2006年08月25日
赤い花の島 奄美大島・宇検村

奄美大島、宇検村。
二神がここに降り立ったという伝説の霊峰・湯湾岳に臨み、太古の動植物や固有種が現存する土地。
ここは私の父の郷里。
祖父も祖母も他界し、今はもう訪ねることも稀な場所だ。
この土地が「高レベル放射性廃棄物最終処分場」の候補地になっているという噂を聞く。
「えっ?!」と驚き、調べてみると、島内で合併の動きが活発な中、宇検村は単独自治の道を選択。その為、独自の財源確保が必須課題でなり、村自らが公募したらしいということだ。
候補地になり、約2年の文献調査の段階で20億円もの交付金が入るのだそうだ。
数年前、村に行った時に感じたことがある。
今は田舎ブームで「自然に囲まれて暮らすのは素晴らしい」という価値感を持つこと自体が「流行」というか「ファッション」の一部みたいなものになっているが、実際には、自然豊かな場所というのは、経済原理の物差しで測れば、極度に貧しく、羨むのも申し訳ないような状態だ。跡取りの長男はそれなりに裕福なのかもしれないが、お金があるないの問題ではない。嫁の来るあてもなく、憂さを晴らす盛り場もない。50年前ならともかく、TVや雑誌からの情報で、現在の日本の若者のトレンドや暮らしぶりは知っている。知っているどころか、TVくらいしか娯楽ないと言ってもいいかもしれない為、純粋なTVの被洗脳者だ。それゆえにTVが流し続けるお洒落で華やかな生活と海と迫るような山に四方を取り囲まれただけの自分たちの暮らしとの乖離に苦しんでいた。自然が豊富というだけで、満ちたりて暮らすには情報があり過ぎるようなのだ。
そんな奄美の農業、水産業、林業従事者の家庭に生まれ、親の手伝いをする以外選択肢のない若者たちの鬱憤を垣間見て、単純に「自然っていいよね」とは言えなくなってしまったところが私にはある。
でも、だからといって、あの村に核廃棄物と引き換えに経済的な豊かさをとは思っていない。
人口2100人足らず。交付金で何をどうするんだろうか?テーマパークでも作って観光客を呼び込むのだろうか?
燃え立つような山の緑、力強いエネルギーを秘めていながらも穏やかな表情の入り江。
そして、この他に「これこそが自然だ」と感じさせる存在があった。それは村のおばあさん達だった。小柄でちんまりとした姿。褐色の肌に刻まれた皺。皺だらけの顔の中に3歳の子供のままの眼光を湛えた瞳があった。このおばさん達は自分の子をハブやサメにやられても、こんな綺麗な瞳のままこの村で生きて、死んでいくのだ。他の地のことは知らない。字も読めない人が大半だ。
祖父が死に、代わる代わる縁側から上がって来ては、その美しい目からポロポロと大粒の涙を流す。島言葉で喋るので、全く何を言っているのかわからないのだが、童女のような可愛らしい声で絶え間なく話し続けた。それはまるで唄のようだった。
私はそのおばあさんたちの姿に胸を打たれ、泣いた。私のそれまでの人生でこんなに綺麗な人間を見たことがなかった。
あんなに綺麗な人間をこの世に作り出したのは、やはり紛れもなく奄美のあの自然だったろうと思う。本土の搾取や厳しい環境に耐えたあのおばあさんたちやその祖先の眠るあの土地が、私達が便利に暮らす為の割を食ってはいけない。
そして、もちろん、古代からその生態系を守ってきた奇跡の島、奄美の大自然には、観光だろうと、開発だろうと、ましてや核廃棄物なんてものを持ち込んで、穢してはいけない。
人間には障っちゃいけないことがある。
いよいよ罰が当たる。

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肌 しみ
肌 しみ【肌 しみ】 at 2009年09月03日 14:49
この記事へのコメント
はじめまして。stushoさんのところからお伺いしまして、これまで記事を楽しみに読ませていただきました。
実を言うと私も奄美大島の出身なのです。島を離れて10年になります。今回の記事を拝見して、胸を打たれました。
仰るとおりです。
処分場のことは伝え聞いていました。あの自然が破壊されるのは目に見えているはずなのに・・・
自分自身でもいろいろ調べて、今一度考えてみようと思います。
実を言うと私も奄美大島の出身なのです。島を離れて10年になります。今回の記事を拝見して、胸を打たれました。
仰るとおりです。
処分場のことは伝え聞いていました。あの自然が破壊されるのは目に見えているはずなのに・・・
自分自身でもいろいろ調べて、今一度考えてみようと思います。
Posted by kahn at 2006年08月28日 22:03
kahnさん、はじめまして。
奄美の方に出会えるとは。とても嬉しいです。
私は関東で生まれ育ちましたから、本当はあれこれ言える立場にはありませんが、このニュースを知り、泣けて仕方がなかったんです。感傷で泣いたのではなく、終に、日本人はここまでのことをしてしまうのだろうか?という、失望と強い悲しみの為にです。
私も何かできることはないか、考え続けています。
奄美の方に出会えるとは。とても嬉しいです。
私は関東で生まれ育ちましたから、本当はあれこれ言える立場にはありませんが、このニュースを知り、泣けて仕方がなかったんです。感傷で泣いたのではなく、終に、日本人はここまでのことをしてしまうのだろうか?という、失望と強い悲しみの為にです。
私も何かできることはないか、考え続けています。
Posted by curious mama at 2006年08月28日 23:51

