April 19, 2011

悲しみのミルク/ペルーのスケーターズワルツ

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オフィシャルサイト

主人公ファウスタはペルーの女性たちと先住民に刻み込まれた暴力と恐怖による負の歴史を体現する者として描かれて、それは今も決して取り払われてはいないにしろ、もうひとたび世界とつながろうとする密やかな意志による小さな再生を示唆して映画は終わるのだけれど、ペルーの歴史と現実に対して無意識がすぎるワタシのような人間にしてみれば、この物語を寓話と呼ぶにはあまりに余白がなさ過ぎてその美しさや切なさも含めすべての感情をそのままに受け止めざるを得ないせいか、何か全身を使って観終えたような疲労感は心地よくもあり厄介でもあり、生と死を彩るマジックリアリズム的祝祭などという記号めいた期待を抱いたワタシにはそれなりのしっぺ返しとなった気がする。冒頭で死にゆく老女が歌う怨歌とでもいうのだろうか、この歌詞がかなり強烈で物見遊山な気分の横っ面をいきなり張り飛ばすのだけれども、この映画が歩き出す場所の暗闇と悲痛の宣言として曖昧にぼかすことをしなかった字幕は素晴らしいと思う。暴力の侵入を拒むためにファウスタが自ら体内にしのばせたジャガイモは、同時に彼女の内に沈澱する不安と恐怖を閉じこめる栓となって自家中毒を呼び、そうやって内と外から苛まれてきた彼女にとって唯一のバランサーだった歌が搾取され約束が破られた時に初めて彼女は外部の他者に向けて異議申し立てをしてみせて、暴力装置(軍人)とそれが生み出した富(真珠)を自分の存在の対価として取り戻してみせる。これら彼女の変遷についてはノエという庭師が導師の役割で彼女の混沌を秩序立てていくことで、ペルーの亡霊を透視できないワタシたちも共に理解を進めていけるわけで、このあたりは脚本・監督をこなしたクラウディア・リョサ(マリオ・バルガス=リョサの姪!)の冷静な熱意による采配が奏功しているのは確かだと思う。ただひとつ、ファウスタが暮らすコミュニティでの彼女の扱われ方について、様々なオブセッションに囚われた彼女の行動は傍目に見てもややエキセントリックに思えるのだけれど、周囲の人々は彼女を異物して扱うわけでも病人の特別扱いをするでもなくごく自然に接しているのが不思議に思えてきて、彼女を捉えたペルーの亡霊をなぜ他の人々は目にしていないように見えるのか、あるいは既に目にした後でやり過ごせたのかを考えると、“寄せて”しまう彼女のような存在を日常とするような生き方が元々あるのだとすれば、彼の地においてそれはマジックなどではないリアリズムそのものなのだろうし、冒頭で述べた余白のなさは、それを捉まえた映画の強さから来るものなのだろうと思う。「シルビアのいる街で」で夢うつつが透過していく様を映したナターシャ・ブライエのカメラは、ここではまるで正反対の生々しさで静かに渦を巻く感情を定着させてあけすけなほどで、土地の力を抑え込んだカメラの地肩の強さは相当なものに思える。というわけで、先ほども書いたけれど神経がある種の疲れ方をする映画であって、揺らされる感情もふだんは気がつかないでいる場所にあるもののようなので誰彼なしにお薦めしようとは思わないけれど、ここまで読んで腰の引けてない方および「エンジェル ウォーズ」もこれも同じ映画を名乗ることの不思議など味わってみようかという方については、足を運ばれてみることをお薦めする。


「カッコーの巣の上で」を胡蝶の夢でシェイクしてあわよくば実存カルトになどと言うのはあまりに優しすぎるこちらの先回りで、やはりこの男に一切の深読みも情けも不要だということが痛いくらいに分かって、何それどこのスカイ・キャプテン?ていう永遠の底抜け感にたとえば「JM」でスクリーンを無感動に目で追っていた時の負け戦感がクロスしつつ淡々と確認作業を強いられる面倒くささはかなりなもので、地図のシークエンスが終わった後でもしかしてあと4回こういうイベントがあんのか?と逆に目が冴えちゃって寝落ちすらできず全部観てしまった自分が何だか悔しい。そして壮絶に無残なアレンジで形骸と化した挿入曲のボンクラMy Bestテープっぷりについては何も言うまい。言うまいといいつつ言うがキミにロキシーの変態16ビートは無理だから。
 

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