2008年10月22日
カウンターカルチャーとしての映画(とジャズ)の魅力:映画感想『僕らのミライへ逆回転』

映画「僕らのミライへ逆回転」を見た。今年見た映画で5本の指に入る面白さだったかもしれない。最初「あれ?」と思うのだが、すぐにどういうことかうっすらと分かり、それでも最後まで楽しんで見ることができる映画。
僕らのミライへ逆回転
http://www.gyakukaiten.jp/
舞台はアメリカ・ニューヨークの近くにある小さな街の小さなレンタルビデオショップ。旅行に出た店長から店を任されたマイク(モス・デフ)だったが、友人でスクラップ工場を経営するジェリー(ジャック・ブラック)が、電磁波を浴びて来店し、店中のビデオを磁気で消してしまう。
店長が帰ってくる前にどうにかしなければならないと考えた二人は、自分たちで消えた映画を撮ることにする。
前半は、ドタバタとしたコメディ。ジェリーがビデオを消してしまうまでも、店で貸し出すビデオを撮影する場面も、細かなギャグがいくつも登場する。最初に撮影する「ゴーストバスターズ」や「ラッシュアワー2」など、いい意味で安っぽくて、適当なようでいてそれっぽい映像で、面白い。「ライオン・キング」も、ボール紙に書いたライオンを動かすという、子ども向けの人形劇のような映像に。
ただ、「キング・コング」の遠近法を使った素朴な特撮など、実はよくできている映像も多い。
そして、このリメイク版ビデオが街の人に人気となり、途中から作品不足を補うため、お客さんにもビデオの制作に参加してもらうことになる。しかし、こうして店が有名になると色々な問題が発生して、という展開。後半は、結構感動する。ちょっと泣けた。
以下、もう少し詳しい内容に触れながら感想を。
なお、下記のサイトの「Trailer」では、映画の中で登場したリメイクビデオ(映画の中ではスウェーデン製を意味する造語「Sweded」と呼ばれている)の一部を見ることができる。
Be Kind Rewind(英語・アメリカ版公式サイト)
http://www.bekindmovie.com/intro.html
また、下記のYouTubeのページからは、投稿されたSweded映像を見ることもできる。
YouTube - bekindrewind さんのチャンネル
http://jp.youtube.com/bekindrewind
*以下、ネタバレを含む。
*以下、ネタバレを含む。
劇中で何度か登場するのだが、ビデオ店は老朽化を理由に市から立ち退きを迫られていた。立ち退きを免れるには改装するしかないが、それには莫大な予算がかかる。店長が旅に出た本当の理由は、売り上げを上げるための他店研究のためだった。
しかし、リメイクビデオのおかげで、その予算も獲得できそうになるのだが、そこに立ちはだかるのが著作権。つくられたビデオは著作権法違反ということで、違反金の支払を要求される。
店長はこれ以上ビデオショップを続けることをあきらめるが、ジェリーと街の人は店長とマイクにある提案をする。自分達のオリジナルの映画をつくろうと。題材は、街が生んだジャズの鍵盤奏者Fats Waller(ファッツ・ウォーラー)。彼の生涯を描いた映画を、これまでのリメイクビデオで培ってきたやり方を駆使してつくろうと。この、みんなで作ろうという思い、そしてみんなで行動する情熱、予算のなさを工夫でカバーする撮影に、「物をつくる」ってこういうことじゃないかと思う。
そしてその「ファッツ・ウォーラー物語」が、映画の最初に流れるモノクロフィルムなんだよね。だから、最初「あれ?」と思うのだが、ジャック・ブラックが画面に登場しているので、「ああ、みんなで撮った映画なんだな」とピンとくる。だからといって興味が削がれることはない。むしろどうやってみんなが映画をつくるにいたったか、最後まで興味を惹かれる。
そしてラスト。取り壊しの決まったビデオ店で、少しだけ待ってもらい、完成した「ファッツ・ウォーラー物語」を上映する。そして映画が終わる頃、店の外に出た店長たちは驚くことになる。入口側にスクリーンを貼り、プロジェクタで映していたため、店の外からも(左右反転しているが)映画を見ることができ、多くの人が映画を楽しんでいた(「ニュー・シネマ・パラダイス」みたいだ!)。このシーンには、「そもそも映画を楽しむとはどういうことか」が表れていると思う。
しかし、映画はそこで終了。それから店がどうなったかは描かれない。これはなんとなく惜しい気もするし、それでよかった気もする。中途半端な長さの後日談をつけるよりは、色々想像できる方が余韻が残る。そして、きっとハッピーエンドだろうと思える。
映画全体から感じたのは、カウンターカルチャーとしての映画の魅力。とはいえ、この映画の主人公達が反体制だとは言わない。しかし、立ち退きを迫られる古い建物、著作権法違反だと言われる手作りのリメイクビデオなど、あまりに窮屈な体制側(あるいは商業主義と言ってもいいかもしれない)の論理に、最も素朴に映画を作り、楽しむ思いで立ち向かうというのは、ある種のカウンターカルチャーではないかと思う。そしてそのテーマがファッツ・ウォーラーだというのも、カウンターカルチャーとしてのジャズを象徴しているのではないかとも思う。
そこまであれこれ考えなくても、十分楽しめる映画だけれどね。
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