2008年07月24日

468)落ちたアンズ


アンズ果樹園での撮影


 7月14日に、大同市渾源県呉城村を訪れました。
 あのアンズの村です。
 ことしの春は、テレビのクルーが訪れて、この村を取材しました。
 そのつづきの撮影が、7月におこなわれるはずでした。
 でも、オリンピックを控え、取材ビザがでなかったんですね。
 で、急遽、中国側のスタッフだけの撮影になりました。


 そうはならなくても、春に期待していた場面は、撮れませんでした。
 花が咲いたあとの寒波襲来で、
 ついたばかりの幼果が、落ちてしまったことを、数号前に書きました。
 大同事務所の、武春珍所長から、そのような連絡があったのです。
 しかし、取材チームが、呉城村に直接、電話で問い合わせたら、
 「少しはなっている」とのことです。
 私は、全滅だと思っていましたからね。
 「少しは……」ときいても、だんだん期待が膨らんだんですね。

 7月14日は、朝から雨でした。
 3〜4月は、例年になく、雨が降ったんですけど、
 最近の40日ほど、雨がなかったのだそう。
 テレビのクルーは、晴天を期待するでしょうけど、
 雨を待つ農民の気持ちは、その何倍も強いでしょう。
 数からいっても、問題にならない。
 そう激しい雨ではありませんが、午前中は降りつづけました。
 おかげで、気温は18度ほど。
 Tシャツのうえに、ウインドブレーカをはおっても、
 まだ寒いくらい。

 ついでにいいますと、ことしの冬は寒かったんですね。
 冬のあいだ、土は凍結してますけど、
 その後も、なかなか地温が上がらないようです。
 アンズも、その他の作物も、生育が遅れています。
 通常なら、7月15日ごろにはアンズは熟して、
 収穫シーズンにはいるんですけど、
 ことしは、残ったものも、まだ青くて、
 熟するには、あと1週間はかかる、ということでした。

 呉城村を訪れるときは、たいてい、村にむかう途中にある
 アンズ畑を最初にみるんですけど、このときは、直接、村にはいりました。
 そして、私が、久しぶりに村にきて、
 旧知の王迎才書記とあいさつを交わす、といった設定で、撮影開始。
 まあ、事実が、そのとおりなんですけどね。
 そのあと、村のうしろのアンズ畑に向かいました。

 私の最初の印象は、けっこう、なっているじゃないか、というもの。
 豊作の年のように、枝もたわわ、というわけにはいきませんけど、
 木によっては、びっしりとついているものもあります。
 でも、これは、ぬか喜びだったんですね。
 ここの木は、実がつきはじめて数年の若い木なんですけど、
 若い木にはすこしは残って、
 初期に植えた大きな木は、実が凍って、全滅だといいます。

 前回の報告と、すこし重なりますけど、
 4月20日ごろに、気温は30度近くまであがり、
 アンズの花が、咲きほこりました。
 ところが、4月23日になって、零下7度くらいまで
 気温が、下がったのです。
 でも、このときは、それほど被害を受けなかったようです。
 遠田先生たちが、4月25日に現場にいって、それを確認しています。

 ところが、5月9日、10日になって、
 またもや、零下7度まで、気温が下がってしまいました。
 王迎才書記の自宅の中庭に、最高最低温度計がおいてあり、
 彼は、その時期の気温を、注意深く測っているようです。
 それで、実が凍って、落ちたんですね。
 この時期になって、これほどの寒波がくるのは、
 アンズ栽培をはじめてからの15年では、はじめてのことだそう。

 王迎才さんは、話のなかで、
 「没法子!」(メイファーズ)をくりかえします。
 どうしようもない、しかたがない、という意味ですね。

 またまた横道ですけど、大同の農村にひとりで行った1992年秋、
 私の話せた中国語は、
 ニイハオ!
 シェシェ!
 ツァイチェン!
 ツースオザイナーリ? の4つでした。
 最後のものは、「トイレはどこですか?」というもの。
 5つ目に、つまり現地で最初に覚えたのが、
 この「メイファーズ」ですね。
 それくらい、農民の口に、よくのぼる。

 取材チームは、ある一家の暮らしを追っかけているんですけど、
 この家のアンズの収入は、
 去年は4千元あったのに、ことしは百元も見込めないそうです。
 たしかに、村からの帰りにみた、植えて14年ほどのアンズの木には、
 まったく、実がついていませんでした。
 そのうえ、長女は進学の時期を迎えています。
 あるじはさかんに、「メイファーズ」をくりかえします。
 ディレクターの張森さんが、私に話しかけてきました。
 「でも、悲惨さといったものが表情にでてませんね」というのです。

 ほんとにそうなんですよ。
 私も以前、ビデオカメラをまわしたとき、それを痛感しました。
 旱魃で、ほぼ全滅したジャガイモ畑を中耕している老人(?)を
 撮影したんですけど、彼は、
 どんなに雨が降らなかったか、ということを、
 孫の自慢話でもするように、陽気に話したんですね。
 老人のあとに、(?)をつけたのは、
 ひょっとすると、私より若いかもしれないからです。

 こんどの番組は、2時間ものなんだそうです。
 それだけの時間があったら、
 あの自然災害のなかでも、悲惨さが感じられない、
 そのあたりの秘密を、描き出して、ほしいものです。

 あ、そうそう。
 「没法子!」(メイファーズ)のなかには、
 「なんとかなるさ」というニュアンスも、含まれているんだそう。
 そのことについては、この黄土高原だよりの、394号で書きました。
 農村の生活も、中国語の世界も、ほんとに奥が深い!


Posted by koko_tayori at 15:21  |Comments(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする


 
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