2007年10月29日

映画感想『赤頭巾ちゃん気をつけて』(2007.10.24@渋谷Bunkamuraル・シネマ)

 第20回東京国際映画祭の特別企画「映画が見た東京」の一本。

・東京国際映画祭 http://www.tiff-jp.net/ja/

・『赤頭巾ちゃん気をつけて』(1970年、東宝。監督:森谷司郎。出演:岡田裕介/森 和代/中尾 彬/風見章子、ほか)
東京国際映画祭 | 主要部門 - 赤頭巾ちゃん気をつけて
日比谷高校3年の薫クンはまったくツイてない。愛犬は死に東大入試は中止になり、幼なじみの由美とはまた喧嘩だ。挫折と希望の間を揺れ動く、甘くて苦い青春映画。巧みに当時の映像、広告、音楽が挿入される。

 原作は、庄司薫の同名小説。小説は大学生の頃に読んだのですが、あまり記憶に残っていない。印象として記憶しているのは、起伏のある物語というよりも、男子高校生である主人公薫が、日常の中で考えることを綴った小説、ということ。そしてそれが文体も含めてなんだかかっこよかった、ということ。

 映画も、学生運動の影響で東大入試が中止になり、進路について改めて考えることを余儀なくされた薫が、色々なことを考える、という内容。独白のようなシーンも多い。大きな事件だけでなく、飼っている犬が死んでしまったり、足の爪を剥がす怪我をしたり、ガールフレンドと喧嘩したり、と、身近にも色々なことが起こる中で、やや内省的な性格の薫が自分のこれまでやこれからを考える。

 セリフが結構観念的。これは10代後半から20代に共通する難解さであるとともに、1960年代から70年代という時代を感じさせる。
 中でも一番印象的だったのは、薫の家にやってきた友人の小林のセリフ。歌謡曲などの非インテリ的な文化が流行し始め、それに乗る生き方が主流となることを、「阿波踊りの真ん中でモーツァルト、ワーグナーのレコードをかけて、いいと言っても伝わらない」(だったかな?)と言う。

 この当時を経て、1980年から2000年くらいまでは、まさに「阿波踊りの真ん中でモーツァルト、ワーグナーのレコードをかけて、いいと言っても伝わらない」時代だったのだと思う。ついでに、その例えで言えば、今はそれぞれが少人数のグループで(あるいはひとりで)好きなように阿波踊りを踊ったり、モーツァルトやワーグナーをいいと言っている時代なのだろうと思う。

 もうひとつ印象的だったのは、銀座の高層階のレストランで、薫とガールフレンドの由美が銀座の夜景を眺めるシーン。外に映る広告の看板を眺めながら、商品や企業の名前を言う。そして由美が最後に、「東京ってきれい」と言う。
 上映後の岡田裕介氏(現在は東映の社長)を招いてのティーチイン(質疑応答)で、このシーンについての質問も出た。森谷監督の演出の意図は、広告風景だけが目立ってしまう東京の姿を映す、ということだったようですが、「東京ってきれい」のセリフも、急遽森谷監督が思いついて追加したものだったとのこと。色々な意味が込められていて、それゆえに印象に残るシーンになっている。
 ちなみに、私は1970年代終わりに生まれた世代なので、ああした広告がたくさんある風景が、東京の原風景、という印象が強い。

 岡田社長のティーチインでは、映画撮影当時のエピソードや、森谷監督の思い出などが語られた。京都出身だったので標準語を話すのが大変だったとか、演技が上手くなかったので足を怪我した状態で歩くシーンでは靴に画鋲を入れていたとか、銀座の路上のロケは無許可で、2ヶ月間夕方4時に銀座でちょっとずつ撮影したとか、共演した森和代さんは今森本レオさんの奥様だとか、面白い話がいくつも聞けました。

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