「私は空気人形…。性欲処理の代用品…。」
この映画、いやらしさが全然なくって、
どこか清々しくて、
でもすごく切なくて、
とても優しさに充ちた映画だった。。
一方通行の性って、
どうして哀しいのだろうと考える。
娼館、女衒、従軍慰安婦、AV女優…
そこに、女としての哀しみがあると、
誰でも想像できるだろう。
でもそこに、男の哀しみもあるのではと私は思う。
もちろん中には、悪いなどとは
微塵にも思わない人もいるだろう。
でも、そういう場所が必要とされるのは、
社会の中に哀しみがあるからだ。。
マノン・レスコーのように、
娼婦を愛し人生を狂わす男の話が五万とあるが、
そうではない哀しみがあると私は感じる。。
娼館にやってくる男というのは、
どんな男たちだ?
憂さを晴らそうという男たち。
苦しみ哀しみ怒り…を言葉に出来ず、誰にも言えず、
愛を得られず承認も得られず、
誉めることができず、誉められず…
どやされ、どやされ、傷つけられて…。
その辛さを慰めようと、やってくるのが娼館。
強いストレスは、それを慰めるための
強い性衝動を起こさせる。
男たちが娼婦を蔑むのは、
蔑まれている自分をそうすることでしか癒せないからだ。。
命を生み出すはずの性の営みが、
人を傷つけるものになってしまうのは、
それだけ傷ついてるものが多いという事だ。。
そんなふうに感じる。。
日本で風俗産業が流行るのは、
極限まで鬱積したものを晴らすところが
ない人が多いからじゃないか…。
映画「空気人形」に登場する人形の持ち主、
彼の発する言葉の一つ一つがなぜかリアルに思い出される。。
彼の行動が意味するものを考える。。。
彼は、傷つけられることを避けている。。
でも、彼は、誰も傷つけない。。。
でも、何も生み出さない。
未来に繋がらない。広がらない。。
ただ、その衝動をそれこそ「処理」するだけ。。
愛する行為であるはずが。。
虚しく、哀しく。。。
生身の女ではなく、人形を相手にする男の、
その心のうちの、哀しみ…。痛み…。
他者との間にどんなことがあったのか。。。
他者の前に、ありのままの自分を曝け出せない自分。。
そのままの人間を受け止めきれない自分。。
閉塞感。。
閉塞感漂うこの社会の空気が満ち満ちてる映画だった。。
舞台となった東京のその地域は、
人間が人間らしく生きられないようにされてしまった、
ゴミ捨て場のような…場所。。。
高層ビルに見下ろされて、朽ち果てる寸前の
地上げで歯抜け状態になった、
古いアパートの立ち並ぶ地域。。
地域の交流も生まれそうにない、
忙しい人々がただ寝るだけに帰る場所みたいな。。
しかも、現実は、さらに深刻。。
草食系男子…という言葉が流行るほど、
性の衝動さえも起きない強いストレス社会になってしまった。。
人間は、人間に育てられて人間になる。
人間と出会って、人間になっていく。。
心を持ってしまった「空気人形」の愛らしい姿に、
人間として在ることの哀しさを見てしまった。。
心が空っぽに感じるのは、
愛や承認で心が満たされないから。
でも、愛や承認を得るには、
妬みやら恨み辛み怒り…そうしたヘドロを大掃除して
素直にならないと。。
ヘドロだらけの心だから、
空っぽに感じる。
本当は、空っぽじゃないんだよ。
ヘドロでいっぱいで、
愛が目の前にあっても入らないんだよ。
気づかないんだよ。
入らないからこぼれてしまうんだよ。
この社会も、ヘドロの大掃除をしないと、
決して、愛で満たされない。
平和にはならない。
個人がどれだけ心のヘドロを掃除しても、
今の社会は、すぐにヘドロがたまってしまう。
だって、ヘドロは、心の膿みなの。
傷ついた心を治そうとする時に
どうしても出てしまう膿みなの。
人間なら、ヘドロがたまってしまうものなの。
それが正常なの。。
異常なのは、この社会。
たまったヘドロを大掃除できない、
滞った社会。。。
どれだけみんなが「自己責任」だからといって
努力してもダメなの。
みんなでヘドロのあることを認めて、
ヘドロがたまるくらい辛い状況だってことを
お互いに伝え合って、
そうならないようにどうしたらいいかを
手を繋ぎあって考えて作っていかないと!
ある貧国で撮影された一枚の写真を思い出す。
出稼ぎ労働者達が虚ろな目をして
薄汚れた食堂で食事をしている写真だ。
解説には、娼館から出て食事をする男たち。
娼館は、過酷な労働の唯一の慰めだ。
性は、快楽とか、欲という言葉で
簡単に片付けられるものではない。
睡眠や食事と同じように、
人間にとって大事なものだ。
映画「空気人形」。。。。
いやらしさが全然なくって、
どこか清々しくて、切なくて、
とても優しさに充ちた映画だった。。
11/21(土)〜11/27(金)10:20/14:50/17:30
11/28(土)〜12/4(金)16:20/20:30
[2009/日本/1時間56分]
監督・脚本・編集:是枝裕和
出演:ペ・ドゥナ、ARATA、板尾創路、高橋昌也、余貴美子、岩松了、星野真里、丸山智己、奈良木未羽、柄本佑、寺島進、
オダギリジョー、富司純子
公式ホームページ →→→ http://www.kuuki-ningyo.com/
東京方面の方にも、朗報。ぜひ、スクリーンで!!
『空気人形』 追加上映館決定のお知らせ
ご好評につき、『空気人形』の追加上映館が決定いたしました!
皆様のお越しをお待ちしております。
●恵比寿ガーデンシネマ
11/14(土)〜12/4(金)
16:35/19:15