2011年09月24日

「極上掌篇小説」

この記事の最初の投稿は6月21日とある。読み終えるのに三カ月以上かかったわけね。
何度も図書館で借り直し。
一つ一つ、読むたびに感想を書こうと思っていたが、後半はそれも怠けた。

それにしても、この所急に気になっていた作家さんが、この時すでにこんなに集まって短編なんかになっちゃって、どっさり詰まった一冊になってる。
いつこのアンソロジーが作られたのか知らないけれど、大した先見の目だ。

うむ。極上とあるが、まさに極上であった。
文庫があるなら、欲しいな。
◆いしいしんじ「ミケーネ」
いしいしんじ苦手だったなあ、と思いつつ読んだら・・・
これはすごく良かった。
一番良かった。
この人、短編が良いわ、私は。
ずいぶんちゃんとした猫だった…ミケーネ。

◆石田衣良「おねがい」
これまた苦手な石田さん。
随分な題材だが、悪くなかった。
家の借金で身を売る娘の話の現代版。
綺麗ごとじゃないのがよかった。


◆伊集院静「子犬のお礼」
これもまた、好んで手に取らない作家さん。
韓国の説話風。なかなか良かった。
そう言えば、大阪の有名な餃子屋の「眠眠」は「犬の肉が入ってる」っていう噂があったなあ・・。

◆歌野晶午「永遠の契り」
これまた苦手な作家さん。
面白く惹きつけられて読むんだけど。。。結末が陳腐。
なんか、この人の落ちの付け方は、本当に私には合わないわ。

◆大岡玲「ピクニック」
すごく観念的な話。
この本は、なかなか良いのかもしれない。「極上小説」 なるほどね。
精神を病んだ男が(たぶん)、家を出て歩きだす。
店先で八朔を見かけて買う。
はっさく。好きだったなあ・・。高校の頃量に入ってたんだけど、面会に来る父に持ってきてほしいとねだったことがあった。

その八朔を、見知らぬ女性と川べりで食べる。
その後、その女性の体が川の上流から流れてきて・・・
男も、気球に乗りこんでその気球から落下し・・
八朔とともに地面にたたきつけられる・・・。という話。


◆大崎善生「神様探索隊」
久々に読んだ。アジアンタムブルーの人だよね?
町内会で「神様捜索隊」が結成される。んだけど、それは能動的な会合なんかじゃ全然なくて、町内会どぶ掃除的な集まり。
行かなきゃいけないからしぶしぶ・・・というタイプ。
それに妻が参加する。という話。
三崎亜記みたいな話だ。


◆片岡義男「目覚まし時計の電池」
母親が、画家で。
その血を受け継いだろうと思われる男が。とうとう会社を辞めて「絵を描く」ことにする。
そのきっかけは、続けて消化した有給休暇中の目覚まし時計。
その時計の電池を抜き、もうこの「時間」に縛られる日々からは離れて行くのだなという感覚。
この辺りが良いなと思う。
会社勤めの嫌悪から逃げるのでなく、きちんと勤めて平穏であった生活から
「母を超える」という苦行への転身であるところが。
それを、すごく自分でわかっているところが。
こう言う人が、芸術家として大成していくのかもしれないなと思う。

◆勝目梓「立ち話」
離婚した夫婦が歩道橋の上でばったり出会う。
再婚せず独り身であるというお互いの境遇を知り、そして亡くなった夫の母の墓参りを一緒に使用と約束して別れる。
さらりとそれだけの話が、さわやか。

◆車屋長吉「夜尿」
こんな夢を見ました。で始まる2ページだけの。
おねしょした男の子の幻想。

◆玄侑宗久「猫雨」
野良と飼いネコの間くらいの存在の赤とら。
妻が絶対に家の中に入れようとしないネコ。
寒空の中、ある日そのネコは冷たくなっていた・・・。

◆小池昌代「名前漏らし」
花屋の主人はその花の名を二度繰り返して言った。
男はその声を聞きたくて、花屋に行く。

◆佐伯一麦「焼き鳥とクラリネット」
見知らぬ町でのれんをくぐる。
そこにはきれいな女将がいて、モーツアルトのクラリネット五重奏が流れる焼鳥屋だった。
そのそぐわない感じに轢かれて座ると、そこに現れた怪しいやくざ風情の男がやってきたのを撃退する。
女はしかし、そのあたりを仕切るやくざの情夫であった。

◆佐野洋「あり得る事」
息子が、「大臣はえらいの?」と聞いてきた。
学校のクラスメイトの父親が大臣になったという。しかしその子は実は隠し子らしいと。
TV局に勤める父親はそれをスキャンダルと察知したが。。

◆重松清「それでいい」
男は単身赴任で過ごした何年間かを終え、荷物をまとめて引越しの準備をあらかた終えた。
誰似も見送られず、妻や子にもその苦労は知られることなく・・・。
そう思っていたら、会社の若いやつらが4人もやってきた。
そして最後に外した家族写真の下から「ご苦労様でした」のメモをみつけた。

◆高橋克彦「たすけて」
「炎立つ」以来の高橋さんだな・・。

彼女は兄から母について聞かされた。
母の死んだ病院で母の幽霊が出ると。
自分の仕事にかまけて苦しむ母を構わなかったあの頃・・・。

◆高橋源一郎「凍りつく」
カオリの体にしか興味ないケンジが、あの超有名な髭のマリオの出てくるゲームに入りこんだ?

◆高橋未千綱「パリの君へ」
婚約した彼女に、そしてそれを破棄した彼女に自分の過去家族の過去を手紙で未練がましく送る、という手紙形式。
母が前科者で、それを相手の親に知られて、破棄された婚約だが、その母がなぜそのような罪を犯さざるを得なかったかを。

◆獄本野ばら「pearl Paravle」
真珠を真珠貝の代わりに女性器でつくる女をお手伝いにしている男。

◆筒井康孝「出世の首」
大部屋の役者の、現実と虚構の狭間の話

◆西村賢太「悪夢ー或いは「封鎖されたレストラン」」
あの泥臭い話で芥川賞とった人の短編。
オーブンで焼かれてやけどする妹の話から始まり、こん棒でたたかれる弟、いったい何の話だろうと読み進めるとまもな、レストランに住みつくドブネズミたちだという事がわかる。
が、それはドブネズミ的人間に当てはめても良いぞという印象にすり替わる・・。

◆橋本治「関寺小町」
20年くらい前は新しかったのか?
とてもじゃないけど、読んでいられない。

◆蜂飼耳「繭の遊戯」
金銭になる仕事をせず、家の庭にあるプレハブに住む叔父。
大人たちから疎まれているのは子どもの目にも明らかで。
その叔父が、素焼のオカリナをつくる。
一時はやったそれもあっという間にすたれ・・それでも作り、そしていなくなる。

◆平野啓一郎「義足」
逃げ込んだ森の中、反政府軍の少年に足を切り取られた。
うまれつき、すねの中央部分から下が真っ白だった彼は、そこを目印に鉈で。
その後、そこには白い包帯で支えた義足をつけるが、それは土に埋まって抜けなくなった。

◆古川日出男「あたしたち、いちばん偉い幽霊捕るわよ」
給湯室に集まった彼女たちは、幽霊を捕獲しにいくことに。

◆星野智幸「雛」
緑の細長い龍のような雛を母親のように育てる事になった少年。
その雛は彼の股に住みついた。

◆堀江敏幸「樫の木の向こう側」
家族で東京に出る事になり、父は、ぶつかった時に頑丈な車を買うと言って水色の外車を買った。しかし、そんなものは必要なはずもなく、すぐに売却することとなったが。
そのディラーはまだそこに存在し・・・。

◆又吉栄喜「コイン」
この人も、芥川賞作家だったけな・・・。「豚の報い」
小ぶりなキャバレーで掃除をする男がコインを拾い、妻とつつましやかに暮らしていた男が、妻の友人と不倫をして実を破滅させていく。

◆三田誠広「彼女の重み」
大学のサークル勧誘をしていた彼女に惹かれて入った男。
そんな理由で入ったやつは彼だけではなかった・・。

◆矢作俊彦「globefish」
スロバキア人ではなくチェコ人の彼女とフグを食べる。

◆吉田篤弘「曇ったレンズの磨き方」
「パロールジュレ〜」の話の中の一部なのか、それとも番外編的な話なのか、今のところは不明。
あっちを読み終えねば。

メガネの曇りを拭きながらニシムクは「犬たちにはかなわないね」とつぶやいた。
凍った言葉を集めて解凍し、分析する。
「やっぱりそうなのか」
「馬鹿げてるよ」
「あ、そうだ。パンがあったっけ」
「アスピリンを二錠」
誰の耳にも受け止められる事なく行き場を失って凍結した「ひとりごと」であるということを、
彼の父が解明した。
父は、彼以外に3人の弟子を育てた。

採集に出掛けた夜更けの帰り道、アパート二近い路地にみつけたジュレ。
「さて、きょうも曇ったレンズを磨くとするか」
父の声に似たそれが再生された。
それは僕の声だった。

ふむ。

フィッシュが出てくるあの話ではない?そう?
やはり読んでみねば。

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