“THE CRIMSON PIRATE”


皆様こんばんは、めとろんです。
さて、今回は元祖「パイレーツ・オブ・カリビアン」とも言うべき、痛快海賊冒険活劇「真紅の盗賊」(THE CRIMSON PIRATE)を、ご紹介します!
Story
「帆桁に登れ!出航準備だ!
(観客に向って)諸君も共に旅立とう。“真紅の盗賊”、最後の航海へ。
…遥か昔のカリブの海へ。航海の心得。海賊船の上では、己の目だけを信じろ−いや、全てを信じたらダメだ。巻き上げ機につけ!錨を上げろ!−ものども、急げ!」

舞台は18世紀末、海賊の跳梁するカリブ海。
目にも眩しい紅い装束を身につけた、“真紅の盗賊”と綽名される船長(キャプテン)ヴァロ(バート・ランカスター)。盟友であるオーホ(ニック・クラヴァット)、老練な副長ベローズ(トリン・サッチャー)らと共にカリブの海を縦横無尽に駆ける!
ヴァロを頭目とする一味は、人が死に絶え漂う廃船を装い、30門の大砲を備えたスペイン王立海軍の監視艦をそっくり手にいれることに成功する。そして、この艦には、ヴァロたち海賊の宿敵とも言うべき、国王の特使・グルーダ男爵(レスリー・ブラッドリイ)も同乗していた。
しかし、船にあったものはマスケット銃3000挺、火薬1500樽、銃弾6万5000発、砲弾などであった。不満を述べる船員たち。「船長、お話中恐縮ですが、黄金はまだですか?」
「まあ聞け。この辺りは反乱を企てる奴が大勢いて、銃を欲しがっている。奴らにとって、銃は黄金より価値がある」
海賊の仕事じゃない、と非難する声があがり、さらに捕虜となったグルーダ男爵を処刑せよ、と迫る船員たちに処刑はしない、と告げるヴァロ。
彼の作戦はこうだ。「まず、反乱軍に銃を売り、5万稼ぐ。その反乱軍の討伐が男爵の任務だ。
男爵に銃を売った相手を教え、礼金としてさらに5万戴く。どうだ?」
男爵はヴァロの提案を「まさに名案だ!」と褒め、コブラ島でスペインに謀反を企てるエル・リブレなる人物を銃でおびき出し、自分に差し出せばさらに5万フロリンやる、と約束した。全部で15万フロリン!沸き立つ海賊たち。しかし、副長のベローズは懐疑的だった。
ヴァロと一党は海軍を装い、艦をコブラ島に停泊。彼はオーホとともに島に潜入、反乱軍に接触しようとするもスパイと疑われる。
彼らはわざと兵隊に追われ、逃げ回った末、叛徒一味に助けられる。

自分は”真紅の盗賊”と明かし、リブレに会わせてくれと頼むヴァロだったが、縛られ地下に軟禁される。逆にヴァロを人質に、海賊から銃を奪うというのだ!
「失敗したら、私たちがあの世行きよ。勇敢だけど無茶な作戦だわ」
反対する妙齢の美女−反乱軍のリーダー・リブレの娘コンスエロ(エヴァ・バートック)に瞠目するヴァロ。彼女は海賊の力を借りて、じつは遠くサンペロー島の監獄に閉じ込められているリブレを救出しようと持ちかける。隙を見て詰まれた樽を崩し、脱出を企てるヴァロ、オーホだったが、コンスエロに見つかってしまう。彼女は、リブレ救出に手を貸すことを条件に、2人を逃がして一緒に艦に乗り込むのだった…。

サンペロー島に到着したヴァロは、正装してグルーダ男爵になりすまし、国王の命でエル・リブレを預かりに来たと告げる。その夜、男爵歓迎の豪華な晩餐会が開かれ、馬子にも衣装のヴァロ、オーホとコンスエロが参加。その場に、あわや処刑寸前だったエル・リブレと科学者プルーデンス教授の2人が引き出される。目と目が合う、父リブレと娘コンスエロ。

目的を達した一同は、早々にずらかろうとするが引き止められ、余興である女性ダンサーたちの踊りがスタートする。しかし、その中の1人が、昔ヴァロたちが捕虜にした女だった!
「ヴァロ!そいつを捕まえて!真紅の盗賊よ!」
大混乱のどさくさに紛れ、何とか脱出に成功するヴァロたちであった。
コブラ島へ向うヴァロは、悩んでいた。いつしか、コンスエロを愛してしまっていたのだ。
リブレたちを男爵に渡さず、船員たちに内緒で逃がす決意をするヴァロ。その会話を盗み聞きしたベローズは独自に男爵と取引し、艦の底に招き入れる!
夜明けにリブレたちを小船に乗せ、逃がそうとした瞬間、兵隊たちが彼らを捕らえた。
「ヴァロ!助けて!」助けようとする彼に、ベローズが銃を突き付けた。「そうはいかん」
甲板に現れるグルーダ男爵、そして船員たち。


「あんたは掟を破り、獲物を逃がした罪人だ。海賊法により小舟で漂流の刑に処す。食料も水もなしだ」ヴァロ、オーホ、そしてプルーデンス教授は舟に鎖で繋がれ、流される。
(ネタバレ反転〜物語の結末を明かしています!未見の方は要注意!)
教授のアイデアでわざと舟を転覆させ、舟の中にたまった空気を吸いながら海底を歩き島に辿り着く彼ら。一方、ベローズたちは男爵の罠にかかり、睡眠薬入りのラム酒を飲まされて全員船上の檻に捕獲されてしまう。
コンスエロに、父の拷問を見せて総督との結婚を迫るグルーダ男爵。彼女を利用し、島民の心を支配しようとの魂胆だった。さらに彼は総督と謀って、次の日曜に婚礼の宴を設け、全島民の出席を義務付ける決定をする。
そして、さらに厳しくなる民衆への弾圧…コンスエロだけを助けたいと言うヴァロに、プルーデンス教授は「自分だけ助かる彼女ではない」と説き、最新の科学技術を駆使して皆を助けようと提案する。−そしてヴァロは、抑圧された島民たちに呼びかけ、日曜までに山を砕く爆薬、空飛ぶ船、潜水艦を協力して完成させる!
遂に運命の日曜日。国王の兵隊たちが広場を埋めつくす中、提督とコンスエロの婚礼の儀式が始まった。花を届ける女性3人組、じつは女装したヴァロ、オーホ、プルーデンスだった。
グルーダ「あの娘たちは好みじゃない」


反乱分子の一人が乱入したのをきっかけに、大活劇が始まる!
民衆側の、樽で作った戦車部隊が火を噴く!火炎放射器が炎を上げる!

コンスエロを連れ馬車で逃げ出す男爵を、巨大な気球船で追うヴァロ、オーホ。道中、超濃縮された液体爆薬を、つぎつぎ地上に投げる彼ら。国王軍は壊滅した。
男爵とコンスエロは海上の軍艦に乗艦し、気球船はヴァロの船へ…。彼らは船に乗り移り、囚われのベローズたちを解き放った!「あの艦を追え!」しかし、敵は軍艦。巨大な大砲を撃たれたらイチコロだ。ヴァロは海中を泳いで、こっそり敵の後ろから乗艦、一戦を交える作戦を実行する!彼らを送り出して、ベローズ副長は船に残った。

「船を横付けにする人間が必要だ。海賊らしく死なせてくれ」その言葉に、海上からにっこり微笑むヴァロ。−男爵は全大砲を撃ち、ヴァロの船は轟音とともに海に沈んだ。
歓声をあげる男爵たちの背後から、”真紅の盗賊”が襲いかかった!


艦上で、大乱闘に次ぐ大乱闘が繰り広げられる。「ヴァロ!」コンスエロの悲鳴が響く。
彼女の手を引き、マストの上へ逃げる男爵、追うヴァロ。彼を落とすべくロープを剣で切った男爵は、衝撃で自らが艦上に落ち自滅した。
抱き合い、熱い接吻を交わすヴァロとコンスエロであった…。
◇この映画を初めて観たのは、例によって東京12チャンネル(現・テレビ東京)の”2時のロードショー”で、小学生の時でした。一見して、その途方もない面白さにノック・アウトされ、その後ずっと「もう一度観たい!」と熱望していましたが、最近、古い映画を安価にDVD化する流れがあり、無事再見を果たすことが出来たのでした。その感想は…いやあ、もう堪らない!「ルパン三世カリオストロの城」や、海賊映画ということで「パイレーツ・オブ・カリビアン」が好きな貴兄には、是非一見をお勧めしたい。笑いありアクションあり侠気あり愛あり友情あり秘密兵器あり、の大傑作冒険活劇です!
◇もともとサーカスなどでアクロバットをしていたバート・ランカスターの軽業的アクションが炸裂!幼なじみのニック・クラヴァットとの息もピッタリで、特に前半、コブラ島に潜入した2人が兵隊をけしかけ、街中を追われるチェイス・シーンは、一幕一場の限られたセット内で演じられているにも関わらず、それを感じさせない豊かさに溢れています。これでもか、という位のギャグと切り抜けアイデアのつるべ打ち。上下左右、縦横無尽に飛び回る彼らの身のこなしは、デビュー当時のフランキー堺の”天才的閃き”を髣髴とさせます。
そして、サンペロー島での晩餐会のシーン。彼らの変装が、いつバレるか−わかってながらも、ハラハラさせられます。しかし、汗臭い海賊映画なのにキャスト一同がまるで貴族のようにきらびやかな衣装でダンスして、いきなり別の映画になったよう。このバラエティ豊かな”ごった煮”感覚も、スタッフたちのサービス精神の表れでしょうか。
ここでもニック・クラヴァットが貴婦人たちにギャグを披露、大ウケして場をさらいます。

◇そしてヴァロが船員たちに見放され、最大のピンチに陥るも復活、民衆とともにグルーダ男爵に反転攻勢を仕掛けていきます。その時、ヴァロを導く存在であるプルーデンス教授がなかなか傑作!彼のトボけた味が、何とも云えず可笑しいのです。特に、液体爆薬の調合がうまくいかずヴァロからなじられた側から、思わず液体の滴を床に飛ばして…ドカーン!煙が晴れると、髪の毛爆発・顔真っ黒の教授が現れる、というドリフ大爆笑みたいなシーンもあります(苦笑)
◇「真紅の盗賊」は、”冒険活劇映画”におけるプロットの基本フォーマットについて、大変勉強になる映画です。それは例えば、「ルパン三世・カリオストロの城」(’79)との類似性を見ればよく分かります。ヴァロ−オーホの関係なんて、いつも「何か面白い事はないか」と目を光らせている、エネルギッシュな宮崎ルパン−次元の関係みたいです。
【ストーリーの流れ】
(オープニング・シークエンス)主人公の作戦開始→主人公の敵地への潜入→囚われの身の重要人物の奪還→奪還失敗(主人公の敗北)→主人公の脱出および復活(自らを見つめ直し動機を再確認)→終盤のイベント(ヒロインと宿敵の結婚式)に登場する主人公→最後の大活劇→主人公と宿敵(囚われのヒロイン)の高所での対決→大団円
いかがでしょう?僕は、この中盤から終盤に至る過程で、一旦”主人公が負ける”部分に、冒険映画の大事なエッセンスを感じます。無敵に見えたヒーローが、絶望のどん底に突き落とされる−しかし決して諦めず、知恵と勇気を駆使して立ち上がり、巨大な敵に再度対決を挑む!
そしてクライマックスでは、徒手空拳で1対1の戦い−その時には観客は、主人公に完全に感情移入している−辛くも勝利を収める主人公。
そこには、どんなに最悪の状況に陥っても”何とかなるさ”という、古今東西のエンタテイメントに通ずる一大メッセージが込められていると言って良いでしょう。ある意味、我々にとって映画が”現実のイメージ・トレーニング”の役割を果しているなら、出来るだけこのような”楽観主義”の映画を観る方が、精神的には有益かも知れませんね!
◆主役の”真紅の盗賊”キャプテン・ヴァロ役に、バート・ランカスター。この映画でオーホ役を好演しているニック・クラヴァットとは幼なじみで、“ラング&クラヴァット”というアクロバット・チームを結成してサーカス等に出演していたが、ケガがもとで解散。海軍に従軍後、’45年にブロードウェイ・デビュー。’46年ロバート・シオドマク監督の「殺人者」で映画デビューした。「地上(ここ)より永遠に」(’53)、先輩ゲーリー・クーパーを完全に食ってしまった「ヴェラクレス」(’54)、アカデミー主演男優賞を受賞した「エルマー・ガントリー/魅せられた男」(’60)等、出演作に名作、傑作は数知れず。僕が好きな作品は、まずは「カサンドラクロス」(’76)(あのラストシーン!)、フランケンハイマーの「大列車作戦」(’64)、そして何故かヴィスコンティの「家族の肖像」(’74)などです。ここまで来ると、「真紅の盗賊」と同一人物とは到底思えません。
そして、相棒オーホ役のニック・クラヴァット!この、喋れない愛すべき男が、もう最高です!私生活でもランカスターとは名コンビだったようで、「怪傑ダルド」(’50)、「深く静かに潜行せよ」(’58)等、競演作が多いです。意外だったのは、映画化もされたTVシリーズ「ミステリー・ゾーン」”Twilight Zone” のエピソード「2万フィートの戦慄」”Nightmare at 20,000 Feet”で、飛行機を食べるグレムリン役をされていること!でも、なぜか納得!
◎監督はロバート・シオドマク。何と言っても有名なのはサスペンス映画の傑作「らせん階段」(’45)でしょう。また、ウィリアム・アイリッシュの名作「幻の女」(’44)を映画化しています。(この作品は正直、凡作)レヴィンソン&リンク繋がりでは、「刑事コロンボ・殺人処方箋」に影響を与えた(と思われる)「暗い鏡」(’46、ナナリー・ジョンソン脚本)があります。モノクロの諸作の印象か、どちらかと言えば陰鬱な映画を撮る方という印象があったのですが、大間違い!この「真紅の盗賊」のスコーンと抜けたような明るさ、活劇の楽しさは唯一無二です。
◎最後に、脚本を担当したローランド・キビー氏ですが、今回調べてみて吃驚!この方は「刑事コロンボ」第3・第4シーズンに於いて、ディーン・ハーグローヴとコンビで製作総指揮を務め、上院議員候補が犯人の「野望の果て」、ホセ・ファーラーが犯人役の「愛情の計算」で脚本(共同)を執筆していたのです!
正直、全く「コロンボ」との繋がりは意識していなかったのですが、「キビーさんには昔からお世話になってたんだな〜(笑)」と、妙に感動してしまいました。
◇この大傑作、安価なDVDで是非御鑑賞を!