「俺さ、おまえの奥さんは、もうこの世にいないと思う。― おまえが殺したから」
こんな言葉が帯に書かれていたら、どうしても手が出てしまう。恩田陸のファンならずとも気を引かれるだろう。
「月の裏側」という作品は知らないが、その作品に出てくる塚崎多聞がこの短編集の主人公である。四十を超えた音楽プロデューサーの多聞の身の回りでは不思議な現象が度々起こる。そんな不思議な出来事を集めた短編集。各々のストーリーはそれぞれに独立したもので、多聞だけは相変わらずの体で登場するのだが、秀逸は「夜明けのガスパール」。この作品までは多聞が探偵役として謎解きをしていくのだが、最後のこの作品では虚をつかれる。ミステリーとしてもなかなかの「怖い」作品に仕上がっている。