2011年11月28日

『吸血蛾』読了

 皆さんこんばんは、よーくろです。1ヶ月くらい前の記事で「 『吸血蛾』再読にチャレンジ」と書きましたが、タイトルの通り読み終わりました…と言っても、それはもう2週間くらい前の話になってしまいますが。と、云う事で今夜はその感想を。
 前にも書いたとおりあまり評判は良くないようなこの作品ですが、名探偵金田一耕助の活躍する一編として、なかなか楽しめました。映画化された作品のあのイメージしか知らない人にとっては、ほぼ都会を舞台にした(しかも被害者の多くはファッションモデル)ホラーかスリラーっぽい感じの作風はある意味新鮮かも知れません。横溝先生が戦前に書かれた、由利麟太郎物と近いような感じがしました。


※この先、ネタバレ込みになります。また関連作品タイトルや重要な部分に関しては背景と同色にしますが、携帯端末等ブラウザの種類によっては見えてしまう可能性があります。未読の方はご注意をお願い致します!!


 この作品は、いろいろと他の金田一耕助物を思わせるところがあります。まず、作品全体の構造は『幽霊男』(発表は『吸血蛾』の1年前である1954=昭和29=年、しかも同じ雑誌)と似通っています。被害者の殆どが女性で、その遺体のほとんどが何かのオブジェのように飾られている点、実は本来の“怪人”は犯人とは別人()で、その怪人に濡れ衣を着せるかたちで真犯人が暗躍する点、更には怪人や犯人とは別の謎の人物の存在、そしてラストでの、犯人と真に狙われていた人物及び耕助との対決と云ったところです。また、耕助とは別に事件を追っかける新聞記者が登場し、作中のヒロインと恋仲になりそうな雰囲気は、後の『悪魔の寵児』でも見られます。またこの作品では途中で明かされますが、『犬神家の一族』と同じように真犯人に対する事後協力者も登場します。目的は違う(しかも今作のその人物達はそのつもりが無かった)ようですが、事件をより複雑にしてしまったのは一緒です。こうして他作品と似通った点は多々あるもののその使い方・組み合わせ方や描写等が上手く、二番煎じに見えないのはさすがと思いました。

 『吸血蛾』以前に読んだ2つの短編集の感想等については、また日を改めて書きたいと思います。それでは、また。


*:『吸血蛾』事件後半、最後の被害者となった内の一人である日高ユリがモデル仲間のヒロイン・杉野弓子に電話を書けた際、犯人をオオカミ男の“幽霊”と称したのは…この部分、作中での耕助による解明は無いのですが、犯人が側にいる状態で、しかも恐らくは共犯者が自分達の尊敬している人物であると知って相当なショックであったろうと思われる中での、正にこの点(しかも、当の怪人は既に死んでいるを指し示す精一杯のメッセージだったと思われます。
 

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