最初に彼の歌を聴いたのは3〜4年前のお盆に催された小学生5〜6年時のクラス同窓会。社会人となった10人ほどの懐かしい顔に混じって担任の先生も来てくれた。当時、まだ30歳前の熱血青年教師だった先生も50歳を過ぎ、頭髪の薄さが目立つようになっていた。真面目な性格もあって教頭先生にまで出世していた(今では校長先生)。
その先生が2次会のカラオケで歌ったのが「時代おくれ」。どこまで聴いたことがあるなと思いながら、サビガ近づくに従っていい歌だなと思った。人情を大切にする先生らしい選曲である。
「…妻には涙を見せないで…子供に愚痴を聞かせずに…」。古き時代の男の姿に憧れを抱く歌詞。一次会で生徒指導の難しさを教え子である我々に率直に吐露する純粋な先生にぴったりだった。
「…人の心を見つめ続ける 時代遅れの 男になりたい…」。恐らく先生は、この歌を事あるごとに歌いながら自分に言い聞かせていたのではないか。
結局、この時はいったい誰の歌なのかを知ろうとまでは思わなかった。
2度目は2001年4月。家の近くのカウンターだけの小さな居酒屋で1人飲んでいた私は、有線放送から流れてきた曲に聞き入っていた。まさに1人で飲む居酒屋にぴったりの曲だと思った。何となくその曲が心に残った私は、店のあるじに聞いてみた「この曲って、何という曲なんですか」。小さな声で口ずさんでいた40過ぎの主は「河島英五の酒と泪と男と女ですよ。今日亡くなったからか、今日は河島英五の曲がたくさんリクエストされとりますな」。
私はその時、初めて河島英五という名前を意識して聞いた(無意識に聞いたことはあったかもしれないが)。そしてその日、亡くなったことも。
それから数日、私は河島英五のアルバムを購入した。正直、特別歌がうまいとは思わなかったが、何度も聞いていると味がじわりと出てくる曲ばかりである。「時代おくれ」「酒と泪と男と女」以外にも、「生きてりゃいいさ」「野風増」などいい歌だなと思う。しんみりした雰囲気が彼の持つ味だ。歌を聴いて元気づけられる性質のものではないが、苦しい時、辛いことがあった時に聴いていると、自分の心情を理解してくれている人がいるように思えて救われてくる。
ちなみに私も「時代おくれ」の男になりたいと思っている1人である。