2012年01月08日

戦都の陰陽師

 デビュー作にあたる『忍びの森』は、忍者対妖怪、という着想に面白さがある作品だったが、今作の主人公は美少女の陰陽師、そして妖怪、忍者、剣豪が入り乱れて相争う。
 
時は戦国。不穏な戦雲におののく京の都に、無数に張られた結界を破って六百年ぶりに恐るべき天魔が侵入、魔界への口を開こうと画策していた。大陰陽師・安倍晴明の末裔である土御門家の姫・光子は、唯一天魔を討つことができる出雲の霊剣・速秋津比売の剣を取りに行くことを決意。藤林党の若き惣領・疾風ひきいる伊賀の忍び七人を護衛とし、出雲への危険な旅に出発する。はたして光子は都を救えるのか!?新説・陰陽師物語。
                                 「BOOK」データベースより

 この作者は、物語を面白くするための舞台設定というものを熟知している人なのだろう、前作といい、今作といい、そのあらすじを聞いただけでこれは、と思わせるものがあった。
 妖怪を封ずるための秘宝を求める少女。彼女を護る超人的技能を持つ忍者たち。権勢欲に憑かれ、少女の命を狙う権力者。その命を受けた暗殺者集団。剣と魔法の王道的物語を、戦国期の日本に舞台を移して展開される500ページは、しっかりと読み応えがある。
 
 ただし、そのサービス精神の暴走とでも言うべきか、着想を整理しないままに盛り込んだんじゃなかろうか、とうがってしまう作風もまた今作に引き継がれて、何のために登場したの?という存在価値の希薄な人物にページが割かれている感がある。
 最初から、全3巻程度のつもりであればともかく、例えば、山中鹿之助の登場にはあまり必然性を感じられなかったし、その主君となる尼子勝久はさらに中途半端だった。反対に笛師銀兵衛の存在は、キャラ立ちしているだけにもう少し活躍しても、という感があった。
 また、この時代の社会風俗については、微にいり細にいり詳述することで雰囲気を再現しているものの、反面、“民間人”というような、近代国家成立後でなくてはありえない言葉があたりまえに使われているところなど、当然、作者はすべて計算の上で選んだものなのだろうが、その感覚を共有できない部分もあった。
 
 もっとも、本書のネットでの評判は上々のようで、これは私と他の読者の世代的なものもあるだろう。そもそも、私が若い頃に親しんだ伝奇小説も、言葉の考証などはよほどいい加減なものだったわけだから、これはニュアンスを上手く汲む、感性の問題でもあるだろうか。
 というわけで、やはりどうみても中高年向けとは思えない表紙のことと併せてみても、本来私のような年齢の人間が読むべき本ではない、ということなのだろう。しかしそれでも、この作者が新作を書けば、今後も注目はしてしまうのだろうが。★1つ半。

タグ:伝奇

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「忍びの森」の著者が描く伝奇アクション長編、第2弾。◎「戦都の陰陽師」武内涼著(角川ホラー文庫刊)◆内容紹介(裏表紙から)時は戦国。不穏な戦雲におののく京の都に、無数に張られた結界を破って六百年ぶりに..
「戦都の陰陽師」【閑中忙有】 at 2012年02月11日 18:29
この記事へのコメント
TBを送らせていただきました。

山中鹿之助や某女性の幼き日の姿などは、これはもうゲスト出演というか、作者の遊び心なんですかね。

愉しめたことは間違いないんですが、伝奇アクションとして何か今一つ物足りないと思ったら……R18的描写がないというか、頑として避けているようなw
これはそれこそ表紙イラストが示すような読者層―ティーン層でも安心して読めるような配慮なんでしょうかw
Posted by るね at 2012年02月11日 18:50
TBありがとうございます。

>鹿之助と某女性

こういうゲストは嬉しいんですけどね。ただ、鹿之助は物語の一部を担うような担わないような、微妙過ぎる存在感でした。

>R18

ええ、なんだかくのいちまでも清純派なんですよね(笑)
まあ若い世代が手に取ることを前提としながら、あんまりとんでもないシチュを描写されても困りますが、この点では風太郎にもっとも迫った菊地秀行とは好対照と言うべきでしょうか(笑)
Posted by Sou at 2012年02月11日 21:16


 
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