2007年10月10日

徒然に「きたない絵」といわれた『甲斐庄 楠音』

10月に入っても寒いような暖かいような何ともスッキリしない毎日が続いて迷ってたのですが、やっと昨日から秋冬物のスーツに衣替えです。
まったく紺のスーツを持っていなかった時期もあるくらいほとんど茶系のダークスーツと黒に近いグレー系を着ていたのですが、最近やっと濃紺も着るようになりました。
決して紺が似合わないと思ってるわけではないのですけど、どうも没個性的な気がして手が出なかったのだと思います。
スーツの場合ネクタイやワイシャツはともかく、茶系を着るとどうしてもベルトや靴、靴下なども茶系が必要になります。
特に靴の場合、同じ茶系といっても仕事用ですから赤茶系は駄目なのですが、最近は赤茶系が多くて黒っぽい茶の靴がなかなか見つかりません。
もう長年愛用しているのはスコッ●グレーンと云うブランドですが、リーズナブルで丈夫で履くほどに足にフィットするたいへん優れものです。
同じようなブランドでリー●ルがありますが、皮が硬すぎてなかなか馴染まず、それこそ足を靴に合わせないといけません。

娘
ところがこの愛用のブランドも最近は好みの茶系が少なくなりとても困っています。
型落ちを扱っている大きなアウトレットでも探した方が見つかるかも知れません。

さて、次に誰を取り上げようか迷ってたのですが、前回の「岸田劉生」へのコメントで、いつもコメントくださる遊行七恵さんがデロリの美」と書かれていたのにヒントを得て大正から昭和にかけて特異な存在であり「大正時代末期の暗い風潮を象徴するデカダンス画家の代表」と云われた『甲斐庄楠音(かいのしょうただおと)』を取り上げてみました。

日本画と云えば多くは「花鳥風月」を描いたものをよく見かけますが、甲斐庄はその作品のほとんどが女性をテーマにしており、しかも「毒のある女性像」と云われたようにその表現は美醜を超えた人間の本質に迫る、独特かつ衝撃的な美意識で貫かれています。
それ故か、32歳の時に「国画創作協会展」に出品した作品(女と風船)、「土田麦僊」から「きたない絵」として陳列を拒否されています。
しかし甲斐庄はそんな騒動にめげず「きたない絵で奇麗な絵に勝たねばならん」とかえってその後の制作の方向性をしっかりと思い定めたと云います。
「美醜」は絶対的なものではなく、ましてや既成社会通念とは関係なく個人の深層に潜む「快感原則」に従うならば、百人百色の「美」があり「醜」があっても不思議ではないのでしょう。
「甲斐庄楠音」には女装癖、さらには男色家との風評もありました。
またいちじは映画の世界に身を置き、溝口健二監督の作品で衣裳、風俗、時代考証を担当し、名作「雨月物語」はアカデミー賞衣装部門にノミネートされ、ベネチア映画祭銀獅子賞を受賞しています。

ホントに「きれいはきたない。きたないはきれい」!
  
  ・甲斐庄楠音(かいのしょうただおと)(1894-1978) 京都は竹屋町の生まれ
「甲斐荘家」は楠正成の後裔と伝えられています。
甲斐庄楠音
水戸光圀によって没落していた楠公の子孫が九千五百石の旗本として取り立てられたそうで、養子であった甲斐荘正秀を父とし、その3男坊として生まれています。
幼少の頃から喘息を患い病弱ではあったのですが、京都に広大な土地を持ち、たいへん経済的には恵まれた環境に育っています。
中学校の頃から絵に興味を持ち京都市立美術工芸学校(現芸術大学)に入学し「村上華岳」に認められるようになります。

横櫛大正5
大正7年・24歳の時に国画創作協会に【横櫛】を出品し「樗牛賞」候補に挙げられる
のですが、『横櫛』を推した村上華岳と岡本神草の『口紅』を推した土田麦僊とが互いに譲らず結局二人とも賞を逃してしまいます。
しかしこの事件を切っ掛けに『横櫛』と『口紅』はたいへんな評判となったのです。

女人像
その後、国画創作協会の会友となり活躍の場を得た楠音は、次々と作品を発表するのですが32歳の時出品した「女と風船」に対し土田麦僊は「きたない絵」と評して出品を拒絶したのです。
活躍の場を新しく結成した「新樹社」に移すのですが、会員の大量脱退事件が起きるなど続けられず、46歳の時に映画監督・溝口健二監督と知り合い溝口映画の衣裳、風俗考証を担当して画家としての道から遠のきます。
前述の『雨月物語』はご存じ「上田秋成」の原作で脚本が川口松太郎、俳優に「京マチ子」とか「田中絹代」といった伝説の女優の名前が散見されます。
映画人として「楠音」は、溝口の理解、信頼もありここでは特異な美意識を思う存分発揮することができたのです。

島原の女
しかし、やはり画家の道を忘れられず62歳の時、溝口が他界すると映画界を去り画家の道の戻ってきます。
69歳の時、京都市美術館で行われた「国画創作協会回顧展」に「楠音」の過去の作品が掲載されたことを切っ掛けに、再び注目されるようになりました。

ただ、晩年には健康の問題もあり発表される作品数は少なくなりましたが、82歳の時に「甲斐庄楠音回顧展」がおこなわれ【虹のかけ橋】を京都国立近代美術館が購入しています。

虹のかけ橋
楠音は生涯独身だったのですが、愛していた丸岡トクなる女性が他のお金持ちの男と結婚してしまい屈折した気持ちが同性愛的傾向に拍車をかけたのか、絵を描くとき花魁の格好をして描いたというような女装癖など、それらが妖艶でグロテスクな「デロリの美」に少なからず昇華されていったのでしょうか。

84歳の時、夕方に友人の家を訪ねるのですが、持病であった喘息の発作を起こし、そこで急逝しています。

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この記事へのコメント
リー●ル・・確かに硬いですよね
そしてやたらと重くて足幅も狭いような・・
なんで人気があるのか私にもわかりません
ちなみに、濃紺のスーツなら、シャンブレー調のグレーのシャツに
芥子系のペーズリーのネクタイとか素敵かも・・♪
せきさまなら、ベージュ系のシャツに、
エンジとか、モスグリーン系のアスコットタイとかもして欲しいです♪
いいですねぇ・・
私も男性になって、素敵な秋のスーツを着てみたい・・・♪
ところで、この絵、ほんとに怖いです〜〜
でも、【虹のかけ橋】の女性は綺麗だし、力量を感じますね!
Posted by マロニエのこみち・・・。 at 2007年10月11日 07:58
sekisindhoさん、お久しぶりです〜♪
すっかり秋になってきましたね!
おイモに栗に・・・・ダイエットできな〜い♪
・・・・・まぁ、秋じゃなくてもできないんですけどね。。

sekisindhoさんは、ビシッとスーツ着こなしてるんだろうなぁ〜〜♪
カッコいい〜〜〜!!
Posted by ゆっきぃ at 2007年10月11日 16:39
こんばんは★
やはり、リー●ルは、硬いですね。
ウチの主人も買ったまま、履かないでしまいこんでいます。
それにしても、せき様のスーツ姿、拝見したいです〜(*^_^*)。

この絵は、ちょっと怖いですね。まさに「きれいはきたない、きたないはきれい」。しかも、映画もなさって、多才な方だったのですねー。「雨月物語」、観てみたくなりました。
Posted by みどり at 2007年10月11日 21:06
こんばんは!

>>「きたない絵で奇麗な絵に勝たねばならん」と
かえってその後の制作の方向性をしっかりと思い定めた

潔い創作態度ですねー。
こういう画風で、そういう趣味で、となると
ちょっと近づきがたいものを感じますが
一つ事に専心できる人は尊敬します。
もちろん、sekisindhoさんのように
器用にいろいろこなす人も素晴らしいですけれどね!
Posted by NIJO at 2007年10月11日 22:51
☆マロニエのこみちさん、こんばんは。
若いときに紺ブレばかり着ていたことがありました。
勿論ネクタイはレジメンタルでしたけど、時々ペーズリー柄をすると、気分も雰囲気も変わってよかったですよ。
アスコットは一度だけ試してみたのですけど、自分でないような気がしてやめました(笑)
最近は濃紺のスーツの時でチョットお洒落な気分の時は黄色系をしています。
マロニエさんにスタイリストになってもらえれば、もう少しうだつが上がるかも知れませんねο(‘ v‘ )ο〜♪
【虹のかけ橋】 お口直しに怖くない作品を最後に掲載してみました(笑)
Posted by sekisindho at 2007年10月11日 23:51
靴選び!私にとっても、かなりストレスになるんです。
外反母趾。。。。それが私の靴選びのストレスですね。。。
おまけにサイズも小さく、この前記事にアップしたスニーカーはジュニア用です^^。
おしゃれで流行の靴や、パンプス、ミュール、ハイヒールなんて。。。見てるだけで痛みが予測できます。
極たまに。。。結婚式などでお洒落をしなければならない時に。。。アジアン風の格好で木製の下駄?見たいな草履で出席しました。。。
年々悪化しているように見える私の足。。。
今日のテーマのようです!?「きたないはきれい。。。」
頑張れ!私の足^^。です。
Posted by オードリー at 2007年10月11日 23:59
☆ゆっきぃさん、こんばんは。
ホントにほんとにお久しぶりですね。
時々のぞきに伺っていたのですけど、いつも静かなもので心配してましたよ(o^щ^o)
ほんとに暑い暑いといいながらも知らぬ間に秋ですね。
食欲のあるときはやはり食べるのが一番ですよ。

Yシャツとスーツはクリーニングされてシャキッとしているのですけど、肝心の私がしょぼくれてますのでビシッと決まらないのですよ((>_<。)。。
Posted by sekisindho at 2007年10月11日 23:59
☆みどりさん、こんにちは。
そうでしょう!リー●ルはファンが多いようですが柔らかい足には絶対無理ですよ。
私も2、3度履いて諦めたことがあり、ほっぽいておいたら引っ越ししたときどこかへ行ってしまったようですよ(笑)
107さんぐらいがたいがあればスーツもきまるのでしょうけど、どうもお見せするのも恥ずかしいですよ゚。・(ノд≦。)・。゚

「雨月物語」はDVDで発売されているようです。
まだモノクロの世界ですね。
Posted by sekisindho at 2007年10月12日 00:10
こんばんは
ドキッです、ドキッ。
わたしは学生の頃いきなり溝口健二と川島雄三にハマリ、彼らそれぞれの周辺に溺れてゆきましたが、溝口のスタッフとしての甲斐庄に特に惹かれました。評伝を読み、京都で実物を多く眺め、映像に眼を向けました。彼は『旗本退屈男』の衣裳も手がけていたそうで、言われれば大納得でした。
『西鶴一代女』などをみると、主役のお春(田中絹代)が次々と変身と言うか、転落したり安定した暮らしをしたり、ついには化け猫とまで呼ばれる最下層の惣嫁(そうか)にまで落ちぶれた様子が、その衣裳で示されているのが凄かったです。
溝口作品の女たちと甲斐荘の描く女たちとが完全に合致している、と思いました。
人前でファンだと言いにくいけれど、わたしにとっては特別好きな画家の一人です。
Posted by 遊行七恵 at 2007年10月12日 00:14
NJOさん、こんばんは。
>一つ事に専心できる人は尊敬します
ほんとにそう思います。
とくに「楠音」の場合は世間の一般常識からすれば逆風であったでしょうに、信念を貫き通したのはやはり凄いことですよね。
私の場合何をやっても中途半端で抜きんでたものがなく、結果としてですけど平均点主義なんですね。
そんな反省から何とかブログを続けているのかも知れません((>_<。)。。
Posted by sekisindho at 2007年10月12日 00:20
☆オードリーさん、こんばんは。
外反母趾・・だったのですか(◎Ω◎)
これは痛いんでしょうね!
外反母趾用の靴を造っているメーカーもあったように思いますけど、やはりいろいろ制限されるのでしょうね。
オードリーさんの弱み見っ付けた!なんてはしゃいでる場合ではありませんね^^
なんて云っていいか分かりませんが、何とか治るよう祈願しております^^
Posted by sekisindho at 2007年10月12日 00:31
☆遊行七恵さん、こんばんは。
かってにリンクさせて申し訳ありません。
以前の記事に「穢い絵でいかんのか」に触れられていましたけど、やはりこの絵は一人でひっそりと観る絵なのでしょうか。
>隠していたいものを曝け出されるような
これは確かに辛いことでもありますよね。
今回はできるだけ「デロリ」度の低い作品を選んで掲載したのですけど「幻覚」と題された作品などはほんとに見ていても辛くなります。
>わたしにとっては特別好きな画家の一人
ますます七恵さんの奥の深さに感心しています^^
Posted by sekisindho at 2007年10月12日 00:44
悪うござんしたねリー●ル固くって!(#`Д´)
ああ思い起こせば若き日、足元のお洒落に初めて買ったのがコインローファー。忘れもしません、ちょいと背が高くなったような、「大人」になったような、そんないい気分を味わわせてくれた靴、ブランドでした。最近は穿いてませんけどね〜(*´∀`)
ウワサによるとsekisindhoさんはスーツがとてもお似合いだとか。ボクが着ると、着慣れていないの丸出しでまるで七五三のようでイヤになりますよ。

「きれいはきたない。きたないはきれい」
なるほど・・・
それにしても、変わったタッチの絵をお描きになる画家さんですね。近頃のデジタル作品だよと言っても通用するような、滑らかなグラデーションとシャドウに瞠目しました。
Posted by 107 at 2007年10月12日 00:45
☆107さん、こんばんは。
あれ、107さんリー●ルの愛好者でしたか^^
コインローファーは若い頃はチョット格好よく、一度は履いてみたくなるデザインでしたよね。
今は流石にコインローファーは見かけませんけど。

普段スーツ着なくていい生活は羨ましいですよ。
>スーツがとてもお似合いだとか
「みんなが言ってるよ」っていう場合、みんなとはだいたい3人だそうですから、ウワサなんてあくまでウワサですよ○o。(^∪^*)
着慣れているといえば確かにうん十年着てますから(笑)

>滑らかなグラデーションとシャドウに瞠目
流石にグラフィックのプロですね。
そんな視点ではまったく気づきませんでしたけど、納得です。
Posted by sekisindho at 2007年10月12日 22:58
おはようございます

キャすてき。
グレインの靴を履く殿方の足元・・大好きです。
Uチップやウイングチップならなおさら。
お手入れが大変ではないですか?
イタリアの靴はやはり足音がいい!縫製も綺麗で丈夫、靴文化の差を思い知らされます。

私は達仕事なのでもっぱらエコノミーコンフォートシューズ、ECC0かUGG、普段はもう20年もスウェーデンの木靴を履いている頑固者です!

今回の絵、その競われたという岡本神草の「拳を打てる三人の舞妓の習作」「口紅」を思い出します。竹屋町生まれで花街の決まりごとを知っていながら手の所作を書いているところも。屈折ではなく純粋過ぎた視線を感じました。
う〜ん、彼もダヴィンチに傾倒していた?か問うてみたい!
Posted by futaba at 2007年10月13日 08:35
☆futabaさん、こんにちは。
Uチップやウイングチップのものももちろん使用してましたけど、一番最近買ったものはブラインド フルブローグでとてもシンプルなものです。
ホントに丈夫ですし雨にも強く型くずれしないですよ。

外反母趾によさそうなコンフォートシューズがありましたらオードリーさんにオススメしてあげてくださいよ。

岡本神草、やはり早世の天才画家ですよね。
「口紅」も楠音に負けず妖艶で「デロリ」度がかなり高い作品ですね。
それにまた劉生と同じにダヴィンチあるいはイタリアルネサンスの影響は多分に受けていたのでしょうか。
Posted by sekisindho at 2007年10月14日 00:03
紺色のスーツを持たないビジネスマンって珍しいですね。 sekishindhoさんのこだわりを感じます。

この女性像は個性的で芸術的に見えて、きたないなんてとても思えませんけれど、その時の価値観や見方で価値が変わってしまうのですから、不思議な世界ですね。私も100年後には絶世の美女だったりして(笑・・・
Posted by noobooboo at 2007年10月14日 05:35
こんばんは!
ご無沙汰続きで、もうしわけありません。
まとめて拝見させていただきました・・・
実は私も先月の歌舞伎に行ってきたんですよ^^
行きたいと思っているだけじゃいつまでたっても。。。と
ようやく決心して行ってまいりました。
やはりいいですね。
私は午前の部に行ったのですが玉三郎さんの手が
チョウチョが飛んでいるみたいにヒラヒラと舞っていて、手ばかりに見とれてしまいました。
私はまだまだその場の雰囲気と目の前の状況をただただ楽しむだけですが
これからも時間を作って観に行こうと思っています。
今回の女性たちの絵、きれいなものに勝てるきたなさとは
やはり違った意味では美しいのですね。
また、よろしくお願い致します。
Posted by piro55 at 2007年10月15日 23:31
☆nooboobooさん、こんにちは。
最近はどちらかと言えばしかたなく紺のスーツも揃えています(笑)
でも着始めると結構いいなと思ってしまうのですから、軟弱なものですよ^^

今回はできるだけきれいにみえる画像をご紹介したのですけど、確かに時代背景や価値観によって評価は変わりますね。
>100年後には絶世の美女
いいえ、今だって!
と云ってもお目にかかったことはまだないですけど○o。(^∪^*)
Posted by sekisindho at 2007年10月15日 23:49
☆piro55さん、こんばんは。
またまたお久しぶりですね^^
歌舞伎は午前の部に行かれたのですか。
玉三郎といえば「村松風二人汐汲」ですか。
まだ観たことないですけど、当代の美人女形、福助と玉三郎の舞台でしたら、その華やかさが想像できますね。
歌舞伎役者の手の使い方、手の演技はとても重要なことで、工夫も凝らされていると聞いたことがあります。
回数を重ねていくとさらにさらに面白くなると思いますよ。
今月もまた夜の部行ってきます。

Posted by sekisindho at 2007年10月15日 23:59


 
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