April 17, 2011
キラー・インサイド・ミー/死にたい奴ぁ 俺んとこへ来い

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このトンプスンの原作に貼りつけられることの多い惹句で「私が出合った中で最高の、身も凍るようなような犯罪小説 − スタンリー・キューブリック」という一文があるのだけれど、あれを読んで犯罪小説(=crime novel)などと間抜けなことをキューブリックが言うはずがないと思って調べてみれば、案の定原文は “probably the most chilling and believable first-person story of a criminally warped mind I have ever encountered” となっていて、当たり前だけれども「犯罪に倒錯する精神の一人称小説」と的確に述べているわけで、ではなぜこんなことをくどくどと書くかと言えば、出来上がった映画の均され具合が先の日本語惹句の紋切りに似通ってしまっていた気がしたからである。原作文庫本の巻末に収められている解説でスティーヴン・キングが軽々と喝破しているように“ルー・フォードという人物において、ここでトンプスンははじめてアメリカの重大なソシオパスの姿を描いて”みせたのであり、では原作で何がスリリングでチャーミングだったのかといえば彼がしでかしたあれこれというよりはその頭の中を開陳した独白部分においてであったわけで、映画化の噂を聞き最初に名前を目にした時に感じた、これら突き抜けて純度の高い悪意に手垢をつけることなくポップに抽出するにはこの監督は少々律儀にすぎやしないだろうか、最終的には世界への信頼を謳ってしまう人間が笑いながらそれを断ち切れるのだろうかという危惧はやはり、“いま(頭の中で)起きていることの震え”というよりは“すでに起きたことの現場”を差し出すにとどまっていたように思える点で残念ながら当たってしまっていた気がするし、やはりクローネンバーグやコーエン兄弟のように“日なたの暴力”を掴まえることができないと殺人という寄る辺なき行為をポップカルチャーのイコンとして定着させるのは難しいのだろうなと思う。今回脚本を手がけたジョン・カランは「ストーン」(監督作品)でツイストした野心を見せつけていたりしたものだから、仮に彼が演出まで手がけていればオブセッションの浸蝕と共にもう少し異形の味わいが増したかも知れず、そうしたギャンブルでのるかそるかした映像を観てみたかった気もする。ただ、差し出された“すでに起きたことの現場”については、ルー・フォードを演じたケイシー・アフレックの素っ頓狂なエヴリマンの真顔のズレがかなり的確だし、ネッド・ビーティ、イライアス・コティーズ、ビル・プルマンといった好みの面々を取り込んでの再現性についてはかなり愉しめる。ジェシカ・アルバはといえばジョイスという役に埋め込まれた捨て犬の奉仕と従順を演じるには少々毒婦らしきゴージャスが過ぎてルーの妄想に呼応しないせいか、対照としてのエイミー(ケイト・ハドソン)が現実から妄想に引きずり込まれていく時の落差に熱気が感じられなくなり、そのために例の手紙のシークエンスもさほど機能しなくなってしまっているものだから、例えばミシェル・ウィリアムズのようなタイプキャストの方がよりよく堕ちたのではなかろうかという気がする。ちなみに今作でも頑ななガードの下でジェシカのバストトップは死守されて、まあ、見えたところで局面が変わるわけじゃないけども、カメラワークであるとかそこで下着つけたままかよといった攻防が見え隠れして鼻白むものだから、そんなに嫌なら一人で先に家に帰れと言いたい。ところで劇場に置いてあった新聞紙サイズの企画チラシに載っているおすぎのテキストがあまりに適当すぎて、これが完全犯罪を全うするための美学を貫いているように見えるんだとしたら何か違う映画を観たんだろうとしか思えないし、そもそも原作は発表当時全米で話題なんか全く呼んでないのである。こんなの書かせたり読ませたりしていったい誰が得するんだろう。こういう映画を気にとめる好事家とおすぎの親和性なんてゼロだと思うんだが。
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この記事へのコメント
おすぎと香山リカの「なにか言っていそうでなにも言っていない感」はずば抜けています。
Posted by ホの字 at April 18, 2011 14:51
あれも一つの生き残る術ではあるんでしょうね
Posted by オア at April 19, 2011 10:53



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