February 22, 2012

ザ・レッジ −12時の死刑台−/けんかをやめないで

ザ・レッジ
オフィシャルサイト

※あれこれ気を使ってやるほどデリケートな映画だとは思わないけど、のるかそるかに言及した部分は一応白文字にしておいたので観賞予定の方はスルー推奨

トラウマ満載の妻シェーナ(リヴ・タイラー)と無神論者ギャヴィン(チャーリー・ハナム)の不倫をキリスト教原理主義者の夫ジョー(パトリック・ウィルソン)が知って怒髪天をついたその顛末をめぐる話で、当然そこには宗教論議やそこから派生する愛を巡る考察の皮肉な視線が織り込まれるのだけれど、終わってみればそうしたあれこれがドライブしたサスペンスとして全くひっかかてこないのは、シェーナが抑圧の被害者と言うよりは変種の毒婦として男2人を破滅させていたのではと思い始めてしまったからで、涙目でギャヴィンを見上げてしなだれていく背中には相手の深みにダイブして委ね依存する快感が息づいているし、ジョーに対しては加虐の快感を与えることで逆に支配するそのやり口が果たして本人の無自覚の内に行われているのかどうか怪しくなっていく気味悪さは、過去にも行く先々でそうやって他人の運命に手を加えてきたのではなかろうかと思わせて、頭に浮かんだのは何やら『エスター』だったりもするのである。リブ・タイラーは二の腕の凶暴な表面張力が破滅を誘いつつ乳頭を晒し、チャーリー・ハナムは理性を寸止めのファナティックで熱する振る舞いが思いがけず巧妙で、パトリック・ウィルソンはタイプキャスト全開で少々面白みには欠けるものの支点としては全く問題ない。と書いてみれば何やらニューロティックな滋味を湛えているようにも思えるけれど、実のところこの映画はただ一直線に駆け抜けてしまうだけで錯綜するツイストによる傷を負うわけでもないから思わぬところが痛み出すことで酩酊を誘うこともなく、したがって惹句にある“衝撃のラスト”もそうしたバックスイングが足りてないせいで爆風も局所的に終わってしまっていて(せめて『回路』なみのワンカットで捉えてくれればまだしも)、シチュエーション・スリラーのように始まった映画の閉じ方として、このストレートはある意味裏をかいたのかもしれないけれど、だとしたらギャヴィンが屋上に上がるまでの追い込みが数段階足りていない上に、ギャヴィンとの邂逅により救済される役回りのはずのホリス刑事(テレンス・ハワード)が次第にお笑い担当と化していく迷走は完全にマシュー・チャップマンのミスショットのように思える。リブ・タイラーはおそらくこれが肉体の臨界点で崩壊前夜のようにも思えるし近年の立ち位置のやさぐれ感も含めダシはけっこう効いてるにしても、乳頭を晒すのはたった一度きりでせっかく『シークレット』でのジャクリーヌ・ビセットのような絶妙のアングルを用意しながら肝心のそのシーンでは出し惜しみしてがっかりだけど、その割にはもともと晒すつもりのなかったカットで微妙にポロッとしてしまい慌てて隠したりもしていて、それをOKショットにしたマシュー・チャップマンの底意地の悪さだけは評価しておきたいと思う。
 
Posted by orr_dg at 00:09  |Comments(0)TrackBack(0) | Movie/Memo
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