2011年07月25日

The Big Bang

トニー・クランツ監督作。北米版DVD(リージョン1)で鑑賞。製作者・出演者の短いインタビューを含むメイキング(くれっちよ、その格好でVサインしますか)、監督・プロデューサーのオーディオコメンタリーつき。
多少衒学的だけど、観察者である主人公私立探偵の介入と条件によってくるくると変わるつかの間の人間関係を力技で量子論に乗せて語ろうとしています。出演者のアンサンブルもいいし、ちょっとsynesthesiaを思わせるような色味をいじった映像や編集が非常にスタイリッシュだし、全編に紗のように絡みつくJohnny Marrの音楽がこれまたナイス。

私立探偵ネッド・クルス役の主演バンデラスがたいへんにセクシーである。せくすぃーではなく、探求心と知性と色気を兼ね備える正統セクシー。
話の展開は、時系列としてはここからクライマックス!な寸前の時点で事の発端を回想という形式。依頼人の文通相手のある女性の捜索を進めれば進めるほど、当然実在する事を前提にしている捜索対象が本当に実在するのかあやしくなってくる。謎が謎を呼ぶ展開が収束してクライマックスと謎解きが一気にどーんとくるカタルシスがたまりません。依頼人文通相手の正体が予想外。でもその人の "I'm here. I love you." にほろり。このカップルでもいいじゃないかと思ったわたくし。

依頼人アントン役のロバート・マイエの声が好み。身の丈7フィートのごついヘビー級元ボクサーながらたたずまいが端正だし、惚れた相手に言及するときの顔がいかにも恋する男でかわいいのだ。
私設大規模粒子加速器でビッグバン再現、「神の素粒子」ゲットに挑む富豪役の美爺サム・エリオットもナイス!なんとちょーあやしげなイカれたイカしたじさま役が似合うことか。

クレッチマンは今回なんかすっとぼけた移民悪徳刑事という役どころ。結構余裕かましてるかと思いきや、「それアフターシェーブ?すごい匂いだけど」と言われたり英語の文法の間違いを指摘されてムッとしてたり、「くそばか野郎世界選手権があったら間違いなくお前二等賞だ」と言われての反応なんか、最近の出演作のなかでは一番好きだ。強烈なアフターシェーブって、どんなモノつけてんだろう。単に使いすぎってやつかね。それか主人公のお好みでないだけだか。

バイオレントなんだけどどこかスラップスティック気味な悪徳刑事3人組(クレッチマン、ウィリアム・フィクナー、デルロイ・リンドー)が主人公にThree Stoogesとか言われてて納得。温和に見えて一番タチが悪いFrizer(くれっち)、ときどきソシオパス全開でほかの二人に「どうどうどう」と引き止められるPoley(フィクナー)、一番常識人だけど離婚して子どもの教育費で金に困ってるSkeres(リンドー)というナイスな組み合わせ。
悪徳刑事3人組+バンデラスとか、バンデラス+アントン役ロバート・マイエとかの絡みがナイスだし、バンデラス+ボース粒子用語や波動関数で欲情するお嬢さんフェイ役オータム・リーザーの文字通り絡みもナイス。

private H とか理論物理学者Geck君がGecko飼ってるとかの言葉遊びにも結構笑った。なぜかニューメキシコのダイナーで"Steak und Eier sind fertig!"とドイツ語が。
よくよく観ると、主人公私立探偵が捜索する過程で出てくるジャズクラブの店名が「ケプラー」だったり、ダイナーの店名が「プランク定数カフェ」だったり、シュレディンガー倉庫でポルノ映画"Black Hole"を撮影してる監督の名前がPussだったり(しかも製作会社名がメインクーン・プロダクション/笑)、ロシアンマフィアの名字がファディーエフだったり、ストリップクラブの前オーナーの名字がミンコフスキーだったり、その未亡人がウィグナーだったり、捜索対象のストリッパーの名前がlex parsimoniae(「オッカムの剃刀」ね)のもじりだったり、といろいろ物理・量子力学小ネタが。Dharma Security とか Arbitrium Inc. とかもいわくありげ。
じわじわくるタイプの作品なので、DVDで何度も楽しめますよ!

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