2010年01月27日

23歳のある日


tetsu51

吉村実子。フリー。『にっぽん昆虫記』などで好演。
ブルーリボン助演賞も得た演技派。23歳。
石立鉄男。文学座座員。除名された高橋幸治にかわる
ホープ。好青年、23歳。

二人は一昨年、フジTVの芸術祭参加ドラマ『夏』で共演して以来の交際。
この4月中旬、石立から吉村家へ婚約の申し入れ。だが、吉村実子の両親
の正式な許可がまだ。それで、二人が悩んでいるという。
「二人で吉村の両親に相談したところ、若すぎる、経済的にもまだだし・・
ということで、いったんは諭して許可しなかったらしい。だが石立と実子
の熱意にほだされて、結局、消極的な賛成ということで、結婚を前提とし
た交際、つまり暗黙のうちに、実質的に婚約を認めたということらしい」
(二人の友人)

7月か8月には、正式に人を介して婚約を認めてもらい、来年の9月か10月
ごろには、挙式にもっていく見通しだという。
吉村実子の父民乃輔氏は、石立鉄男と実子が結婚の相談に来た事を、一応
否定した。
「さあ・・。本人に聞いてみて下さい。親にしてみれば、姉のこともあるし
よく考えたうえで結婚を・・と望んでいるとしか言えません」

かといって、石立鉄男という男性に不満があるわけではない。お母さんは
石立を『鉄ちゃん』と呼び、好感を持っている。
「鉄ちゃんはよく遊びにみえますし、お芝居も一度見に行ったこともあり
ます。若いに似合わずしっかり型の男性で、演劇エリートとでも言うんで
しょうか、いい方ですわ」

石立鉄男の父光男さんは横須賀で、1万羽を飼う養鶏家である。この父も
息子と吉村実子の婚約について尋ねると、『ハテ・・』と首をかしげて・・・
微笑した。
「テツは5人兄弟の末から2番目。上に3人の兄がいるんだが、結婚して
いるのは長男だけで、まだ兄が二人残っているのでね・・。この前も来たが
あいつが話すのは、テレビのギャラがいかに少ないか、新劇がいかに金
にならないか・・・したがって、親孝行するのにどんなに不利かという話を
ジュンジュンとしておいて、『5千円貸してくれ』なんて言う。太くもない
おやじのスネをかじってねえ。だが親の口から言うのもなんですが、小さ
いころから野放図だが、自分のことは自分で責任もってやる子供で、それ
だけにまた、かわいい子ですよ」

と、肝心の話をたくみにそらすのだが、お母さんは、仰る。
「鉄男は男兄弟ばかりの中で育って、女といえば私だけしか知らないで
しょう。だから鉄男の女性を選ぶ目は純粋で、あれが選んだ方は、ごま
かしのない間違いのない方だと信じております」

4月25日、TBS前の喫茶店で、吉村実子は、しかし、答える。
―石立さんが、あなたのご両親に結婚を申し込んだそうですが
吉村「(笑って)あら、ま。知らないわ。鉄ちゃんが申し込んだのは事実
だとしても、それを両親が、私に知らせないのかもしれませんね。でも
婚については、私の選んだ人に、反対はしないと思います」
―では、石立さんに対する今の気持ちは?
吉村「今は、フランクに、何でも相談できる貴重なお友達。かわいい子よね
うん。プロポーズされたら、その時に、じっくり考えて返事をします」
と言葉をにごす。両親の気持ちを察しての、思いやりかもしれない。

だが、石立鉄男は、率直に認めた。文学座前の喫茶店で、コーヒーを飲み
ながら、時に苦渋の色を浮べ、時に朗らかに質問に答える。
―実子さんの両親に反対されたというのは事実ですか
石立「まあ事実です。いつまでも恋人のままでいるよりも、お互いの
気持ちを、ハッキリさせたかったんです」
―理由は、若いことと経済的な問題ですか
石立「それがおもな原因だろうと思います。ボクは市ヶ谷に4畳半の
アパートを借りているんだけど、家賃が7千円。この生活を維持して
いくのが、精一杯の状態ですから、無理もないですがね」
―共稼ぎ、ということも考えられるでしょう
石立「そう。だけどジッコはやめたがっている。ボクもそれが希望です。
まあ、彼女は、今までだって映画は1年に1本の割りの出演だし、あの
ペースなら家庭生活に支障ないし、いいのじゃないかと思うんだけど。
(笑って)役者として、もったいないですものね」

―これまでの交際は?
石立「ほとんど映画か芝居を見るだけ。彼女はボクがアパートに引っ越し
てきたとき手伝ってくれたし、男の一人暮しでしょう。朝、たまにだけど
ふらっとやって来て掃除をする事くらいはしてくれます」
―プレゼントの交換なんかは?
石立「ボクは貧乏だからね。彼女の4月18日の誕生日にも、何もしてあげら
れなかった。舞台から“芝居”をプレゼントしました。ボクがプレゼント
できるのはハートだけだなア。キザかな・・・」
―実子さんからあなたには?
石立「町歩いててね。それ、汚いわよって靴下を買ってくれたのが最初。
気が強そうに見えるのは映画のイメージで、彼女は、かわいい、やさしい
思いやりのある女性なんです。さりげなく『タバコの本数が多すぎる
んじゃない?』などど、注意してくれる・・・」

―それで、これからは?
石立「どうして、ご両親にわかっていただくか―です。祝福される結婚
でありたいから。ボクは真剣なんですよ。3年がかりで育てあげてきた
気持ちですからね。7月の末、『欲望という名の電車』の公演が終る頃
ちゃんと人をたて、形式をふんで、改めてお願いにあがりたいと思ってい
ます。どっちかというと、オレの方が惚れてんな。一生懸命ですよ」
(女性セブン1966年5/11日号より)
Posted by tetsumania at 00:06  |Comments(4)TrackBack(0) | 記事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
貴重なインタビュー記事を拝見しながらテツマニアさんの書かれたテツオ物語が頭に浮かびました。鉄ちゃんの一途な純な気持ちが伝わります。実子さんは大人の女性って感じがしますね。一方鉄ちゃんの方はまだ若き少年っぽさを感じつつも真の強さを感じます。40数年前の熱い二人の時代にまたタイムトリップしてみたいですね。
Posted by ジミー大野 at 2010年01月27日 03:36
実を言うと、テツオ物語を久々に読み返してみました。執筆から時間が経ち、
内容もうろ覚えだったので、結構面白かった(自分で言うなって・笑)
物語は新婚旅行に旅立つところで中断してますが、このあと海外放浪の旅から
文学座退団と、鉄ちゃんにとっての大事な節目の時期ですよね。そろそろ続き
を書いてみたいような・・・(期待しないで待ってて下さい・笑)
Posted by tetsumania at 2010年01月27日 10:37
今日この頃のマスコミの取材に比べると、聞くほうも答えるほうもとても丁寧でまじめで、そのくせ素朴ですね。興味半分のいやらしい取材と違って、とても幸せな気持ちになりました。
石立さんのお父さんとお母さんのコメントもと〜ってもホノボノ・・・。
Posted by yako at 2010年01月27日 21:38
テツマニアさん お疲れさまです
「テツオ物語」期待してもいいですか
楽しみに待ってま〜す(笑)
Posted by ワシミルク at 2010年01月27日 23:33
 
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