2009年02月10日

警官の血 感想

7日の朝日新聞のテレビ欄 試写室には

「正義を求めた親子三代の警察官。60年にわたって彼らに立ちはだかる警視庁公安刑事。(中略)組織の正義とは何か。戦争で壊れた早瀬(椎名)に謝罪すべき者はいるのか。暴力への怒りがこみ上げる力作だ」

とあり、ああ、また朝日のヒダリ思想ドラマなんだなーと思っていた。
放送はテレ朝だし。

それが思いがけないほど面白い、と感じたのは、おそらく作者の描きたかったことが朝日の思惑を超えたからなのだろう。

原作は読んでいない。
だからこれは想像でしかないけれどね。

(以下ネタバレ)

レイテ島の激戦で心が壊れた早瀬(椎名桔平)は公安になってからも殺人を犯した。それを突き止めた親友安城(江口洋介)は、早瀬の告白を聞く。
「心が壊れた。おれが自分で壊した」
自分で自分の心を壊すほどの凄惨は経験。
「殺人はこれで最後にする」
と早瀬は安城を殺害。

安城の息子民雄(吉岡)は高校卒業後、父と同じ警察官になるが、赤軍派の潜入捜査官を任ぜられ、現実と虚構の間をさまよい、精神不安を引き起こす。
あんな強烈な思想に潜入していたら、自分を保つのはどれほどの精神力が必要だったか。

心を壊しながらも警官を続ける民雄。
自分はいったい何をすべきなのか。迷いながらも彼は自分が担当する地域の住民を守るべく、殺人容疑者をかばう。
穏やかな日々。だが、偶然にも民雄は父の死の原因を知る。

民雄をほおっておくことも、手を差し伸べることもできたはずなのに、なぜ早瀬は民雄をさらに突き放したのだろうか。

保身?

いや、早瀬はおそらく、安城家に流れる「正義の血」が吐き気を催すほど嫌いだったのだろう。
理屈はわかる。 しかし、そんなものであの戦争を生き残れるか。 おまえ達にはわかるまい。
精神を患った民雄は警察の病院で治療を受けられた。
だが、おれは自分で自分を支えるしかなかった。

そんな想いがあったのだろう。

民雄は早瀬から残酷な事実を突付けられ、打ちのめされ、その足で無謀にも立てこもり事件に単身乗り込み、殉職する。

民雄の息子、和也が父と祖父のことを早瀬に問いただした時、早瀬は言う。

「おれの心を壊したやつらから謝罪がないかぎり、おれは謝ったりしない」

ここで、朝日新聞の言う「謝罪すべき者」が出てくる。

でも、待って欲しい。
それと罪を犯すことは別の話だ。

では、あの戦争から帰ってきた兵士は、皆殺人を犯してもいいというのか? 
心が壊れても、懸命に生きた人も大勢いるはずだ。
それはワタクシたちが安易に想像できないぐらいつらい道のりだったに違いない。
謝罪が必要なのは、むしろ、そう言う人たちにこそなのではないだろうか。

早瀬の言っていることは、「社会が悪い」と言って、無差別に通り魔殺人を犯した犯人と同じだ。

和也はそんな早瀬をおいて無言で立ち去る。
作者の言いたいことは、この和也の行動に表れている気がするのである。

早瀬の首にかけられていたロザリオ。
早瀬は早瀬なりに救いを求め、許しを求めていたと思いたい。
 

この記事へのトラックバックURL

http://blogs.dion.ne.jp/ontheseaofmoon2201/tb.cgi/8084451
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※半角英数字のみのトラックバックは受信されません。
この記事へのトラックバック
晴れた日には永遠が見える: ヴォネガット、大いに語る警官の血 (のぞみの日記); 江口寿史さんとの出会い (天竺堂通信); 既に始まっているアメリカ大統領選挙投票結果の各州ごとのカウント作業。アメリカ...
警官の血 第一夜【最新芸能・スポーツ業界ニュースダイジェスト】 at 2009年02月10日 15:04
警官の血(下巻)商品価格:1,680円レビュー平均:4.8タイトルを教えてください!松本清張作品で、警官が自分とは血のつながらない子供....タイトルを教えてください!松本清張作品で、警官が自分とは血...
警官の血 ミドリ【デズナビ】 at 2009年02月10日 17:44
 
※半角英数字のみのコメントは投稿できません。