2007年09月15日

映画『オフサイドガールズ』を見てきました


 9月11日、日比谷シャンテシネで、映画『オフサイドガールズ』(2006年イラン、ジャフル・パナヒ監督)を見てきました。

 2005年、イラン代表がサッカーのワールドカップ(W杯)出場をかけて、ホームゲームでバーレーン代表と戦った試合会場が舞台。イランでは、男子サッカーの試合を女性がスタジアムで観戦することは、法律で(原則として)禁止されている。しかし、この大一番の試合をどうしても見たい女性たちが、男装してスタジアムへ入り込もうとして……、というのが映画のあらすじ。

 感想を簡潔に言うと、なんというか、非常に変わっていて、印象に残る映画。
 ワン・アイデアで作られ、非常に限られた場面で話が進み、ラストもぐでぐでした感じなのだが、「しょぼい映画だった」では片付けられない。そんな映画。

 以下、細かな筋書きを紹介しながらもう少し映画の感想を書きます。

|オフサイド・ガールズ|(公式サイト)

*一部、映画の後半の筋書き(ネタバレ)に該当しそうな部分も書きますので、あらかじめご了承ください。

 一番感じたのは、イランにも本音と建前があるのだということ。私の勝手なイメージでは、イランでは法律や規律を厳格に守る、という印象があったので、映画で描かれるイランの人々の様子は、フィクションとはいえ意外だった。

 「どうしてイランの女性はスタジアムで男子サッカーを見てはいけないのか?」という疑問は、「なぜテレビならいいのか?」、「外国人が特別に許可されることがあるのはなぜか?」などを考えながら突き詰めていくと、「昔からそうだったから」という回答になってしまうのだろう。だから、「なぜ見てはいけないのか」については誰も明確に答えられないし、「見てもかまわないだろう」と思っている人もいるはずである(少なくとも、スタジアムに侵入した女性たちはそう思っている)。これが本音の部分。

 ただし、「見てはいけない」という現実がある以上、それは守られなければならない。これが建前。
 例えば、スタジアムの警備を担当する兵士たちは、義務として徴兵されたのであり、それぞれが生活を抱えている。侵入した女性を客席のすぐ外に隔離し、見張る現場の責任者には、畜産業という家業がある。本当は早く故郷に戻って、家業を手伝いたい。しかし、兵役に就いている以上はその仕事を全うしなければならない。生活がかかっているのだから。
 また、中にはサッカーファンの兵士もいて、警備をしつつも試合が気になってちらちらと見てしまう。

 この、本音と建前のギャップに悩む兵隊たちの姿は、人間臭くて好感が持てる。また、最初は「試合を見たい」という本音だけで行動していた女性たちも、兵士たちの抱えるギャップを感じ、本音と建前の妥協点でどうにか試合の雰囲気を感じようとする(サッカーファンの兵士に実況させるなど)のも、やはり人間臭さがある。
 また、スタジアムに侵入した女性の父親が娘を追ってスタジアムに入り、隔離されていた姪を見つけて、懸命に働いて娘を大学にやったのに、こんな目にあうのかと嘆くシーンは、本音と建前が重なっている世代と、それが別れている世代(これはスタジアムに侵入した女性だけでなく、兵士たちも含めた世代)の差を感じさせて、印象的だった。

 また、あくまで建前を守ろうとするところに、笑いも生じる。例えば、女性の一人がどうしてもトイレに行きたいと言い、兵士の一人が付き添って連れて行くシーン。女性ということが分からないように、イランの選手(たぶん、アリ・カリミ)のポスターをお面のように付けさせて歩かせる。更には、男性用トイレしかないので、男性と女性が一緒にトイレに入らないように、兵士がトイレの中の男性を全員出し、また入りたい男性をシャットアウトしてひと悶着起こる。
 こういう、矛盾や問題点を笑ってしまおうという気持ちは、好きです。ただ、あまりにストレート(お笑いで言う「ベタ」)で、あまり面白くなかったけれど。

 それからこの映画は、一部のシーンを実際にイランが2006年のドイツW杯出場を決めたスタジアムで撮影し、また映画の筋書きもサッカーの試合結果に任せていたようで、ドキュメンタリー的、ゲリラ的な撮影ともいえる。女性がサッカー場に入れないのに、女性が客席の外とはいえサッカー場に入った様子や、スタジアム内のトイレに入っていく様子を撮影したのだから(ひょっとしたらお面は、問題が起きないためのカモフラージュのためでもあったのかもしれない)。また出演者もプロの俳優ではなかったとのこと。

 ただし、このドキュメンタリー的なつくりが、ラストの中途半端な終わり方の原因でもあると思う。ラストは(ここからかなりのネタバレ)、女性たちをスタジアムから軍隊の分隊に連れて行く途中の車内で、イラン代表のW杯出場が決まる(ラジオの中継で分かる)。そして、車が出場を祝う渋滞の中に入り、兵士たちが喜ぶ人々に「一緒に祝おう」と車の外に連れて行かれ、女性たちは「今のうちに逃げよう」と車の外に出る。そしてエンドロール。
 もし、女性たちが逃げることがなかったら、軍隊の分隊でどういう手続きを踏んで帰されるのか、あるいは拘留されるのか、イランの法律についての知識がないので分かりませんが、W杯出場が決まったどさくさで逃げられたら、兵士たちはどうなるのかとか、女性たちがそれぞれ家に帰れたら「めでたしめでたし」なのかとか、色々考えてしまう。そして、「このラストでいいの?」という疑問は残る。

 ただ、色々なことを考えさせてくれたという意味では、非常に印象的な映画だった。

|オフサイド・ガールズ|(公式サイト)

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