2012年01月27日

アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)がインフレターゲットを導入

アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)が一昨日(25日)、2%のインフレ目標を導入すると発表しました。
インフレ目標の導入はベン・バーナンキFRB議長のかねてからの持論で、FRBは個人消費支出(PCE)価格指数の前年比伸び率2%を目標にして金融政策を行うことになります。

アメリカがインフレターゲット導入ですねぇ・・・。
インフレターゲットというのは、中央銀行が物価上昇率に対して目標数値を定め、その数値に近くなるよう金融政策を行う仕組みのことです。
日本・アメリカ・ユーロ圏ではインフレターゲット政策は採用されていなかったのですが、アメリカがついにインフレターゲット導入に踏み切ったということですね。

ユーロ圏では欧州中央銀行(ECB)が物価の安定的な水準の定義を示していて、インフレターゲット導入を明確には表明していないものの、実質的にはインフレターゲット政策を採用しているとも言えます。
日本も似たような状態で、日本銀行が「中長期的な物価安定の理解」を公表していて、物価が安定しているとする物価上昇率を『消費者物価の前年比で2%以下のプラスの領域にあり、中心は1%程度である。』としています。
ただし、明確にインフレターゲットを導入しているわけではないので、1%の物価上昇率を実現できなくても日銀総裁に説明責任は無いということですね。

日本でも「リフレ派」と呼ばれる経済学者たちが、インフレターゲット政策の採用を強く主張しています。
私はインフレターゲット政策を全面的に否定するわけではないのですが、その効果にはかなり懐疑的です。
インフレターゲットというのは、過度のインフレを抑えるためには有効だと思うのですが、デフレ克服のためにも使えるかどうかはちょっと疑問です。
実際のところ、これまでインフレターゲット政策を採用してきた諸外国は、インフレ抑制のためにこの政策を採用しており、デフレ克服のために採用した例は無いんですよね。
今回のFRBも、『インフレ目標を公にすることで、長期インフレ期待をしっかり抑制することができる。』と声明を出しています。
最新の数値である昨年11月のPCE価格指数は前年比2.5%の上昇なので、これを「前年比2%の上昇に抑えます」と言っているわけですね。

日本経済は「流動性の罠」に陥っているので、インフレターゲット政策を採用して通貨供給量をどんどん増やしたからといって、期待するようなクリーピングインフレにはならないというのが私の考えです。
むしろ、インフレにならないからといってむやみに通貨供給量を増加させ続けると、ある時点でデフレから一気に激しいインフレへと移行する危険があるのではないかと懸念しています。
しかし、アメリカがインフレターゲット政策を採用したことで、日本でもインフレターゲット政策採用の声が強まるかもしれません。
次期総選挙でみんなの党と大阪維新の会が大勝して政権を握った場合には、インフレターゲットを導入して大胆なリフレ政策が実施されるということになるのかもしれませんね。

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この記事へのコメント
これはNHKの先走りですね。
FRBはインフレターゲット政策を導入していません。

http://blog.livedoor.jp/sobata2005/archives/51800132.html

あと物価の前年比2%では小さすぎます。
名目の2%だと実質では0%ぐらいですね。

>実際のところ、これまでインフレターゲット政策を採用してきた諸外国は、インフレ抑制のためにこの政策を採用しており、デフレ克服のために採用した例は無いんですよね。

たしかにインフレターゲット政策は物価安定が目的です。
でもデフレ克服に役に立つのです。
詳しくは私が名前をあげた本を読んで下さい。

イギリスは、インフレターゲット政策を採用しています。
でも最近はコントロールに失敗しています。
理由はマクロ経済の基本と違った金融政策をしたからです。
だからインフレターゲット政策を導入すれば、物価が安定するわけではありません。
正しい金融政策があって始めて、インフレターゲット政策が効果があるのです。



ユーロ圏の失敗もIMFの失敗も、マクロ経済理論の基本だけで説明可能です。
Posted by おおくぼ at 2012年01月28日 00:25
Posted by おおくぼ at 2012年01月28日 01:11
>おおくぼさん
報道各社は「FRBがインフレ目標を導入」と報じていますが、日経新聞は「事実上のインフレ目標」という表現を使っていますね。
まあ、一般人からしてみれば、「アメリカもインフレターゲットを導入した」という理解でいいんじゃないかと思います。

>>でもデフレ克服に役に立つのです。

今のところ、インフレターゲットがデフレ克服に役立つという根拠が、よくわからないんですよね。
リフレ派の経済学者が、インフレターゲットでクリーピングインフレになるメカニズムを明快に説明しているのは、残念ながら見たことがありません。
私は自分の頭で考えて、納得できる根拠があればその政策を支持するし、納得できる根拠が無ければ支持しないだけです。
Posted by ADlab. at 2012年01月29日 13:22
久しぶりにコメントします。
ひと月ほど入院していました。

日銀がインタゲ政策を採用しました。
私は「なんちゃってインタゲ」と呼んでいます。
でも円安(現在81円)になり、日経平均株価(現在9700円)まで回復しました。
中央銀行のマーケットへの心理的な影響力は大きいです。
円安になれば、日本国内の人件費が国際的に安くなるので、失業問題の解決に繋がります。

日銀のインタゲ政策はFRBと違い、物価指数はCPIであって、コアコアCPIではありません。
また量的緩和も短期国債が中心です。
FRBは長期国債と民間の社債&株が中心です。
だから本当は日銀のインタゲ政策には「インフレ効果がない」はずなのです。
Posted by おおくぼ at 2012年03月03日 13:36
>おおくぼさん
椎間板ヘルニアですか・・・それは、大変でしたねぇ〜。
あまり無理しないよう、ご自愛ください。

>>日銀のインタゲ政策はFRBと違い、物価指数はCPIであって、コアコアCPIではありません。

日銀が物価指標としているのは「CPI」ではなく「コアCPI」だと思いますが、いずれにせよ、「コアコアCPI」ではないのは問題ですよね。
私も、「コアコアCPI」を物価指標として用いるべきだと思います。

私は「デフレ脱却のためのインフレターゲット政策」というのは疑問視していますが、「円高是正のための金融緩和」には大賛成です。
日銀は、さらに追加の量的緩和を行ってもいいのではないかと思います。
Posted by ADlab. at 2012年03月15日 17:18
日銀が物価指標としているのは「コアCPI」ですね。
訂正します。

日銀は短期国債あるいは償還期間の残り少ない長期国債(実質は短期国債)ばかりを購入するのではなく、償還期間の長く残っている長期国債を大量に購入すべきだと思います。

入院は生まれて初めてだったのですが、入院中に現代の医療制度について考えされられました。
このことは自分のブログに書いていこうと思っています。
Posted by おおくぼ at 2012年03月16日 16:39
>おおくぼさん
>>日銀は短期国債あるいは償還期間の残り少ない長期国債(実質は短期国債)ばかりを購入するのではなく、償還期間の長く残っている長期国債を大量に購入すべきだと思います。

償還期間の長く残っている長期国債を大量に購入してしまっては、政府の財源を日銀がファイナンスすることになってしまいます。
そうなっては財政規律が崩れて駄目だというのが歴史の教訓であり、そうならないようにするための歯止めが財政法第5条であるわけですね。

結局のところ、私とおおくぼさんの考え方の違いは、中央銀行に対する考え方の違いということなのかなと思います。
Posted by ADlab. at 2012年03月19日 16:52
財政法第五条で禁止されているのは、直接引き受けであって、市場からの購入は禁止されていません。

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/110925/fnc11092511160000-n1.htm

また短期国債の直接引き受けは、昔からしてました。
財政法第五条が問題になったのは、日銀が大蔵省から独立してからです。
大蔵省の管轄下だった時は、直接引き受けをしていました。

財政法はザル法みたいなもんで、赤字国債や建設国債についてもいい加減です。
赤字国債は特例国債で、特例でしか発行をしてはいけない国債です。
建設国債は建設に限定される国債ですが、建設費に関しても原則は一般会計内で賄うことになっています。

建設国債は小泉内閣以降かなり減ったので、これからはメンテナンス目的に発行すればいいと思います。
ただ震災は特例なので、国債を発行することは推奨されるべきでしょう。
Posted by おおくぼ at 2012年03月20日 14:25
自殺率の方のコメント欄で高橋是清時代のコメントの続きは、こちらに書きます。

>>昭和恐慌の時に、国債引き受けをしていますが、恐慌脱出に役立っています。

>高橋是清蔵相が日銀に国債直接引き受けをさせたのは、国債の市中消化の目途が立たなかったからです。
>現在はまだ国債が市中消化できているのに、日銀に直接引き受けさせる意味がわかりません。
>また、高橋蔵相が日銀国債引き受けという禁断の扉を開いてしまった結果、軍部が無尽蔵に軍事費を得ることとなり、日本は戦争への道を突き進むこととなってしまいました。

日銀の直接引き受けは、政府がお金を刷ることと同じです。
だから、お金の供給量を増やす役割をするのです。
すなわちインフレにする力があるのです。

高橋是清以後に国債の発行額が異常に増えました。
しかし日銀の国債保有率はそんなに高くなく、物不足だったので悪性インフレですが、インフレ率もそんなに高くありませんでした。
酷いインフレは戦後すぐです。
復興債を日銀が直接引き受けをしたためにインフレになりました。
しかし復興に役立ちました。

現在も満州事変以後のように大量に国債を発行しています。
しかし現在の国債発行目的は軍事費ではありません。
Posted by おおくぼ at 2012年03月25日 17:13
>おおくぼさん
>>財政法第五条で禁止されているのは、直接引き受けであって、市場からの購入は禁止されていません。

もちろんそうなのですが、それは直接引き受けるのでなければ、日銀が大量に国債を買って良いということではありません。
財政法第5条の立法趣旨は、「政府の財源を日銀がファイナンスしてはいけない」ということに尽きると思います。

高橋是清蔵相は、国債を市場消化できる目途が立たなかったため、日銀に直接引き受けさせるという手法を用いました。
しかしこれは、軍部に「日銀の国債直接引き受けで、いくらでも軍事費を生み出せる」という考え方を生んでしまいました(三橋貴明さんの「日銀の国債直接引き受けで、いくらでも公共事業費を生み出せる」という考え方は、当時の軍部とまったく同じですね)。
高橋蔵相は、そんな軍部の暴走を抑えようとしたために、二・二六事件で暗殺されてしまいました。

この歴史の教訓は、政府の財政規律が緩んでしまうので、政府の財源を日銀がファイナンスしてはいけないということです。
特に、日銀が国債を直接引き受けると、無限に財源を生み出せるように錯覚してしまうので、どうしても放漫財政になってしまい、再度財政規律を引き締めるのは相当困難になってしまいます。
社会保障費は臨時の支出ではないので、国債発行ではなく、きちんと財源を確保する必要があるのです。
Posted by ADlab. at 2012年03月25日 21:21
最近、『高橋是清と井上準之助―インフレか、デフレか』 (文春新書:鈴木隆・著)が出ました。
物語風で読みやすい本です。

中央銀行が国債を直接引き受けすればインフレ圧力は高まります。
だから無限に引き受けすることはできません。
最近の例では、ハイパー・インフレになって自国通貨が使用不可能になったジンバブエがあります。
戦時中の日本政府もその危険はよくわかっていたので、インフレ圧力を抑えながら国債を大量に発行していました。
だから現在と同じ状況なのです。

違うのは現在は物余りで、戦時中は物不足だったことです。
あとは国債の使い道です。
TPP絡みのことを言えば、戦時中の日本政府は自ら輸入の困難な状況に持っていたので、自爆ですね。

最初から国債を市中消化することは、市中のお金を吸い上げることを意味して、デフレ圧力が高まります。
だからデフレから脱出するのは、市中にお金をバラまく必要があります。
だから直接引き受けが効果的なのです。
高橋是清は直接引き受けした後に、国債を市中消化しています。
これはインフレ圧力を弱めるためです。
高橋是清は、景気のアクセルとブレーキをうまく使い分けしていたのです。
リーマン・ショック後のFRBの政策も基本的には高橋是清と同じです。
Posted by おおくぼ at 2012年03月27日 15:57
追記

>高橋蔵相は、そんな軍部の暴走を抑えようとしたために、二・二六事件で暗殺されてしまいました。

二・二六事件と言えば、青年将校達が腐敗した(と思っていた)政治家達を暗殺した事件ですね。
「昭和維新」を掛け声にクーデターを起こそうとして失敗して、首謀者達は死刑になった事件として有名ですね。
現在、大阪を中心に「維新の会」が活発なのは興味深いです。
Posted by おおくぼ at 2012年03月27日 22:22
>おおくぼさん
>>最初から国債を市中消化することは、市中のお金を吸い上げることを意味して、デフレ圧力が高まります。

いやいや、もちろん市中消化したあとに日銀が買いオペをやるんですよ(汗)
「じゃあ、最初から日銀が買えばいいじゃないか!」と思うかもしれませんが、いったん市場を通すということが重要なわけです。
これは「市中消化の原則」と呼ばれていて、この原則を設けていることにより、政府がむやみやたらと国債を発行することを防いでいるのですね。

>>現在、大阪を中心に「維新の会」が活発なのは興味深いです。

確かに、当時の軍部も現在のみんなの党や大阪維新の会も、「日銀に国債を直接引き受けさせることで財源を生み出せ!」と主張しているという点で似ていますね。
当時の日本国民が軍部を熱狂的に支持したのと同じように、みんなの党や大阪維新の会を熱狂的に支持しているというところも似ています(汗)
私は、日本が戦前の失敗を繰り返さないことを望みますが・・・。
Posted by ADlab. at 2012年04月09日 16:18
 
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