2012年02月07日

『下町ロケット』(書評2012 5/50)

なんとなく小説を読む機会が減っていた。

本を読む絶対数は確実に上がっているのに、小説を手にすることは少なくなったのはなぜだろう。ノンフィクションや新書、小説でも歴史小説は読むのだけど、一般的な小説は読まなくなってきた。

おそらく「役に立つ」というのが読書の目的になっているんだと思う。何か役に立つものを読みたい。それは今の僕にとっての知的好奇心を刺激するとも言い換えられるかもしれないけれど、知らなかったことを知りたい。こういう考えが小説を読まなくなった理由なのかな。でも、中には衝動的に読みたくなる小説があって、この『下町ロケット』もそのひとつ。町工場の社長である主人公が、ロケットエンジンに搭載するバルブシステムを大企業に先駆けて開発。これを金で買い取ろうとする大企業と対峙し、なんとか自分たちが開発した部品を使ってロケットを飛ばしたいという目標に向かって町工場が躍動する――。

いい話。面白かった。「金よりも夢を描ける仕事がしたい」。こんなわかりやすいメッセージを、上手にドラマにしてくれている。冒険したい。ドキドキしたい。子どもの頃は、こういったニーズだったけど、大人になるとそのニーズも変化するわけですが、中でも鉄板は仕事モノなのかな。マンガ界では、百人一首やクラシック、囲碁などといったあまり知られない世界を見せるという手法が一般化したけど、小説は、わりと普通な人の仕事でいいと思う。特殊な仕事でなくていい。そこにあるシンプルなドラマを見せてくれればいいと思う。経済小説と考えると、どうしても「金融汚職」などが頭に浮かぶが、別に悪いヤツが出て来なくてもいいと思うのだ。
そうだな。僕は、がんばっている話が好きなのかもしれない。仕事に頑張っている話。そんなの読みたいな。自分で書こうか。頑張っている話。いい視点じゃないか。頑張っている話を読んで、自分も頑張ろうと思う。これは充分、僕の中で「役立っている」話だもんな。



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