ストーリー:
1865年、京都。下級武士の田代(浅野忠信)が美貌の少年・加納惣三郎(松田龍平)と共に新選組に入隊する。副長の土方(ビートたけし)は、謎めいた魅力を放つ惣三郎を危険視するが、その予感は適中。彼に強くひかれた田代や湯沢(田口トモロヲ)らの運命が狂わされていくことに。
2000年1月25日、映画館で見てきました。(★★★)
奥が深いんでしょうね・・・。見終わってから気づくことなんですが。見ている間は結構さらさらと流れていってしまうんですよ。で、ラストシーンまできて、「え、もう終わっちゃうの・・・? ・・・ヤバイ!!」と感じてしまいました。さらさらと語られていく物語をさらさらと見てしまったせいか、大事なものを見落としてしまった気がしてしまう。見終わった後でいろいろと考え込んでしまう、どんどん奥深いところへ入っていってしまう、そして、もう1度見なければと思わせてしまう映画なのでした。
大島監督としては、「もう1度見たいと思って欲しい」というコメントがありましたので、まんまとはまってしまったというわけですな(笑)。使われる日本語が昔のもので、普通の人には一瞬「ん?」と思うような言葉が出てくるので、それを勉強してからもう1度、という傾向もありますが(笑)
実はこの映画、松竹の公式ホームページの中に2種類の掲示板が用意されています。1つは普通の掲示板、もう1つはなんとネタバレ掲示板。つまり映画を既に見た人がその内容を語れる掲示板が公式に用意されているのです。それは何故か? この映画は、実はあまり真実を観客につきつけていないから。見た人それぞれが自由に解釈できるくらい、事実が映像として流れてこない。だから映画を見た人たちが、「あそこはこういう意味だったんじゃないだろうか」と、それぞれの映画の受け止め方を語れる掲示板が用意されているのです。
映画の中で、映像として事実を確認できるシーンはわずかに数えられるだけ。湯沢と惣三郎が肉体関係をもっているということと、惣三郎が田代を斬ったということ。それ以外の、物語の非常に重要なポイントは、噂としての字幕ナレーションか、土方の想像や直感から発せられる言葉で語られたりするだけなんです。田代と惣三郎ができていることも、惣三郎が湯沢を殺し、山崎を襲ったことも、近藤も惣三郎に妖しい好意をもっていることも、そして・・・惣三郎の本心も。なぜ新選組に入隊したのか、前髪にかけた願は何なのか、・・・沖田に懸想していたのか。そして沖田は、全てを気付いていたのか。映画を見ている間は、字幕が伝えるとおり、土方が語るとおり、それを真実として受け止めているのですが、終わってから気付いてみると、なにひとつ、目の当たりにはしていないんです。どうして惣三郎の中に化け物が生まれてしまったのか、惣三郎が何を思い、何を考え、何を求めていたのか。ラストシーンも、そこに流れるのは惣三郎の断末魔の叫びだけ。おそらくは自分が本当に好きだった、あるいは憧れていた沖田に斬られる瞬間、惣三郎は何を感じていたのか。私達は土方のように、想像するしかないんです。
沖田の存在も良かったです。新選組にあって、特別な存在だったと思います。演じた武田真治いわく、「沖田だけがとべたんだと思う」と。その表現はすごいと思いました。とても的確に、沖田の存在を表していると思いました。それよりなにより、武田真治がハマリ過ぎ! 武田真治以外に考えられないでしょうね。大島監督は、そのキャスティングでほとんど映画は決まったようなもの、というくらい絶妙なキャスティングをするそうですが、今回も大当たりっていうところですね。田代を演じた浅野忠信先輩も良かった。(中学の先輩なのだ。) 最後、惣三郎に斬られるシーン。惣三郎が何かつぶやくと、田代の表情が変わり、力が抜け、結果斬られてしまう。惣三郎が何を言ったかは、なんと観客には聞こえないようになっているのですが(無音なのです)、それを聞いた時の田代の表情! きっと、何も解らぬまま、死んでいったんだろうな、と・・。その瞬間、切なさが噴き出した、て感じでした。
まぁ、大島監督のキャスティングの妙を楽しむだけでも充分いけるんじゃないですかね。なぜかカメラ目線だったりするトミーズ雅と、今にも「とびます、とびます!」とか言い出しそうな坂上二郎を見に行くだけでも、すっごくシアワセな気分になれると思いますよ(笑) 松田龍平の惣三郎もなんか女に見えたりするから、男同士のベッドシーンもあまり違和感なかったし。
とりあえず、ビデオになったらまた見ますよ。観客に解釈の余地を与えてしまう大島監督の勇気(?)に感服しつつ、監督が考えた真実は何だったのか。それをどうしても知りたいから、わかるまで何度も見てしまうかもしれない。すでに30ヶ国以上での公開が決まっているそうですが、バックグラウンドの異なる地でどのように受け止められるのか、そこにもすごく興味をもったのでした。
1999年日本映画/1時間40分/松竹
監督・脚本:大島渚
原作:司馬遼太郎
撮影監督:栗田豊通
美術監督:西岡善信
衣装デザイン:ワダエミ
音楽:坂本龍一
製作:大谷信義
プロデューサー:大島瑛子、中川滋弘、清水一夫
出演:ビートたけし、松田龍平、武田真治、浅野忠信、崔洋一、坂上二郎、的場浩司、トミーズ雅、伊武雅刀、神田うの、吉行和子、田口トモロヲ、桂ざこば