2007年02月28日

【図書紹介】もの作りの技術哲学と倫理に関連して

近年、工学系の学部を中心に、「技術者倫理」の教育の必要性が強く主張されています。そうした倫理を支える「技術観」には、大きく分けると二つの技術哲学があるように思えます。それは、一方で「技術をいかに抑制して使うか」という立場に立って技術者倫理を問う立場、つまり、技術の外から倫理という枠をあてる立場と、「技術に内在する本質とは何か」という立場に立ってそこから立ち上がってくる倫理を掬いあげようとする立場の二つです。前者が狭い意味での技術者倫理と呼ばれ、後者はもう少し広く技術哲学に括られるのかもしれません。

全体的に見ると、前者のほうが現場には即戦力的に使えるので、前者に対する要求が強いように感じますが、後者の議論は、技術者の倫理に限定されない、文明・文明といった大きな問題群までをも考える上で、有用な視点を与えてくれるものと期待されているようです。

で、最近、後者の「技術哲学」に属する立場から倫理の問題を(部分的に)扱った著作が二つ、刊行されていますので、ご紹介。

伊藤徹
『作ることの哲学――科学技術時代のポイエーシス』(世界思想社, 2007)
ISBN: 978-4790712428

目次:
1. 作ることの哲学
2. カンディンスキー・内なる響き
3. さまざまな死のかたち
4. 作品の中の自然――ハイデガー・世界と大地――
5. 道具への視線――柳宗悦の場合――


丸田健
「第7章 現代社会と手仕事道具」
「第8章 手仕事から開ける世界へのつながり」
石崎嘉彦ほか, 『ポストモダン時代の倫理』(ナカニシヤ書店, 2007)収録
ISBN: 978-4779500992
Posted by res at 03:53  |Comments(240)TrackBack(0) | 新刊 , 哲学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年01月30日

【図書紹介】『オカルトの帝国』

元々は「隠された知」を意味する「オカルト」。それが1970年代、高度経済成長を経た日本において「隠されていない知」へと変貌しました。そこにおいては、「科学万能信仰」への対立軸としてオカルトが位置づけられ、また、その言説が一部では前近代的な「民俗的なもの」の再発見と接合し、また同時に逆説的に科学的理性と接合しながら、「メディア」という新たな舞台の上でオカルトは「光」のもとに晒されました。「あなたの知らない世界」が「知られる」ようになったのです。

そうした70年代前後というコンテクストにおいて「オカルト」というものを照射し、逆にその時代を「オカルト」という視点から解釈する論文集が刊行されました。現代のオカルト的想像力のベースが1970年代に形成されたこともよく分かります。

このオカルト的想像力のもと、どのような「霊的物質」という逆説的事物――精神性と物質性の奇跡的融合――が産出されていったのか(心霊写真、呪いの人形、心霊スポットetc.)を考えるのが、物質文化研究の一つの課題たりえるように思えます。

以下、目次。

一柳廣隆(編)
『オカルトの帝国―1970年代の日本を読む』(青弓社, 2006)
ISBN: 978-4787232665

目次:
金子毅「オカルト・ジャパン・シンドローム――裏から見た高度成長」
長山靖生「小松左京『日本沈没』の意味」
野村典彦「ディスカバージャパンと横溝正史ブーム」
谷口基「エクソシスト・ショック」
大島丈志「「ノストラダムス」の子どもたち」
住家正芳「宗教書がベストセラーになるとき」
飯倉義之「〈霊〉は清かに見えねども――「中岡俊哉の心霊写真」という〈常識〉」
清水潤「一九七〇年代の「妖怪革命」――水木しげる『妖怪なんでも入門』」
一柳廣隆「オカルト・エンターテイメントの登場――つのだじろう「恐怖新聞」」
吉永進一「円盤に乗ったメシア――コンタクティたちのオカルト史」
吉田司雄「メディアと科学の〈聖戦〉――一九七四年の超能力論争」

*なお、日本における心霊写真言説の研究については、同じ編集者による以下の一冊が秀逸です。
一柳廣隆(編), 『心霊写真は語る』(青弓社, 2004)


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2007年01月22日

もの研通信no.77配信

もの研通信を配信しました。全文を読みたい方は、講読の申し込みをしてください。

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■ 目次
1. 世界遺産萩シンポジウムご案内
2. 【雑文】ものの二つの生
3. 【雑文】尺度と尺度の外(1)
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Posted by res at 08:23  |Comments(0)TrackBack(0) | もの研活動 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年01月19日

【シンポ】世界遺産萩シンポジウム

九州〜山口の近代化産業遺産をテーマとしたシンポジウムが開催されるそうです。


日本の近代化の世界的価値を考える―山口・九州の近代化産業遺産群―

日時: 2007年 2月 3日(土)13:30〜17:00
場所: 萩市民館大ホール

基調講演:
ニール・コソン氏
スチュアート・スミス氏

パネル・ディスカッション
「山口・九州の産業遺産群の世界遺産としての価値について」
コーディネーター:後藤治氏
パネラー:島津公保氏・須田寛氏・横川清氏・坂本道徳氏・永吉守氏・野村興兒萩市長

参加費無料、事前登録なども不要とのこと。詳細は、九州産業考古学会などにて確認できます。
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2007年01月10日

【図書紹介】『何が社会的に構成されるのか』

1990年代以降、社会科学を中心に、一種の知的潮流として爆発的に流行した立場「社会構成主義(もしくは社会構築主義)」。

そのものや現象それ自体によってそれが定義されると考える「実体主義」や「本質主義」に対し、そのものや現象を構成するのは社会の側であり、その構成の仕方は文化的・歴史的に相対的である――そうした基本的見解に基づき、多くの概念が「社会的構成物」として解釈(ときに弾劾)されていきました。さて、そうした社会構成主義(とそれにまつわる論争)にはどのような哲学的意義があるのか。そうした問題を軽妙洒脱に説いた話題作が、早くも翻訳されました。

イアン・ハッキング(出口康夫・久米暁訳)
『何が社会的に構成されるのか』(岩波書店, 2006)
ISBN: 978-4000241595

目次:
なぜ「何が」を問うのか
多すぎるメタファー
自然科学はどうなのか
狂気――生物学的かあるいは構成されるのか
種類の制作――児童虐待の場合

なお、原著にはさらに「兵器研究」「岩」「キャプテン・クックの最期」という三つの章がありましたが、この翻訳では割愛されています。

社会構成主義の「現在」や、「その哲学的深化」を知るための一冊というよりは、これまでの混乱した議論を整理し、これまでの論争に対する見取り図を得る野に有益な一冊。
Posted by res at 04:33  |Comments(0)TrackBack(0) | 新刊 , 哲学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月02日

【図書紹介】『空間管理社会』

近年、セキュリティ意識の高まりとともに社会が、そして都市が「管理社会」「監視社会」としての側面を強く帯びてきています。その古典的研究ともいえるのが、マイク・デイヴィス, 『要塞都市LA』(青土社, 2001)でしょうし、また、五十嵐太郎, 『過防備都市』(中央公論新社, 2004)のように、国内でもその事例報告が盛んに刊行されるようになりました。

つまるところ、「都市と自由」ないし「空間と自由」という問題系の交錯が、近年急速に台頭しているのです(そしてこの交錯は、さらに「サイバー空間」という次元によって複層化します)。そうした現状において、この問題系を広く扱った論集が刊行されました。

阿部潔・成実弘至(編)
『空間管理社会――監視と自由のパラドックス』(新曜社, 2006)
ISBN: 4788510162

目次:
阿部潔「公共空間の快適――規律から管理へ」
成実弘至「ストリートの快楽と権力――消費社会のスペクタクル」
佐幸信介「囲われる空間のパラドックス――分類化する社会」
小野田泰明「デザインされる空間――視線と集合住宅」
前田至剛「ネット空間と自由の可能性――繋がりの構造」
田仲康博「空間と表象の暴力――自閉する私的空間」

大変アクチュアルなテーマに即した章配列で、キーワード集+Further Readingも3部に分けてつけられており、教科書などにも使用できる親切な作りになっています。
Posted by res at 04:56  |Comments(0)TrackBack(0) | 新刊 , 社会学 , 地理学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月14日

【図書紹介】『ニッポンの素』

「もの」、特に「人が作ったもの」を研究する際、どうしても私を含め、多くの人はその「出来上がったもの」と、「それが出来る過程」には着目しても、「それの素になっている生の原料」については忘れがちです。たとえば、鉄。アルミ。コンクリ。ガラスetc。それら自体は、一体どのような技術で作られ、どのように流通し、どのように利用されているのか。とりわけそれが、あまりにも日常的に氾濫したものであればあるほど、そうした問いは埋もれていってしまいがちです。

そうした問いを掘り起こし、今の日本に溢れる「原料」に着目して、その産業の現在の様子をルポした本がありますので、以下、ご紹介。

武田徹, 『ニッポンの素――ルポ「今」を支える素材産業』(新宿書房, 2005)
ISBN: 4880083291

ここで取り上げられている「素材」は、鉄、塩、ガラス、水、アルミ、チタン、絹、紙、化学繊維、プラスチックです。工業の複雑化と分業化が進む中で、不可視化していった「素材産業」。文明化した消費社会において、「製品」と「そのデザイン」のみが語られ、また、その操作のみで文明が動いていく/動かせるかのような幻想が広がる中、日本の素材産業はどのような歴史を辿ってきたのか、また、今そこで何が起こっているのか。そうした現状をレポートしたのが本書。

「日常生活」の「基底」、というか「基体」を考える上で、非常に示唆に富む一冊でした。特に、(世代論になりますが、1980年代を小〜中学生として過ごした人に多いのですが)「原料を作る産業国」は「加工貿易型産業国」に劣っているなどといった誤った価値判断を含むイメージが、今でも拭い去り難く植えつけられている現在、そうしたヒエラルキーに何の意味もないことを改めて理解する上でも、お勧めです。
Posted by res at 06:31  |Comments(0)TrackBack(0) | 社会学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月13日

もの研通信no.76配信

もの研通信を配信しました。全文を読みたい方は、講読の申し込みをしてください。

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■ 目次
1. 雑文:他愛と物愛
2. 図書紹介:『ニッポンの素』
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Posted by res at 06:27  |Comments(0)TrackBack(0) | もの研活動 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年08月23日

【図書紹介】『イメージ、それでもなお』

最近翻訳の続くフランス美学のディディ=ユベルマンの著作ですが、また新たに一冊、翻訳されました。これまで以上に「イメージの倫理」――ひいてはものの倫理――に重きを置いた、アウシュヴィッツの表象を巡る論争的著作。

ジョルジュ・ディディ=ユベルマン(橋本一径訳)
『イメージ、それでもなお――アウシュヴィッツからもぎ取られた四枚の写真』(平凡社, 2006)
ISNB: 4582702627

目次:
地獄からもぎ取られた四枚のフィルムの切れ端
想像不可能なものすべてに逆らって
歴史の目の只中で
似たもの、似ざるもの、生き残るもの
イメージ=事実あるいはイメージ=フェティッシュ
イメージ=アルシーヴあるいはイメージ=外観
イメージ=モンタージュあるいはイメージ=嘘
似ているイメージあるいは見せかけのイメージ

アウシュヴィッツの表象を巡って(古くは、フリートレンダー編, 『アウシュヴィッツと表象の限界』などで)常に争われ続けてきた「表象可能性vs表象不可能性」の論争。その論争が持つある種の「片方の全体への還元」に両面で抗い、かつ、単に「部分的に表象しうる」という折衷でもない形で、いかに、どこに、「表象がほとんど不可能である出来事の表象の可能性」を確保することができるのか。しかも、それは「表象そのものの一般条件」とどう関係するのかしないのか、即ち、アウシュヴィッツという出来事の特異な単独性=共約不可能性を認めるのか認めないのか――そうしたこれまでの論争に新しい視角を提示する一冊です。
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2006年07月28日

【研究会】第一回海洋考古学セミナー

「第一回海洋考古学セミナー」に関するご案内をいただきましたので、以下、転載させていただきます。

第一回海洋考古学セミナー
「船と水中の考古学」

日時: 2006年 9月 2日(土)14:00〜
会場: 京大会館

発表者:
木村 淳(オーストラリア・フリンダース大学)
「水中遺跡マネージメントと世界の海洋考古学」

ランドール・ササキ(アメリカ合衆国・テキサスA&M大学)
「元寇船の復元:長崎県鷹島遺跡の調査から」

宮下裕章(アメリカ合衆国・テキサスA&M大学)
「考古学のオープンソース化の意義」

連絡先:石村 智
奈良文化財研究所 企画調整部 国際遺跡研究室
E-mail: tomoishi(アットマーク)nabunken.go.jp


参加の可否などについては、上記連絡先までお問い合わせください。
Posted by res at 04:48  |Comments(2)TrackBack(0) | 研究会 , 考古学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする