石油業界でのハナシ。
「掛(かけ)」と呼ばれる販売店独自の「ツケ払いカード」の管理コスト、集金コスト、信用リスクなどへの対応から、石油元売がクレジットカード会社とタイアップした「統一カード」を作ったのはもう15年も前のことになるだろうか。
当時関わっていた日本石油(現・新日本石油)の例で言えば、イメージキャラクターに所ジョージを起用した日石ワンナップカードが誕生したのがワタシが高校生の頃。
当初「信販会社とのタイアップ」というイメージはかなり抑えられていたので、実質債権リスクと与信権限は信販会社にあるにも関わらずほどんど説明することなく、従来からの「掛カード」の新タイプとして「全国で使えるカード」が出来たという説明をしていた。
それからEna(イーナ)カードを経て現行のENEOS(エネオス)カードになるワケだが、この変更の際に「実はこれはクレジットカードであって、ガソリンスタンドで使うとガソリンが安くなるメリットがついたカードなのです」と説明される様になった。
元売独自カードの顧客へのインセンティブにより自店顧客をガッチリ囲い込む。
元売子会社が率先して発券する中、そんな説明を真に受けた販売業者は「掛」の切り替えを推進し、「自店顧客の情報は一切元売には渡さない」と狭量な考えの販売業者はこれらを無視した。
ワタシが携わってきた業者はすべからく後者であり、前者の「やらせ」は元売会社の陰謀と批判する意見に荷担していた。
「元売独自カードによる顧客の囲い込み」は他元売でも追随され、シェル・コスモ・出光、それぞれ似たり寄ったりのカードが誕生した。
この「元売独自カードの展開による顧客の囲い込み」はやはりそれなりのコンサル機関からもたらされた発想だけあって、マジメに「掛」の切り替えを行った業者と否定した業者では、その後の自由化によるマージン圧縮の際に「運営コストの差」として歴然と現れ、「運営体質強化の為には後発ながらもカードの切り替えが急務」などと業界新聞などでも囃し立てられた。
ただ自由化による淘汰により販売業者が「閉鎖」の憂き目に遭った際には、元売カードはその本性を発揮し「全国の同じマークのお店でこれまでと変わらず使えます」として顧客の系列外への流出を食い止めた。
これをしてアンチカードの販売業者はそれこそが元売が目論んできたコトであり、販売業者の「宝」である顧客情報を元売に開示するコトなど愚の骨頂と騒いだが、販売業者の突然の破綻を目にすると「掛」の顧客は突然「常連さん」から「一見さん」へと叩き落されるワケであり、「よそのお店でガソリンを買うにはどうしたらいいのですか」などと旧経営陣に問い合わせる事態を考えれば、元売カード化はむしろ「顧客の為には必須」という考えが正しく思われる。
いずれにしても黎明期の元売カードにはとんでもないインセンティブが付いていたもので、その特典は享受しないと明らかに損ではあったが、後にそれらが廃止されると「計画的だ」とか「最初だけ」とか商売人のモラルに関する誹りを受ける羽目になった。
ただこれも裏を返せば、これらの手厚いインセンティブは提携している信販(カード)会社からの拠出の場合が多く、その負担の重さにカード会社が泣きを入れたというただそれだけのコトだったりもする。
誰かが得をするトキは、誰かが損をしているだけのハナシなのだ。
そんな高額のリスクを背負ってまでカード会社が元売カードを作りたがるメリットというのは、「カードの発行からはある一定割合でキャッシングに発展する」というただその一点に集約されると言う。
物販における信販手数料にせよ、割賦販売・分割販売における金利手数料にせよ、これだけ群雄割拠の状況では「儲かる」というレベルでは到底なく、一番儲かるのは「金」を販売したトキ、即ち「キャッシング」こそが信販会社の収益源となっている。
ワタシが携わっていた元売の提携信販会社にしてみれば、全体の3割の人員が担当する元売カードセクションでの収益が全社の7割にも及ぶというのだから、ガソリンスタンド店頭での多少の運用ルール逸脱も、高額のインセンティブの負担も行おうというものである。
そんな法外なインセンティブを承諾させた元売会社にしてみれば、もちろん信販会社と約束した発券枚数見込みというものが当然あって、ワタシが従事していたような「(カード発券に)冷めた業者」というのはあってはならないものだった。
この平成の世でも「クレジットカード=借金苦で一家離散」というイメージが根強く残っているもので、それはバブル崩壊直後ともなればすさまじいものがあった。
そんな最中に「顧客にクレジットカードを勧めろ」と言われても言い難いもので、元売がそんな発券促進キャンペーンを組もうと販売業者の大半は冷ややかな対応だった。
さっぱり伸びない発券に困った元売は、「(目標達成の場合には)発券1枚あたり千円の商品券を支給」と急遽ニンジンを出してくるがこれも不発。
「目標達成できなければ今後の支援も一切なくなる」と独占禁止法にも抵触するような物言いで発券を強要した。
ただ現場のスタッフには「勧め難い」という問題点が解決されていないので、会社から「存亡の危機だ」などと脅かされて発券を迫られても、実家の親類縁者にお願いする以外にこれといった対処法を見出せずにいた。
「発券するかしないかはお客様は決めるコト。こんなにお得なカードをオススメしないのは職務怠慢」と言われても、顔見知りの常連客がチラホラとしか来ない店舗では寝言にしか聞こえず、「大都市圏の元売子会社である販社が1日100枚発券した」なんてハナシも「ヤラセ」としか思っていなかった。ところがである。
ちょっと見にくいかもしれませんが、上から「ウオッシャー液無料補充」「バッテリー液無料補充」「タイヤ空気圧無料チェック」「エンジンルーム無料点検」「フロントガラス虫拭き取りサービス」「ラジエータ液無料補充」と書かれています。
対して重油はというと、圧倒的に産業用として使われるので配達が大前提な上、納入価格も原則非公開のまちまちな価格設定なので、価格を”売る側”も決めにくいコトから、灯油との価格差5円とか10円とか、そういう大雑把な決め方をしている場合が多いです。