2010年01月24日

ルドルフ×このしたやみの『熊』

☆ルドルフ×このしたやみ チェーホフ一幕劇同時上演企画『熊』


 チェーホフの一幕物『熊』をルドルフとこのしたやみの二つのグループが演じ分けるという一粒で二度美味しい企画を観に、アトリエ劇研まで行って来た。
(なお、チェーホフの『熊』は、とある未亡人のもとに借金を返してもらうべく男が訪ねて来て「返せ」「返せない」で決闘騒ぎとなるが…、といった内容のファルスである)

 まずは、筒井加寿子さんの演出によるルドルフから。
 筒井さん率いるルドルフの面々が演じたチェーホフは、一昨年11月のC.T.T.試演会で『結婚申し込み』を観て、演出家としての筒井さんの賢しさと明晰さを高く評価する反面、筒井さんの特性とチェーホフの本質がどこかあってないんじゃないかと指摘したことがあったのだけれど、今回の『熊』では、そうした面はそうした面として、筒井さんの狙いが一層明確になっていたこともあり、充分に納得がいくものとなっていた。
 それは、一言で表わすならば、うる星やつら調『熊』とでも呼ぶべきか。
 登場人物がどたばたじたばたを繰り返す中、虚と実、実と虚がめまぐるしく交差して、観る側がひっぱられ突き放され感じ考えるのりに展開。
 まさしく、動くよー、変わるよー、ひっくり返るよー。
 もちろん、筒井さんのテキストの読み込みは、前回以上の鋭さで、作品の持つ様々な要素や仕掛けを巧く突いていたと思う。
 岩田由紀さんと駒田大輔さんは、C.T.T.の試演会にも出演していたが、そこでの経験が今回の公演によく活きていたのではないか。
 激しい感情の変化など、筒井さんの演出によく沿った演技を行っていた。
 また、中嶋やすきさんのような人が京都の小劇場界に存在するというのは、やはり大きいなとも感じたりした。
 テンポを初めとした細部の詰めなど、いくつか気になる点もなくはなかったが、そうした部分も今後公演を重ねることで解消されていくことだろう。
 適うことならば、めぞん一刻調『かもめ』や『ワーニャおじさん』、『三人姉妹』、『桜の園』も観てみたい。
 筒井さん、ぜひ。

 休憩後の後半は、山口浩章さんの演出によるこのしたやみの『熊』。
 こちらは、登場人物を二口大学さんと広田ゆうみさんだけにしぼった二人芝居。
 あいにく、京都府立文化芸術会館での2007年の公演は観ることができなかったのだが、山口さん自身公演パンフレットに記しているように、その際と今回とでは少なからず演出が変わっているようだった。
 むろん、エロス・タナトスのタナトスや閉塞感、コミュニケーションの断絶(僕は、バルトークの『青ひげ公の城』を想起する)等々、山口さんの解釈の肝となるべき部分は、今回の上演でもしっかりと表わされていたと思うのだけれど、それらが笑いに結びついて、おかしな味わいを醸し出していたことも、僕には興味深かった。
(その意味で、山口さんが今後どのような作品を取り上げていくか、非常に気になるところだ)
 また、二口さんの語り口や演じようもあって、落語や歌舞伎の世話物らしさを感じたこともやはり付け加えておきたい。
 ライヴらしい傷がなくはなかったが、演者陣では、まずもって二口大学さんの熱演が強く印象に残る。
 一方、広田ゆうみさんでは、彼女の後ろ姿が忘れられない。

 いずれにしても、こういう一粒で二度美味しい企画が今後も繰り返し行われていくことを、僕は心から期待したい。
(一粒で二度不味くっちゃ困るけどね)

 そうそう、場面転換のため20分間の休憩があったんだけど、そのときボルシチや黒パンなんかが売られていたのは、ヨーロッパの劇場やホールなんかみたいで、ちょっと嬉しかった。
 てか、ボルシチ食べときゃよかった!!
 

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