つくば駅目がけて矢の如く疾駆するTXの車窓に青く霞む筑波山が見えたとき、思わず「やったー!」と声を上げそうになったものだ。二峰が鋭く並立するその山容――『日本百名山』を予習して来た甲斐があった。ちなみにコチラ――お国は甲斐でなく、もちろん常陸。常陸の国のバーガー店は初。取手市戸頭のBIG SMILEは、県は同じ茨城なれど国は下総と。
●テクノパーク桜のスーパーマルモ隣
最寄駅はTXつくば――と言っても徒歩圏に在るわけでは全くもってなく、クルマで行く場所である。近隣の人向けに説明するならテクノパーク桜のスーパーマルモ隣。つくばセンター(つくば駅)からコミュニティバスが辛うじて出ているのに加え、関鉄・JR2社の路線バスがコノ付近を経路にしているので、徒歩(かち)組もどうにかなるっちゃなるが、しかしココ――路線図を見る限りではむしろ土浦圏である。
つくばテクノパーク桜は鉄道駅からバス30分、郊外の丘陵地に突如出現するニュータウン、工業団地。その生活の中心であるスーパーや外食店の集まる一帯にハイファイブバーガーも軒を連ねている。ナゼこんな不便な土地に、しかも個人経営のハンバーガーショップなんて、都内でさえまだめずらしいモノが在るのか――そこにはこんなバックストーリーが隠されていた――
●ファイヤーハウスとオートマンダイナー
マスター片平アツシさんは、この辺りが地元。車やバイクを通してアメリカが好きになり、ハンバーガーに興味を持ってファイヤーハウスかホームワークス、どちらかの店で働いてみようと、まずファイヤーハウスに食べに行ったところがコレが凄まじくおいしくて、求人に即応募→即採用――コレまだ20世紀中の話。
ファイヤーハウスには約2年。仕事のかたわら「やはり基礎を学ばねば」と調理師学校に通ううち、そこで知り合ったのがオートマンダイナーの"大将"こと五十嵐さんとシュウさん。3人は意気投合して'01年6月、埼玉県川越市にオートマンダイナーをオープンさせた。なのでオートマンの店の入り口にある5つの手形のうちの1つは、アツシさんのものである――ちょっと横溝正史チック?
●苦節
オープンから3年、オートマンの"アツシ"は店を離れ、念願の自分の店のオープンに取り掛かる。ところが物件探しの半ばにして突如病に倒れ、以後1年余りもの間、長く辛い闘病生活を余儀なくされた。
回復後もしばらくは飲食の仕事に就くことが出来ないでいたが、体が元通りに動くようになるにつれ「昔の夢をもう一度追ってみたくなって」、昨年'06年12月、ついに念願の自身のバーガーショップを地元つくばにオープンさせた。オートマンを離れてから実に3年越しの夢の実現である。
●やさしい店
病気が治ってしばらくの間、片平さんは義手や義足を作る仕事に携わっていた。地味ながらもとても大切なこうした仕事に関わったこと、そして何より大病を患った自身の経験を通じて、片平さんは「こんな自分が人の役に立てることは何だろう」という思いを強く抱くようになり、やがてその思いは「すべての人にやさしい店づくり」という、コノ店のキーコンセプトへとつながってゆく。かつて都内に物件を探していた片平さんが、地元に店を出そうと思うようになったのも、こうした考え方の変化によるものである。
入り口の小さなスロープからトイレまで、店内はオール車椅子サイズのバリアフリー。カウンターもテーブル席もすべて車椅子の高さに合わせ特注した。そんな思いやりのカウンターにスツール9席。テーブルは20席。こども用の椅子も3脚用意。すべての人に分け隔てのない、気軽に気持ちよく入れる「やさしい店」にしようという思いは、壁や床のパステル調の色使いにもよく表れていて、コノ店を訪れるすべての人を明るく、そしてやさしく迎えてくれる。
●野菜は地元産
バーガー14種、うちミニ2種。サンド5種、ドッグ3種。奇抜なものでなく、基本に忠実なメニューを心がけた。中華やイタリアンなどに長けた、腕におぼえのあるスタッフもいるので、これから暖かくなるに連れ、徐々に新しいものも出してゆこうかと、現在焦らず思案中。
チーズバーガー\950。チーズはチェダーとスイスから選択(オートマンに同じ)。付け合せにはナチュラルカットのフレンチフライとタテに割ったピクルス。地元のパン屋が焼く無添加バンズはファイヤーハウスの面影を残す峰屋系。薄黄色の生地はフッカリやわらか、リッチ系の香り全開。裏がカリッカリに焼かれて香ばしい歯応え。
中はサウザンソー(≒マヨ+ケチャ)、チー、パティ、ピク、シュレッドオニ、トマ、レタ、マスタード、下バン。野菜は地元産を使って新鮮。特にレタスの歯応えがよくて、コリコリとタイトなリズムキープをする中、自家製ピクルスと言うより浅漬けキュウリのキツくない酸味、トマトの甘味、オニオンの適度な辛味が、サウザンソースの味と程好く調和してフレッシュサラダの感覚で楽しませ、トリはそれらの下からジワジワッと味を効かせるビーフパティの旨味。
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適度な歯応えとイイ塩加減、そして脂のイイ旨味!肉屋がまたエラク張り切っているそうで、コレ……相当イイ肉使ってますゾ〜!チーズと巧く合ったときの味わいたるや絶妙!バンズの甘味がやや邪魔にも感じたが、スーッと腑に落ちてゆくような、とても自然体なバーガー。
二ッ目、自慢のチリバーガー\1,000(右写真)。ふんだんに載せたチリビーンソースは辛さ抑え目、豆本来の風味でいただく、やさしくも味わい深い逸品。こどもからお年寄りまで「いろんな人に食べやすく」という思いがここにも表れている。
●奥義――アメリ割烹!
カウンターを造ることにマスターは格別の思いがあった。ハンバーガーを作りながらお客さんと話しがしたかったのだという。
「カウンター文化」というのは、実は日本だけの独特なものだとマスターは主張する。酒場の「バーカウンター」なら世界中どこでも目にするが、しかし料理人と差し向かいで、料理する様子を目の当たりにしながら会話を交わす「割烹文化」というものは、日本以外に聞かないと――。
片平マスターがやりたかったのは割烹文化のバーガー版、題してアメリ割烹。オープンキッチンのライヴ感、そしてハンバーガーを作るときの音、ニオイ、動き――それらを目で楽しみ、耳で感じながら、カウンター差し向かいの会話に打ち興じてもらえたら――マスターが望む地域との付き合いの「カタチ」は、単に食材の調達だけにとどまらない気持ちの地域密着なのである。
●ハイファイブ連発のお店に
なのでもちろんアルコール完備。生ビールはカールスバーグ\600。BGMはネットラジオか何かでアチラのDJ風味。
「ハイファイブ(high-five)」とは、日本で言うハイタッチのこと。好プレーをしたときにスポーツ選手が交わす、アレである。スタッフ同士ハイファイブが自然と繰り出すような、明るく陽気な感じでやれたら――と、少しはにかみながら話すマスター。お客さんもスタッフも、店に居合わすすべての人が分け隔てなく、いつもハイファイブを交し合っているような、そんな素敵なお店にして下さいネ――Give Me Five !
― shop data ―
所在地: 茨城県つくば市桜3-8-4 アグレアーブル1F
TXつくば駅から地域循環バス25分「桜三丁目」下車 地図
TEL: 029-850-6345
オープン: 2006年12月16日
営業時間: 11:00〜22:00(21:30LO)
ランチ: 11:00〜15:00
定休日: 月曜日(要確認)
2007.3.21 Y.M