2009年12月22日

クリスマス・キャロル ディケンズ 集英社文庫

christmas_carol.JPGA Christmas Carol
クリスマス・キャロル
作 チャールズ・ディケンズ / 訳 中川 敏
装画 酒井駒子
集英社文庫



未来は、まだ変えられるかもしれない。

チャールズ・ディケンズ Charles Dickens (1812年〜1870年)
イギリスの作家。
作品:オリヴァー・トゥイスト / クリスマス・キャロル / 二都物語 / 大いなる遺産、他

『クリスマス・キャロル』は1843年に発表されたディケンズの代表作のひとつです。
主人公のスクルージは、けちんぼう!金銭欲のかたまり、強欲で冷酷、腹のうちを見せず、うちとけることなく、孤独な人。
あるクリスマス・イヴの夜、スクルージのもとに以前仕事のパートナーだったマーレイの幽霊が訪れます。引きずるほどに重くて長い鎖を透き通った体に巻きつけたマーレイの幽霊は、自分の死後の世界について語りはじめます。そして最後に、マーレイの幽霊はクリスマスが大嫌いなスクルージへのクリスマスプレゼントを言い残し、消えてしまいました。

3人の精霊がやってくるだろう。

「過去の精霊」「現在の精霊」「未来の精霊」、マーレイの幽霊が予告した通りに次々と現れる精霊たち。このプレゼントはマーレイ自身の贖罪であり、スクルージがマーレイと同じ運命を免れるための機会と望みだとマーレイの幽霊は言っていましたが・・・

初めて読んだ子どもの頃は、幽霊や死神(のような精霊)が登場するシーンの気味の悪いスプーキー(spooky)な雰囲気の印象が強く、精霊の来訪とともに変化していくスクルージの心の様子や行動、ハッピーエンドに「ほっ」とひと安心。また、あるときは、「やっぱり幸せって、お金なのかな?」と、それまでハッピーエンドだと思っていた結末を疑ってみたり。読むたびに大きく印象が変わります。

今回の謎は、「お金の力」。
スクルージがお金に取り付かれてしまうようになったのはどうしてだろう?
何が原因で、あんな嫌われ者のけちんぼうになってしまったんだろう?

お金で幸せを手に入れることが出来るか?

もちろん、お金は大切。
お金で助かる命もあるし、日々の生活を支えるためにもお金は必要。
でも、「お金の力」は絶対的では無いし、価値も大きく変動することがあります。
きっと、スクルージは「お金の大切さを知っていたから」けちんぼうになったんだ、と思いました。お金の必要性を痛感するような出来事を過去に経験していて、お金のことをとても大切に思うようになって、無駄や贅沢をしないようにしていたら極端になってしまって・・・
「お金」が1番大切なものと信じるようになっていたスクルージは、「何のためにお金が大切なのか?」というお金の大切さを見誤っていたんだと思います。

作品を理解するのに時代背景や宗教観を無視することはできませんが、それでも、
誰でも知っている「大切なもの」って、あると思う。

守銭奴やケチな人の意味の英語「scrooge(名)」スクルージは、『クリスマス・キャロル』の主人公エベネーザ・スクルージの名前が由来になっているそうです。

映画『
クリスマス・キャロル』公式サイト
監督:ロバート・ゼメキス
主演:ジム・キャリー
ロバート・ゼメキス『クリスマス・キャロル』はまだ観ていませんが、どんなクリスマス・キャロルに仕上がっているんでしょうね!


ミユウ

 
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2009年10月26日

RDG2 レッドデータガール2 はじめてのお化粧 荻原規子 角川書店

RedDataGirl-2.jpgRDG 2 レッドデータガール 2 はじめてのお化粧
荻原規子
角川書店






身の丈より大きな物に接すると、わかってくることがあるんだよ。

大地がもたらすものとの直接対話を、人間がまったくもてなくなったとき、われわれはおそらく地球環境から弾きだされる。地球はめったなことで滅亡しないが、人類滅亡は本当にたやすいことなんだよ。
地球がその気になりさえすればね。

選ぶのは泉水子だ。

絶滅危惧種ガール
山伏の修験場として世界遺産に認定される紀伊玉倉(たまくら)神社に生まれ育ち、一度も山から出たことがない鈴原泉水子(すずはら いずみこ)。高校生になった泉水子は生まれ育った玉倉神社を離れ東京の鳳城学園に入学、学生寮での寄宿生活が始まります。

真に保護すべき人材・・・人的世界遺産の認定?
公に、国家や世界人類規模で保護するプロジェクト。

どうやら、鳳城学園には特殊な生徒が集められている・・・らしい!?
姫神と山伏(やまぶし)、陰陽師(おんみょうじ)に忍者、歌舞伎、パートナー枠、生徒会執行部、非常勤講師、深まる謎・謎・謎!!!

どこまでを分かち合えば、その人を友だちと呼べるのだろう。

冷たい態度は“ヤキモチ”?
泉水子と相楽深行(さがら みゆき)君の進捗も気になりますが・・・
RDG 2ではユニークなキャラクターの登場人物が盛りだくさん!
泉水子のルームメイトの宗田真響(そうだ まゆら)は、学園内にSFMと呼ばれるファンクラブを持つ聡明な美少女、只者ではない存在感の馬好きの弟真夏(まなつ)、そしてもう1人の弟真澄(ますみ)、宗田三つ子に注目です!!
あと、影の生徒会長で歌舞伎役者の村上穂高(むらかみ ほだか)、生徒会執行部周辺の不穏な動きが気になります。

ものを見るのは、目ではなく脳よ。
見たもの聞いたもの、さわったものも匂いもすべて、感覚は脳で解釈してそういうものになっている。言ってみれば、私たち、脳の内側に存在したものをそこに存在すると信じるの。実在するかしないかを言いはじめたら、この世にあるものすべてを、実在するかしないか問わねばならなくなる。
そういう場所にいるんだと思う。

はじめてのお化粧は・・・
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2009年10月04日

ドリーム・ギバー 夢紡ぐ精霊たち ロイス・ローリー 金の星社

dreamgiver.jpgDream-giver Littlest One
ドリーム・ギバー 夢紡ぐ精霊たち
作 ロイス・ローリー / 訳 西川美樹
装画 酒井駒子
金の星社




ドリームギバーの仕事、
それはすなわち、夢を贈ること。

「夢贈り」と呼ばれる夢を挿入する作業は、まず、記憶や色、言葉、香り、忘れられた音のほんのちっぽけなかけらなど、部屋の中の“物”に触れて夢の材料を集めます。はるか遠い昔から、ついきのうのことまで、さまざまな過去の切れはしを集めて、よくよく選んで組み合わせ、夢をこしらえます。そして、その夢を、眠っている人間にそっとすべりこませます。

生まれたてのほやほや新人“夢の精霊”リトレスト(Littlest)が「夢贈り」の相手として受け持ったのは虐待で心身ともにキズを負った少年。夢贈りの仕事に興味津々で好奇心旺盛なリトレストは、教育担当の先輩精霊エルダリー(Elderly)とコンビで修行にはげむ毎日を過ごしていました。

ところが・・・
眠っている人間に残酷な悪夢を吹き込む“シニスティード”がターゲットに狙うのは、いちばん弱くて傷つきやすい人間。
“シニスティード”たちは、リトレストの受け持つ少年を襲う準備を始めていました。

チカラヲツケテアゲル

リトレスト&エルダリー対シニスティードの戦いが始まります!

『イマジネーションや記憶には心を癒す力がある、というのがこの物語のテーマです。』
“シニスティード”に対抗するためにリトレストが集めた“かけら”は、“だれかを大切に思う気持ち”や“自分はひとりじゃないという安心感”。

われわれ人間は
夢と同じもので織りなされている、
はかない一生の仕上げをするのは眠りなのだ。
シェイクスピア「テンペスト」

シャイクスピア「テンペスト」から引用の捧文で始まる「ドリーム・ギバー」。
良い夢も、悪夢も、妄想も、そして、未来への希望も、小さくて好奇心旺盛なリトレストも、優しくて思慮深いエルダリーも、“夢”は私たちの中にあって、私たちをつくっている一部。
大切なかけらは、いつでも身近にあって軽く触れるだけで“力”になるということ。

眠りは、治癒力。精神的または肉体的外傷で大きくショックを受けた場合、体が自然と睡眠状態になることもあるそうです。

どんな生きものにも、かならず影はできるのよ。光の生みだす現象ですから。

Sweet dreams,


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ミユウ
 

2009年09月09日

ちいさなまなざし 酒井駒子の絵本 / MOE(2009年10月号)白泉社

MOE2009-10.GIFちいさなまなざし 酒井駒子の絵本
MOE(2009年10月号)白泉社






絵本の雑誌「月刊MOE(モエ)」2009年10月号は、
BとIとRとD」の出版記念、デビュー10周年の酒井駒子さんの大特集号です。
酒井駒子さんのインタビューや愛猫たちと酒井さんのツーショットフォトなど盛りだくさん!
酒井駒子さんファン必見の1冊です♪

yorukuma_postcard.JPG<付録> ポストカードブック(ポストカード6枚セット)
・ 「図書館」「お友達」 / BとIとRとD
・ 「森」 ・ 「おかいもの」
・ 「クリスマスのまえのよる」 / よるくま
・ 「あかずきん」

さらに!
「酒井駒子×ぞうさんペーパースケッチブック」
中綴じのアンケートハガキ“MOE愛読者カード”を送ると、抽選で応募者300名に「酒井駒子×ぞうさんペーパースケッチブック」のプレゼント♪
さっそく応募しました。当たるかな・・・ドキドキ!!


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ミユウ
 
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2009年06月28日

BとIとRとD 酒井駒子 白泉社

BtoItoRtoD.gifBとIとRとD(ビートアイトアールトディー)
酒井駒子
白泉社





懐かしい手触り・・・
画用紙とか、ダンボールとか、
装丁の、全体的にマットな風合いから、
優しさや温かさが伝わってきます。

小さな小さな女の子が主人公で、名前を□(しかく)ちゃんと言います。

ある日の幼稚園、
天気はカミナリ。□(しかく)ちゃんと子ども達は、壁にピッタリくっついて、窓の外の様子をながめていました。

「カミナリは、町では、ビルにおちます」
「カミナリ、道では、自転車におちます」
「カミナリ、森では、木におちます」
「カミナリ、畑では、リンゴにおちます」

みんなは「えー?」と、言いました。

あのね、リンゴは小さいから、小さい小さいカミナリがおちるの・・・

私も、幼稚園の頃、雨の日に母と一緒にピアノ教室に通っている途中で、歩いているすぐ近くのビルにカミナリが落ちたことがあります。
一瞬、自分の周囲には真っ白な光しかなくて、突然1人で何も無い世界にはじき飛ばされたような感覚でした。
きっと、□(しかく)ちゃんも、小さいリンゴに小さな小さなカミナリがおちるところを見たことがあったのかな?と。

酒井駒子さんの描く小さな世界を見ていると、
いつも心がほどけてくるような気持ちになります。

アントの雑記帳」のアントさんより、「BとIとRとD」の情報をいただきました。
ご紹介、ありがとうございました。
これからもよろしくおねがいします!


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ミユウ
 
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2009年05月02日

復讐の誓い クロニクル千古の闇(5) ミシェル・ペイヴァ− 評論社

oathbreaker_jp.jpgOATH BREAKER
復讐の誓い クロニクル千古の闇 (5)
ミシェル・ペイヴァ− / 訳 さくまゆみこ
画 / 酒井駒子
評論社

評論社HP
第5巻Oath Breaker第1章をご紹介!


なんの予兆もなしに起こる出来事もある。

聖なる林に、どこからともなく激しい風が吹いてきて、
枝をゆらゆら揺すったが、音はしなかった。
雲が裂けて太陽があらわれ、
二本の巨木は目に痛いほど緑色に燃え上がった。

1人だけ閉じこめられて切り離されているような気がする。
隔てる壁は目に見えないが、真冬の氷のように溶けていかない。

悲しみに心を割く余裕などないのかもしれない。

おまえに勇気があるなら・・・

確かなことはどこにもないのだ。
そう思うと、さわやかな、ひんやりした風が体の中を吹き抜けていくような気がする。

お待たせしました!
クロニクル千古の闇第5巻「復讐の誓い」、シリーズ最終巻となる次回作「クロニクル千古の闇第6巻」に向けて物語は佳境へ。

「こんなこと望んでなかったよ!」

何故、復讐心を持ってはいけないのだろう?
大事なものを奪われる。怒りを感じる。
その先に、何も無くても、決して取り戻せないものだとわかっていても。

深い森、聖なる林、偉大なるイチイ、天地万物の精霊、邪悪な行いを正すために・・・
今から6000年前、人々と動物たちの境界が近く、土地は森林でおおわれていた時代。「生霊(せいれい)わたり」という特殊な能力を持った少年が主人公のファンタジー小説です。
すべての努力が報われるわけではない。
厳しいけど、現実的。多数決が正解とは限らない“正しさ”。
迷いながら、脅えながら、もちろん無敵のヒーローじゃなくて、仲間とも上手く付き合うことができない。そんな不器用な主人公トラクの世界に引き込まれます。
邦題「復讐の誓い」は、内容にピッタリのタイトルだと思いました。

思いっきりのばした指先で触れることができるもの・・・
そんなにたくさんあるわけじゃないのに、そして触れられるものすべてがとても大切なものなのに、その大切さを忘れてしまうことがある。

mountain_of_the_world_spirit.JPG



追放されしもの (4) ← → 決戦のとき (6)
近刊案内 クロニクル千古の闇(6)「決戦のとき」2010年3月末発売予定!

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ミユウ


 
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2009年03月04日

夏の水の半魚人 前田司郎 扶桑社

natsu-no-mizu.JPG夏の水の半魚人
前田司郎
装画 酒井駒子
扶桑社
第22回三島由紀夫賞受賞作品
おめでとう、半魚人!!


魔法があるんだ。

僕の名前は「魚彦」。
僕の変な名前はお母さんの初恋の魚から来ているのだった。

そのちょっとの差が面白い。
ちょっとだけ違うけど大体同じっていうのが僕には面白く感じる。
だから、未来の人間もきっと僕らと大体同じでちょっとだけ違うのだ。

月に居るはずだった人たちはどっかに消えた。
火星も無人。
家の屋上で鯨を飼ってるってのも嘘。

生まれる前に僕は居たんだろうか。
生まれる前の僕が、
その沢山沢山ある道の1つをなんとなく進んでその道を通った先が、今の僕だったとしたら、ぼんやり隣の道を選んでいたら僕は魚に生まれたかもしれないし。

僕は耳を澄ました。
目を閉じたら、そこが海の中のように思えた。

― 現実味 ―
品川に住む小学5年生「魚彦」が主人公の少年物ストーリーです。
小学5年生の頃って年齢的にも中途半端で、急に身近な周辺世界に現実味を感じるようになってきて、自分の中にある“不安定なもの”の存在を意識するようになる時期だと思います。
そんな少年期の日常に起きる「事件」や「冒険」が描かれた、もの凄くドラマチックというわけではありませんがとても読み心地の良い作品でした。

著者の前田司郎氏についてチェックしていたら、
NHK特集ドラマ「お買い物」の脚本を担当された方でした。
普段はリアルタイムでTV番組を見る機会がほとんどありませんが、先日偶然見てとても気に入っていたドラマの脚本家の方だったのでビックリ!

ドラマ「お買い物」は、
田舎暮らしの老夫婦が、渋谷へ“お買い物”に出かけることに・・・
フローズンドリンクに四苦八苦する奥さんに代わってストローを吸うお父さんが倒れてしまうんじゃないかとドキドキ、真っ赤なブルゾンがお似合いでした!
ほのぼのとした日常風景が描かれた物語。
ドラマを見ているうちに両親に会いたくなりました。
言葉や形に出来ない大切なものがギュっと詰まった作品です。
劇団「五反田団」 / 前田司郎


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2009年02月13日

くまとやまねこ 湯本香樹実 / 酒井駒子 河出書房新社

kuma_to_yamaneko.jpgくまとやまねこ
湯本香樹実 ぶん / 酒井駒子 え
河出書房新社




初めて手に取ったとき、「良い本」だと思いました。

でも、正直に言うと、個人的にはピンときていませんでした。

「死」に対して優しい気持ちになれなくて。

ねえ、ことり。
きょうも『きょうの朝』だね。
きのうの朝も、おとといの朝も、『きょうの朝』って思ってたのに、ふしぎだね。
あしたになると、また朝がきて、あさってになると、また朝がきて、
でもみんな『きょうの朝』になるんだろうな。

そうだよ、くま。
ぼくはきのうの朝より、あしたの朝より、
きょうの朝がいちばんすきさ。

突然、最愛の友だち“ことり”をなくしてしまった“くま”。

もう一度手にとって、何度も何度も読み返して、気がついたこと。

くらべる必要は、無いかな。

悲しみの程度、対処の方法。
私の持っているものは、私のもので、私だけのものだから、
誰とも比べる必要は無いかな。

改めて、素直に「良い本」だと思います。

第1回 MOE絵本屋さん大賞 第1位受賞作品


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ミユウ
 
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2009年02月03日

真夜中の飛行 リタ・マーフィー 小峰書店

night-flying.jpgNIGHT FLYING
真夜中の飛行
リタ・マーフィー / 訳 三辺律子
挿絵 酒井駒子
小峰書店




空気が十分たまっていた。空気を解き放って、飛び立つ。
まるで優しい手にふわっと持ち上げられるような・・・
風に身を任せて上昇していくときの、あの気持ち。

― 空を飛ぶということ ―
「できるだけ速く走るのよ。そうすれば、余計なことを考えなくてすむから」
いちばんむずかしいのは離陸。色々考えすぎると、こわくなってしまう。
気流、エアポケット、鳥たちをあなどってはいけない。ぶつかるとかなり痛い。
月へ飛んでいくとか太陽のそばを飛ぶという話は、神話の中だけ。
酸素レベルをこえた高度までいける人間はいない。
(やってみようとした者はいたけれど。)
おなかと胸の下に空気をじゅうぶんにためて、
あとは、そのまま空気に身を任せ、ふわりと舞い上がればよかった。

ハンセン家の女性たちは、代々空を飛ぶ能力を受け継いでいます。女性にだけ遺伝する能力で、もちろん主人公ジョージアも空を飛ぶことができます。
女系家族のハンセン一家の女性たちは、空を飛ぶ能力を守るため、厳しい規則に従って暮らしていました。

守りたいもの、残したいもの、伝えたいもの。
私たちの記憶は曖昧で、何でもすぐに忘れてしまう。
“伝統”と“規則”は違うような気がするけど。
本当に大事なことは、忘れない。

もし、空を飛べたら・・・
鳥のように空を飛ぶこと=「自由」のイメージがありますが、鳥は空を飛ぶとき自由を感じながら飛んでいるのでしょうか?もし、鳥が自由を感じながら飛んでいるとしたら、歩いたり走ったりしている私も、鳥と同じぐらい自由なのかな、と。

in the sky
空はどんな感じ?プールみたい?それとも海?
プールで泳いでいるときはプールの音が聞こえるけど、
空を飛んでいるときも、空の音が聞こえるのかな?
スピードは?空気抵抗とかあるよね。でも、
泳ぐのはそんなに得意じゃないから、たぶん、空を飛ぶのも遅いかも。
真夜中の飛行もワクワクするけど、やっぱり、晴れた日の青空が大好き。
両腕をぴったりと脇につけたロケットスタイル。
いつもより少しだけ高度を上げてみる。
ぎゅっと目を閉じてしばらくそのまま、それからパッと目を開けると、
瞬間、一面の青。まるで、体が融けて空の一部になったような感じ。


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ミユウ
 
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2009年02月01日

母の友 福音館書店

hahanotomo_calendar.JPG


書店の絵本コーナーで偶然見つけました♪
<「母の友」内容紹介パンフレット>
1953年の創刊から今年で56周年を迎える月刊誌「母の友」の内容紹介見本(無料配布)で、パンフレットの裏面は2006年4月号より表紙絵を担当されている酒井駒子さんの2009年度(2009年4月〜2010年3月)用表紙絵ポスターカレンダーになっています。

「あっ、この子、知ってる!」
酒井駒子さんの描く子どもたちはかわいらしいだけじゃなくて、胸が詰まるような切なさ、とても懐かしい気持ちになります。
絵の中の子どもたちの視線はこちらを向いているわけではなくて、笑顔というわけでもないけど、つながっている感じ。
空気感。
ある意味、被写体としてカメラを意識したモデル(写真)よりリアルなんだと思う。
手を伸ばせば届きそうな距離を共有している親密さを感じます。

たぶん、私は、その視線の先を知っている。


hahannotomo.jpg母の友
福音館書店






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ミユウ
 
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2009年01月31日

その歌声は天にあふれる ジャミラ・ガヴィン 徳間書店

coram-boy.jpgCORAM BOY
その歌声は天にあふれる
ジャミラ・ガヴィン / 訳 野の水生
カバー画 酒井駒子
徳間書店



逃げないで。
自由になりたかったらね、
堂々と立ち去ればいいんだから。

― 望まれぬ命 ―
むかし、むかしのお話し。
と、言っても、今から300年ぐらい前のこと。
物語の舞台は18世紀の英国。
行商人オーティスの隠された実態。行商人オーティスの仕事のひとつに、親が“子育て”できない子どもたちを預かりロンドンの「コーラム養育院」へ連れて行く、「コーラム人(こーらむびと)」と呼ばれる仲介人の仕事がありました。
図体はでかくなったが、相変わらずオツムは弱い、“からっぽの器”オーティスの息子ミーシャクが見つけた“天使”とは?
一方、天才的な音楽の才能を持つ名門領主の長男アレキサンダーは、家の跡継ぎとしての人生と音楽生活との狭間で思い悩む日々を過ごしていました。
ボーイソプラノの歌声とともに、史実を題材に綴られた力強い作品です。

日本だと江戸時代、宮部みゆき「
孤宿の人」の時代背景がイメージ的には近いと思われます。
18世紀、貴族や富裕層以外の家庭の子どもたちは7〜8歳で徒弟に出され、家族と離れ、手に職をつけ職人になるための見習い生活を送っていたそうです。社会の労働力の一部として働く子どもたち。
貧困や病気、“子捨て”・・・顧みられない命。
生まれてきた「命」にとって、無事に生き延びるのが難しかった時代。
一説には、18世紀後半の労働者の平均寿命は20歳未満だったと言われています。

graph_of_life-span_in_Japan1947-2005.GIF厚生労働省発表(平成19年簡易生命表)によると、平成19年日本の男の平均寿命は79.19年、女の平均寿命は85.99年。
もちろん、病気、衛生や医療、栄養、生活様式、戦争・・・寿命に影響を与える様々な要因の違いはあると思いますが、生命体としての寿命は18世紀の頃も現在もそれほど極端な差は無かったんじゃないのかな?
今の時代も、“生きる”はそんなに簡単なことだとは思わないけど。
時代に関係なく、現在でも妊娠や出産は、母体や生まれてくる子どもにとっては命懸け。

もし、まなざしのみが武器ならば・・・
もし、まなざしのみが言葉なら。

1741年ロンドン、トマス・コーラム船長によって設立された「コーラム養育院」がきっかけとなって、イギリスでは “子育て”への考え方が次第に変わっていったそうです。

昨日より今日、今日より明日が、
少しずつでも良くなっていけばいいのに。と、思う。


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ミユウ
 
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2009年01月28日

RDG レッドデータガール 荻原規子 角川書店

RedDataGirl.jpgRDG レッドデータガール はじめてのお使い
荻原規子
角川書店





見られるのが怖いのは、傷つけられるのが怖いから。
見られるのが恥ずかしいのは、自分で自分を否定しているから。

今の自分をあきらめなくてもいいのだ。
きっと、いつまでも今のままではいないだろう、
新しい世界を切り開くことからしりごみしてはいけない。

鈴原泉水子(すずはら いずみこ)中学3年生
内気すぎる性格のため、学校でも生徒同士の仲間づきあいに加われず、学校と神社の往復以外は寄り道ひとつしたことがない。ものごころついたときから伸ばし続けている長い髪の2本の三つ編みと赤ぶちのメガネがトレードマーク。
母親の勤務先は警視庁公安部、父はコンピュータプログラマーでカリフォルニア・シリコンバレーに単身赴任中。
住まいは、紀伊半島の山奥、世界遺産の保護指定を受けている霊山・玉倉山の神社内。

相楽深行(さがら みゆき)中学3年生
スポーツ万能、成績優秀、長身、ハンサム、モテ系。
「身分がちがいすぎる。なれるとしたら、せいぜい下僕とわきまえるんだな」!?
深行が泉水子の“下僕”になる可能性は、今のところゼロ。

巻頭に“レッドデータ”の用語解説が掲載されていたので直訳すると、タイトルの「RDG レッドデータガール」は、“絶滅の危険性がある少女”になるのかな?
表紙に描かれた巫女装束の少女、作中に登場する神社、姫神、山伏、修験者・・・など、純和風なストーリーを想像していましたが、内容は内気な少女が“自分”にまつわる秘密と向き合いながら成長していく学園ミステリー&ファンタジー系の作品です。
謎が満載、今後の展開が気になります。
えーと。次回作の装画は、「深行くん」でお願いします。(是非!)

RDG 2 レッドデータガール 2 はじめてのお化粧

redlist2008.jpgレッドリスト・レッドデータブック(RDB)とは、
絶滅のおそれのある野生生物について記載したデータブックのこと。日本では、環境省が野生生物の保全のためレッドリスト(日本の絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト)を作成・公表するとともに、これを基にした
レッドデータブックを刊行。
IUCN(国際自然保護連合)レッドリスト

余談ですが・・・
NHKスペシャルTV「男と女」(2009年1月放送)では、男性をつくる鍵となるY染色体がどんどん短くなっていて、500万年後には消滅するかもしれない!?という説も紹介されていました。
むむっ、500万年後・・・と、言われても、
数万年前のクロマニョン人たちも現在の私たちがコンクリートの建物の中で生活しているなんて想像できなかったでしょうね。


酒井駒子 リスト


ミユウ
 
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2009年01月27日

金曜日の砂糖ちゃん 酒井駒子 偕成社

LeSucre_de_Vendredi.jpgLe Sucre de Vendredi
金曜日の砂糖ちゃん
酒井駒子
Luna Park Books(偕成社)



絵本作家でもある酒井駒子さんの作品には、装画や挿絵など絵だけを担当された作品の他に、たくさんの素敵な絵本があります。
「金曜日の砂糖ちゃん」は、絵・文ともに酒井駒子さん作の3つの物語が収録された絵本です。
3つのお話しにはそれぞれに、魅力たっぷりの3人の子供が登場します。

*ブラティスラヴァ世界絵本原画展 2005年度「金牌」受賞作品
スロバキア共和国の首都ブラティスラヴァで2年に1度開かれる、世界最大規模の絵本原画展。

― 金曜日の砂糖ちゃん ―
カマキリに守られながら庭でお昼寝する女の子のお話し。
皆から、“金曜日の砂糖ちゃん”と呼ばれています。
まるで、小さな小さな眠り姫のようにぐっすりと眠る“金曜日の砂糖ちゃん”。
毎週金曜日に庭でお昼寝をするから“金曜日”なのかな?と思っていたけど、「また 明日ね・・・」と言ってたから、お昼寝は金曜日だけではなさそうです。
どうして“金曜日の砂糖ちゃん”なんだろう?

カマキリが、いじらしい。

― 草のオルガン ―
今日 ぼくは
さみしいことが あったから
つまらないことが あったから
知らない道を とおって 帰る。

さみしいことと、つまらないことがあった男の子のお話し。
草のオルガンはひとつも音がでなかったけど、オルガンを弾いてるうちに・・・
ドレミッミッ ソラソッソッ ミレ ドーレーミー
この曲、知ってるような気がする・・・?(何の曲?)

― 夜と夜のあいだに ―
夜と夜のあいだに起きて、家を出る女の子。
ドレス代わりの母親のシュミーズ、髪をとかし、扉をあけて。
所持品は、クッキーの缶に入った、糸と、針と、ひとつかみのボタン。

3つの物語のその後のお話しを想像してみました。
カマキリに強力なライバル出現!それは、草のオルガンの男の子でした。
大きくなって“金曜日の砂糖ちゃん”と草のオルガンの男の子は結婚。2人の間には、女の子が生まれます。ちなみに、“金曜日の砂糖ちゃん”がママからもらった結婚の贈物は、「糸と、針と、ひとつかみのボタン」。
“金曜日の砂糖ちゃん”の娘は、お昼寝が大好き。毎日庭でたっぷりとお昼寝をしているので、ときどき夜中に目が覚めてしまいます。
ある夜のこと・・・


酒井駒子 リスト


ミユウ
 
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2009年01月25日

ビロードのうさぎ マージェリィ・W・ビアンコ / 酒井駒子 ブロンズ新社

TheVelveteenRabbit_SakaiKomako.jpg The Velveteen Rabbit
ビロードのうさぎ
マージェリィ・W・ビアンコ / 原作
酒井 駒子 / 絵・抄訳
ブロンズ新社



酒井駒子さん(絵・抄訳)による日本語版「The Velveteen Rabbit(初版1922年)」。
名作絵本のリメイクについて、
「ビロードのうさぎ」は、ウィリアム・ニコルソンの絵本も見ているし、絵本として出会った作品です。もちろんすばらしすぎるから超えるとかは考えませんが、自分だったらこう描くというイメージもあったから、そこを頼りに描きました。
(「
Pooka+ 酒井駒子 小さな世界」インタビュー記事より抜粋)
表情豊かに描かれた、酒井駒子さんの「ビロードのうさぎ」は、絵本の中のうさぎと少年をギュっと抱きしめたくなるような、優しさとかわいらしさの詰まった1冊です。

“ぬいぐるみのうさぎ”が本物のうさぎになるまでの冒険の物語。
クリスマスプレゼントのひとつとして少年に贈られた“ぬいぐるみのうさぎ”。
「ふっくらしたからだに ピンクサテンの耳」
ビロードのうさぎをもらった“ぼうや”は、最初の2時間ぐらいはうさぎに大喜びでしたが、新しい別のプレゼントをもらうとそちらに夢中になってうさぎのことは忘れてしまいます。

長い間、子どもの本当の友だちになった、心から大切に大事に思われたおもちゃは、
“ほんとうのもの”になる。
子供部屋のすみっこで、ウマのおもちゃから聞いた「子供部屋の魔法」の話。

人工物から生命へ。ピノキオやアトム・・・
“物”って、何だろう?
“心”って、何だろう?

所有物という感覚とは違うと思うけど、大切にしていた“物”を無くしたり、捨ててしまわなければならなくなったとき、一緒に体や心の一部を失ってしまうような気持ちになります。
寂しさや悲しみというより、痛みに近いかも。


VelveteenRabbit_WilliamNicholson.JPG
The Velveteen Rabbit or How Toys Become Real / 初版1922年
Margery Williams Bianco(マージェリィ・W・ビアンコ / 1880-1944)
イラストWilliam Nicholson(ウィリアム・ニコルソン)
(flip book with original illustrations) at Internet Archive
*原文(英語)とウィリアム・ニコルソンの挿絵が見れます。
*画面右側の三角マークをクリックするとページをめくれます。


(メリル・ストリープ)
The Velveteen Rabbit narrated by Meryl Streep



映画版「
The Velveteen Rabbit」 / Feature Films for Families
*Trailerの枠内“再生ボタン”をクリックすると予告編(英語版)が見れます。


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ミユウ
 
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2009年01月23日

黒い壁 赤川次郎 角川文庫

die-schwarze-mauer.jpgDie Schwarze Mauer
黒い壁
赤川次郎 / イラスト 酒井駒子
角川文庫




帰宅途中、目の前で突然銃殺された女性。
気がつくと現場にあるはずの死体が見当たらず、血痕すら無くなっていました。
37歳、会社員、男性、3LDKの公団の団地に独り住まい、年下の彼女と社内恋愛中、平穏な日常を過ごしていたはずの主人公が遭遇した“ある殺人事件”から物語は始まります。

ホラー?それとも、SF?謎のトンネル・・・!?
スピード感のあるストーリー展開に引き込まれます。
「ベルリンの壁」にまつわる題材を扱った、内容的にはかなり重い感じですが、シリアスな雰囲気を崩さず、恋愛や少女の恋心を絡ませながら読みやすい作品に仕上がっています。

「国境」のイメージ・・・
正直、あまりピンときません。
日本は島国で、隣国とは海を介して隔たっています。
普段の生活の中で、海に囲まれた「島国」に住んでいることを意識する機会も少ないかも。

「壁」のイメージ、
最初に思い浮かぶのは、雨や風、暑さや寒さから身を守ってくれる「家の壁」。

ベルリンの壁(Berliner Mauer)
1961年、東ドイツによって建設が開始された東ドイツ(東ベルリンを含む)と西ベルリンを隔てる壁。最初の「壁」は有刺鉄線の壁で、次いで石造りの壁が建てられ、最終期のものはコンクリート造で総延長は155kmに達していたそうです。
1989年の「ベルリンの壁崩壊」で東西ドイツの自由往来の制限が緩和され、「ドイツ再統一」へと動き出しました。

2009年の今年は、「ベルリンの壁崩壊」から20年。
「ベルリンの壁」については、映画「
グッバイ・レーニン」が印象的でした。


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ミユウ
 
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2009年01月10日

ノック人とツルの森 アクセル・ブラウンズ 河出書房新社

kraniche-und-klopfer.jpgKraniche und Klopfer
ノック人とツルの森
アクセル・ブラウンズ / 訳 浅井晶子
装画 酒井駒子
河出書房新社



ノック人というのは邪悪な人種で、
小さな子供をぺったんこにひきつぶすのが好きなのだ。

身を守るための唯一の武器は用心深さだ。

ゴミ屋敷、養育放棄、暴力・・・
ゴミ屋敷のシーンでは奥田英朗「
ララピポ」、養育放棄の虐待(ネグレクト)については映画「誰も知らない Nobody Knows」や古川日出男「ハル、ハル、ハル」を思い浮かべながら読みました。

アーデルング・ハウスの外の世界は、ノック人の国。
今日は、入学式。
外の世界から隔離され“幸せ”に暮らしていた主人公の少女アディーナは、今日からノック人の学校に通うことになりました。
危険なノック人に気をつけなくちゃ。

“なんてきれいなの”
“よく見てみなくちゃ”
“ああ、これは大切”
“とても捨てられないわ”

幸福には独自の法則がある。
廃棄物を家に持ち込み続けるアディーナの母、庭付きの大きな家(屋敷)の中はゴミで埋め尽くされていて、部屋への移動はゴミ崩れの危険を伴う“命がけ”。
学校では、クラスのいじめっ子グループから受ける毎日の暴力。
主人公アディーナの視点で語られる3年間(6歳〜9歳)の物語は、気が滅入るほど暗い内容ですが、何故か軽やかにさえ思えてしまう読み心地で、読了後も「もっと続きを読みたい」と思える、不思議な魅力(もしくは、魔力)を持った作品です。

― お片づけ ―
身の回りの“整理整頓”や“清潔”は大切なことだと思います。
「お片づけ」は、幼いころからの教育で身につけた習慣だけど・・・
もし、誰かに教えてもらわなかったら?
どこまで整理して、どれぐらい清潔を保てばいいんだろう?

残された空間を埋めるために拾い集めた物は、“まだ使えそうな物”。
もちろん、アディーナの母の行動は逸脱しています。
物語が幼いアディーナの視点で語られているので、アディーナの母カーラの心情や行動の意味については謎のままですが、カーラは遺されたことを捨てられて置いていかれたように感じていて、だから、捨てられて終わってしまうゴミを見過ごせなかった。ゴミを拾い続けることは、カーラの「生への執着」まだ生きていけるといった気持ちが具象化されたものなのかな?という気がしました。

ドイツの作家、著者のアクセル・ブラウンズ氏は幼少時、(自閉症のため)言葉を介さず外の世界を知覚してきましたが、両親の仕事“クロスワード作成”の影響で言語感覚を身につけることができるようになったとのこと。


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ミユウ
 
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2009年01月07日

空から兵隊がふってきた ベン・ライス アーティストハウス

specksinthesky.jpgSpecks in the Sky
空から兵隊がふってきた
ベン・ライス / 訳 清水由貴子
装画 酒井駒子
アーティストハウス



父さんが出ていって225日めの朝、
家の上の広い大きな青空に、突然いくつもの小さな点が現われた。
主人公のライダー・ジャーヴィスは、ショートカットの似合うお転婆な女の子。
家出した父親が残したラクダ牧場に、母さんとアイリーン(姉・15歳)とライダーの3人で暮らしていました。

そんなある日、突然空からピンクのパラシュート、赤いジャンプスーツに白いヘルメット姿の15人の兵隊たちが次々と、うちの庭に降りてきた。

あやしい・・・!

われわれの飛行機で緊急信号が作動し、対処不能な事態が発生したため、その後、重力誘導型落下によって、時速110マイルで氷点下のなかを降下しはじめたのです。

あやしい・・・!!

女性だけの家に、降ってわいた15人の奇妙な兵隊たち。(兵隊は全員男性)
礼儀正しいし、働き者だし、それにハンサム。好感度

でも、
あやしい・・・!!!

うん?えーっ!これでいいの!?
ドタバタとストーリーは展開。そして、エンディング。

???

前作「
ポビーとディンガン」も、捉えかたによっては少々ブラックな印象の作品でしたが、「空から兵隊がふってきた」はブラックな部分がさらに強調された感じの作品でした。
作者の書きたいことはわかるような気がするけど。
たぶん、このドタバタ劇は主人公ライダーの“白日夢”とか“悪夢”みたいなもので、両親の離婚によるショックとか、少女期の幻想とか、不安定な世界を描いた物語なんだと思います。

それにしても・・・
かなりハチャメチャなストーリー。


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ミユウ
 
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2009年01月06日

こうちゃん 須賀敦子 河出書房新社

ko-cian.jpgこうちゃん KO-CIAN
文 須賀敦子 / 画 酒井駒子
河出書房新社





みえなくても きこえなくても、きっと どこかで
ちいさく あかるく わらいながら。

「ゆき、すき?」

霧のふかい冬のあさ、おどる金色の太陽。
澄んだ月の夜の、やさしい荻の咲きみだれた野。

こうちゃんはしんとして、たかく ひくく うたいつづけていました。

そう、なめらかな きんの蜜を、お日さまいろの蜜を。
たったすこしで いいんです。

こうちゃんは ある夏のあさ、
しっとりと 露にぬれた草のうえを、
ふとい鉄のくさりをひきずって 西から東へ あるいて 行くのです。
こうちゃんのうしろには、
たおれた草が 一直線に つづいてゆきます。どこまでも、どこまでも。

こうちゃん?
誰一人としてこうちゃんが、どこの子なのか知っている人はいない。

こうちゃんのいる風景。
小さかった頃の自分や、幼い妹や弟、もしかしたら、父や母の子供時代かも。
こうちゃんは、さびしがり屋で、泣き虫で、わらぞうりを履いてることもあるけど、赤いマントのオーバーを持っていて、でも、ひとりではオーバーを着れなくて。
こうちゃんは、透きとおった声で歌います。
くつくつと笑ったり、あははと小さく笑います。
そして、秋になるとかえりたがったり。

“絵本”と言うよりは、ピクチャーブックといった感じの作品です。
全体的にはひらがな表記の傾向ですが、特に“子供向け”を意識して書かれたものではないような印象を受けました。
須賀敦子さんの文章に、酒井駒子さんの挿絵がベストマッチな1冊です。

「懐かしさ」って。楽しかったり、嬉しかったり、幸せだったりするけど、その後に寂しさや切なさがくっついてくる。ちょっとだけ苦手、でも、嫌いじゃない。

優しさは 小さな手のぬくもり
今はいない誰かとか
無性に空が恋しくて
声に出さずに 呼んでみる


glory.JPG




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ミユウ
 
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2009年01月05日

僕がほしいのはパパとママと釣りざおだった リチャード・ミニター PHP研究所

thethingsiwantmost.jpgThe Things I Want Most
僕がほしいのはパパとママと釣りざおだった
リチャード・ミニター / 訳 雨海弘美
イラスト 酒井駒子
PHP研究所



鷹はなぜ翼を羽ばたかせずに飛びつづけられるのだろう?

騒ぎを起こすのは、
何かがほしいとき、
何かを拒否したいとき、
何かを恐れているときの唯一の表現方法なんだ。

“里親プログラム”
育児経験のある夫婦のもとに1人の子供(情緒障害などを抱える問題児)を、心の傷を癒し子供を普通の環境に慣れさせる目的で長期間ステイさせ、その後、可能な場合は子供を生みの親に戻すことを目標とした包括的な支援を行う福祉プログラム。

両親からの虐待、情緒傷害、暴力、自傷行為、モンスター級の問題児・・・
マイク少年(11歳)は、生後15ヶ月で母親のもとから離され、3歳で母親と暮らし始めると昏睡状態になるまで殴られ、心理学者からは知能指数はきわめて低く行動は無節操と報告されていた。

里親プログラムの福祉機関へ提出するために書かれた日誌をベースに、マイクと里親のミニター家の出会いから始まる1年間の記録が小説のかたちにまとめられたドキュメンタリー作品です。
子育ての経験も無いし、里親プログラムも身近な感じでは無いし。正直、あまり興味を持てない作品かも。と、思いながら読み進めると・・・あまりにリアル。
ファンタジーじゃない“生身の現実”、嘘の無いストーリーにどんどん引き込まれていきました。

普通の人たちは、マイクみたいな子供とどう接するのかしら?

外側から見る限り、
怒りも悩みも抱えずに整理整頓された生活を送っている普通の人たち。
理想の子供、理想の親、理想の家庭。
非現実なものだから“理想”なんだと思う。怒りや悩みを感じない人が普通の人とは思えない。

お手伝いならできるよ。

マイクは普通の子。誰でもマイクだったことがあるはず。
命と心の境界ギリギリのマイクに向かって、本当は「頑張れ!」は、言えない。
これ以上、必死にはなれないよね。
最初、マイクの母親(生みの親)のことを酷いと思ったけど、マイクのお母さんにも物語があって、その物語の先は、きっと戦争とか歴史の話になってしまうんだと思う。
やっぱり、「頑張れ!」しか言えなくて。

駆け引きは必要ないし、キレイゴトは通用しない。

大好きな1冊。
読了後、マイクの作るブラウニー(チョコレートケーキ)が食べたくなりました。

thethingsiwantmost-back.JPG



*ロバート・A・ハインライン
夏への扉 / ハヤカワ文庫SF

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ミユウ
 
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2008年12月30日

耳に残るは君の歌声 サリー・ポッター 角川書店

themanwhocried.jpgTHE MAN WHO CRIED
耳に残るは君の歌声
サリー・ポッター / 訳 野沢佳織
装画 酒井駒子
角川書店




Who do you think is the man who cried?
Here is the answer.

激しく波音のとどろく夜の海。
うねる水面、黄金色の波 ― そう見えたのは炎だった。
海面をなめつくすように炎が躍っている。

彼女は、
黒い瞳に、怒りと悲しみを燃え立たせて。

もう一度聞きたい。

― 沈黙の鎧 ―
大切なものは何ですか?
友情、金、名声、権力、愛・・・?
母親のいない小さなフィゲレにとって、父親は彼女の世界の全てでした。父との突然の別れ、故郷を追われ、名前が変わった。人生と引き換えにフィゲレが手に入れたものは“沈黙の鎧”。そして、彼女は“歌声”を持っていた。
ロシア、ロンドン、パリ、ニューヨーク。激動の時代、戦乱に揺れる国々。
かすかに残る父の子守唄を頼りに、小さなフィゲレの旅が始まります。

いちばん危険なのは愛しすぎること・・・・・
愛しすぎて、別れの辛さに耐えきれなくなること。

だが生き残るには、それしか方法はないだろう?

もちろん、時代や状況に関係無く“生きる”ことは存在の原点で、私たちは生死を賭けた瞬間の連続の中に生きている。
“生きる”ことが選択肢の最優先事項にあるとき。
たとえば、戦争。
生き残ること以外に選択肢は無くて、それでも・・・
人間は、生き抜く強さを持っている。


themanwhocried-movie.jpg映画 耳に残るは君の歌声
ストゥーディオ・キャナル / ユニヴァーサル・ピクチャーズ
(2000年イギリス・フランス合作)
監督:サリー・ポッター
<キャスト>
クリスティーナ・リッチ
ジョニー・デップ

ジョニー・デップ出演の映画「耳に残るは君の歌声」は未観賞ですが、主人公スージー(フィゲレ)の恋人、白馬のジプシー・チェーザーの登場シーンではジョニー・デップを想像しながら読みました。イメージ的にはジョニー・デップ=チェーザーは適役だと思います。
あと、オペラのシーンにも興味津々。是非、映画も見てみたいです。

目を閉じてごらん
きっといけるから
夢見る人なら知っている。


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2008年12月28日

ポビーとディンガン ベン・ライス アーティストハウス

pobby&dingan.jpgPOBBY AND DINGAN
ポビーとディンガン
ベン・ライス / 訳 雨海弘美
装画 酒井駒子
アーティストハウス



ライトニング・リッジは大昔、海の底だったらしい。
海の底だったところにいまは乾いた大地が広がっていると思っただけで、背筋がぞくっとした。
そんな不思議なことが本当に起きるなら・・・

この世にはいない。目にも見えない。
ポビーとディンガンは、アシュモルの妹ケリーアンの空想の友達。
ポビーは男の子で、ディンガンよりも1歳上。右足がちょっと不自由。
ディンガンはすごい美人。それにとびきり頭がいい。“おへそ”にオパール飾っている。

オーストラリアのオパール鉱山の町、ライトニング・リッジが舞台の物語です。
主人公の少年アシュモルは、妹のケリーアン、オパールの採掘場で働く父さん、スーパーのレジの仕事にうんざりしている母さんの4人家族。妹のケリーアンには、目に見えない空想の友だちがいます。
ある日、ポビーとディンガンは父さんの採掘場で行方不明に!?
見えない「架空」の友だちを失ってしまったケリーアンは、失意のため病気になって、どんどん弱っていきました。

なかなか目には見えないものを信じることも、
さがしてもさがしても見つからないものをさがし続けることも。

だけどどうしたら、架空の友だちを見つけられる?

ケリーアンの病気を治すためにも、僕がポビーとディンガンを探すしかない!
アシュモルは、普段は妹ケリーアンやポビーとディンガンのことをうるさく思ってて、イジワルな態度だったり。でも、架空の友だちが「いる」(実際に存在している)とみんなが信じるようになれば、ケリーアンの病気も早く治るはずだ。と、捜索依頼のポスターを電柱や壁や機械に貼り付け、ポビーとディンガンの捜索をお願いするために自転車で町中を走り回ります。

誰にだって架空(空想)の友だちのひとりやふたりはいる。
幽霊やお化けを信じなくても、架空の友だちの存在を信じることはできると思う。
勇気とか、一生懸命とか、強さとか、涙とか・・・そんな“少年の優しさ”。

“少年”って、幼い(未成年)男子という訳ではなくて、むしろ男性の基本形みたいなもので、女性にも基本形“少女”な部分があって、それは誰もが持っていて、実はとってもパワフル!
イザという時、大事な場面や大切な瞬間に、自分の中の少年・少女が“本当の力”を発揮するんだと思います。

pobby&dingan-movie.gif映画 ポビーとディンガン
2005年イギリス・オーストラリア合作
監督:ピーター・カッタネオ / 「フル・モンティ」
DVD情報


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2008年12月27日

ずっと、そこにいるよ。 早見裕司 理論社

zuttosokoniiruyo.jpgずっと、そこにいるよ。
早見裕司 / 装画 酒井駒子
理論社





あなたにも
死んでいる、「ひと」が
見えますか?

『好奇心』

そこにひとりの少女がいる。

・・・・・怖いね。
なにが、ですか?
永遠がだよ。
いつまでも、ひとりでただ待っていなければならないなんて、とても考えたくない。
だから、『ひと』は、死んではいけないんです。

誰にも、『ひと』を永遠の孤独の中で、ときには悲しみや淋しさ、苦しみもそのままで置き去りにする権利など、決してあるわけがない。
それを永遠のものにしてしまうかどうかは、
他人に決められることではない。絶対に。

何が普通かなんて、誰かが決めるものじゃないよ。

不確定性原理では、確定した未来なんてあり得ないんだ。

自分の限界を決めてしまったら、それ以上のものにはなれない。

だが俺たちは同時に、現実の、
この世界に決してないものが、現象を生み出すことも知っている。
「夢だよ」
悲しい夢を思い出して悲しくなったからって、夢は別に現実じゃない。だけど、悲しいのはほんとうのことだね。

偶然が、何度でも起きる。
まあ、そうなればもはや必然だ。

彼女だけに見える「ひと」。
洋館建築で本校舎並に大きな付属図書館を持つ私立高校の2年生、文芸部所属。主人公の季里は、突然の事故で両親とたったひとりの姉を同時に失い、姉の婚約者だった「後見人」と暮らしていました。
生きている「ひと」と、そうでないすべての「ひと」。そのどちらにも、同じ礼儀と優しさと、ためらいをもって接することができる、季里の不思議な力。

一般に人間は、自分の目に見えるもの以外にはその存在を意識しないし、目に見える、いう経験にしがみついている。
目に見えるものと見えないもの、その違いをはっきりと示すのは難しいことだと思います。視野の範囲って、実際にはそれほど広くないし、音や匂い、気配、熱、感情、目に見えないけど存在しているもの。むしろ、私たちの周囲には目に見えないもののほうが多いような気がして。
「違い」をきっちり区別する必要性の理由?

読書好きの季里が読んでいる本が気になって、読んでみたくなりました。

静かな時間、空気の優しさ、ささやきを拾うようにして読む。
超能力系ファンタジー短編6作品の連作ストーリーです。

― 水淵季里シリーズ ―
・夏街道(サマーロード)
・水路の夢(ウォーターウェイ)
・夏の鬼 その他の鬼
・精霊海流

― 作品中に登場した本 ―
・チャールズ・ボーモント 夜の旅 その他の旅
・トーベ・ヤンソン 彫刻家の娘
・ジャック・フィニイ 夜の冒険者たち
・大森荘蔵 時は流れず 
物と心
・レイ・ブラッドベリ さよなら僕の夏 たんぽぽのお酒
・山中恒 ぼくがぼくであること
別役実 淋しいおさかな


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ミユウ
 
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2008年12月25日

サラの歌 赤い手袋の奇跡 カレン・キングズベリー 集英社

sarah.jpg― THE RED GLOVES SERIES ―
SARAH’S SONG
サラの歌 赤い手袋の奇跡
カレン・キングズベリー / 訳 小沢瑞穂
装画 酒井駒子
集英社


信じる心を取り戻すのに、遅すぎることはない。
正しい道にたどり着くのに、遅すぎることはない。
愛を取り戻すのに、遅すぎることはない。
もう一度やり直すのに、遅すぎることはない。

自分を取り戻す。
愛する人と、自分の夢。両立できないとしたら、どっちを選ぶ?
プロの歌手になる夢。子供の頃からの夢を追いかけるために、愛する“彼(サム)”と別れ、生まれ育った土地を捨てる決心をしたサラ。でも、夢の実現はサラが考えていたよりも難しいものでした。サラは、挫折と絶望の中、サムとの再会を祈りながら自作の曲「サラの歌」を完成させます。

老人ホームで暮らす往年の有名歌手サラは、奇跡を必要としている“誰か”に自分の物語を伝えるため、12月13日から12日間かけて、クリスマスツリーに1日ごとに1つずつ1つの言葉と1つの物語が書かれた「飾り」をつけていきました。
きっと奇跡が起きて、その人の人生が一変すると信じて。

離婚の肖像。
どうしてこんなふうになってしまったのか?
一方、サラの介護士のベスは、夫との離婚について悩んでいました。

“夢”
将来の希望とか、眠ってみる夢、夢のような出来事・・・
大切な“何か”を犠牲にしてまでも手に入れたい夢。もちろん、時間や努力は必要だと思います。
もし、夢が叶っても自分や大切な人が幸せになれないような「夢」だったら?
「夢」って幸せのためのものだと思うけど。

「愛を見出す秘密」
愛することは、自分の人生をゆだねること。
恋愛限定じゃなく、“誰か”と触れ合うことで「愛」は生まれているということ。
「愛」は、もともと“そこ”にある。だから、自分の「幸せ」をしっかりと感じることが必要で、「夢の実現=幸せの追求」なのかな。と思いました。

それをあなたの目から離さず、あなたの心の内に守れ。


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ミユウ
 
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2008年12月24日

マギーの約束 赤い手袋の奇跡 カレン・キングズベリー 集英社

maggie.jpg― THE RED GLOVES SERIES ―
MAGGIE’S MIRACLE
マギーの約束 赤い手袋の奇跡
カレン・キングズベリー / 訳 小沢瑞穂
装画 酒井駒子
集英社


冷たく降りしきる雨。
雨はいい。清潔で正直でシンプルで、
自分自身と自分の息遣いだけに集中させてくれるから。

愛を信じていない。

真実の愛を求めるんだよ。

でも、愛が消える時がきたら?

悪者が王手をかけている。
人々はいたるところで傷ついていた。

愛なんて嘘っぱちだ・・・。

神様。
お願いだからぼくにパパを送ってください。
家庭を支えるためジョーダンとの時間を満足に過ごせないほど忙しく働くジョーダンの母親は、「鋼鉄のようにタフな女性検察官」と呼ばれていました。
心臓発作で父親を亡くした少年ジョーダンは、一緒に遊んだり勉強をみてくれるパパをクリスマスプレゼントに送ってください、と神様あてに手紙を書きます。

素敵な“偶然”。
私たちの存在自体が偶然の産物で、私たちの世界は“偶然”の連続で成り立っている。という考え方もあります。
幸せを見つける方法・・・
その偶然に気づくことができる、その偶然を素敵と感じることができる。
“愛”や“信じる”は、自分の中にあるものだと思います。だから、「愛を信じていない」は自分を信じていない、自分を信じることができない。なのかな、と。

私自身、「死別」や「喪失」について理解できていない部分を持っていて・・・
クリスマス・ファンタジーとして、もう少し気軽な気持ちで読んでもいいのかもしれませんが、“物語”を受け入れるのが難しい作品でした。
登場人物たちの行動や感情の是非ではなくて、違和感。たぶん、読書中に物語の世界を想像することができなかったんだと思います。

愛は善で、やさしくて、純粋で、真実だと。


酒井駒子 リスト


ミユウ
 
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2008年12月23日

ギデオンの贈りもの 赤い手袋の奇跡 カレン・キングズベリー 集英社

gideon.jpg― THE RED GLOVES SERIES ―
GIDEON’S GIFT
ギデオンの贈りもの 赤い手袋の奇跡
カレン・キングズベリー / 訳 小沢瑞穂
装画 酒井駒子
集英社
試し読み



― かんぺきなクリスマス ―
クリスマスの奇跡は、それを信じる人に起きるって。
だってギデオンは天使なのだから。

人生、希望、生きる意志。
ある日突然、すべてを失ってしまったら。

自分の殻に閉じこもって生きていると、何にも心を動かされなくなる。

初老のホームレスの男性アールと、白血病の少女ギデオンの物語。
ギデオンは、優しい両親と小さい弟の4人家族。決して裕福とは言えない家庭、ギデオンの治療費は高額で、クリスマスをささやかに祝う余裕も無いほどに生活を圧迫していました。ギデオンの病気には骨髄移植の手術が必要で、弟はギデオンの骨髄移植に完璧に適合していましたが、ギデオンの両親には手術費用がありませんでした。

やっぱり「お金」なのかな?
単純に、「お金」が無かったら生活を維持していくのは難しいです。
幸せはお店では売ってないけど、お金で買える“幸せ”もある。
ギデオンが自分のお金で買った贈りものは、本当はお金で買えるものでは無いけど、でもお金が無かったら買うことはできなかった。
お金で命は買えないかもしれないけど、お金があれば助かる命もある。
むしろ、「お金」は命に直結しているように思えます。
「お金」って、何だろう?

命の時間を形にしたもの。

12月25日
クリスマス(英語: Christmas)は、イエス・キリストの降誕(誕生)を祝うキリスト教の記念日・祭日。
「赤い手袋の奇跡」シリーズは宗教色(キリスト教)の強い作品で、クリスマスが無かったら、この作品は存在していないと思います。
クリスマスのイルミネーションや華やかな雰囲気にはウキウキと楽しい気分になりますが、宗教的には否定も肯定も無くて、「クリスマスだから」といった感覚は普段あまり身近ではありません。

でも、“何か”を信じる。
その想いは、持っています。

最近の傾向として、
家族の物語で当然のように“離婚”が扱われ、「しかたがなかった」と表現される作品が多いように感じていました。
愛情を諦めず、困難から逃げ出さない強さ。
この物語の中で、一番の奇跡はギデオンの両親だと思いました。


酒井駒子 リスト


ミユウ
 
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2008年12月21日

ぼくが空を飛んだ日 ニッキー・シンガー 角川書店

feather-boy.jpgFeather Boy
ぼくが空を飛んだ日
ニッキー・シンガー / 訳 浅倉久志
装画 酒井駒子
角川書店



軽率な瞬間はあると思う。

すべての思慮深さが善とは思わないし、
軽率さが全部ダメとも思わないけど。
先のことを考えて、しくじらないように気をつけて、信頼を疑う。
そうしているうちに、きっと、
最初の1歩を踏み出すことさえ出来なくなってしまう。

― 魔法の呪い ―
生まれてから一度も口をきいたことのない王子さまがいました。
王子さまの18歳の誕生日がくると、父王さまはおふれを出しました。
王子が口をきけるようにしてくれた者には、この王国で最高のご褒美を出そう。
だが、もし失敗した場合は・・・。

クラスの落ちこぼれ。
主人公ノーバート(ロバート・ノーベル)は、学校のボランティア活動「お年寄りプロジェクト」に参加することになりました。「お年寄りプロジェクト」は、子供たちがお年寄りの施設を訪問し、子供たちとお年寄りがペアを組んで協力し合って“口のきけない王子”を救うための知恵を絵や物語に仕上げて作品をつくるプロジェクト。しかし、ノーバートのパートナーは、プロジェクトに非協力的な印象の無口なおばあさんでした。
ナディス(パートナー)からノーバートへの“知恵”は、自分の代わりに「チャンス荘」のてっぺんの部屋へ行ってきて欲しいとのこと。
不吉な場所だよ。幽霊屋敷。呪いの家。
「チャンス荘」のてっぺんの部屋と死んだ少年の謎?

物語は・・・
一番大切なコミュニケーションの手段なの。

事実はひとつ、だけど、
その事実に触れた人の数だけ物語があって、
その物語のすべてが、それぞれの人にとっての“真実”なんだと思う。

なにかにひきよせられるのと、はねつけられるのを同時に感じることってない?

選択的な記憶とか。
つごうのいいことだけ憶えていて、いやなことは忘れる。
脳はいちばんいやなことを削ってしまうのよ。

イチバンイヤナコト

楽しかった思い出を、全部忘れてしまおう。と思った。
未来なんかいらない。今だけでいい。と思った。
胸に、懐かしい笑顔が溢れ、
時は、正確に過ぎていく。

逝く人の想いや願いを受け止めて、動きだせる人。

両親の離婚。子供たちの間の“いじめ”。内にも外にも“問題”を抱えた傷つきやすく不安定な少年が、困難を克服し成長していく物語。
なんだか、ちょっとパターンな感じかな?
読み進むにつれて、第1部「チャンス荘」と第2部「羽根のコート」の2部構成になっている本編のストーリーの力強さにひきつけられ目が離せなくなっていました。
原題の「Feather Boy」を、そのまま「フェザー・ボーイ」や「羽根の少年」と日本語に訳して作品の印象を伝えるのは難しいと思いますが、原題「Feather Boy」は、“羽根”の物語の一部になって成長していく少年(たち)にぴったりのタイトルだと思います。

その瞬間にぼくはあるものを見つけた。怒りを。
もしかしたら、勇気。
なにかが欲しかったら、それを手に入れる努力をすればいい、と。


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2008年12月18日

ゆきがやんだら 酒井駒子 学習研究社

yukigayandara.jpgゆきがやんだら
酒井駒子
学習研究社





雪の日。
昨夜からの雪で道路はストップ。園バスが動けなくて、今日は幼稚園も休園です。

「ゆき!」

出張のパパからは、飛行機が飛ばないので帰って来れないと電話がありました。

そとは さむい。
すごく しずか。
「ぼくと ママしか いないみたい、せかいで。」

寝る前になって雪がやんだので、少しだけ夜の散歩。

ぼくと ママは まっさらなゆきに
たくさん たくさん あしあと つけた。
それから ゆきの おだんご たくさん つくった。
それから ゆきの おばけも つくった。

雪が降ってママと2人きりで部屋に閉じ込められるのも悪くない。
トランプ、楽しかったし。
外は寒いけど、ウサギ耳の帽子があるから大丈夫。
ゆきがやんだら・・・
パパも一緒に雪合戦をやろう!

雪は降っていませんが、東京も寒いです。
個人的には、年末モードがレベル“修羅場”に!?テンテコマイの毎日です。
風邪ひいてませんか?インフルエンザも流行の兆しとか。
年末&年始まで、あともう少し。体調に気をつけてお過ごし下さい!


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2008年12月17日

ぼくとアナン 梓河人 角川書店

boku-to-annan.jpgBoku to Annan
ぼくとアナン
梓河人 / 装画・挿絵 酒井駒子
角川書店




梓河人(あずさ かわと)
1960年、愛知県生まれ。「その愛は石より重いか」でデビュー。
飯田譲治氏との共著
「アナザヘヴン」「アナザヘヴン2」「アナン、」「盗作」「Gift」「黒帯」他

ぼくの名前は、“バケツ”。ゴミ捨て場のフライドチキンのバケツに捨てられていたから“バケツ”。イエナシビトのナガレさんに拾われたラッキーな猫。
雪の降るクリスマスの夜、イエナシビトのナガレさんと“バケツ”はゴミ捨て場で、「夢のかけら」を見つけます。今にも消えてしまいそうな、小さな小さな「夢のかけら」。

生きているものと、生きていないものの区別もつかない人間がいるんだ。

アナンの不思議な能力。
アナンの手は、魔法の手なんです。アナンのココロはぴっかぴかだから、そこにうつったものを、みんなきれいにしてしまうんです・・・・・。
モザイクの天才(!?)アナンの周囲では、いろんなことがうまくまわりはじめます。

「ほんとのことは、みんな夢からできているの」

ほんとにねがったことは、かなうはずだって。
本気のおねがいは、空気をぐぐっと動かして、世界に道をつくるんだ。

キンチョウって、ピリピリして、ちょっと気持ちいい。
ヒゲの先っぽからココロのまん中まで、しゃきっと一本線がとおる感じ。

悲しみのかたまり。
悲しみはアナンの中で、青いものになるんだ。
それは、青い、青い、星だったんだ。

どうして、今までがまんできたんだろう。

虹色オーラの少年“アナン”。
「ぼくとアナン」は、梓河人氏と飯田譲治氏の共著「アナン、」をベースに子供向けに書き直されたもので、梓河人氏が個人(単独)で書いた第1作目の作品とのこと。
“バケツ(猫)”の視点で書かれた、RPG(ロールプレイングゲーム)風の冒険ファンタジーです。

ナガレさんやアナンが作ったモザイクって・・・
アントニオ・ガウディみたいな感じかな?
優しくて、温かい物語。大人のための「アナン、」も是非読んでみたくなりました。


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2008年12月13日

ヨアキム 夜の鳥 2 トールモー・ハウゲン 河出書房新社

joakim.jpgJoakim ヨアキム 夜の鳥 2
トールモー・ハウゲン / 訳 山口卓文
装画 酒井駒子
河出書房新社





雨は響く太鼓の音。

やさしく、そして、はげしく。

晴れ・・・雨・・・闇夜・・・。
空はたいてい灰色だった。

太陽が風邪をひいて赤く、氷の空に引っかかっていた。

何か言ってよ!
ぼくがそばにいるのに、パパはじっとすわってるばっかり。
ぼくが心配して、心配して、怖くなるようなことばかりする。
ぼくのことなんか考えてくれないで、ぼくはパパのことが不安で眠れなくて、
パパは<世界の果て>まで行っちゃいそうだし、いつも悲しそうだし、
ぼくは鳥が怖くて、パパはいつも何かにおびえてて・・・
それでいて、ぼくが好きだと言うし、
けど、ぼくのことなんか、ちっとも考えてないし、パパの意地悪!

パパは行ってしまった。
出勤拒否、引きこもり、とうとう精神科に入院することになったヨアキムの父親。
お互いに自分たちのことがよくわかってなかったんだ。
結婚して子どもを産む、ただそれだけのことだと思っていたんだ。
ぼくを、そんなに切りきざむのはやめてくれよ。

「きっとよくなるわ、がんばらなくっちゃ」
ずっと、強くなろうと努力してきたわ。それには、泣いちゃいけないと思ったの。
そして、泣くことを忘れてしまったの。教えてちょうだい。泣くことを・・・
ぼくのママは泣かない。

そうしたいと思いさえすれば、いつだって、
言葉で人を簡単に傷つけてしまえるんだ。

「大人のヒミツ」
大人は世界一の大ばかだ。
パパやママというのは、ほんとうはこんなんじゃないはずだ。

だけど、パパの手は温かくなっているのに?
9歳になったヨアキムの新しい生活が始まります。

パパ、ママ、ヨアキム、ヨアキムの周囲に登場する個性的なキャラクターたち・・・
登場人物の“誰”に寄り添って読む?読み手の性別や年齢、コンディションなどによって、作品から受ける印象は大きく違ってくると思われます。
小さいヨアキムに寄り添うと、切なさで潰されそうになるほどの痛みを心に感じます。ヨアキムのパパには最初は漠然とした嫌悪感、だけど入院したあたりからは彼の気持ちも理解できるような気がしてきて。あと、作品中ではほとんど語られなかったヨアキムのママの“過去”が気になったり。
読み進めるほどにヨアキムの世界に引き込まれていきました。

読みたい本を選ぶとき、「児童書」とか「一般」とか、ジャンルはあまり意識していません。本当に読みたい本や必要な物語は「児童書」コーナーで見つけることが多いかも。
「夜の鳥」シリーズは、「
夜の鳥」が1975年に発表、続編の「ヨアキム 夜の鳥 2」は1979年に発表、日本国内でも全国学校図書館協議会選定図書や日本図書館協会選定図書に選定されています。
作品の発表から約30年経っていますが、現在でもリアル感を強く感じることができる内容で、読者の性別や年齢、ジャンルに関係なく読める作品です。


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夜の鳥


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夜の鳥 トールモー・ハウゲン 河出書房新社

nattfuglene.jpgNattfuglene 夜の鳥
トールモー・ハウゲン / 訳 山口卓文
装画 酒井駒子
河出書房新社

→ 
立ち読み



夜の鳥たち。
赤い目のギラギラ光る、大きな、黒い鳥たちだ。
夜になると、ヨアキムの部屋の洋服だんすの中の鳥たちは、扉を押し開けて、黒い翼を広げやってくる。だから、ヨアキムは毎晩、洋服だんすの扉にそっと鍵をかけ鳥たちを閉じ込める。

パパは生徒がこわいんだよ。

教師として学校に就職したヨアキム(8歳)のパパは、自分は教師に向いていないからと出勤拒否、精神を病んでしまいます。ヨアキムのママは“店員”の仕事で3人家族の生活を支えていましたが、保母になる夢を諦めきれず夢と現実との板ばさみ、仕事と家族の世話の毎日に疲れきっていました。
行き先も告げずに、アパートを出て徘徊する父親。
家庭の中の不安。パパのことも、ママのことも大好きなのに、小さなヨアキムにはどうすることもできなくて・・・
そして、夜になるとヨアキムの部屋には大きな黒い鳥がやってくる。

― 愛がゆっくりと壊れていく優しい時間 ―
「生活力」って?生活のためにお金は必要。もちろん、「お金」だけじゃないことは知っている。でも、ヨアキム一家を見ていると、「愛」だけでは生活が成り立たないと気づかされます。

働くことの意味。
“収入”以外だと、“やりがい”とか、“達成感”とか、“社会貢献”・・・あと、“疲れ”も大切なんじゃないかと思う。ぐっすり眠るためには適度な“疲れ”が必要で、“疲れ”ているから休日が待ち遠しい。

トールモー・ハウゲン (Tormod Haugen)
1945年ノルウェー生まれ。
オスロ大学卒業。
ムンク美術館の勤務経験後、文筆業に転向。1990年、彼の作品全体に対し、国際アンデルセン賞(世界最高の児童文学賞)が授与されました。
1975年に発表された「夜の鳥」は、20ヶ国語に翻訳されているそうです。

待つのはつらい。とてもいやだ。
足がつめたかった。足のつま先が不安がっているんだ。
ただ待つことのほか、何もできそうになかった。

階段は音をたてずに、そっとのぼるんだ。


ヨアキム 夜の鳥 2


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2008年12月10日

そのぬくもりはきえない 岩瀬成子 偕成社

sononukumorihakienai.gifそのぬくもりはきえない
岩瀬成子 / 装画 酒井駒子
偕成社





たぶん、なにかがいけないんだと思う。だから、ほかの子のようにできない。
なにをするのも人より時間がかかってしまう。
どうすればみんなと同じようにできるのかなと思う。

羽村波(はむら なみ)9歳、小学4年生。
両親が離婚して、今はお母さんとお兄さんと3人暮らし。お父さんは別な女性と結婚して、最近小さな弟ができた。お菓子をつくるのが上手なお母さんはブティックの仕事をしながら、家のことも頑張っていて、波の洋服はお母さんがミシンで作ってくれる。お母さんは、波のことをなんでも知っていて、お母さんの言うことは波にとって一番正しい。と思っている。けど・・・
お母さんに内緒で始めた、週に1回のハル(犬)の散歩。

「幽霊が出るよ」
気をつけろよ。見たいと思ってるやつのところに出るんだからな。
偶然出会った少年は・・・幽霊!それとも?

子供は忙しい、
大人の都合って言うけど、子供にだって都合はある。
学校、ソフトボール、塾にも行かなくちゃいけない。自由な時間なんてほとんど無くて、お金も持ってない。

ぐるぐるうず巻きになって、空のほうにあがっていくような気がすることがある。
空にあがって、ぷわぷわうかんで、どこかに飛んでいくような気がする。

波(なみ)は、算数がよくわからなくて、給食を食べるのが遅くて、仲のいい友達もいなくて、ちょっとズレた感じの女の子。子供の頃の私とは全然タイプが違うけど、なんとなく懐かしい感じがします。
どこが似てるのかな?・・・“ゆっくり”なんだ。
行動が速いとか遅いというわけじゃなくて思考速度や処理能力が関係していると思うけど、場所や空気など周囲との時差を感じることがあります。周りの時間がとてもゆっくり流れているような気がして、どうしてこんなに時間が進まないんだろう?って。反対に「すこーん」と時間が飛んでたり、まるでワープ状態。
自分時間で動いてるときは、人とリズムを合わせるのが難しくて。
でもね、誰でもあると思うけど。こういう感じ。

宇宙へ行ったりとか、そんなすごいこととはぜんぜんかんけいないけど、
でも、なんか、考えている以上のこと、起きるんだと思った。
ぐるっと時間がまわって、そっちにいた。そして、いまはここにいる。
時間はつづいていることがわかった。

それはかすかだったけれど、なにかをつたえようとしていた。
自分のなかにあるものをなくしちゃいけない、とその声は言っているようだった。
守れと、言っていた。

「ねがいは、かなうわねえ」
大人でも、子供でも、自分の思うようにならないことはたくさんあって、でも、そういう自分に慣れてしまうと心が固まってしまう。
だめで、もともと。だめだと思ったら、またその先で考える。

時間が足りなくて、自分がどこにいるのかも把握できなくなって、見た目はOKなんだけど表面は小さな傷でざらついていた。
主人公の波(なみ)と一緒にゆっくり考えているうちに、少しだけほどけてきたかも。

気持ちの底がぬくぬくとしてくる。
たぶん、ずっとこのあたたかさは消えないだろうなと思った。
けっして消えないと信じることができる。


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2008年12月07日

きつねのかみさま あまんきみこ ポプラ社

kitsunenokamisama.jpgきつねのかみさま
作 あまんきみこ / 絵 酒井駒子
ポプラ社
*本の詳細 / たちよみコーナーをクリック
こぎつねたちの“なわとび”のページを立ち読みできます♪



2004年度日本絵本賞 受賞作品
2004年度青少年読書感想文全国コンクール(小学校低学年の部)課題図書

りえちゃんはね、きつねたちの かみさまに
なったのよ。そのわけはね・・・・・・

おやつを食べていたりえちゃんは、“なわとび”を公園の木の枝にかけたまま置き忘れて帰ってきたことを思い出します。
「あたし、とってくる」
弟のけんちゃんと一緒に公園に来てみると、“なわとび”をかけておいたはずの木の枝には何もありませんでした。
あたりをきょろきょろ見回すと・・・

おおなみ こなみ ぐるっと まわって
きつねの め

キツネの目!?
にぎやかな声が聞こえてくるほうに行ってみると、10匹のこぎつねたちが楽しそうに“なわとび”で遊んでいました。

あまんきみこさんのお話しと酒井駒子さんの挿絵がとても素敵な絵本です。
絵本を手に取ったとき最初に目についたのは、表紙のりえちゃんと弟のけんちゃんのモノトーンファッションでした。酒井駒子さんの絵の特徴のひとつに「黒」の効果的な使い方があると思います。「陰影」だったり、心理的な「暗さ」だったり、今回のりえちゃんとけんちゃんの場合は「お洒落」な感じ。黒地に白い花柄のワンピースと髪に結んだ赤いリボンがかわいらしいりえちゃん、玄関のサンダルやインテリアも素敵です。明るくてのびやかなりえちゃんとけんちゃんのお母さんはどんな女性なんだろう?

生き生きと描かれたこぎつねたちの“なわとび”のシーンはとてもかわいくて、りえちゃんやけんちゃんたちと一緒になわとびを跳んでいるような気持ちになってきます。

と・こ・ろ・で
キツネの鳴き声って?本当に「コーン」とか「コンコン」って鳴くのかな?
どうぶつたちの鳴き声図鑑 (東京ズーネット)


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2008年12月06日

大きな熊が来る前に、おやすみ。 島本理生 新潮社

ookinakumagakurumaeni.jpg大きな熊が来る前に、おやすみ。
島本理生 / 装画 酒井駒子
新潮社

立ち読み
インタビュー「二人暮らしという冒険」
(波 2007年4月号より)


手探りで少しずつ・・・
スタートなの?ゴールなの?答えはあるの?
壊れやすく不確かで不器用な、「二人暮らし」を描いた3つのストーリー。

― 大きな熊が来る前に、おやすみ。 ―
子供が暴れるのは、泣くのは、
自分の気持が通じなくて、だけど伝えたいと思うからなんだな。
たとえ感情が爆発しているだけに過ぎないとしても、
伝えたくて、でも上手くできなくて、泣くんだ。

「早く寝ないと、大きな熊が食べに来る」

そういうのを適当に受け流さないで、一つ一つ、きちんとやろうとする。
だって、それが人間関係ってことでしょう?
暴力の連鎖。
体が傷つくように、心だって傷つく。
目に見える暴力と、見えない暴力。


― クロコダイルの午睡 ―
俺、次はここのワニに生まれて死にたいと思ったんだよ。
大学の後期試験の打ち上げ鍋パーティをきっかけに、主人公の部屋へご飯を食べにきてくつろいで帰るようになった同級生。ずっと苦手に思っていたはずなのに・・・。
都築君は、主人公(霧島さん)が女子じゃなくて料理の上手な男子同級生だったとしても、主人公の部屋に頻繁に遊びに行ったかな?
霧島さんは、自分の中に芽生え始めた気持ちに抵抗感を覚えながら、都築君との時間を享受する。
2人ともダメだよね、とも思うけど、じゃあどこがダメなの?といわれると微妙な感じ。


― 猫と君のとなり ―
バスケ部の顧問だった先生のお通夜で再会した2人。
「あの日から、僕は志麻先輩のことをずっと忘れずにいましたよ」
荻原君と志麻先輩と“まだら”、2人と1匹の将来が幸せだといいな。
と、素直に応援!3作品の中で1番好きな作品です。


知人や友人同士だとルームシェアで、“ルームメイト(シェアメイト)”。
恋人同士の場合は、同棲で“彼 / 彼女”。
夫と妻は、家族が増えると“父母”になって呼び名も増える。
長い時間を一緒に過ごしてきた家族同士でも、うまくいくときもあれば、ぶつかるときもあって、自分の内にさえ理解できない部分を抱えてて。

誰かを「好き」になるのは、結構簡単なことなのかもしれない。難しいのは、好きな相手にありのままの自分を伝えることなんだと思う。嫌われたくない、自分のことを好きになって欲しいという気持ちが強すぎて、躊躇。
無防備でいられるのは、どこまでだろう?

3作品を通して気になったのは、主人公たちの会話不足でした。
一緒に暮らす(生活の一部を共有する)という囲いの中で、お互いを伝え合おうとするための会話が少ないように感じました。
・・・案外リアルかも。


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ミユウ
 
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2008年11月26日

三番目の魔女 レベッカ・ライザート ポプラ社

thethirdwitch.jpgThe Third Witch
三番目の魔女
レベッカ・ライザート / 訳 森祐希子
装画 酒井駒子
ポプラ社




― はじめに、魔女の予言がありました ―
シェイクスピア4大悲劇のひとつ「
マクベス」は、なんだかしっくりしない後味、物語全体に漂うトリッキーな印象。シェイクスピア作品の中でも最もミステリアスな作品だと思います。
3人の魔女の登場で始まる「マクベス」ですが、唐突なんです・・・
魔女のターゲットが、どうしてマクベスだったのか?
他人の運命を弄ぶのが好きな魔女たちの単なる悪戯?
英雄マクベスの心の正しさを試してみたかった?でも、何のために?
女王になりたかったマクベス夫人が企てた策略?
それとも、誰かマクベスに恨みを持つ者の復讐?
味方にとっては誉れ高い英雄でも、敵にとっては憎い仇。
戯曲「マクベス」は短編ながら“動き出す森”など仕掛けも大きくダイナミックなストーリー展開、エンディングも復讐劇としては納得の結末・・・
でも、マクベスの運命を変えるきっかけとなった、あの3人の魔女はどうなった?

ミュージカル「ウエスト・サイド・ストーリー」の原作は「ロミオとジュリエット」、黒澤明監督作品の「蜘蛛巣城(マクベス)」や「乱(
リア王)」など、シェイクスピア作品を原作に時代や背景など物語の舞台を置きかえて再構築されたオマージュ作品も多く、「三番目の魔女」はマクベスに強烈な復讐心を持つ少女ギリーが主人公の「マクベス」のスピンアウト作品です。

私を木にしてください。

人を破滅させたいなら・・・
破滅させるのは高くつく、愛するより高くつく。

心を捨て、女性を捨て、“物”となって、少年の姿で「憎しみ」を支えに生をつなぐ。
シェイクスピアの時代の中世スコットランドの生活様式や、主人公ギリーと弟分ポットのやりとり、ギリーが捨てたはずの「心」の変化など、少女の若々しい視点で生き生きと描かれた作品です。シェイクスピアや「マクベス」を知らない方でも十分に読み応えのあるドラマチックな作品ですが、個人的には「マクベス」 → 「三番目の魔女」の順番で読まれることをお勧めします。
「マクベス」の作品中で語られていない細部(「謎」の部分)を想像しながら「三番目の魔女」へつなげていくと、2つの物語を一層お楽しみいただけると思います。
読書中は、ずっと解けなかった「謎」の答え合わせをしているようなドキドキ&わくわくした気持ちでした。(もちろん、他にも正解はたくさんあると思います。)
きっと、シェイクスピア本人も大満足。とても素敵な番外編です。

レベッカ・ライザートの第2作目「オフィーリアの復讐」は、恋する女性の狂気「オフィーリア」の視点で描かれた「
ハムレット」。
どんなオフィーリアが登場するのでしょうか?楽しみです。
また、「三番目の魔女」の時間を遡ってマクベス夫人の視点で描かれた続編も構想中とのこと。

thethirdwitch-back.JPG



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2008年11月21日

春のオルガン 湯本香樹実 新潮文庫

haru-no-organ.jpg春のオルガン
湯本香樹実 / カバー装画 酒井駒子
新潮文庫

立ち読み



ガラスの青い色が、すごくきれいだって思う。
でもそんなことを思っているのは誰か知らない人で、
ほんとの私じゃないみたいな気がする。

強くなれ、強くなれ、
でも強いってどういうことなのか、よくわからない。

どうしようもないかもしれないことのために戦うのが、勇気ってもんでしょ。

たしかに、うれしすぎて緊張するってあるんだよ。ときめきっていうのかねえ。

あのね、ちょっとずつ、仲よくなるの。すこーしずつ。

なくなってしまったとばかり思っていたその感じは、
どこか遠い手の届かないところから降ってきたわけじゃなく、
私の体の奥のほうからやってきたのだ。

小学校の卒業式ではクラス代表で卒業証書を受けとると、そのまま後ろにばったり倒れてしまった。受験した中学はふたつとも不合格、ネジのゆるんだ時計の振り子のように宙ぶらりんのまま過ごす春休み。
「この世でいちばんこわいもの?」
怪物ダ、怪物ガヤッテクルゾ・・・・・!
夢の中、おそろしい叫び声をあげながら怪物に変身して周囲を怖がらせることを気持ち良いと感じてしまう。ひとりぼっちで、ほんとうは怪物になんかなりたくないのに、と思いながら、叫び続ける主人公の桐木トモミ(姉)。
子供部屋、二段ベッドの下の段は図鑑オタクのテツシ(弟)。

喧嘩ばかりしているお父さんとお母さん、チェーンスモーカーで修理好きの頑固な祖父、隣家との敷地トラブル・・・“大人の世界”のことはよくわからないけど、“子供の世界”はもっとわからない。
これから思春期を迎えようとしている境界の季節、ぐるぐると大きな渦巻きの中心でポツンと膝を抱え込むようにして透明なガラスの置物になったような気持ち。

少しだけハニカミ顔。私にもたれかかりながら嬉しそうにしている、妹の写真。
私は、どんなお姉ちゃんだった?
もし、タイムトラベルが可能なら、私は過去に戻りたい。過去に戻って、怖がりなくせに泣けなくていつも唇を咬んでいた小さな私に会いに行きたい。
大丈夫だよ。って、そっと声をかける。

「まだ会ったことのないたくさんの私」

さあ、思いっきり笑ってやる!


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2008年11月15日

追放されしもの クロニクル千古の闇(4) ミシェル・ペイヴァ− 評論社

outcast.jpgOUTCAST
追放されしもの クロニクル千古の闇 (4)
ミシェル・ペイヴァ− / 訳 さくまゆみこ
画 / 酒井駒子
評論社




どうしたらいい?

三つ又(みつまた)のフォークは、「魂食らい」のしるし。
トラクの「生霊わたり」の能力を狙う「魂食らい」によって、胸に邪悪な三つ又フォークの入れ墨をつけられたトラクは、氏族の掟(おきて)に従い「ハズシ」として氏族から追放されることに決定。
ハズシとは、死者として扱われ氏族の人々より引き離され、ひとりで生活しなくてはならない。また、森で発見された場合は、氏族によって殺されてしまう。

これ以上どう悪くなるんですか?

ハズシとなって森での逃亡生活から「魂の病」になってしまったトラク。ウルフは、「魂の病」で身も心も蝕まれどんどん堕ちていくトラクをどうすることも出来ず、ただ寄り添うだけ。
「魂の病」が進行したトラクは、オオカミ語を理解することもできず、オオカミの声に恐怖を感じるようになります。ウルフのことさえわからなくなり、とうとうウルフに向かって火のついた枝を投げつけてしまいました。
トラクの投げつけた焚き木で火傷を負ったウルフは、痛みと恐怖におしつぶされそうになりながらトラクのもとを去ります。

― レンの秘密 ―
秘密というものがどんなに苦しいものか・・・
だれにでも秘密はあるものよ。
ワタリガラス族の少女レンにも大きな秘密の気配?

黙っているのは嘘とちがうなんて、言わないでよ。

トラクに対する非難の言葉。レンは、同じ言葉を自分自身にも投げかけていた・・・
何度もトラクに伝えようとするけど、心が挫けてしまって言い出せない。
レンの秘密の真相は?

それでも友だちなのよ。
わたしは、前とちっとも変わってない!

胸が詰まるような絆の物語。
絆が強ければ強いほど、絆の強さゆえ、身を引き裂かれるほどに想いはつのる。
シリーズ物ですが1作ずつが物語として成立していて、それぞれが読み応えのある内容となっています。
その中でも特に4巻目「追放されしもの / OUTCAST」は、裏切りや絶望、少年・少女期の不安定、ソウルメイト「魂」が引き合う緊張感、物語の世界に渦巻くピリピリとした感情の逆立ちや震えが痛みとなって伝わってくるような作品です。



oathbreaker.jpg
クロニクル千古の闇 オフィシャル


「クロニクル千古の闇」は全6巻シリーズで、原作(英語版)の第5巻目「OATH BREAKER」は2008年9月に発売されていて、最終話の第6巻「GHOST HUNTER」は2009年9月に発売予定とのこと。
近刊案内 クロニクル千古の闇(5)「復讐の誓い」

魂食らい (3) ← → クロニクル千古の闇 (5) 復讐の誓い

クロニクル千古の闇 リスト

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2008年11月12日

魂食らい クロニクル千古の闇(3) ミシェル・ペイヴァ− 評論社

souleater.jpgSOUL EATER
魂食らい クロニクル千古の闇 (3)
ミシェル・ペイヴァ− / 訳 さくまゆみこ
画 / 酒井駒子
評論社




夢で見る幻

沈黙の歌をうたう白い丘

森は何かを告げようとしているらしい。

心臓のひびきが肋骨を通して岩肌に伝わり、こだまする。

恐怖という黒い海の中に溺れていった。

ウルフがさらわれた!?
森での狩りの途中、「奇妙な獲物」の跡を追いかけたままトラクの元に戻らないオオカミのウルフ。
ヘラジカのひづめの一蹴りで殺されてしまったのか?
それとも、罠にかかってしまったのだろうか?
トラクとレンは、ウルフを探すため凍りつく極北の地へと向かう。

<魂食らい>
当初は、病気や災害、災難から人々を守るため、天候などに左右されず安定した生活を求めてなど、それぞれの目的を持って集まった7人の薬師団の魔導師。悪霊さえも操ることができる強い力を持つ魔導師たちは、次第に権力欲にとりつかれ「魂食らい」と呼ばれ森を恐怖に陥れるようになった。

今から6000年前、中石器時代が舞台の生活は、
山に、森に、河に、海に・・・
風や水、空、天地万物に宿る精霊を畏れ、命の循環を敬い、糧に感謝。

冒険ファンタジー作品としてもミステリアスでドラマチックな作品ですが、各パート(章)によって人間とオオカミの両方の視点で書き分けながら構成されていて、考古学的な要素が盛り込まれた描写は興味深く、リアルな(臨場感のある)作品に仕上がっています。

6000年を越えて、今はもういなくなってしまった生き物もいるけど、オオカミやシロクマたちと同じように人間も生き残った。
「幸せ」のために変化しながら、私たちは現在の生活を手に入れた。

体の深くがざわつく・・・
私も1人の動物なんだ。


生霊わたり (2) ← → 追放されしもの (4)

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2008年11月09日

生霊(せいれい)わたり クロニクル千古の闇(2) ミシェル・ペイヴァ− 評論社

spiritwalker.jpgSPIRIT WALKER
生霊(せいれい)わたり クロニクル千古の闇 (2)
ミシェル・ペイヴァ− / 訳 さくまゆみこ
画 / 酒井駒子
評論社




森を抜けて風とともにやって来る。
そいつがやって来る。

フクロウが鳴いた。

森は、
鳥の声に満ち、苦しいくらいに美しかった。

命と同じにな。
林が木の葉に、
狩られる者が狩る者に、
少年は男に変化していく。

傷つくのはプライドだけだろう。

だからといって、何も変わるわけではない。

― 登場人物 ―
<トラク:オオカミ族の少年>
人間に近づくんじゃない!おまえの力が知れたら・・・。
本人の自覚さえ無い「謎の力」を持つ少年。赤ん坊のトラクはオオカミの巣穴でオオカミに育てられました。その後、父親と2人きりで放浪生活をしていましたが、その父も悪霊グマに殺されてしまいます。
孤児のトラクは、生前の父を知っているというワタリガラス族の族長の下、ワタリガラス族に居候することに。

<ウルフ:オオカミ>
森の洪水で家族が全滅。自分だけ生き残った子オオカミのウルフはトラクに拾われ一命を取り留めます。
ウルフは、オオカミの言葉で会話が可能なトラクのことを尻尾の無いオオカミと思っていて、トラクを兄貴と慕い、また、群れのリーダーとして仲間の絆を深めていきます。
オオカミ族の守護神でもあるオオカミのウルフは、トラクの旅を導く「案内役」。

<レン:ワタリガラス族の少女>
ワタリガラス族の族長の姪。森の狩人、弓の名人。
ワタリガラス族の魔導師候補と言われているが、本人は魔術にあまり興味を持っていない。
トラクとほぼ同じ年頃(1歳年下?)で、両親は既に死亡。トラクとは喧嘩ばかりしていますが、お互い信頼できる大切な仲間と思っています。
トラクの旅を支える大切なサポーター。

クエスト(quest)
冒険の旅。未知なるものや謎、伝説などを追求、探索、探求する。
悪霊グマに殺された「父の死」の真相は?
隠された「大きな力」とは?
トラク少年の正体は!?

翻訳作品の中には原作に忠実すぎて(直訳すぎて)、日本語で表現された文章を読みづらく感じてしまう作品もあります。
もちろん、原作の文章の影響が大きいと・・・
訳者「さくまゆみこ」さんの力量と作品に対する愛情の成果だと思いますが、翻訳作品なのを忘れてしまうほど違和感の無い文章で、とても読みやすい作品に仕上がっています。
物語のスケール、質、ドラマ性・・・
全てにおいて最高レベルの冒険ファンタジー小説です。

生きることに純粋だった時代の物語。


オオカミ族の少年 (1) ← → 魂食らい (3)

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2008年11月05日

オオカミ族の少年 クロニクル千古の闇(1) ミシェル・ペイヴァ− 評論社

wolfbrother.jpgWOLF BROTHER
オオカミ族の少年 クロニクル千古の闇 (1)
ミシェル・ペイヴァ− / 訳 さくまゆみこ
画 / 酒井駒子
評論社




― 紀元前4000年の森 ―
今から6000年前、ヨーロッパ北西部が森林でおおわれていた時代。
氷河期が終わって数千年が過ぎていましたが、文字や金属はまだ発明されていません。
人々は小さな氏族にわかれ、場所から場所へと移動しながら暮らす狩猟採集民でした。
森や動物、樹木や草花、岩石、水や風・・・「自然」と共生するため、
森の声を聴き、動物たちと語り合う、
彼らは、生き延びるためのすぐれた技を持っていた。

ひとつの影が森を覆う。
その影に立ち向かえる者はいない。
そこへ<聴く耳>がやってきて、空気で戦い、沈黙で語る。

オオカミの鼻は、魚の息をかぎ分けるほどするどいのだ。
オオカミの耳は、雲が通りすぎる音が聞こえるほどするどいのだ。
狩人は、なんでも見通す、するどい目を持っている。

オオカミ族の少年トラクは、まだ12回しか夏を過ごしていない。

<天地万物の精霊>が宿る山を探せ・・・
亡き父との誓いを果たすため、少年トラクは北へ向かう。

悪霊にとりつかれ邪悪な化物となった巨大なクマに、トラク少年の父親が殺されてしまうシーンから物語は始まります。

圧倒的なリアル感のファンタジー作品!
「クロニクル千古の闇」は、現在(2008年11月)4巻まで発刊されている全6巻シリーズで、「
ブレードランナー」、「グラディエーター」、「プロヴァンスの贈りもの」他のリドリー・スコット監督作品として映画化も決定しているとのこと。

足もとの土台がガラガラと崩れていく。
張ったばかりのうすい氷の上に立っていて、
足もとにできた裂け目が稲妻のように広がっていく。

風はない。
鳥の歌も聞こえない。


生霊わたり (2)

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2008年11月03日

勇気の木 ダイアン・チェンバレン 文春文庫

thecouragetree.jpg勇気の木
ダイアン・チェンバレン / 訳 羽田詩津子
カバー装画 / 酒井駒子
文春文庫




大きな葉っぱのつく高い木なの。
花みたいなものがついて、それが地面に落ちるの。
勇気の木の花を枕の下に入れて眠ると、
目が覚めたときに前よりも勇敢になってる。って。

「愛と怒りは両立できるのよ」

この世での時間を
できるだけ幸せな楽しいものにするために、
力の及ぶ限りのことをして・・・そして、
夜一人になったときだけ泣いた。

どうしてこんなに辛いの?

力強い作品。読了後、心に大きな震えを覚えました。
作者のダイアン・チェンバレンは、ソーシャルワーカーや青少年を対象にした心理療法士の経験を持つ女性作家です。

重い腎臓病を抱えた8歳の少女ソフィは、生まれて初めて参加したガールスカウトのキャンプの帰りに行方不明になってしまいます。
事件?誘拐?・・・それとも、事故?
予備の薬も持たず、透析の予定日も過ぎてしまい刻一刻と命の期限が迫っているソフィの生存の可能性は?
一方、往年の人気女優ゾーイは、殺人犯にとして投獄されている娘の脱獄計画を企てていた。
2組の母娘の偶然の出会い。「母性」を中心に描かれた、家族の「絆」の物語です。

「母性」は未知の領域。
女性というジェンダー(gender)を持っているからといって、
必ずしも母になるわけでは無い。きっと、
その感情の激しさは理解や想像を超えたもの。

自分の中にもうひとつの命が実際に存在している。
未だ産まれない子供に対しての「虐待」も在り得る。ということ。

「子供と自分の人生は別のもの」という考え方もあると思います。
自分の血を分け肉を分けて産まれた子供は、自分の手足と同じように、やはり自分の一部なんじゃないかと?
自分の要求よりも優先させるべき something ?
左右に振り分けが可能なものではなく、はっきりと目に見えるような順位の優劣をつけるのは難しいけど、決して目をつぶってはいけない、それが「子供」だと思いました。

あなたは今日をとり逃がしているよ。
毎日が将来の心配ばかりだったら、今、できることを楽しめない。

毎日を抱きしめるんだ。


tulipifera.jpg




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2008年10月12日

小鳥はいつ歌をうたう ドミニク・メナール 河出書房新社

leur_histoire.jpgLeur histoire
小鳥はいつ歌をうたう
ドミニク・メナール / 訳 北代美和子
カバー装画 / 酒井駒子
河出書房新社



空っぽの言葉、ただの泡
空気の、息吹の、呼気の泡

戦いの世界に生きていると思い込み、脅え、
その沈黙のうしろに身を隠す。

騒音に満ちていた。けれども、それは別の種類の騒音だった。
静けさに満ちていた。けれども、それは別の種類の静けさだった。

そう、これはすべて、
唇の線とか耳の形とか瞳の色みたいに、
親から子へと伝えられる家族の物語なのかもしれない。

「言葉は裏切り者、盗人」

耳は聞こえているのに声を発することができない少女アンナと、子供の頃に言葉を捨ててしまった読み書きのできない母親。
もし、小さな娘が迷子になったら・・・
口のきけないアンナのために、自分と離ればなれになってしまっても娘がしあわせであって欲しいと願い、名前や住所や地図、娘の大好きな本のタイトル、お気に入りのケーキのレシピ、子守唄の歌詞などを書き込んだ無数の小さな紙切れを娘の洋服に縫いこむ母。

「だれにでも物語はある」

“私”という物語の主人公。というけど、
自分の物語を眺めるのは結構難しくて、目を逸らしたくなるような出来事、それは強い驚きや深い悲しみ、恐怖や怒りのときもあって。
思いがけなく・・・本当に簡単に、私たちは言葉を失う。

大人なら(単純に年齢的に大人と子供の区別をした場合)、
大人が傷つくのと同じように、子供も傷つくことを知っているはず。
もしかしたら、将来その出来事を正確に把握できたとしても、善悪や正誤は関係無くて、意味や理由すら存在しない、ただその“出来事”に対して無力だっただけ。
誰でも子供だった時代を持っている。

祖母の物語、母の物語、
彼女にとって、「文字を読む」言葉を捨てることは自分の物語を捨てることで、そうすることでしか、自分を守ることができなかったけど。
私たちの時間も“自然”の一部だとしたら・・・
捨てたはずの言葉たちが、もう一度“自分”を守るために生まれてきたのだとしたら、きっと彼女は「彼女の物語」を、少女の中に見つけることができる。と思う。

ふと、
私の中にも、「私の母の物語」があるのかな、と。

― イキザマ ―
言葉を忘れたわけじゃなく
言葉を知らないわけでもない

at a loss for words

ただ、言葉を失っただけ
もしくは、言葉から逃げ出したのかも

drop into silence

耳を澄まし、心で聴いた
声にならない声
音となり、彩られ、動き出す物語
生き様が
確かに、そこに、在りました


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2008年10月11日

酒井駒子 リスト

pooka.jpg― 酒井駒子 ―
1966年生まれ
東京芸術大学美術学部卒業





Pooka+ 酒井駒子 小さな世界
学習研究社

酒井駒子の絵本 〜ちいさなまなざし〜
MOE(2009年10月号) / 白泉社



<絵本>

酒井駒子(文・絵)
○ リコちゃんのおうち / 偕成社
○ よるくま / 偕成社
○ ぼく おかあさんのこと・・・ / 文渓社
○ よるくま クリスマスのまえのよる / 白泉社
○ ロンパーちゃんとふうせん / 白泉社
○ 
金曜日の砂糖ちゃん / 偕成社
○ 
ゆきがやんだら / 学習研究社
○ 
BとIとRとD(ビートアイトアールトディー)

小川未明
赤い蝋燭と人魚 / 偕成社

中脇初枝
こりゃ まてまて / 福音館書店

あまんきみこ
きつねのかみさま / ポプラ社

須賀敦子
こうちゃん / 河出書房新社

マージェリィ・W・ビアンコ
ビロードのうさぎ / ブロンズ新社

湯本香樹実
くまとやまねこ / 河出書房新社

加藤幸子
くさはら / 「ちいさなかがくのとも」福音館書店


<カバーイラスト>

母の友 / 福音館書店

ベン・ライス
ポビーとディンガン / アーティストハウス
空から兵隊がふってきた / アーティストハウス

サリー・ポッター
耳に残るは君の歌声 / 角川書店

梓河人
ぼくとアナン / 角川書店

ニッキー・シンガー
ぼくが空を飛んだ日 / 角川書店

恩田陸
不安な童話 / 新潮社

リチャード・F・ミニター
僕がほしいのはパパとママと釣りざおだった / PHP研究所

角田光代
だれかのいとしいひと / 文藝春秋(文庫)

赤川次郎
黒い壁 / 角川書店

トールモー・ハウゲン
夜の鳥 / 河出書房新社
ヨアキム 夜の鳥 2 / 河出書房新社

絵本のつくりかた / 美術出版社

有島武郎
小さき村へ・生まれ出づる悩み / 新潮社

恩田陸
蛇行する川のほとり / 中央公論新社

リタ・マーフィー
真夜中の飛行 / 小峰書店

ダイアン・チェンバレン
勇気の木 / 文藝春秋

ジャミラ・ガヴィン
その歌声は天にあふれる / 徳間書店

ドロシー・エドワーズ / 福音館書店
☆ぐらぐらの歯
☆おとまり
☆いたずらハリー

ミシェル・ペイヴァー / 評論社
クロニクル千古の闇 (1) オオカミ族の少年
クロニクル千古の闇 (2) 生霊わたり
クロニクル千古の闇 (3) 魂食らい
クロニクル千古の闇 (4) 追放されしもの
クロニクル千古の闇 (5) 復讐の誓い
クロニクル千古の闇 (6) GHOST HUNTER

ドミニク・メナール
小鳥はいつ歌をうたう / 河出書房新社

ディケンズ
クリスマス・キャロル / 集英社

カレン・キングズベリー
「赤い手袋の奇跡」シリーズ / 集英社
ギデオンの贈りもの
マギーの約束
サラの歌

レベッカ・ライザート
三番目の魔女 / ポプラ社

島本理生
大きな熊が来る前に、おやすみ。 / 新潮社

岩瀬成子
そのぬくもりはきえない / 偕成社

川村カオリ
Helter Skelter / 宝島社

早見裕司
ずっと、そこにいるよ。 / 理論社

湯本香樹実
春のオルガン / 新潮文庫

アクセル・ブラウンズ
ノック人とツルの森 / 河出書房新社

古賀哲司
トンカ・ジョンの世界―白秋童謡散策 / 近代文藝社

ローリー,ロイス
ドリーム・ギバー 夢紡ぐ精霊たち / 金の星社

荻原規子
RDG レッドデータガール はじめてのお使い / 角川書店
RDG 2 レッドデータガール 2 はじめてのお化粧 / 角川書店
☆ RDG 3 レッドデータガール3 / 角川書店

前田司郎
夏の水の半魚人 / 扶桑社



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2008年10月10日

蛇行する川のほとり 恩田陸 中央公論新社

bythewindingriver.jpgBy the Winding River
蛇行する川のほとり
恩田陸 / カバー画 酒井駒子
中央公論新社




素晴らしい天気というのは、どうしてこうも人を幸福にさせるのだろう。

そう。私だって知っている。
外は明るく、美しい色彩で溢れている。

「天使よ」
「天使ね」
この世に天使はいない。怪物はいっぱいいるけれど。

人は・・・
身体という器の影響をどのくらい受けているものなのだろう?

警戒せよ。

生きている。死んでいる。
生きている。泣いている。

安堵と絶望。そして、覚悟。

子供だけの国。
夏だけの、今だけの小さな国。
大人は誰も入り込むことはできない。

誰も知らない物語・・・
いつ、誰が正解を教えてくれるのだろう。
それも、すべて藪の中。

これは楽しい女の子の合宿だと言う。
陰謀に満ちた招待なのだろうか。それとも・・・
美術部の3人は、野外音楽堂で行われる演劇部の芝居用の舞台背景を描くため、夏休みの9日間を一緒に過ごすことに。
母を迷宮入り殺人事件で亡くした少女、転落事故で姉を亡くした少年。
「船着場のある家」に集まった4人の美少女と2人の謎の少年は、それぞれの「死」につながりを持っている・・・?

10年前に起きた2つの死の真相。
華やかな登場人物たちによって語られる幼い記憶の断片、芥川龍之介「藪の中」をベースに書かれたという演劇部の芝居をなぞるようなストーリー展開、懐かしい少女漫画のような雰囲気の作品です。

→ 
「蛇行する川のほとり」創作の秘密 * 恩田陸 スペシャルインタビュー
先行情報や先入観が無い状態で読むほうが好きなので、スペシャルインタビューは読了後に読みました。「マル秘情報」満載の楽しいインタビュー記事です。
ネタバレもあります、本編未読の方は気をつけて!


ひとつの話をしよう。
ゆるやかに蛇行する川のほとりに、いつもあのぶらんこは揺れていた。
私たちはいつもあそこにいた。


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ミユウ
 
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2008年10月07日

だれかのいとしいひと 角田光代 文春文庫

darekanoitoshiihito.jpgだれかのいとしいひと
角田光代 / イラスト 酒井駒子
文春文庫





好奇心よりも強く、嫉妬心よりもまだ強く、恐怖よりも強い。

たくさんの恋心がぎゅっと詰まった1冊。
作品に登場する女性たちとはタイプも恋愛スタイルも全然違うけど、それでも「わかる」。
恋愛系8編が収録された短編集です。
・転校生の会
・ジミ、ひまわり、夏のギャング
・バーベキュー日和(夏でもなく、秋でもなく)
・だれかのいとしいひと
・誕生日休暇
・花畑
・完璧なキス
・海と凧

「完璧なキス」
好きだという気持ちがわからない・・・
“完璧なキス”だったのに、ぼくとさえちゃんは恋人同士にはなれなかった。

その人といて楽しい、会いたい、嫌われたくない、
それが好きだっていうことだよ。

小さな恋心。まだそこにあるか確認して安心。
そっと触ると温かで、なぜか少しせつなくて、
笑ってるのに、涙。いつもの自分じゃないみたい。でも、夢中。
不器用な恋。

「だれかのいとしいひと」
トゥルゲーネフ「
初恋」だと、誰にでも必ず初恋があるわけではないそうです。

ほかのどんな記憶よりいとしく、なつかしく、
こわれやすい小さなものみたいにそれを抱える。

「転校生の会」
小学生の頃に1度、転校しました。
だから、私も“転校生の会”のメンバーの資格アリです。
ある日突然、主人公の“あたし”は1年間つきあった彼から破局宣告を受けます。“転校生”だった彼の破局理由(引っ越し恋人理論)は、「1人の女の子とずっといると息苦しくなってきて1年が限度」とのこと。これは、引っ越しと転校による悪影響が原因(?)らしい。
でも、実際には社会に出てからも、引っ越しや転勤、転職など生活環境が大きく変わる機会はあります。

あたしは「絶対」をどうしても受け入れたくはなかった。

恋人の延長線にあるのが夫婦で家族だと思っていたけど、妻と夫は、もう恋人じゃないのかな?
転校生の会のメンバー漆原さん(男性)も主人公の元カレと同じく“転校生症候群”で、相手(周囲)とのつながりが一瞬まったくわからなくなる発作に苦しんでいました。
引っ越しの記憶を消して架空の記憶を作る“記憶のぬりかえ作業”で自分の人生が展開された場所の記憶を変えることに成功・・・したけど。

その都度ぼくは恋に落ちればいいし、友達をつくり続ければいいのです。

あたしたちが出会う人はみんな同じバスに乗り合わせた人で、でもほら、目的地がみんな違うから、おりる場所はばらばらで。
それでね、
同じバスに乗っていて、隣同士に座って・・・
それはきっと楽しいことなんだと思うんです。


今朝はひとつ頼みがあるんだ。カーテンを閉めて
ベッドにおいでよ。
コーヒーのことなんか忘れてさ。僕らはどこか外国にいて
恋に落ちている、というふりをしようよ。
from The Road by
Raymond Carver


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ミユウ
 
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2008年10月05日

不安な童話 恩田陸 新潮文庫

fuannnadowa.jpg不安な童話
恩田陸 / カバー装画 酒井駒子
新潮文庫





暑い。ここは、とても暑い。

ほんの少しだけ体温が上がるのが判る。
わずかな体温の上昇でも、なんとなく熱に浮かされた感じになる。

むろん、私だって幸せなほうがいいに決まっている。
しかし、自分なりにバランスを取って毎日生活していくだけでもけっこうスリリングだし、それすらもなかなか難しい。
自分がパンクしてしまいそうな気がする。

― ある女性画家の死 ―
人並みはずれて美しく、才能があった女性。
その絵は、
白雪姫の死に嘆き悲しむ七人の小人たちを、遠目に見守りながらたたずんでいる、黒いガウンを着た女の乾いた表情のアップ。

あなたは、僕の母の生まれ変わりかもしれない。

『失せものさがし』
25年前に殺された美貌の女性画家との特殊な共通点は、相手の記憶をフラッシュのように映像として見ることができる、他人が失くしたものを見つけ出す能力。

私は誰?
誰が殺したの?

“シリトリ”で「ろ」のとき最初に浮かんだのは「ローソク」で、そうしたら「
赤い蝋燭と人魚」を読みたくなって、酒井駒子さんの挿絵の絵本を見つけて。
人魚の絵は綺麗で悲しくて、ストーリーから感じる薄暗さの度合いがイメージどおりに表現されていて。

酒井駒子さんが描いた「不安な童話」のカバー装画の女性は、正面を向いた顔の約4分の1ほど、口元周辺しか描かれていません。
この女性は誰だろう?
普通に考えたら、「最後の朝の女性画家」なんだと思うけど・・・
読了後、登場する女性たちの中に存在する“女”の姿なのかな?と。
そして今、既視感(デジャヴ)。誰でもなくて、でも知っている。
もしかしたら。

その空を見た時、もう逃げられない、と思った。
夢が私の現実を侵蝕して来てしまった今、
私にはどこにも逃げる場所がないのだ。


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2008年09月30日

Pooka+ 酒井駒子 小さな世界 学習研究社

sakaikomako.JPG


ときどき、私は猫になります。

猫は寒いのが苦手です。

でも、本当は寒いのは嫌いじゃないです。
毛布で作ってもらったトンネルに、頭からもぐっていって途中でUターン。
トンネルの中は暗くて、柔らかくて、ぬくぬくで、丸まって眠るのが大好き。

冷たい雨が、季節を運んできました。
懐かしい匂いがします。




pooka.jpgPooka+
酒井駒子 小さな世界
学習研究社




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2008年09月28日

赤い蝋燭と人魚 小川未明 / 酒井駒子 偕成社

akairousokutoningyo.jpg赤い蝋燭と人魚
小川未明 / 絵:酒井駒子
偕成社







人間の住んでいる町は、美しいということだ。

人間は、
魚よりも、また獣物よりも、人情があってやさしいと聞いている。

人間は、
この世界の中で、いちばんやさしいものだと聞いている。
そして、かわいそうなものや、頼りないものは、
けっしていじめたり、苦しめたりすることはないと聞いている。
いったん手づけたなら、けっして、それを捨てないとも聞いている。

北の海に棲んでいた人魚のお話。
その人魚は女でありました。そして妊娠(みもち)でありました。
産まれてくる子供には、北の海の生活の悲しくて頼りない思いをさせたくない。
人間の仲間になって、にぎやかな、明るい、美しい人間の町で幸福に育って欲しい。
ある夜、「ろうそく」を商っているおばあさんは、神社の石段の下で泣いている人魚の赤ちゃんを拾います。

ろうそく屋の老夫婦に大切に育てられた人魚の娘は、びっくりするような美しい器量の、おとなしいりこうな子となりました。
人魚の娘は、おじいさんが造る白いろうそくに赤い絵の具で、魚や、貝などのきれいな絵を描くことを思いつきます。

人魚の娘が絵を描いたろうそくを山の上のお宮にあげて、その燃えさしを身につけて船乗りや漁師が海に出ると、海難から免れる不思議な力があるという評判がたち、ろうそくはよく売れるようになりました。
人魚の娘は老夫婦の恩に報いるため、手の痛くなるのも我慢して、赤い絵の具で絵を描きました。

人魚の母親、ろうそく屋の老夫婦、身勝手な大人に振り回されて、
大きな鉄格子のはまった四角な箱の中・・・
せめて、沈んでいく海の中で、人魚の娘が母親に出会えていたらいいな。

感激にもとづく行動は詩であり、
感激によって生まれる詩は行動である。(小川未明)

小川未明童話集(新潮社文庫)
「赤いろうそくと人魚」を含む短編童話25作品が収録された童話集です。
小川 未明(オガワ ミメイ) 1882年〜1961年
新潟県生まれ。早稲田大学英文科卒業。
新聞・雑誌の記者を経て作家生活にはいり、1910年童話集『赤い船』を刊行。
日本児童文学者協会初代会長。


ただ青い、
青い海の上に月の光が、はてしなく、照らしているばかりでありました。


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