2004年09月08日
不気味な泡二次創作「はちみつ白書」
ぼくは彼女に案内されて、その廃墟に登った。
止まったままの回転木馬。所々に錆の浮かんだ塔。灯りの割れた観覧車。
ふさがれた門の前には、不動産屋からの厳重注意が記された看板が、封印代わりに据え付けてある。
だけど、彼女は気にもとめない。抜け穴があるのだという。
「おいで、今日は貸し切りだよ」
はしゃぐ彼女の姿を、ぼくは眺めている。 眺めていたかった。ずっと。ずっと。
彼女がいなくなった。
そのことを直接に悟ったのは、あの浮浪者が光に還ってからだ。
『なんかね、宇宙人としかいいようがないの』
彼女は確かに、噂されるとおり浮気性の気があったかもしれない。だけど、その男の話をするときの彼女の姿は、時にぼくと話しているよりも他の男友達と話しているときよりも、何よりも愉しそうに見えた。
『ずっと先の感覚で話しているんだけど、それがわかるの』
聞いているぼくの、なんとも困惑していたであろう顔に気づいたとき、彼女は決まってこう言っていたのだ。
『大丈夫、志郎君なら大丈夫。きっとなれるよ』
だけど、ぼくにはもう、『何に』なれると言いたかったのか、分からない。
その影は、光の柱を眺めていた。
還っていく光は、きっと本来自分がそうあるべき姿だったのだ。そう考えながらも、形を持たない影にはそれを言い表すすべがない。
私も、還りたい。
それを、誰に聞けば分かるだろうか?
新しいうわさ話が増えた。
自分の影に会うと、一つ言葉を失うというものだった。
Lord Distoter Remains "Honeydays' White Book"
彼女は、ぼくに『何になってもらいたかった』のだろう?
『いつか分かる』という人もいる。でもぼくは『今』知りたいんだ。
まぁそのうち。まとまりがつき次第。
【litの最新記事】
この記事へのトラックバックURL
http://blogs.dion.ne.jp/edgeofworld/tb.cgi/337930
※半角英数字のみのトラックバックは受信されません。

