2010年02月23日
低強度紛争とビジネスと
インドでは兵器需要が順調に大きくなっているようだ。Time の報道“For the Arms Industry, India Is a Hot Market”によれば、先週ニュー・デリーで開催された“Defexpo 2010”の盛況ぶりを伝えている。アメリカのボーイング、ロッキード・マーチン、ロシアのRSK “MiG”、スウェーデンのSaab、そして欧州連合のEADSといた業界大手の軍需企業が、インドの国防関係者に自社の最新鋭機を売り込むため、激しくしのぎを削っている。これほどインドに対する売込みが激しくなった背景には、やはり一昨年に発生したムンバイでの「テロ」があるという。ノースロップ・グラマンのウルフ・グロス取締役は、ムンバイでの「テロ」後、「我々はインドの本土防衛に必要なものを供給することに決定した」と述べている。
この記事はさらに、「低強度紛争」に対するインド政府の姿勢も指摘している。インドでは中央部を拠点とする毛沢東主義派とインド中央政府との間で、激しい武力闘争が続いている。そしてこのインドにおける「低強度紛争」のためにインドの軍当局は研究を重ね、無人軍用機などの開発を行っている。アメリカの軍需企業がこの動きを見逃すはずもなく、スタンガンの製造販売で有名なテイザー社は、インドの治安維持当局に対して売り込みをかけている。同社のYogesh Saini氏は、インド市場が「トップ5ではなくても、トップ10」に入ることを期待しているという。
「テロ」は軍需を拡大するというわけだ。しかも「テロ」は政治的に定義できるため、「対テロリズム」という軍需が無くなることは決してない。この記事では最後にパキスタンや中国といった周辺諸国との「質的ギャップ」を指摘する軍需産業の声を紹介しているが、やはり軍事的危機というのは「今そこに作られる危機」だと言わざるを得ない。
この記事はさらに、「低強度紛争」に対するインド政府の姿勢も指摘している。インドでは中央部を拠点とする毛沢東主義派とインド中央政府との間で、激しい武力闘争が続いている。そしてこのインドにおける「低強度紛争」のためにインドの軍当局は研究を重ね、無人軍用機などの開発を行っている。アメリカの軍需企業がこの動きを見逃すはずもなく、スタンガンの製造販売で有名なテイザー社は、インドの治安維持当局に対して売り込みをかけている。同社のYogesh Saini氏は、インド市場が「トップ5ではなくても、トップ10」に入ることを期待しているという。
「テロ」は軍需を拡大するというわけだ。しかも「テロ」は政治的に定義できるため、「対テロリズム」という軍需が無くなることは決してない。この記事では最後にパキスタンや中国といった周辺諸国との「質的ギャップ」を指摘する軍需産業の声を紹介しているが、やはり軍事的危機というのは「今そこに作られる危機」だと言わざるを得ない。
2009年09月22日
これからのアフガニスタン政策・支援は、低強度紛争戦略そのものとなる
岡田外務大臣がクリントン国務長官と会談した。以前よりアフガニスタンに対する民主党政権の支援策が議論を呼んでいたけれども、結局アメリカは日本の給油支援中止を認めることになりそうだ。毎日新聞の記事「日米外相会談:給油中止を事実上容認 記者団に国務長官」は、クリントン国務長官の「日米関係は非常に幅広く深いもので、一つの問題で定義づけられるようなものではない」という発言を受け、海上自衛隊による給油支援活動中止を「事実上容認する姿勢を示した」としているが、それは妥当な論評だと思う。給油支援活動中止に対して、アメリカからかなりの反発があるだろうという予想もあったが、アメリカ政府のアフガニスタン・パキスタン担当特使であるリチャード・ホルブルックが、4月の段階で「日本が望まないのなら要求しない。日本はすでに農業や保健、公務員育成などの分野で活躍している」と述べていることから(朝日新聞「アフガン自衛隊派遣『望まないなら要求しない』 米特使」)、日本の給油支援活動の中止は既に日米両国間で事実上の合意があったと言ってもいいだろう。
アフガニスタンに対する軍部隊の増派に対しては、オバマ大統領も否定的意見を表明したばかりだ。アメリカABCテレビの番組に出演したオバマ大統領は、「特に私のような、追加増派に強い疑問を抱く人びとからは懐疑的な見方がでるだろう。その時はわれわれは米国人の生命を守るために必要なことを行う」と述べている(AFPBBNews 「オバマ米大統領、アフガン選挙に懸念 追加増派には消極的」)。この「必要なこと」とは何だろうか。個人的には、やはりCIA主導による非軍事的手段によるアフガニスタンの「民主化」だろう。ロサンゼルス・タイムズ紙は、アメリカのアフガニスタン政策においてCIAの存在がますます大きくなっていることを伝えているし(Los Angeles Times, “CIA expanding presence in Afghanistan”)、アフガニスタンの現地警察幹部も、必要なことは軍部隊の増派ではなく、現地の警察支援だと主張している(Associated Press, “Afghan police: More foreign troops not the answer”)。9割以上もの地域をタリバーンに支配されていると考えられている現状においては、タリバーンとの正面からの武力衝突を激化させるような、軍部隊の増派という「ハード・パワー」よりも、「民生支援」そして「民主化」という「ソフト・パワー」を重視する方が現実的なのかもしれない。
そうなると、先日も取り上げたマイケル・ヴィッカースの存在がますます大きくなる。オバマ大統領は、このために彼を国防次官補に留任させたのではないかとも考えてしまう。となると、日本の声からのアフガニスタン支援は、ほぼ完璧に低強度紛争戦略に沿ったものとなるだろう。
アフガニスタンに対する軍部隊の増派に対しては、オバマ大統領も否定的意見を表明したばかりだ。アメリカABCテレビの番組に出演したオバマ大統領は、「特に私のような、追加増派に強い疑問を抱く人びとからは懐疑的な見方がでるだろう。その時はわれわれは米国人の生命を守るために必要なことを行う」と述べている(AFPBBNews 「オバマ米大統領、アフガン選挙に懸念 追加増派には消極的」)。この「必要なこと」とは何だろうか。個人的には、やはりCIA主導による非軍事的手段によるアフガニスタンの「民主化」だろう。ロサンゼルス・タイムズ紙は、アメリカのアフガニスタン政策においてCIAの存在がますます大きくなっていることを伝えているし(Los Angeles Times, “CIA expanding presence in Afghanistan”)、アフガニスタンの現地警察幹部も、必要なことは軍部隊の増派ではなく、現地の警察支援だと主張している(Associated Press, “Afghan police: More foreign troops not the answer”)。9割以上もの地域をタリバーンに支配されていると考えられている現状においては、タリバーンとの正面からの武力衝突を激化させるような、軍部隊の増派という「ハード・パワー」よりも、「民生支援」そして「民主化」という「ソフト・パワー」を重視する方が現実的なのかもしれない。
そうなると、先日も取り上げたマイケル・ヴィッカースの存在がますます大きくなる。オバマ大統領は、このために彼を国防次官補に留任させたのではないかとも考えてしまう。となると、日本の声からのアフガニスタン支援は、ほぼ完璧に低強度紛争戦略に沿ったものとなるだろう。
2009年09月16日
マイケル・ヴィッカース国防次官補(特殊作戦および低強度紛争担当)について
特殊作戦および低強度紛争担当のアメリカ国防次官補(Assistant Secretary of Defense for Special Operations and Low-Intensity Conflict and Interdependent Capabilities)は、現在マイケル・ヴィッカース(Michael G. Vickers)が務めている。その名が示すとおり、アメリカによる低強度紛争戦略の実践において、このポストは極めて重要な役割を果たしている。
ヴィッカースは元グリーンベレー(陸軍特殊部隊)、そしてCIA局員という経歴を有しており、CIAの歴史上、最大の秘密計画を立案した人物である。その計画は「サイクロン作戦」と呼ばれ、1980年代にアフガニスタンからソ連軍を撤退させることに成功したものだ。ヴィッカースはアフガニスタンの「ムジャヒディン」たちに指示を与え、20億ドルもの予算を管理していた。トム・ハンクスが主役を演じたあの映画『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』にも登場する、その筋ではかなりの「有名人」だ。そんな彼は、「対テロ戦争」について次のように述べている。
USA TODAY, “For guidance on Iraq, look to Afghanistan: Use fewer U.S. troops, not more”, June 27, 2004.
周知の通り、現在のオバマ政権では「テロとの戦い」という呼称は用いられなくなった。しかし、名前が無くなったからといってそれが実質的にも消え去ったということではない。オバマ政権はアフガニスタンでの軍事作戦で「勝利」を得るべく、軍部隊の増派を決定しているが、前ブッシュ政権より引き続いてこのヴィッカースを国防次官補に登用している。軍事的な後退が指摘されてはいるものの、もともと量的な軍事介入を是としないヴィッカースの下で、アメリカの対アフガニスタン政策はどのような進展を見せるのだろうか。
ヴィッカースは元グリーンベレー(陸軍特殊部隊)、そしてCIA局員という経歴を有しており、CIAの歴史上、最大の秘密計画を立案した人物である。その計画は「サイクロン作戦」と呼ばれ、1980年代にアフガニスタンからソ連軍を撤退させることに成功したものだ。ヴィッカースはアフガニスタンの「ムジャヒディン」たちに指示を与え、20億ドルもの予算を管理していた。トム・ハンクスが主役を演じたあの映画『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』にも登場する、その筋ではかなりの「有名人」だ。そんな彼は、「対テロ戦争」について次のように述べている。
テロとの戦いは根本的に間接的な戦争であり、仲間を必要とする戦争(‘a war of partners’)であるが、表には出てこない戦争でもある。なぜならそれは政治性が強く、またテロリストを見つけ出すことが困難であることに由来している。それゆえ中央情報局が極めて重要となり、わが国の特殊作戦部隊が大きな役割を果たすことになる。ヴィッカースはイラク占領政策にも言及しており、治安の維持のためにより多くの部隊を派遣することは誤りであって、肝心なことは人心の掌握であると主張している。かねてより「対テロ戦争」の原型は低強度紛争戦略だと考えていたが、このヴィッカースの主張を読んでそれが確信に変わりそうだ。従来の軍事的な基準でこの戦争の「勝利」を規定してはならない。
The Washington Post, “Sorry, Charlie. This Is Michael Vickers's War”, December 28, 2007.
USA TODAY, “For guidance on Iraq, look to Afghanistan: Use fewer U.S. troops, not more”, June 27, 2004.
周知の通り、現在のオバマ政権では「テロとの戦い」という呼称は用いられなくなった。しかし、名前が無くなったからといってそれが実質的にも消え去ったということではない。オバマ政権はアフガニスタンでの軍事作戦で「勝利」を得るべく、軍部隊の増派を決定しているが、前ブッシュ政権より引き続いてこのヴィッカースを国防次官補に登用している。軍事的な後退が指摘されてはいるものの、もともと量的な軍事介入を是としないヴィッカースの下で、アメリカの対アフガニスタン政策はどのような進展を見せるのだろうか。

