2005年10月07日

暗示の外へ出ろ 〜 解体屋外伝 : いとうせいこう

「解体屋外伝」 いとうせいこう
 
「暗示の外に出ろ。俺達には未来がある」

「危機の陥った時には、まず共通の場面意味(シナリオ)を外せ。物語にはまったら破滅する。」

「たった一つの真実という漢字に、馬鹿らしいほどたくさんのルビを振り続けよ!」

〜本文より

 時々、ふと思い出して読みたくなる小説。

 『解体屋(デプログラマー)』とは前作「ワールズ・エンド・ガーデン」で登場した、洗脳外しを生業とする者のことで、対する洗脳集団=『洗濯屋(ウォッシャー)』も存在する。いずれも自らの言葉で編み上げた世界を他人の脳に埋め込むのが仕事。

 かつて、敵対する『洗濯屋』との戦いに敗れ、言葉を奪われた解体屋・高沢秀人。その『解体屋』の『洗濯屋』へのおとしまえともいえる戦いとしてストーリーが展開する本作。登場人物の役割や配置には「ワールズ・エンド・ガーデン」と共通するものが見える・・・

 A 「私」というものを持たないが故に、他と共鳴しやすく、他を巻き込んでしまう存在(「ワールズ〜」での預言者、本作でのノビル

 B Aに依存し、または利用しようと集まってくる者達(サキミを中心としたグループ、ノビルの子供を名乗る集団)

 C 「私」を獲得、または回復するためAに対立する者(恭一、解体屋)

 D 街に侵入、占拠し、権力争いによって事態を混乱させる少年グループ

(・・・と、こう書いていて大塚英志をつい連想してしまう(苦笑))

****

 前作「ワールズ・エンド・ガーデン」と共通する登場人物の役割・配置が見られる本作だが、スピーディーな展開、『解体屋』と『洗濯屋』の対決というわかりやすい構図、映画のグラフィックのような刺激的な視覚描写でより娯楽性の強い小説となっている。息つく間もなく入り乱れる敵・味方。混乱を切り裂く「解体屋」の活躍に目を奪われるが、転がり続けるストーリーの中では「何によって自分は自分であり得るのか」という問いがずっと発せられている。

 自分の言葉がすべて他人のテキストの羅列にすぎないとしたら・・・
 自分の行動がすべて暗示に縛られているものだとしたら・・・

 面白い! が! 読むのも3回目となる今回は、ちょっとした違和感が頭をもたげた。

 『解体屋』対『洗濯屋』、暗示 対 暗示、物語 対 物語・・・対立の構造でストーリーはゴロゴロと転がっていく。でも、「現実は○○対××みたいに単純なもんじゃないんじゃない・・・?」という思いが頭をよぎる。

 「やっぱり小説の中だけの話か・・・」と思いきや! その対立の構造もラストできっちり「解体」される。見事なオチ。

 次に読むのは何年後だろうか?<


人気blogランキングへ
 

この記事へのトラックバックURL

http://blogs.dion.ne.jp/sweet_pea/tb.cgi/2030515
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※半角英数字のみのトラックバックは受信されません。
この記事へのトラックバック
何とはなしに、久しぶりにいとうせいこうの『解体屋外伝』が読みたいな〜、と思って本棚を探したけど、どうやら実家に置いてきてしまったようでありませんでした。引用されてた『死者の書』(折口信夫)はあったのに..
暗示の外に出ろ−解体屋に敬意を表して【a blank of the days】 at 2011年05月23日 00:27
この記事へのコメント
初めまして。
『解体屋外伝』について感想を書きました。よろしかったらまたご笑覧ください。
Posted by あつこ at 2011年05月23日 00:26
あつこさん、はじめまして。
ブログ拝見しました。
いとうせいこう氏は言葉をとても意識的に使っておられて、そういう言葉に触れる時は、とても高揚すると同時にものすごく緊張します。
でも、いとう氏のあのリズムの良い言葉はやみつきになるのです。
Posted by sweetpea at 2011年05月23日 23:09


 
※半角英数字のみのコメントは投稿できません。