2010年09月05日
パブリック・エネミーズ
ジョニー・ディップとクリスチャン・ベールという主役級二人を起用した贅沢なキャスティング、しかも監督は名匠マイケル・マン、題材は実在した銀行強盗ジョン・デリンジャーという、見ごたえを期待してしまう一本である。
大恐慌時代の合衆国、シカゴ。
白昼堂々、大銀行から強盗を働きながらも、居合わせた客からは一銭も奪わず、人を傷つけることもしないジョン・デリンジャー率いるギャングたちは、無能でありながら横暴な国家権力への反感を抱く市民によるひそやかな応援を得て、治安当局を嘲弄する神出鬼没ぶりを見せていた。
しかし、世間の注目を集めるデリンジャーを逮捕することでFBIの名誉を回復し、官庁としてその権能を拡大することを目論むFBI長官・フーヴァーは、敏腕捜査官・パーヴィスにデリンジャー逮捕の特命を与える。
パーヴィスが着目したのは、ネイティブアメリカンの血をひく一人の女性。
デリンジャーが危険を承知で会いにくる恋人・ビリーの存在だった。
ジョニー・ディップほどヒーローの似合わない俳優は、ハリウッドの長い歴史の中でも珍しいのではないか。
心身の強靭さを前面に見せることなく、他者を追うべき立場にあってさえも『スリーピー・ホロウ』のイカボット警部のように攻撃性を欠き、あるいは『フロム・ヘル』のアパーライン警視のように、自身の弱さの中に沈み込む。我々がアメリカン・ヒーローの個性として思い浮かべるマッチョでタフな男性像はどこにも無い。
このジョン・デリンジャーもまた、そういった繊弱さを隠せないキャラクターだ。
銀行強盗とは言え、殺人は無論のこと暴力さえも好まず、女性に対する高圧的なアプローチも、その時代にはむしろ一般的であったであろう性差による優越意識からくるものではなく、ただ不器用に自分の思いをぶつけるより他に方法を知らない、稚なさの屈折したあらわれとしか見えないものだ。これがどの程度史実の人物像に基づくものなのかはわからないが、なるほど、これはジョニー・ディップにうってつけの役柄である。
もっともこういったキャラクターが、マイケル・マンの作風に向いていたかと言えば少々微妙なところが無くも無い。マイケル・マンの描く、筋肉に依存しないながらも時にひどくストイックな「男の世界」においては、往々にして女性は人形に近い。本作のヒロインも魅力に乏しいわけではないが、なんというか古い映画に登場する「待つ女」の類型をあまり脱していないように感じられてしまうのだ。
つまるところ、これはある種独りよがりかも知れない美学に殉ずる男の話であって、女性は崇められながらもそのポジションを一方的に決定づけられてしまっている感がある。これがもう少し明朗な冒険活劇などであれば、そこのところはお約束ということで納得できるものなのだが、なまじ重厚に描かれた男たちの姿があるだけに、どうも目立ってしまうところなのだ。
映像は渋く磨かれたスタイリッシュさを持っている。
ことに定評のある銃とそれを用いたアクションの描写は、私の知識では正確さについては判断しかねるものの、こういう見せ方を考えられるのは、監督自身がマニアであるからなのだろうな、と思わせられるところ。
また、同様に定評ある男性キャラクターの魅力は十分。テキサスから呼び寄せられたベテラン捜査官たちなどは、奇抜な個性を主張する容姿も言動も何一つ無いにもかかわらず、味のある面構えと挙措で、全くの脇役ながら軽視できない存在感を漂わせている。
古い任侠物の骨格に、現代人の感性から乖離しない主人公の弱さを許してリファインすると、こういった作品になりそうだ。マイケル・マンの作品としては上位に位置するものではなさそうだが、それでもまずまずの満足感★3つ。
大恐慌時代の合衆国、シカゴ。
白昼堂々、大銀行から強盗を働きながらも、居合わせた客からは一銭も奪わず、人を傷つけることもしないジョン・デリンジャー率いるギャングたちは、無能でありながら横暴な国家権力への反感を抱く市民によるひそやかな応援を得て、治安当局を嘲弄する神出鬼没ぶりを見せていた。
しかし、世間の注目を集めるデリンジャーを逮捕することでFBIの名誉を回復し、官庁としてその権能を拡大することを目論むFBI長官・フーヴァーは、敏腕捜査官・パーヴィスにデリンジャー逮捕の特命を与える。
パーヴィスが着目したのは、ネイティブアメリカンの血をひく一人の女性。
デリンジャーが危険を承知で会いにくる恋人・ビリーの存在だった。
ジョニー・ディップほどヒーローの似合わない俳優は、ハリウッドの長い歴史の中でも珍しいのではないか。
心身の強靭さを前面に見せることなく、他者を追うべき立場にあってさえも『スリーピー・ホロウ』のイカボット警部のように攻撃性を欠き、あるいは『フロム・ヘル』のアパーライン警視のように、自身の弱さの中に沈み込む。我々がアメリカン・ヒーローの個性として思い浮かべるマッチョでタフな男性像はどこにも無い。
このジョン・デリンジャーもまた、そういった繊弱さを隠せないキャラクターだ。
銀行強盗とは言え、殺人は無論のこと暴力さえも好まず、女性に対する高圧的なアプローチも、その時代にはむしろ一般的であったであろう性差による優越意識からくるものではなく、ただ不器用に自分の思いをぶつけるより他に方法を知らない、稚なさの屈折したあらわれとしか見えないものだ。これがどの程度史実の人物像に基づくものなのかはわからないが、なるほど、これはジョニー・ディップにうってつけの役柄である。
もっともこういったキャラクターが、マイケル・マンの作風に向いていたかと言えば少々微妙なところが無くも無い。マイケル・マンの描く、筋肉に依存しないながらも時にひどくストイックな「男の世界」においては、往々にして女性は人形に近い。本作のヒロインも魅力に乏しいわけではないが、なんというか古い映画に登場する「待つ女」の類型をあまり脱していないように感じられてしまうのだ。
つまるところ、これはある種独りよがりかも知れない美学に殉ずる男の話であって、女性は崇められながらもそのポジションを一方的に決定づけられてしまっている感がある。これがもう少し明朗な冒険活劇などであれば、そこのところはお約束ということで納得できるものなのだが、なまじ重厚に描かれた男たちの姿があるだけに、どうも目立ってしまうところなのだ。
映像は渋く磨かれたスタイリッシュさを持っている。
ことに定評のある銃とそれを用いたアクションの描写は、私の知識では正確さについては判断しかねるものの、こういう見せ方を考えられるのは、監督自身がマニアであるからなのだろうな、と思わせられるところ。
また、同様に定評ある男性キャラクターの魅力は十分。テキサスから呼び寄せられたベテラン捜査官たちなどは、奇抜な個性を主張する容姿も言動も何一つ無いにもかかわらず、味のある面構えと挙措で、全くの脇役ながら軽視できない存在感を漂わせている。
古い任侠物の骨格に、現代人の感性から乖離しない主人公の弱さを許してリファインすると、こういった作品になりそうだ。マイケル・マンの作品としては上位に位置するものではなさそうだが、それでもまずまずの満足感★3つ。
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この記事へのコメント
>ジョニー・ディップほどヒーローの似合わない俳優は、
おお、胸にストーンと落ちる納得感!なるほど〜。
前回記事コメントでのTwitterの件ですが、
「忙しい時にはスルー」「読める範囲しか読まない」を前提に
各自気楽に参加している面があるので、
ほったらかす時には1カ月連続も可能です(笑)
今、大手マスコミ・NHKが政権寄りぎみで
情報がだいぶ操作されている傾向があるので(>_<)
ここでの市井のナマの口コミ情報はかなり貴重ですぞー。
菅・小沢の各支持率の感触なんて、各新聞紙の発表と真逆!
ちょっとぞっとします。捨て置くのはもったいないよ〜〜ん
おお、胸にストーンと落ちる納得感!なるほど〜。
前回記事コメントでのTwitterの件ですが、
「忙しい時にはスルー」「読める範囲しか読まない」を前提に
各自気楽に参加している面があるので、
ほったらかす時には1カ月連続も可能です(笑)
今、大手マスコミ・NHKが政権寄りぎみで
情報がだいぶ操作されている傾向があるので(>_<)
ここでの市井のナマの口コミ情報はかなり貴重ですぞー。
菅・小沢の各支持率の感触なんて、各新聞紙の発表と真逆!
ちょっとぞっとします。捨て置くのはもったいないよ〜〜ん
Posted by ミチコ at 2010年09月07日 22:21
>ジョニー・デップ
弱々しいというか、まあ、間違ってもみなぎる力で世界を救ったりしそうにありません(笑)
>Twitter
ああ、あれは適当で良いものなんですね。
つぶやき程度だから、それなりに活発にやり取りするものかと思っていましたが(笑)
大手マスコミにも、いろいろと歯切れが悪かったり、ダブルスタンダードな部分があったりしますね。
情報は可能な限り多くの媒体から得て、自分なりに考えてみる必要があるように思います。
弱々しいというか、まあ、間違ってもみなぎる力で世界を救ったりしそうにありません(笑)
ああ、あれは適当で良いものなんですね。
つぶやき程度だから、それなりに活発にやり取りするものかと思っていましたが(笑)
大手マスコミにも、いろいろと歯切れが悪かったり、ダブルスタンダードな部分があったりしますね。
情報は可能な限り多くの媒体から得て、自分なりに考えてみる必要があるように思います。
Posted by Sou at 2010年09月09日 22:01

