もう二度と、犬は飼えない
また死ぬのがかわいそうだからではなく、
あの子以外の犬を愛するなんて私には出来ない
あの子にしてやれなかったことを、新しい犬にしてやるなんて
そんなこと私にはできるわけがない…!
まだどこか部屋の隅に残っているであろうあの子の毛の上に、
別の犬の毛が降り積もるなんて…辛すぎて胸が痛い
カイザー カイザー …
私の愛しい愛しい可愛い子…
私は無宗教だし、霊だの魂だの、信じているわけではない
でも
信じていないわけでもない
カイザーに関しては
信じていると言ったほうが近い
========輪廻==========
いつかきっと、また戻ってきてくれる…
この3年4か月、そう思い続けて暮らした
そう思わなければ暮らせなかった
電柱の上から泣くカラスに、自転車を止めて「カイザー?おいで」と呼んでみる
やけにまとわりつく蚊を叩いてしまって「カイザーだったのでは」と不安になる
どこかで悲しそうに犬が鳴いている。「私を呼んでるの?」と声を探す
ばからしいことだとわかっていても、そう思わずにはいられない
生まれ変わったカイザーだというなら、たとえナメクジでもかまわない
愛しい愛しいナメクジカイザー
手のひらに乗せて頬ずりしたい
会いたかったよ愛してるよ会えてよかった愛してるよ大好きだよ
1日だって想わない日はなかったよ
母しゃんのそばに居れば大丈夫だからね
また母しゃんがずっと守ってあげるからね
守って…
あげるからね…
===そして、それは去年の9月頃のこと…
主人の職場の建物の裏側に子猫(?)が住み付いたらしく
主人も動物好きなので毎日エサをやっていると、最近はとてもなついて
可愛いくて仕方がないのだと仕事から帰ってきては話をするのです。
「ふーん、可愛いねえ」と少し気になりながらも人ごとのようにしていた私でした。
携帯で撮った写真を嬉しそうに見せてくれましたが、
写りが悪かったせいか、ものすごくブサイクな顔の猫だと思いました。
それでも主人は「可愛い、可愛い」と毎日のように話すので
私もだんだん、少し可愛く思えてきたのでした。
私が猫缶を買ってくると、主人は嬉しそうにそれを持って仕事に出かけました。
お正月。
長い休暇のあいだ、猫はどうしているだろうかと二人で心配していました。
そして年が明けた仕事始めの今月5日の木曜…
仕事から帰ってきた主人は、
「猫がおらん…
いつもは、呼んだらすぐ走ってくるのに…」と、しょんぼり話しました。
しかしそれは、次の日も、また次の日も…続いたのです。
「人なつっこいから、たぶん誰かに飼われたと思うけど…」
心配を呑み込んで自分に言い聞かせるように寂しそうに話す主人でしたが、
その想いはすでに私の中にも少なからず生まれていました。
そして仕事始めの木曜日から、10日ほど経ったある夜…
顔を見ただけで、「どうしたの?!」と聞きたくなるような
悲壮な顔をして帰ってきた主人は、「ふうー」と深い息をひとつ吐いて、
肩を落としてドアの前に立ったまま一気に話し始めました。
=後日へ続く=


















