2009年10月13日
六地蔵河原の決闘―八州廻り桑山十兵衛
関八州取締出役・桑山十兵衛のシリーズは、本書で6冊目となる。
シリーズのスタートは15年前、本書の収録作品は4〜3年前のものだが、この時間経過は作中にも反映されて、シリーズ第1話では頑是無い幼児であった十兵衛の娘・八重に、謎の男の影がちらつく、というのが本書における全話を通じた要諦となる設定で、いまだ青年の面影を残していた第1集あたりと比較すると、年頃を迎えた娘の行動に、心配を隠せない十兵衛の姿は、めっきり良いお父さんになったなあ、という感がある(笑)
全8編
「十年ぶり娘との再会」
「六地蔵河原の決闘」
「暗闇に消えた影」
「灯台下暗し」
「因果の小車」
「関所破り」
「瓢箪から駒」
「八州廻り原小兵衛の失態」
同じ作者の『御隠居忍法』や『花輪大八湯守り日記』のシリーズと比較すると、本書の主人公、桑山十兵衛は正統派の剣客であり、事実、第5集あたりまではそこそこにその剣の腕を披露する場面もあったのだが、本書に於いてはその種の荒事はほぼ消えて、ストーリーの多くは、現代で言えば“民事訴訟”に類するような、町民同士の利権争いに端を発した事件に、十兵衛がなんとか片をつけるというフォーマットになっている。
この利権争いの設定の数々が面白い。
例えば、「因果の小車」における、イワシ漁の水夫を巡っての争いなどは、現代にも一部通じそうな、江戸時代における季節労働者の雇用システムに基づいたトラブルであり、作者の該博な知識によって綴られたその難問の概略を読んでいくだけでも、その時代なりに高度な合理性を持っていた社会システムへの、興味を満たすことができる。
このあたりは単純な考証のみに堕さない方法で、解明されている江戸時代の社会についての知識を用いる、作者ならではの作品の妙と言えるように思う。
文章の方では、円熟に過ぎて、ピリリとしたところが無くなってしまっているような気もするものの、この微妙なぬるま湯感は、そう不快ではない。ただし、やはり1編程度は十兵衛の颯爽とした姿が描かれる物語があっても良かったような気もしなくはない。
シリーズものの安定感あり。★2つ半。
シリーズのスタートは15年前、本書の収録作品は4〜3年前のものだが、この時間経過は作中にも反映されて、シリーズ第1話では頑是無い幼児であった十兵衛の娘・八重に、謎の男の影がちらつく、というのが本書における全話を通じた要諦となる設定で、いまだ青年の面影を残していた第1集あたりと比較すると、年頃を迎えた娘の行動に、心配を隠せない十兵衛の姿は、めっきり良いお父さんになったなあ、という感がある(笑)
全8編
「十年ぶり娘との再会」
「六地蔵河原の決闘」
「暗闇に消えた影」
「灯台下暗し」
「因果の小車」
「関所破り」
「瓢箪から駒」
「八州廻り原小兵衛の失態」
同じ作者の『御隠居忍法』や『花輪大八湯守り日記』のシリーズと比較すると、本書の主人公、桑山十兵衛は正統派の剣客であり、事実、第5集あたりまではそこそこにその剣の腕を披露する場面もあったのだが、本書に於いてはその種の荒事はほぼ消えて、ストーリーの多くは、現代で言えば“民事訴訟”に類するような、町民同士の利権争いに端を発した事件に、十兵衛がなんとか片をつけるというフォーマットになっている。
この利権争いの設定の数々が面白い。
例えば、「因果の小車」における、イワシ漁の水夫を巡っての争いなどは、現代にも一部通じそうな、江戸時代における季節労働者の雇用システムに基づいたトラブルであり、作者の該博な知識によって綴られたその難問の概略を読んでいくだけでも、その時代なりに高度な合理性を持っていた社会システムへの、興味を満たすことができる。
このあたりは単純な考証のみに堕さない方法で、解明されている江戸時代の社会についての知識を用いる、作者ならではの作品の妙と言えるように思う。
文章の方では、円熟に過ぎて、ピリリとしたところが無くなってしまっているような気もするものの、この微妙なぬるま湯感は、そう不快ではない。ただし、やはり1編程度は十兵衛の颯爽とした姿が描かれる物語があっても良かったような気もしなくはない。
シリーズものの安定感あり。★2つ半。
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