September 26, 2005
運慶66/「スポーツの秋」より「食欲の秋」の話
まさに「スポーツの秋」といいますが、いろんな競技から目が離せないし、自
分もやらなきゃならないし、のんびりと仕事をしている場合じゃございません。
三連休週間も昨日で終わってしまいました。ガンバ大阪の今後の戦いぶり、優勝
秒読みの大阪タイガース。欧州サッカーに、熾烈なMLBの今シーズン総決算。 さ
らに間もなく始まるNBAも!あっ、ラグビーもだし・・・。えらい事です。筆者
は昨日「テニスをしよう!」というテーマで、朝からスクールに行き、夕方 もう
一度2時間ほど「お仲間テニス」をやってきました。そして横綱・朝青龍の見事
な6連覇をTV観戦いたしやした。おめでとう朝青龍関!さて、興奮の「ス ポーツ
の秋」を少し離れて「食欲の秋」に関するお話を・・・。
筆者が小さい 頃、今から30年とか、40年とかの昔、「外食」というのは特別
な事だった。家々により多少の事情は異なるだろうが、特に我が家は外食が少な
くて、もはや冠婚葬祭に準ずる様な特別なイベントであった。 なんていうか、
「ちょっと餃子でも食いに行くか」とか「おいメシ食いに行くぞ!カツ丼食うか!」
とか、「うどん食いに行こう」的な外食が皆無で、外食とな ると「特別行事」と
いう事だった。家庭それぞれの差異はあっただろうが、間違いなく今ほど「外食
産業」なる分野が発展・充実していなかった事は確かだ。 そんな過去の反動なの
か、筆者は今、外食が大好きです。で、昨年こんなエピソードがありました・・・。
筆者が家族とよく行く和食の店で 食事をしていると、70代後半か80代の老夫
婦がその店に入ってきました。この店は頑張りやさんの若い大将と女将が切り盛
りしている「良い店」なのですが、もうひとつ要領が悪いところがある。なんと
言うか「お客様に店の良さや特徴を上手に説明して、心地いい時間を過ごしても
らうための説得(お勧め)がう まくできない」。ニュータウン内のお店という事
もあり「サーブのスタッフをアルバイトでまかない、教育が徹底しきれない」。
通常「予約しておいて」「季節 ごとの懐石料理をおまかせで食べる」ことが間違
いないのです。しかし、その老夫婦は予約なしで「婆さんがご近所で評判を聞い
てきた店はここかい」という感じで入ってこられた。
爺さんは「学校の先生かお役所勤務を、長年勤め上げて引退した」といった風
の穏やかでいながら頑固で、曲がった事が大嫌い、無駄口もたたかない、といっ
た感じで、婆さんは長年それに半歩下がって連れ添ってきた。子供達はそれぞれ
家庭を持ち、仕事の関係で東京とシンガポールで暮ら している(すべて筆者想像)。
老夫婦は外食などという贅沢はほとんどした事がなかったが、二人だけの静寂に
包まれた普遍の日々の中で、爺さんが言葉少なく「ほ ら、おまえが以前話してい
た、何とかと言う料理屋に行ってみるか?」と婆さんを誘った。こんな些細なエ
スコートでも婆さんにとっては驚きの「事件」であ り、しばらく爺さんを眺め
「いいんんですか?」と小さく応えた。「うむ」と爺さんは返事をし、二人は家
からこの店まで約1kmの道程を、夕闇の中ゆっくり と歩いてきた。もちろん、す
べて筆者の想像である。
(ここからは、事実である)爺さんは席に着くと勧められた「おまかせ」を静
かに断り、「私たちは食も細いし、残しては勿体ないので何品 か頼みます」と言
った。これは(よくないパターンである。少しずつでも、爺さんが嫌いなものを
省いてでも「おまかせ懐石」をリコメンドせよ!)筆者は心の 中で叫んだ。しか
し、スタッフはおよそまとまりのない不器用な爺さんの注文を、厨房へ無造作に
通したのである。(女将よ、忙しいのは判るが、目配り・気配 りで早急にフォロー
せよ!)。筆者は再び心の中で叫んだ。しかし、女将にその余裕はなかった・・・。
案の定、注文の品はなかなか出てこない。爺さんと婆さん は、時を失ったフクロ
ウのように無言で待ち続ける。筆者はその状況が気になって、家族の会話にも食
事にも集中できない。一品目がやっと出てきた。(ヨッシャ、ここから爺さんと
婆さんの楽しい時間の始まりや!)筆者が安堵した途端、目に飛び込んできた一
品目は天婦羅だった・・・。
厨房は(完全に 「おまかせプラスの追加オーダー」と思っているのではないだ
ろうか?)筆者の不安はますます激しくなる。老夫婦は寡黙に天婦羅を食す・・・。
二品目!ご飯 と赤出しとお新香が出てきたぞ!(これで、いいのか?二人は黙々
と食ってるぞ!)しばらく間をあけて三品目の登場だ!げっ〜「お造り」だ!も
う筆者は立ち 上がって従業員を殴り倒したくなってきた。(俺はもう見てられな
い。二人が歩んできた人生、そしてたどり着いた今日という日、そしてこの食事
の意味をおま えらなんと心得とるんじゃ!)。筆者の肩がワナワナと震え出した
その時、爺さんが小さな声で呟いた。爺さんが食事を始めてから、筆者が確認で
きた最初の言葉だ。「なんだか、ちぐはぐだね・・・」爺さんは婆さんに語りか
ける訳でもなく、一人でそう呟いた。筆者は肩を落とし、心の中で号泣した・・・。
爺さんも、婆さんも、明日どうなるか判らない。婆さんは家を守り、子を育て、
爺さんは悪夢の戦争を生き延び、戦後日本を実直に支え、贅沢を嫌い、己にも家
族にも厳しくい生きてきた。婆さんはそんな爺さんにおねだりもせず、不平も言
わず、日々を丁寧に生きてきたのだ。ほんの些細な「今日の夕食」かもしれない。
でも、婆さんが死ぬとき、今日の爺さんとの二人だけの外食を思い出し「おじい
さん、ありがとう、いい人生だったわ」と呟くかもしれないんだ!爺さんは食事
の時に伝えようと思い、伝えきれなかった「苦労をかけたな、でもな、お前と一
緒で私はよかった・・・」の言葉を婆さんに返すんじゃー、ボケーッ!!! 食事
とは本当に大切な人生の1シーンとなる事がある。共に人生の中の同じ瞬間に、
同じものを食す空間は、忘れがたい「共有の時空」となる可能性を大いに秘めて
いるのだ。
がんばろう、共にがんばろう。素敵な外食文化を店と客の両方で育てて行こう。
この国の食文化は、それに充分値するクオリティなのだから。爺さんが呟いた
「なんだか、ちぐはぐだね・・・」の言葉を心にしっかり止めておこう。筆者は
その店の客として、その時店の者を「殴り倒さなかった」ことを今でも悔いてい
る。勇気とはこう言う時に発揮するものだと思った。
分もやらなきゃならないし、のんびりと仕事をしている場合じゃございません。
三連休週間も昨日で終わってしまいました。ガンバ大阪の今後の戦いぶり、優勝
秒読みの大阪タイガース。欧州サッカーに、熾烈なMLBの今シーズン総決算。 さ
らに間もなく始まるNBAも!あっ、ラグビーもだし・・・。えらい事です。筆者
は昨日「テニスをしよう!」というテーマで、朝からスクールに行き、夕方 もう
一度2時間ほど「お仲間テニス」をやってきました。そして横綱・朝青龍の見事
な6連覇をTV観戦いたしやした。おめでとう朝青龍関!さて、興奮の「ス ポーツ
の秋」を少し離れて「食欲の秋」に関するお話を・・・。
筆者が小さい 頃、今から30年とか、40年とかの昔、「外食」というのは特別
な事だった。家々により多少の事情は異なるだろうが、特に我が家は外食が少な
くて、もはや冠婚葬祭に準ずる様な特別なイベントであった。 なんていうか、
「ちょっと餃子でも食いに行くか」とか「おいメシ食いに行くぞ!カツ丼食うか!」
とか、「うどん食いに行こう」的な外食が皆無で、外食とな ると「特別行事」と
いう事だった。家庭それぞれの差異はあっただろうが、間違いなく今ほど「外食
産業」なる分野が発展・充実していなかった事は確かだ。 そんな過去の反動なの
か、筆者は今、外食が大好きです。で、昨年こんなエピソードがありました・・・。
筆者が家族とよく行く和食の店で 食事をしていると、70代後半か80代の老夫
婦がその店に入ってきました。この店は頑張りやさんの若い大将と女将が切り盛
りしている「良い店」なのですが、もうひとつ要領が悪いところがある。なんと
言うか「お客様に店の良さや特徴を上手に説明して、心地いい時間を過ごしても
らうための説得(お勧め)がう まくできない」。ニュータウン内のお店という事
もあり「サーブのスタッフをアルバイトでまかない、教育が徹底しきれない」。
通常「予約しておいて」「季節 ごとの懐石料理をおまかせで食べる」ことが間違
いないのです。しかし、その老夫婦は予約なしで「婆さんがご近所で評判を聞い
てきた店はここかい」という感じで入ってこられた。
爺さんは「学校の先生かお役所勤務を、長年勤め上げて引退した」といった風
の穏やかでいながら頑固で、曲がった事が大嫌い、無駄口もたたかない、といっ
た感じで、婆さんは長年それに半歩下がって連れ添ってきた。子供達はそれぞれ
家庭を持ち、仕事の関係で東京とシンガポールで暮ら している(すべて筆者想像)。
老夫婦は外食などという贅沢はほとんどした事がなかったが、二人だけの静寂に
包まれた普遍の日々の中で、爺さんが言葉少なく「ほ ら、おまえが以前話してい
た、何とかと言う料理屋に行ってみるか?」と婆さんを誘った。こんな些細なエ
スコートでも婆さんにとっては驚きの「事件」であ り、しばらく爺さんを眺め
「いいんんですか?」と小さく応えた。「うむ」と爺さんは返事をし、二人は家
からこの店まで約1kmの道程を、夕闇の中ゆっくり と歩いてきた。もちろん、す
べて筆者の想像である。
(ここからは、事実である)爺さんは席に着くと勧められた「おまかせ」を静
かに断り、「私たちは食も細いし、残しては勿体ないので何品 か頼みます」と言
った。これは(よくないパターンである。少しずつでも、爺さんが嫌いなものを
省いてでも「おまかせ懐石」をリコメンドせよ!)筆者は心の 中で叫んだ。しか
し、スタッフはおよそまとまりのない不器用な爺さんの注文を、厨房へ無造作に
通したのである。(女将よ、忙しいのは判るが、目配り・気配 りで早急にフォロー
せよ!)。筆者は再び心の中で叫んだ。しかし、女将にその余裕はなかった・・・。
案の定、注文の品はなかなか出てこない。爺さんと婆さん は、時を失ったフクロ
ウのように無言で待ち続ける。筆者はその状況が気になって、家族の会話にも食
事にも集中できない。一品目がやっと出てきた。(ヨッシャ、ここから爺さんと
婆さんの楽しい時間の始まりや!)筆者が安堵した途端、目に飛び込んできた一
品目は天婦羅だった・・・。
厨房は(完全に 「おまかせプラスの追加オーダー」と思っているのではないだ
ろうか?)筆者の不安はますます激しくなる。老夫婦は寡黙に天婦羅を食す・・・。
二品目!ご飯 と赤出しとお新香が出てきたぞ!(これで、いいのか?二人は黙々
と食ってるぞ!)しばらく間をあけて三品目の登場だ!げっ〜「お造り」だ!も
う筆者は立ち 上がって従業員を殴り倒したくなってきた。(俺はもう見てられな
い。二人が歩んできた人生、そしてたどり着いた今日という日、そしてこの食事
の意味をおま えらなんと心得とるんじゃ!)。筆者の肩がワナワナと震え出した
その時、爺さんが小さな声で呟いた。爺さんが食事を始めてから、筆者が確認で
きた最初の言葉だ。「なんだか、ちぐはぐだね・・・」爺さんは婆さんに語りか
ける訳でもなく、一人でそう呟いた。筆者は肩を落とし、心の中で号泣した・・・。
爺さんも、婆さんも、明日どうなるか判らない。婆さんは家を守り、子を育て、
爺さんは悪夢の戦争を生き延び、戦後日本を実直に支え、贅沢を嫌い、己にも家
族にも厳しくい生きてきた。婆さんはそんな爺さんにおねだりもせず、不平も言
わず、日々を丁寧に生きてきたのだ。ほんの些細な「今日の夕食」かもしれない。
でも、婆さんが死ぬとき、今日の爺さんとの二人だけの外食を思い出し「おじい
さん、ありがとう、いい人生だったわ」と呟くかもしれないんだ!爺さんは食事
の時に伝えようと思い、伝えきれなかった「苦労をかけたな、でもな、お前と一
緒で私はよかった・・・」の言葉を婆さんに返すんじゃー、ボケーッ!!! 食事
とは本当に大切な人生の1シーンとなる事がある。共に人生の中の同じ瞬間に、
同じものを食す空間は、忘れがたい「共有の時空」となる可能性を大いに秘めて
いるのだ。
がんばろう、共にがんばろう。素敵な外食文化を店と客の両方で育てて行こう。
この国の食文化は、それに充分値するクオリティなのだから。爺さんが呟いた
「なんだか、ちぐはぐだね・・・」の言葉を心にしっかり止めておこう。筆者は
その店の客として、その時店の者を「殴り倒さなかった」ことを今でも悔いてい
る。勇気とはこう言う時に発揮するものだと思った。
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