2011年04月10日

ミッドナイト・ミート・トレイン

──都市の心臓を撮りたい。
 そんな願望を持ってカメラを構える売れない写真家・レオンに、チャンスが訪れた。
 殺人事件の被害者となった女性モデルを、事件直前に撮影していた写真が、高名な美術商の評価を得て、「同程度のインパクトを持つ作品」を揃えることを条件に、展示会への参加を認められるのである。
──同程度の写真。
 レオンは、この女性が殺害された事件に着目し、深夜の地下鉄構内に通ううちに、一人の奇妙な男に気づく。巨大なバッグを手に、雄偉な体格をグレーのスーツにつつんだ無表情な男。男を尾行したレオンは、彼が精肉会社に勤務する作業員であることを突き止めるのだが……。
 

 クライブ・バーカーの原作は、その昏い神話めいた雰囲気に、20年ほど昔の邦訳時、ホラー好きの間では話題になったものだが、しかしなんで今更の映画化なのか、という気もしなくもない。しかし、これは一見してみれば納得で、北村龍平監督によるゴア描写は結構に目新しい趣向を備えたものであり、たしかにこういうインパクトを持った映像は、現代の技術でなくては無理なのかも知れないな、と頷かされてしまうところがある。
 さらに、終盤に配された、この監督の最大の持ち味であるアクションシーンの迫力は、期待に違わないもので、ハリウッドに招かれる実力というものをしっかりと見せ付けたものと言えそうだ。
 
 しかし、その一方この監督の作品の常で、登場人物は魅力に乏しく、日常のドラマ部分では、美しく工夫したライティングなどが、かえって不必要な重さを感じさせてくれるため、凄惨な殺戮シーンとの間に緩急がつかず、少々観疲れを覚えさせられてしまうところがある。もっとも、それは体力が下り坂にある私の年齢ゆえの感想で、気力体力ともに充実したホラー映画ファンならば、このヘヴィーで緊迫感に満ちた血の狂宴を、興奮の内に消費することは充分に可能であることとは思う。
 
 興行成績はいまひとつだったようだが、そういった中にも光る作品はあるという好例。前半はややローギアながら、中盤以降は圧倒される。★2つ半。

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この記事へのコメント
原作(及びその短編集)は、未だに海外ホラー短編で個人的ベスト5に入るので、映像化されたと聞いて興味はあったんですが……観賞する度胸が今もってありませんw

あの強烈な地下鉄車内のシーンは映像で見てみたい気もしますけれど、原作を読んだ時と同様、夜遅くの電車に乗るのが恐ろしくなりそうな。

吊り革にぶら下がった※※がくるり、のシーンはありましたか?
Posted by rene at 2011年04月10日 23:40
映像で観ると、悪いわけではないですが、まあ、普通と言えば普通ですね。この監督は、面白い作品を撮る人で、私も好きなのですが、この原作にはあまり向いていなかったようにも思います。

>吊り革に……

うーん、古いことで作品の雰囲気くらいしか記憶に残っていません。
車掌役が、存在感のある役者だったところが、ちょっと気に入りました。

Posted by Sou at 2011年04月12日 21:45


 
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