんね。


松商を訪れた買い物係の男は、小慣れた顔して、お嬢様にさっそくワイロを要求してきたよ。
ところが今回ばかりはちょっと雲行きが怪しいの・・・。お嬢様が断固ワイロを拒否したのよ・・・


思わぬところにサンオクに幸運が転がってきたよ。買い物係の男が、湾商に気を向けてきたのよ。
サンオクは、この隙を利用して、買い物係の男を、ある宿屋へ誘導したの。

買い物係の男達は、個室に腰を降ろすと作戦を練り始めたよ。実は早いとこケリをつけて絹を持って帰らないと、まずいみたいなのよ。

その男達の会話を一部始終、障子越しに、耳をそばだてて聞いてる男がいたよ。サンオクよ・・・。そこはサンオクの母親が経営する宿屋だったのよ・・・


買い物係の男は、松商と湾商とで競争入札させることにしたよ。安い値をつけた方から絹を買おうってワケなの。

お嬢様は、明日の入札のための作戦会議を開いたよ。松商はこの入札に何が何でも勝つ必要があるのよ。もし湾商が資金源を手にしてしまったら、今までの苦労が全部水の泡になるの。船を燃やしたり、人参畑を荒らしたり、波止場の封鎖までして湾商を妨害してきた、あの苦労よ。
部下はお嬢様に、原価ギリギリの6両を提示しようって意気込んだわ。

「5両だ!」
その頃、湾商の社長はサンオクにこう指示を出していたよ。どうやら松商の一歩先を読んだようね・・・


そして入札の日が訪れたの。
最初にお嬢様、次にサンオクが個室に入って、入札額を記入したわ。
係の男は、さっそくお楽しみボックスを開けてみたよ。安ければ安いほど、こっちはボロ儲けなのよ。

ところが買い物係の男の当ては外れたの・・・。どうしたことか、お嬢様もサンオクも12両を提示してきたのよ。これじゃ、まるで試合放棄ね。

係の男は、もう1度だけチャンスを与えることにしたよ。明日また入札をやり直すのよ。

途中経過を聞いた湾商の社長は、どういうつもりで12両にしたのか、サンオクに質問したよ。
ところがサンオクったら、決して口を割ろうとはしないの。私にお任せくださいって、やたらもったいぶってるのよ。

そして次の日が来たの。
どれどれ今度こそって、係の男は入札額をさっそく開いて見たよ。
ところがお嬢様はまた12両なのよ。サンオクにいたっては13両に値上がりしてるわ。バカにしてるのかしら?

係の男は決断に迫られていたわ。
それで結局、お嬢様の提示した12両で、500ほど注文することにしたの・・・


社長の屋敷に戻ったサンオクは、非難の的だったよ。資金源を確保しなけりゃならないって時に、13両だなんて威勢のいいこと書くから墓穴を掘ったのよ。会社を潰す気かしら?

ところがその時、松商からお迎えが来たよ。
なんと湾商の絹を12両で250ほど買うって言うのよ・・・

「どういうことか詳しく説明してくれ!」
湾商の男達にねだられて、サンオクはようやく重い口を開いたよ。

実は、お嬢様とあらかじめ談合してたの。双方が赤字覚悟の値段をつけていては、欲の皮の突っ張った買い物係の思う壺だって思ったのよ。
しかもサンオクは、あの男が、実はノドから手がでるほど絹を欲しがってるんだってことに気づいてたの。それでお嬢様としくんで、儲けを半分こにしたってワケなの。


松商の社長が、あーやれやれって出張からようやく戻って来たよ。
ところが留守の間に、事態はすごいことになっていたわ・・・。湾商が息を吹き返すための資金をゲットしてたの・・・
お嬢様はこっぴどく怒られて、役職から外されてしまったよ・・・
Posted by d_nose00 at 22:15  | 商道 あらすじ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年04月22日

「商道」14〜15

「説明してくれ!」
おとぼけ男のいつものパターンにあおられて、サンオクは種明かしをしたよ。詩には、国を征服されてやむなく清につかえた男の、寂しげな心境がつづられていたわ。征服された国ってのは明のことよ。
この詩が、店長の心にグサッときたようなの。なぜかしら?

そう・・・。店長は明の子孫だったのよ。
この土地で屈辱に耐えながら、巨万の富を築いてきたの。
サンオクは店内の雰囲気をひと目みるなり、店長が明出身だってことを見抜いていたの。鋭い洞察力ね。あなどれないわ。

店長は、サンオクがよほど気に入ったとみえて、2百両をプレゼントしたよ。サンオクに投資するって言うのよ。店舗が2つは持てる大金なの。

その晩、サンオクとおとぼけ男は遊ぶことにしたわ。おとぼけ男がどうしてもって誘うもんだから、渋々、いかがわしい店に入ったの。

サンオクの部屋には、初々しい一人の女があてがわれたよ。
でもなぜか泣いてるのよ。どうやら今日が初日らしくて、話を聞いてみると、すごくかわいそうなの。酒飲みの父さんに売られたのよ。
サンオクは、この娘を店から救ってやることにしたよ。妹の映像と重なったのよ。

ところが、交渉にあたった店の女は欲の皮がしたたっていたわ。とびきりの上玉だから200両出せって言うのよ。なぜかちょうどサンオクが貰った額と同じね。

サンオクは200両を娘のために、全て一晩で使い切ってしまったよ・・・

一方、おとぼけ男の部屋にも一人の女が現れたよ。
「こんばんは。お前かわいいな」
おとぼけ男は大喜びしたよ。なるほど、例の中国語はここでいかされてるようね。
ところが、女の後ろから突然、大柄の男が現れて、おとぼけ男をボコボコに殴ったの。
俺の女だって怒ってるのよ。店員がバタバタと慌てて駆けつけて来たよ。どうやらお店の手違いだったみたい。ついてないわねえ。


湾商では大騒ぎになっていたわ。大事な船と荷物がいきなり炎上したのよ。かなりの損失よ。
あら・・・?その現場に犯人と思われる男が戻って来たよ。
満足げに見つめてる男らは、松商の部下のようね・・・


チス様は、社長の娘との結婚の約束をあと3ヶ月引き伸ばしてもらったの。
親が反対してるって理由よ。
その裏で、こそこそと松商の屋敷に顔を出していたわ。

チス様は、一枚の紙切れを松商の社長に手渡したよ。
何か四文字熟語が書かれてあるようね。
松商の社長は納得した様子よ。

これで話は全てついたの。チス様は松商側の人間になったのよ・・・

熟語は、賢い鳥は木を選ぶって意味らしいの。もちろんせんえつながら、賢い鳥ってのはチス様が自分自身のことをたとえたものよ。

松商の社長は、さっそくチス様に大仕事を任せることにしたよ。
スパイとして湾商を潰す方法を探らせるつもりなの・・・

チス様はいくらなんでもって動揺したわ。だけど社長には考えがあったの。最初にうんと悪どいことをやっとけば、湾商への思いが吹っ切れるだろうっていうのよ。
そうやって若い芽を育てておいて、いつかその汚いやり方で、飼い犬に足を噛まれることのないよう、くれぐれも気をつけて欲しいわねえ。


社長が睨んだ通り、最初は苦悩の色を浮かべてたチス様は、いったん手をつけはじめると開き直ったような顔になったの。
全店舗から帳簿を掻き集めて、自分の部屋に溜め込んであれこれ調査してるのよ。

データが全て揃うと、チス様は速やかに松商の社長に報告を済ませたわ。
湾商を握り潰す方法が見つかったのよ。

松商の社長は、おえらい役人を豪華な夕食に招待することにしたよ。

役人達が、湾商が営業してる港一帯を一掃しはじめたのはまもなくのことだったわ。
湾商と取引しようと清から来た商人達も締め出しを食らったの。
湾商はピンチに立たされたのよ。


清から帰国したおとぼけ男はとんだミスを犯したの。サンオクが2百両使って女を救い出したことを、奥さんにうっかり口を滑らせたのよ。
いくら個人的に受け取った金だといっても、人参取引で得たものだから、厳密に言えば公金で、ちょっとまずいのよ。
おとぼけ男は、秘密を口外するんじゃないってくれぐれも念を押したよ。

もちろん噂はたちまち広まったわ。
店の仲間も、真面目な顔してそんなことを・・って、サンオクを見る目つきが違うのよ。愛人に家や絹屋までプレゼントしたって、話に尾ひれまでついてるの。
絹屋の男は、自分が教えたいかがわしい中国語を、サンオクがさっそく使ったんだなって思ってるわ。
もし社長に知れたらこりゃ、まずいことになるわねえ・・・


チス様の留守に勝手に部屋を開けた湾商の上司は驚きの顔をしたよ。
あちらこちらに大事な帳簿が散らかってるのよ・・・

タイミング悪く、ちょうどチス様が戻って来たわ。上司は、帳簿がいるからって適当に誤魔化すと、こそこそ立ち去ったよ。

チス様の怪しい動きは、上司のチクりで社長の耳に入れられたよ。
だけど湾商の社長は黙認することにしたの。誘惑の魔の手になびいていくチス様を、しばらく見守ることにしたようなの・・・。太っ腹ねえ。
Posted by d_nose00 at 11:23  | 商道 あらすじ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年04月15日

「商道」12〜13

お嬢様は、見て見ぬフリして、ササーッとその場から立ち去ったよ。
取り残された娘は、サンオクの顔色をそっと伺っているわ。サンオクの心の中をのぞいてみたいって表情ね。


人参を買いに来たチン商人って男の影響力は計り知れないようで、チス様や部下達は、湾商の社長の説得に必死だったわ。
チス様は、物は考えようだって、エビで鯛を釣ればいいじゃないかって、たぶんそんなような言葉を吐いたよ。

夜、社長が金物店を訪れると、サンオクが一人残って勉強に励んでいたよ。
社長は、サンオクになぜそんなに先を急ぐのか理由を聞いたの。使用人の分際で、金物工場を取り仕切るわ、危険な人参貿易に志願するわで、ちょっと目についたのよ。

サンオクは、早く商売人になって金を稼ぎたいんだって、正直に答えたよ。
そんなサンオクに、社長はある言葉を投げかけたの。
商売は金じゃなくて、人を稼ぐものだって言うのよ・・・


結局、湾商は松商と手を組むことにしたの・・・。でも決してチス様が言ったような、ちっぽけな理由じゃないわ。湾商が潰れると従業員が困るからって、社長がプライドをかなぐり捨てたのよ。


湾商の社長は、さっそく松商の社長に会いに行ったよ。
ところが首が伸びきるほど待たされたの・・・。挙句の果てには、部下を寄こしてきたわ。きっと以前の仕返しよ。案外ねちっこいのねえ。

でもこれで湾商は危機を脱するこが出来たのよ。チン商人もごっそり人参を抱えて満足した様子で帰ってったよ。

松商は助けた代わりに、北京の密貿易に一枚噛んでくれって要求してきたよ。
そこは今、京商ってのが牛耳ってるらしいんだけど、販売権を横取りするつもりなのよ。

危険な旅らしいんだけど、湾商からは社長のご指名で、金物屋の店長とサンオクが行くことになったよ。
松商の方の担当者は誰かしらね?


チス様は、なんだかんだ言ってたワリに、湾商の婿にって、社長から正式に申し入れがあったよ。娘がチス様にぞっこんなのよ。
母も娘もニコニコして、いつでも準備OKって顔なの。社長もかなりせっかちなのか、すぐその場で日取りまで決めようとするのよ。

チス様は、母親に報告してきますって、ひとまず待ったをかけたよ。でもこれ口実なの・・・
〜茶葉も時期を逃せば役割を果たせん〜
松商の社長のこの言葉が、チス様の頭の中をふわふわよぎっていたのよ・・・


そんな時、チス様は、また人目を忍んで松商の社長にお茶の席によばれたの。
今回のお茶は、清の皇帝のお茶だったわ。
感想を聞かれたチス様は、香りが強すぎるって答えたよ。味と香りの調和が必要だって思ったの。

「調和は長続きしない・・・」
社長は意味ありげな顔つきをしたよ。香りは松商、味は湾商を例えてるのよ・・・
チス様の顔に、苦悩が広がってきたわ。
社長はそんなチス様の揺れる心をもてあそぶかのように、ゆるりとお茶を飲み干したの・・・


驚いたことに、北京同行の密貿易の担当者はお嬢様だったよ。
お嬢様に遣えてる男は、すごい悪縁だって、かなり不安がってたんだけど、お嬢様には何の感情もありませんって、サンオクはこの男をひとまず安心させたの。でもまるでサンオクが自分に言い聞かせてるみたいなのよ・・・


旅では予想通り、ピンチが訪れたよ。
おとぼけ男が役人に捕まってしまったの。どうも密貿易自体に役所が絡んでるらしくて、ワイロに味をしめた役人達が、こそくな言いがかりをつけてくるのよ。

おとぼけ男は、最初、清国人のフリして誤魔化そうとしたよ。思いつく限りの中国語を並べ立ててみたの。
「こんにちは。これいくらだ?お前かわいいな」
役人は、おとぼけ男の顔を引っぱたいたよ。どうもおとぼけ男の中国語の実力は、絹屋の男と同レベルで、使う目的も限られてるようね。

でもサンオクが腐りきった役人をとっちめてくれたんで、なんとか無事、北京についたよ。


サンオクとお嬢様は、仕入れのためにまず絹屋へ立ち寄ったよ。
色とりどりの美しい絹が並べられていて、どれを買おうかって迷うところなのよ。
一口に絹って言っても製造工程の違いなんかから、いろいろと種類があるらしいのよ。

ところがサンオクは、宮廷なんかで使用される高級なやつを買おうって言い出したの。
これにはお嬢様とおつきの男も驚きを隠せなかったわ。そんなの買ったって需要はたかが知れてるのよ。

でもサンオクは先を読んでいたの・・・。もうすぐ王様の喪が明けるから、これから礼服を仕立てる必要が出てくるはず・・・
お嬢様やおつきの男は、恐れ入ったって顔になったよ。


肝心の人参取引の方は、意外にも悪戦苦闘していたよ。どこも門前払いなのよ。

お嬢様の推理によると、人参が胃に悪いって噂が飛び交ってるせいらしいの。
でもお嬢様の人参は、そんじょそこらの代物とは違うのよ。普通は白参ってものらしいんだけど、お嬢様のは、蒸して干してある紅参なの。効能も高いのよ。

このご自慢の人参を引っさげて、お嬢様は一番大きな薬材商に行ったよ。
でもここでも状況は変わらなかったわ。それどころか店主さえ出てこないのよ。

シビレを切らしたサンオクは、その店の店員に筆と紙をリクエストしたの。何をするつもりかしら?

サンオクは見事な達筆で、ある詩をしたためると、それを店主にことづけたよ。

それからまもなくのことだったわ・・・
宿屋へ引き上げたお嬢様の元に、サンオクが駆けつけてきたよ。
なんとさっきまで顔も見せなかった店主が、人参を買ってくれたって言うのよ・・・
一体これはどういうことかしら?
Posted by d_nose00 at 11:18  | 商道 あらすじ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年04月08日

「商道」10〜11

松商の社長は、なぜか湾商の使用人部屋に通されたよ。随分と失礼な待遇ね。
しかも何時間も放ったらかしなの。
でもこれ、わざとだったのよ・・・。相手をじらすことによって、どれほど重要な取引であるか見極める技らしいの。湾商の社長のこの腹黒い読みには、さすがのチス様も恐れ入ったのか、微笑を浮かべているよ。


松商の社長の首がすっかり伸びきった頃、ようやくノコノコと湾商の社長が姿を現したよ。
話の内容は密貿易についてだったわ・・・。湾商はこう見えても密貿易のプロなの。小さな商団の割りには松商の半分も税金を納めてるのよ。密貿易でがっちり儲けてるって証拠ね。
松商はこの甘い汁を吸おうと企んでるのよ。人参を密貿易する気なの。
人参と言えば松商の得意分野よ。湾商の密貿易と松商の人参が合わされば、もう笑いが止まらないほど儲かるってワケよ。

ところがその美味しい話を、なんと湾商の社長が断ったのよ・・・
なぜかしら?松商の社長も不思議でしょうがない様子よ。


湾商の社長が、こそこそと部下を山奥へ連れてっているよ。
そこは人目を忍んで開発した人参畑だったの・・・
社長は大切そうに差し出された小箱を開いてみたわ。するとオガクズの中から収穫したばかりの高価な人参が現れたのよ・・・
10年かかってようやく成功した貴重な代物よ・・・。社長も大満足でしょうねえ。
これからこの人参を、ガンガン密貿易するつもりなの。


松商の社長は、内密にチス様を屋敷へ呼び出していたわ。何の用事か知らないけど、2人っきりでかなりうさん臭いの。
でも何てことはない、ただのお茶の話だったよ。
いくら若いお茶でも、時期を逃すと香りや深みを失ってムダになるって言うの。
「話の意味がわかるか?」
社長は意味ありげな顔をしたよ。もちろん頭のいいチス様にはピーン!ときたわ。さすがね・・・

その若いお茶、チス様は松商のスカウトを断ったよ。湾商の社長に一応律儀を示したのよ。

でも変ねえ?その割には、家に戻ったチス様が、個室の暗い部屋に閉じこもって、険しい顔で考えごとをしてるのよ。胸の中で何かが渦巻いているようね・・・


チス様は、サンオクにある頼みごとをしたよ。得意の中国語で素敵な詩集を手に入れてもらったの。チス様は、社長の娘の家庭教師をしていて、授業にこれ使ったら、きっと娘の花のような笑顔が見られるはずなのよ。

さっそくチス様にその詩集を渡し終えたサンオクは、一度帰りかけて、ふと足を止めたよ。例の顧客名簿をチス様がまだ返してくれてなかったのを思い出したのよ。
ところがチス様から意外な返事が返ってきたの。
「出来すぎたマネをされては困る。名簿は君の仕事の領域外だ」
親切ずらしてなるたけ優しい口調なんだけど、ちょっとおかしいの。サンオクがその場から立ち去ると、チス様の顔色が曇ったのよ・・・


松商の社長は、湾商の企みにようやく気づいたわ。このままじゃ、松商ご自慢の人参が、全部水の泡になってしまうのよ。
そこで、あるひとつの方法に出ることにしたの・・・。山賊に湾商の人参畑を襲わせるのよ・・・


その頃、湾商では人参畑に行く担当者を募っていたよ。
でも皆、泣くほど嫌がるの・・・。それもそのはず、その地域は賊が出没して物騒なのよ。下手したら命も危ないわ。

結局志願したのはサンオクと絹屋の男の2人だけだったよ。

湾商の社長は志願した理由を2人に聞いたわ。
絹屋の男は出世のためだって答えたよ。能力もないのに欲の皮だけは突っ張ってるの。
それからサンオクの番になったよ。
「朝鮮で商売人を志すなら人参取引を学ぶべきかと」
真面目ひとすじの男ねえ。


サンオクは絹屋の男と2人旅をしたよ。絹屋の男はやたらおしゃべりで、簡単な中国語を教えようとするの。サンオクが中国語ペラペラなの知らないのよ。
「飲み屋の女に使う言葉だ。鼻声でやってみろ」
男のくだらない命令にも、サンオクは嫌な顔ひとつしないで付き合ったよ。男なんか比べ物にならないほどいい発音なの。機嫌良さそうにしてるこの男が、サンオクの足元にも及ばないと気づくのも、そう遠くはないでしょうね・・・


のどかな旅が一転して、突然、サンオク達が謎の賊に襲われたよ。人参畑の住人も皆殺しにあったの。
犯人は清国人の山賊よ。でも命からがら逃げ帰って来たサンオクには、どうしても腑に落ちないことがあったの・・・

清国人にしては、サンオクらの情報を入手するのが早すぎるのよ。それにサンオクだけ、なぜか手加減して助けてくれたの。

サンオクはピーン!ときたわ・・・。謎の山賊の正体は、いつかサンオクと一緒に脱獄した盗賊のカリスマボスよ・・・

このことを社長に報告すると、恐らく松商の仕業だろうってすぐ検討はついたの。

でも湾商は深刻な事態に陥っていたよ。
今回の人参貿易の取引相手のチン商人を怒らせたら大変なことになるのよ。
何が何でも人参をどっかから掻き集めて来ないと、密貿易そのものに大影響をおよぼしかねないの。
この際、松商の提案を受け入れたらどうかって、部下達は弱気な態度を見せ始めたわ。
でもこれじゃ、松商の思うつぼなのよ。どうするのかしら?


サンオクが危ない目にあったって聞いて、いつか一緒に逃亡した身分の高そうな女がサンオクの店を訪ねて来たよ。
ところがその2人の姿を、松商のお嬢様も遠くから見ていたわ・・・。お嬢様も父の企みを小耳に挟んでから、気が気じゃなかったのよ。
お嬢様に気づいたサンオクと女が、互いの目を見合わせてから、戸惑い気味にお嬢様の方へ顔を向けたよ。
この3人、なんだかギクシャクして妙な雰囲気が漂ってるの・・・
Posted by d_nose00 at 19:04  | 商道 あらすじ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする