2011年11月24日
錦秋博多座大歌舞伎 夜の部
【芦屋道満大内鑑】葛の葉
芝雀さん・・・とても情熱的な葛の葉。芝雀さんのしっとりとした外見に、つい騙されてしまうのです。演じる女性も楚々としたおとなしやかな風情を漂わせるんじゃないかと、つい思わされてしまうんだけど、舞台を拝見すると、その纏う空気の濃厚なことに驚かされるのです。(以前見た雲の絶間姫の時にも、その色っぽさに驚いたんだった。)
「恋しくば」の曲書き・・・葛の葉が硯を手に障子の前に立った時には、“ああ、これから、あの有名な見せ場になるのね”と、ちょっと引いて観る余裕?があったのだけど、纏わりついてくる童子をあやし、筆を右手から左に持ちかえながら歌を書きつけていく葛の葉が、筆を口に咥えてきまった時・・・目頭に何かこう・・・“グヮッ”ときた。感動・・・と、はっきり言えるものとは・・・何か違うような気がするんだけど。なんだろうねぇ・・・あれは。
【勧進帳】
「勧進帳」、初めて観ます。舞台にいるすべての人の立ち居振舞いの美しいことに、この演目の緊張感を見た気がします。
恥ずかしながら、「勧進帳」といえば、弁慶と富樫の丁々発止の問答と、主君・義経を打擲する弁慶・・・っていうくらいしか知らなかったのだけど、いやぁ・・・その後の方が凄かったのね。
夢中になって舞台に引き込まれたのは、関を通過した一行を追って富樫があらわれ、その勧める酒を弁慶が飲むあたりから。
大酒を呑み舞う弁慶の姿に、かつて戦場で勇猛に戦った義経たちの姿や、この先の悲劇的な末路がオーバーラップして見える。諸行無常、盛者必衰という声が聞こえるような気がしました。
【楊貴妃】
これ・・・男女の愛憎劇の域を超えてると思います。
高力士のサイコな気味悪さを、海老蔵さんの完璧な美貌が引き立てます。うぅぅ・・・ゾクゾクゾク・・・。高く優しげな宦官の声が時に物凄くて・・・。
勝手に膨らませた恋心が敗れた虚しさを、国を滅ぼすレベルの我儘で埋める美しき楊貴妃も魔的だけど(楊貴妃の純粋さ、驕慢、浅はかさを演じる福助さん見事)、その楊貴妃を生み出した高力士の虚無と激情・・・怪物的です。海老蔵さんには、どこか健やかで明るいだけではない怪物的なパワーがあるような気がするので、こういう美しき怪物を演じられると魅力的です。
右近さんの李白が素敵だったので、もっと狂言回し的にドラマにからんでくれると面白いのにぃ〜とか思いました。
人気blogランキングへ
芝雀さん・・・とても情熱的な葛の葉。芝雀さんのしっとりとした外見に、つい騙されてしまうのです。演じる女性も楚々としたおとなしやかな風情を漂わせるんじゃないかと、つい思わされてしまうんだけど、舞台を拝見すると、その纏う空気の濃厚なことに驚かされるのです。(以前見た雲の絶間姫の時にも、その色っぽさに驚いたんだった。)
「恋しくば」の曲書き・・・葛の葉が硯を手に障子の前に立った時には、“ああ、これから、あの有名な見せ場になるのね”と、ちょっと引いて観る余裕?があったのだけど、纏わりついてくる童子をあやし、筆を右手から左に持ちかえながら歌を書きつけていく葛の葉が、筆を口に咥えてきまった時・・・目頭に何かこう・・・“グヮッ”ときた。感動・・・と、はっきり言えるものとは・・・何か違うような気がするんだけど。なんだろうねぇ・・・あれは。
【勧進帳】
「勧進帳」、初めて観ます。舞台にいるすべての人の立ち居振舞いの美しいことに、この演目の緊張感を見た気がします。
恥ずかしながら、「勧進帳」といえば、弁慶と富樫の丁々発止の問答と、主君・義経を打擲する弁慶・・・っていうくらいしか知らなかったのだけど、いやぁ・・・その後の方が凄かったのね。
夢中になって舞台に引き込まれたのは、関を通過した一行を追って富樫があらわれ、その勧める酒を弁慶が飲むあたりから。
大酒を呑み舞う弁慶の姿に、かつて戦場で勇猛に戦った義経たちの姿や、この先の悲劇的な末路がオーバーラップして見える。諸行無常、盛者必衰という声が聞こえるような気がしました。
【楊貴妃】
これ・・・男女の愛憎劇の域を超えてると思います。
高力士のサイコな気味悪さを、海老蔵さんの完璧な美貌が引き立てます。うぅぅ・・・ゾクゾクゾク・・・。高く優しげな宦官の声が時に物凄くて・・・。
勝手に膨らませた恋心が敗れた虚しさを、国を滅ぼすレベルの我儘で埋める美しき楊貴妃も魔的だけど(楊貴妃の純粋さ、驕慢、浅はかさを演じる福助さん見事)、その楊貴妃を生み出した高力士の虚無と激情・・・怪物的です。海老蔵さんには、どこか健やかで明るいだけではない怪物的なパワーがあるような気がするので、こういう美しき怪物を演じられると魅力的です。
右近さんの李白が素敵だったので、もっと狂言回し的にドラマにからんでくれると面白いのにぃ〜とか思いました。
人気blogランキングへ
2011年11月18日
錦秋博多座大歌舞伎 昼の部
【外郎売】
こういう綺麗で華やかなの好き! 後見さんたちの息が良くて、舞台がとてもすっきりして見えました。
幕が開くと、大磯の虎・芝雀さん、化粧坂少将・笑三郎さん、遊君喜瀬川・春猿さんが、まさに妍を競うといった様子で床几に居並び艶やか。その中でも一際目を引く朝比奈妹舞鶴・門之助さんの古風で異風な佇まい〜浮世絵から抜け出したような、ザ・歌舞伎な美しさには胸がドキッと。
海老蔵さんの外郎売実は曽我五郎は、早口言葉を含めて何かどっか置きにいってる感じ? 五郎のきかん気で向こう見ずな若者っぽさがあんまり見えない。以前TVでみた團十郎さんの助六の方がずっとやんちゃな少年に見えたなぁ。
外郎売から曽我五郎へのお着替え中、胸を反らし裲襠を広げて立つ化粧坂少将・笑三郎さんが美しくって、カッコよくって! 「ネェさぁぁぁ〜んっ!」ってその胸に飛び込みたいって気持ちになる。こんな素敵な彼女がいる五郎がうらやましい。
【連獅子】
ん〜もぅ! ビバ・澤瀉!
前シテの狂言師右近・左近・・・「連獅子」って宗教的で厳かなもんだと思ってたけど、澤瀉屋の「連獅子」は粋で、明るく、心が浮き立つような華やかさがある。蝶と戯れるあたりなんて匂うような艶っぽささえ感じてしまう。
間狂言・・・浄土の僧・猿三郎さん、法華の僧・弘太郎さんは滑稽な中にも品よく。
そして、後ジテの獅子の精・・・精霊の神々しさも宿しつつ、迸る生命力、その荒々しさはまさに獣! 二頭の獅子が激しく舞い、気を放つ。人の世界からは遥か遠い、獣の世界に棲む気高い獅子の姿。迫力あったぁ〜。
【与話情浮名横櫛】木更津海岸見染めの場・源氏店の場
花道を歩いてくる与三郎・海老蔵さんにめちゃめちゃ顔がほころんだ。何?!このなよなよ、ぽぉ〜っとしたお坊ちゃま! 縁台に腰掛ける姿も、う・・・内股っ! ふわふわして実にいいんだけど、海老蔵さん、しゃべりだすとちょっとやりすぎな感じがして・・・だまってぽわ〜んとしてる時の様子の方が良いです。
でも、見染めの衝撃は・・・ちょっと薄かったなぁ。海老蔵さんの与三郎、福助さんのお富っていう組み合わせの相性もどうなんだろう? 他を見たことないからわかんない。この場の最後、お富に見蕩れる与三郎をニヤニヤ眺める金五郎・右近さんは絵になってて素敵。
「源氏店」は・・・あの名セリフがあるわけだけども・・・何か聞いてるのがしんどかった。やっぱり・・・与三郎とお富の間に何があったか、知識としてはちょこっと知ってても、実際には場面をぶつ切りに見ているわけで・・・感情移入ができていないところにあのセリフを聞くのはつらい。市蔵さんの蝙蝠安はあの臭ってきそうな汚いなりでも、何かずって見ていたい憎めなさ、面白さがあって良かったです。
人気blogランキングへ
こういう綺麗で華やかなの好き! 後見さんたちの息が良くて、舞台がとてもすっきりして見えました。
幕が開くと、大磯の虎・芝雀さん、化粧坂少将・笑三郎さん、遊君喜瀬川・春猿さんが、まさに妍を競うといった様子で床几に居並び艶やか。その中でも一際目を引く朝比奈妹舞鶴・門之助さんの古風で異風な佇まい〜浮世絵から抜け出したような、ザ・歌舞伎な美しさには胸がドキッと。
海老蔵さんの外郎売実は曽我五郎は、早口言葉を含めて何かどっか置きにいってる感じ? 五郎のきかん気で向こう見ずな若者っぽさがあんまり見えない。以前TVでみた團十郎さんの助六の方がずっとやんちゃな少年に見えたなぁ。
外郎売から曽我五郎へのお着替え中、胸を反らし裲襠を広げて立つ化粧坂少将・笑三郎さんが美しくって、カッコよくって! 「ネェさぁぁぁ〜んっ!」ってその胸に飛び込みたいって気持ちになる。こんな素敵な彼女がいる五郎がうらやましい。
【連獅子】
ん〜もぅ! ビバ・澤瀉!
前シテの狂言師右近・左近・・・「連獅子」って宗教的で厳かなもんだと思ってたけど、澤瀉屋の「連獅子」は粋で、明るく、心が浮き立つような華やかさがある。蝶と戯れるあたりなんて匂うような艶っぽささえ感じてしまう。
間狂言・・・浄土の僧・猿三郎さん、法華の僧・弘太郎さんは滑稽な中にも品よく。
そして、後ジテの獅子の精・・・精霊の神々しさも宿しつつ、迸る生命力、その荒々しさはまさに獣! 二頭の獅子が激しく舞い、気を放つ。人の世界からは遥か遠い、獣の世界に棲む気高い獅子の姿。迫力あったぁ〜。
【与話情浮名横櫛】木更津海岸見染めの場・源氏店の場
花道を歩いてくる与三郎・海老蔵さんにめちゃめちゃ顔がほころんだ。何?!このなよなよ、ぽぉ〜っとしたお坊ちゃま! 縁台に腰掛ける姿も、う・・・内股っ! ふわふわして実にいいんだけど、海老蔵さん、しゃべりだすとちょっとやりすぎな感じがして・・・だまってぽわ〜んとしてる時の様子の方が良いです。
でも、見染めの衝撃は・・・ちょっと薄かったなぁ。海老蔵さんの与三郎、福助さんのお富っていう組み合わせの相性もどうなんだろう? 他を見たことないからわかんない。この場の最後、お富に見蕩れる与三郎をニヤニヤ眺める金五郎・右近さんは絵になってて素敵。
「源氏店」は・・・あの名セリフがあるわけだけども・・・何か聞いてるのがしんどかった。やっぱり・・・与三郎とお富の間に何があったか、知識としてはちょこっと知ってても、実際には場面をぶつ切りに見ているわけで・・・感情移入ができていないところにあのセリフを聞くのはつらい。市蔵さんの蝙蝠安はあの臭ってきそうな汚いなりでも、何かずって見ていたい憎めなさ、面白さがあって良かったです。
人気blogランキングへ
2011年08月08日
市川亀治郎+三響会+坂口貴信「伝統芸能の今 2011」福岡特別公演 於:大濠公園能楽堂
【演 目】
舞囃子「融」酌之舞
坂口貴信
笛 杉信太朗
小鼓 飯田清一
大鼓 亀井広忠
太鼓 田中達
一調「勧進帳」
謡 坂口貴信
太鼓 亀井広忠
能と歌舞伎による「羽衣」
天女 市川亀治郎
地謡 坂口貴信
鷹尾維教
鷹尾章弘
久保誠一郎
笛 杉信太朗
小鼓 田中傳左衛門
大鼓 亀井広忠
太鼓 田中傳次郎
この日は直前まで仕事で、会場に着いた時にはまだ職場のピリピリした気分を引きずっていたのだけど、募金への協力を呼びかけるため受付に立っていらっしゃる亀治郎さんと傳左衛門さんの姿に、たちまちすぅっと気持ちが静まり、良いコンディションで舞台を拝見することができました。
席が最前列だったためか、目線の先にはちょうど舞台で舞う白い足袋をつけた足があったのですよね。その足の動きから目が離せない。せっかく男前が目の前にいるというのに、首から上より膝から下を見てた時間の方が長かったんじゃないかなぁ。踵から足の腹、つま先まで・・・“足ってそんなにあちこち動かせる筋肉あったの〜?”って驚かされるほど自在に、繊細に、みっしりと気が満ちて・・・。
正直に言って、私には能は難解すぎるのです。謡はほどんど聞きとれないし、背景に分厚く重なっている物語に関する知識もない。どんな想いを舞っているのか、なかなか汲みとれない。鼓の一打ち、気迫とともに放たれる一声にも何かしら意味や役割はあるのだろうと思うのだけれど、それが何なのかはわからない。
でも、あの足の動きのようにぴんと張りつめたものから生まれ、舞台にたちあがってくる美しいものに触れると、なんとも言えぬ憧れが胸を苦しくさせるのです。わたしも、もう少し・・・心身共に美しくなりたい、ならなくちゃいけないと・・・この時だけはちょっと背筋がのびるのですよね。だらしない毎日を送ってるくせにね(苦笑)。
人気blogランキングへ
舞囃子「融」酌之舞
坂口貴信
笛 杉信太朗
小鼓 飯田清一
大鼓 亀井広忠
太鼓 田中達
一調「勧進帳」
謡 坂口貴信
太鼓 亀井広忠
能と歌舞伎による「羽衣」
天女 市川亀治郎
地謡 坂口貴信
鷹尾維教
鷹尾章弘
久保誠一郎
笛 杉信太朗
小鼓 田中傳左衛門
大鼓 亀井広忠
太鼓 田中傳次郎
この日は直前まで仕事で、会場に着いた時にはまだ職場のピリピリした気分を引きずっていたのだけど、募金への協力を呼びかけるため受付に立っていらっしゃる亀治郎さんと傳左衛門さんの姿に、たちまちすぅっと気持ちが静まり、良いコンディションで舞台を拝見することができました。
席が最前列だったためか、目線の先にはちょうど舞台で舞う白い足袋をつけた足があったのですよね。その足の動きから目が離せない。せっかく男前が目の前にいるというのに、首から上より膝から下を見てた時間の方が長かったんじゃないかなぁ。踵から足の腹、つま先まで・・・“足ってそんなにあちこち動かせる筋肉あったの〜?”って驚かされるほど自在に、繊細に、みっしりと気が満ちて・・・。
正直に言って、私には能は難解すぎるのです。謡はほどんど聞きとれないし、背景に分厚く重なっている物語に関する知識もない。どんな想いを舞っているのか、なかなか汲みとれない。鼓の一打ち、気迫とともに放たれる一声にも何かしら意味や役割はあるのだろうと思うのだけれど、それが何なのかはわからない。
でも、あの足の動きのようにぴんと張りつめたものから生まれ、舞台にたちあがってくる美しいものに触れると、なんとも言えぬ憧れが胸を苦しくさせるのです。わたしも、もう少し・・・心身共に美しくなりたい、ならなくちゃいけないと・・・この時だけはちょっと背筋がのびるのですよね。だらしない毎日を送ってるくせにね(苦笑)。
人気blogランキングへ
2011年06月20日
六月博多座大歌舞伎 夜の部
【仮名手本忠臣蔵】七段目 祇園一力茶屋の場
おかるちゃんって、普っ通〜の女の子だよなぁ。多少抜けてて色ボケのケはあるけども、仇討ちの為なら女房を売ることも、罪もない人を手にかけることも、仲間を死に追いやることも、自分ルールで正当化してやってのけちゃう狂気スレスレの男たちの中にあっては、すごく普通、というかまとも。惚れた男との幸せだけを、一生懸命考えてる。
この、おかるの普通さに比べたら、由良之助なんて・・・あの遊興ぶりも、その後のおかるとのやりとりも・・・もうあれは深謀遠慮なんてものじゃなくて、ほぼ狂気です。完全にイッちゃってるあぶないおじさん。
でも、狂気めいた仇討ちオヤジのあの異様さが・・・ゾクゾクっと・・・格好良くもあるんだよなぁ。
【英執着獅子】
う、美しいぃ〜 私の父より、お歳はかなり上のはずだが・・・赤い振袖がこんなに似合っていいのだろうか。
藤十郎さんの踊りは、柔らかでありながら力強いのですよねぇ。獅子の精になってからの毛振りは勇壮という風ではなかったけれども、その佇まいは威厳を放っていました。
金銀を使った舞台の背景、鳴物の方々が身につける紫地に白い柄の裃、灰青のような力者の衣装。どれも品のある匂やかな色合いで、舞台に高貴な雰囲気が漂っていました。
【魚屋惣宗五郎】
普段は分別あるいい男・宗五郎の酒乱芸。菊五郎さん男前です。
でも・・・このお芝居見ると、なんかモヤっとした気分になるのよねぇ。罪の無い妹を無惨に殺されて、無念なのも、悔しいのも、やりきれないのも当然。お上に向かって言いたいことがいっぱいある・・・でも言えない。それもわかる。
でも、でも・・・妹が殿様に見初められたのを幸いに、妹を妾奉公にやったその支度金で、借金を清算し、商売道具を揃え、多少のいい思いもしながら、ありがたい、ありがたいと暮らしている。それが、分別ある良い男の暮らしぶりなのか。
殿が非を認めたからと言って、差し出された金をありがたく貰って帰る。そういうもんなのか。酒の勢いでひとしきり言いたいことを言ったあとは、お上の下されたお金で、また日々の生活を送っていくのか。これが、庶民というものなのか・・・と。それが何だか遣る瀬無い。
人気blogランキングへ
おかるちゃんって、普っ通〜の女の子だよなぁ。多少抜けてて色ボケのケはあるけども、仇討ちの為なら女房を売ることも、罪もない人を手にかけることも、仲間を死に追いやることも、自分ルールで正当化してやってのけちゃう狂気スレスレの男たちの中にあっては、すごく普通、というかまとも。惚れた男との幸せだけを、一生懸命考えてる。
この、おかるの普通さに比べたら、由良之助なんて・・・あの遊興ぶりも、その後のおかるとのやりとりも・・・もうあれは深謀遠慮なんてものじゃなくて、ほぼ狂気です。完全にイッちゃってるあぶないおじさん。
でも、狂気めいた仇討ちオヤジのあの異様さが・・・ゾクゾクっと・・・格好良くもあるんだよなぁ。
【英執着獅子】
う、美しいぃ〜 私の父より、お歳はかなり上のはずだが・・・赤い振袖がこんなに似合っていいのだろうか。
藤十郎さんの踊りは、柔らかでありながら力強いのですよねぇ。獅子の精になってからの毛振りは勇壮という風ではなかったけれども、その佇まいは威厳を放っていました。
金銀を使った舞台の背景、鳴物の方々が身につける紫地に白い柄の裃、灰青のような力者の衣装。どれも品のある匂やかな色合いで、舞台に高貴な雰囲気が漂っていました。
【魚屋惣宗五郎】
普段は分別あるいい男・宗五郎の酒乱芸。菊五郎さん男前です。
でも・・・このお芝居見ると、なんかモヤっとした気分になるのよねぇ。罪の無い妹を無惨に殺されて、無念なのも、悔しいのも、やりきれないのも当然。お上に向かって言いたいことがいっぱいある・・・でも言えない。それもわかる。
でも、でも・・・妹が殿様に見初められたのを幸いに、妹を妾奉公にやったその支度金で、借金を清算し、商売道具を揃え、多少のいい思いもしながら、ありがたい、ありがたいと暮らしている。それが、分別ある良い男の暮らしぶりなのか。
殿が非を認めたからと言って、差し出された金をありがたく貰って帰る。そういうもんなのか。酒の勢いでひとしきり言いたいことを言ったあとは、お上の下されたお金で、また日々の生活を送っていくのか。これが、庶民というものなのか・・・と。それが何だか遣る瀬無い。
人気blogランキングへ
2011年06月09日
六月博多座大歌舞伎 昼の部
【矢の根】
曽我五郎は可愛い男だなぁ。明るくて、単純で、我がままで、暴力的で。パワー全開の無茶苦茶な男なのに、トレードマークは死を象徴する蝶々の柄だなんて。こういうのを放っておけない姐さん方はたくさんいるんだろうなぁ。
兄救出に向かおうとする五郎に、後見があの派手で勇壮な襷を締めるところも1つのショーになっていて面白い。
【加賀鳶】本郷木戸前勢揃いより赤門捕物まで
初めて観ました。
あの勢揃いは何だったの? 梅吉さんはその後何処へ?
「加賀鳶」っていうくらいだから、威勢のいい火消しの兄さん方がもっと大活躍するんだろうと思ってたの。この演目のこと全然知らなかったから。う〜ん、でも勢揃いの後はずっと、悪どい按摩・道玄の話なのね。
歌舞伎ってみんな大なり小なりそうなんでしょうが、これは役者の味・芸をひたすら楽しむ演目なんでしょうねぇ。
私、薄暗い長屋で長いこと会話が続く世話物ってのがちょっと苦手で、途中何度か気が遠くなりましたが、道玄を何か憎めない人に見せる幸四郎さんがこんなに面白い方だとは知りませんでした。
【身替座禅】
山蔭右京と玉の井さん、何かちょっと庶民的に見えた。
『亀治郎の会』で観たときは、花子に逢って鼻の下をのばす右京さんにも、ブスでヤキモチ妬きの玉の井さんにも、いくら滑稽にみっともなく振舞っても芯にある品の良さ、可愛らしさを感じたんだけど、今回の菊五郎さん、左團次さん演じる夫婦は、演じる役者の落ち着きもあってか、凸凹しながらも、長年連れ添ってきた安定感のようなものが・・・。“なんだよ、何だかんだいって仲いいんじゃん。”的、ホントどこにでもいる普通の夫婦っぽさが庶民的に見えたのかなぁ。
個人的には綺麗で品のある右京さんの方が好き。
人気blogランキングへ
曽我五郎は可愛い男だなぁ。明るくて、単純で、我がままで、暴力的で。パワー全開の無茶苦茶な男なのに、トレードマークは死を象徴する蝶々の柄だなんて。こういうのを放っておけない姐さん方はたくさんいるんだろうなぁ。
兄救出に向かおうとする五郎に、後見があの派手で勇壮な襷を締めるところも1つのショーになっていて面白い。
【加賀鳶】本郷木戸前勢揃いより赤門捕物まで
初めて観ました。
あの勢揃いは何だったの? 梅吉さんはその後何処へ?
「加賀鳶」っていうくらいだから、威勢のいい火消しの兄さん方がもっと大活躍するんだろうと思ってたの。この演目のこと全然知らなかったから。う〜ん、でも勢揃いの後はずっと、悪どい按摩・道玄の話なのね。
歌舞伎ってみんな大なり小なりそうなんでしょうが、これは役者の味・芸をひたすら楽しむ演目なんでしょうねぇ。
私、薄暗い長屋で長いこと会話が続く世話物ってのがちょっと苦手で、途中何度か気が遠くなりましたが、道玄を何か憎めない人に見せる幸四郎さんがこんなに面白い方だとは知りませんでした。
【身替座禅】
山蔭右京と玉の井さん、何かちょっと庶民的に見えた。
『亀治郎の会』で観たときは、花子に逢って鼻の下をのばす右京さんにも、ブスでヤキモチ妬きの玉の井さんにも、いくら滑稽にみっともなく振舞っても芯にある品の良さ、可愛らしさを感じたんだけど、今回の菊五郎さん、左團次さん演じる夫婦は、演じる役者の落ち着きもあってか、凸凹しながらも、長年連れ添ってきた安定感のようなものが・・・。“なんだよ、何だかんだいって仲いいんじゃん。”的、ホントどこにでもいる普通の夫婦っぽさが庶民的に見えたのかなぁ。
個人的には綺麗で品のある右京さんの方が好き。
人気blogランキングへ
2011年03月25日
桜壽博多座大歌舞伎
【磯異人館】
以前、歌舞伎座の納涼で観た演目。岡野精之助は勘太郎さんにはハマる役だと思うのだけど、納涼で観たときほどの感動がない。ベタベタな悲恋のドラマが苦手なのもあって、ちょっと腰が引け気味で観ていたからか。この芝居は猿弥さん演じる五代才助(これもまたハマり役)がいいのよねぇ。悲しい物語の中で、友情に篤く誠実で前向きな頼りになる彼の存在だけが救い。
【義経千本桜】吉野山
美女と美男というのは二人並んでいるだけで、色っぽく艶かしい空気を醸すものなのだなぁ。静御前・扇雀さんの気品ある美しさ、舞台の上に満開のむせるような桜の香気に溶けて会場を包みます。
忠信・橋之助さんの美男ぶりは言うまでもないのだけど、ちょっと優男すぎ? 個人的好みですが・・・ちょっと野性味のある忠信が、私は好きです。
【平家女護島】俊寛
やっぱり、この話・・・私にはどうも上手く納得できない。ベースには権力者である平家の横暴ということがあるんだろうけど・・・。
辛酸をなめた流人の割りに、昔のお貴族様気分が抜けないのか、我まま放題の俊寛たちにも唖然とするのだが、それ以上に釈然としないのが、俊寛たちに赦免の旨を伝えに来る瀬尾太郎兼康と丹左衛門尉基康の扱い。
瀬尾は確かに意地悪だけど、役人として間違ったことを言ったりしたりはしていないのだ。むしろ、実は俊寛が許されていることをわざと隠して後から告げたり、同僚である瀬尾が俊寛の半ば私怨の為に斬られるのを、黙認するばかりか暗に望んででもいるかのような基康の方が、よほど人が悪いというか腹黒いというか・・・。(まぁ、演じる勘太郎さんの凛々しさには見蕩れたけど)
幕切れは色んなパターンがあるのでしょうね。以前「亀治郎の会」で観た「俊寛」とはかなり印象が違いました。亀治郎さんに感じたのは未来への執念だったのです。亀治郎さんの俊寛が瀬尾を斬ったのも、若い者たちへ希望を託すため。「未来で」という台詞が強く響きあっていました。
橋之助さんが見せたのは、残される者の恐怖と絶望・・・でしょうか。
【棒しばり】
緩急自在のお囃子にのって、太郎冠者・猿弥さんと、次郎冠者・七之助さんが陽気に、面白く踊ります。やんや、やんや。
前にも書いたけど、二人の穿いた袴の柄が可愛くてねぇ。こういうきれいな色合いや、可愛いデザインを身の回りに置いて暮らすセンスが私にも欲しい。
【夏祭浪花鑑】
勘太郎さん熱演!!! いや、私ねぇ・・・実際に舞台を見る前、筋書の舞台写真を見ただけで胸が熱くなりました。勘太郎さん、どの写真も凄い表情、凄い動きをしているんですもの。
三婦・彌十郎さんの格好よさ、凄みのある男の色気、お辰・七之助さんの美しくも気性の強い、火花の飛ぶような女ぶり・・・どれも素晴らしい。橋之助さんの一寸徳兵衛や扇雀さんのお梶がしっかり脇を固め、勘太郎さんは見事に団七九郎兵衛をつとめていらっしゃいました。これまで着実に色々な役を経験し積み重ねてきたものが花開きつつある感じ。〜ああ、もうすぐ勘九郎になる人なんだなぁ。
誤って舅・義平次を斬ってしまったことにまだ気付いていない団七の「早く家に帰って、お梶に何ぞ美味いものでも作らせて酒を飲もう。」という台詞・・・本当ならそうなるはずだったのに・・・と思うと、祭りの喧騒に紛れて茫然とする団七の姿が痛々しく、涙がこみ上げます。
幕切れ〜団七と徳兵衛のスローモーションの動き、凄い! スローモーションなのに本当に飛ぶように駆けているんだよなぁ。捕手がうようよいる中を、ノーフューチャーな二人が、駆けて、いくんだよなぁ・・・。
カーテンコール 〜 笹野高史さんの見事なムーンウォークに笑った。松也さんよりも上手いんだもの。
人気blogランキングへ
以前、歌舞伎座の納涼で観た演目。岡野精之助は勘太郎さんにはハマる役だと思うのだけど、納涼で観たときほどの感動がない。ベタベタな悲恋のドラマが苦手なのもあって、ちょっと腰が引け気味で観ていたからか。この芝居は猿弥さん演じる五代才助(これもまたハマり役)がいいのよねぇ。悲しい物語の中で、友情に篤く誠実で前向きな頼りになる彼の存在だけが救い。
【義経千本桜】吉野山
美女と美男というのは二人並んでいるだけで、色っぽく艶かしい空気を醸すものなのだなぁ。静御前・扇雀さんの気品ある美しさ、舞台の上に満開のむせるような桜の香気に溶けて会場を包みます。
忠信・橋之助さんの美男ぶりは言うまでもないのだけど、ちょっと優男すぎ? 個人的好みですが・・・ちょっと野性味のある忠信が、私は好きです。
【平家女護島】俊寛
やっぱり、この話・・・私にはどうも上手く納得できない。ベースには権力者である平家の横暴ということがあるんだろうけど・・・。
辛酸をなめた流人の割りに、昔のお貴族様気分が抜けないのか、我まま放題の俊寛たちにも唖然とするのだが、それ以上に釈然としないのが、俊寛たちに赦免の旨を伝えに来る瀬尾太郎兼康と丹左衛門尉基康の扱い。
瀬尾は確かに意地悪だけど、役人として間違ったことを言ったりしたりはしていないのだ。むしろ、実は俊寛が許されていることをわざと隠して後から告げたり、同僚である瀬尾が俊寛の半ば私怨の為に斬られるのを、黙認するばかりか暗に望んででもいるかのような基康の方が、よほど人が悪いというか腹黒いというか・・・。(まぁ、演じる勘太郎さんの凛々しさには見蕩れたけど)
幕切れは色んなパターンがあるのでしょうね。以前「亀治郎の会」で観た「俊寛」とはかなり印象が違いました。亀治郎さんに感じたのは未来への執念だったのです。亀治郎さんの俊寛が瀬尾を斬ったのも、若い者たちへ希望を託すため。「未来で」という台詞が強く響きあっていました。
橋之助さんが見せたのは、残される者の恐怖と絶望・・・でしょうか。
【棒しばり】
緩急自在のお囃子にのって、太郎冠者・猿弥さんと、次郎冠者・七之助さんが陽気に、面白く踊ります。やんや、やんや。
前にも書いたけど、二人の穿いた袴の柄が可愛くてねぇ。こういうきれいな色合いや、可愛いデザインを身の回りに置いて暮らすセンスが私にも欲しい。
【夏祭浪花鑑】
勘太郎さん熱演!!! いや、私ねぇ・・・実際に舞台を見る前、筋書の舞台写真を見ただけで胸が熱くなりました。勘太郎さん、どの写真も凄い表情、凄い動きをしているんですもの。
三婦・彌十郎さんの格好よさ、凄みのある男の色気、お辰・七之助さんの美しくも気性の強い、火花の飛ぶような女ぶり・・・どれも素晴らしい。橋之助さんの一寸徳兵衛や扇雀さんのお梶がしっかり脇を固め、勘太郎さんは見事に団七九郎兵衛をつとめていらっしゃいました。これまで着実に色々な役を経験し積み重ねてきたものが花開きつつある感じ。〜ああ、もうすぐ勘九郎になる人なんだなぁ。
誤って舅・義平次を斬ってしまったことにまだ気付いていない団七の「早く家に帰って、お梶に何ぞ美味いものでも作らせて酒を飲もう。」という台詞・・・本当ならそうなるはずだったのに・・・と思うと、祭りの喧騒に紛れて茫然とする団七の姿が痛々しく、涙がこみ上げます。
幕切れ〜団七と徳兵衛のスローモーションの動き、凄い! スローモーションなのに本当に飛ぶように駆けているんだよなぁ。捕手がうようよいる中を、ノーフューチャーな二人が、駆けて、いくんだよなぁ・・・。
カーテンコール 〜 笹野高史さんの見事なムーンウォークに笑った。松也さんよりも上手いんだもの。
人気blogランキングへ
2011年02月25日
博多座坂東玉三郎特別公演 プログラムB
【海神別荘】
舞台の上で白い龍馬が悠々と身をくねらせる。龍馬を囲み、調和のとれた美しい動きで舞台の上に幻想的な水の世界を出現させる黒潮の騎士たち。彼らの支えるその世界の中心にいる〜皆を息の合った素晴らしい一座にまとめあげた玉三郎さんの強い求心力を感じさせる舞台。笑三郎さんの品のある女房や、橋吾さんのどこかユーモラスな博士が見られたことも嬉しい。
ウイリアム・ブレイクの詩ではないけど、これは「無垢」と「経験」の世界が描かれたドラマなのではないかしらん。
自らの美しさの内に自足して、他者を知らない「無垢」=海の公子と、他者を知り、他者との間にある情を知る「経験」=陸の美女。相容れぬものだった二者が、出会い、葛藤し、互いの世界を知り、やがて美しく調和する。
公子の怒りに触れ(というか、公子は初めて自分とはどこまでも違う他者というものに出会って傷ついたのだろう)、遂に公子の手で命を絶たれようとする時、陸の美女はまるで雷に打たれたように、公子の無垢な魂と、その住む世界の美しさを知る。
その瞬間、公子と美女の間には、初めて互いの世界に触れ、二者を隔てていた壁が崩れ去り、逆巻く勢いで互いの思いが流れ入るような魂の交感があったはず。この一瞬の、しかしもの凄く高密度な二人の間の交流が、三階席の隅にいるせいか、舞台の上にはっきり見えず、公子の美しさに打たれる美女の台詞が浮いて聞こえてしまう。
ここは、獅童さんに、公子のあくまでも無垢な美しさを、目の前の美女にだけでなく客席の隅々にまで一瞬にしてドバーンと理屈抜きに納得させるパワーが必要なところであろう。観客の贅沢として、是非そんな舞台を見てみたい。
まっすぐに客席に届く獅童さんの声は、公子の純粋さを思わせて心地良かった。いつかまた獅童さんの公子を見たいと思う。
人気blogランキングへ
舞台の上で白い龍馬が悠々と身をくねらせる。龍馬を囲み、調和のとれた美しい動きで舞台の上に幻想的な水の世界を出現させる黒潮の騎士たち。彼らの支えるその世界の中心にいる〜皆を息の合った素晴らしい一座にまとめあげた玉三郎さんの強い求心力を感じさせる舞台。笑三郎さんの品のある女房や、橋吾さんのどこかユーモラスな博士が見られたことも嬉しい。
ウイリアム・ブレイクの詩ではないけど、これは「無垢」と「経験」の世界が描かれたドラマなのではないかしらん。
自らの美しさの内に自足して、他者を知らない「無垢」=海の公子と、他者を知り、他者との間にある情を知る「経験」=陸の美女。相容れぬものだった二者が、出会い、葛藤し、互いの世界を知り、やがて美しく調和する。
公子の怒りに触れ(というか、公子は初めて自分とはどこまでも違う他者というものに出会って傷ついたのだろう)、遂に公子の手で命を絶たれようとする時、陸の美女はまるで雷に打たれたように、公子の無垢な魂と、その住む世界の美しさを知る。
その瞬間、公子と美女の間には、初めて互いの世界に触れ、二者を隔てていた壁が崩れ去り、逆巻く勢いで互いの思いが流れ入るような魂の交感があったはず。この一瞬の、しかしもの凄く高密度な二人の間の交流が、三階席の隅にいるせいか、舞台の上にはっきり見えず、公子の美しさに打たれる美女の台詞が浮いて聞こえてしまう。
ここは、獅童さんに、公子のあくまでも無垢な美しさを、目の前の美女にだけでなく客席の隅々にまで一瞬にしてドバーンと理屈抜きに納得させるパワーが必要なところであろう。観客の贅沢として、是非そんな舞台を見てみたい。
まっすぐに客席に届く獅童さんの声は、公子の純粋さを思わせて心地良かった。いつかまた獅童さんの公子を見たいと思う。
人気blogランキングへ
2011年02月23日
博多座坂東玉三郎特別公演 プログラムA
【高野聖】
宗朝(獅童)の寝床を整えようと立ち上がった拍子に、豊かな髪がばさりと首筋に崩れてかかり
「おや、どこかに櫛を落としたそうな」
と女(玉三郎)が独り言をもらすところ・・・その女の様子に、一瞬何だか訳がわからなくなり、グラッと眩暈が・・・。
しばらくして眩暈がおさまると、何かを少し納得したような気持ちになっている。宗朝が山深くの孤屋で出会ったいわくありげな女は、何事か怖ろしいことをたくらむのではない、ただ“そういう風に在る”女なのだ。
すっかり鏡花の世界の住人であるかのような玉三郎さんに比べて、宗朝を演じる獅童さんは、まだこの世界に落ち着かない感じがする。それでも、山道に迷って懐から地図を取り出す折り目正しい姿も、鏡花の小説そのままの台詞を朴訥と語る様子も、生きるのに不器用な若さと、山深くで出会った女を優しいとも、怖ろしいとも、哀しいとも、慕わしいとも思う宗朝の純粋さを思わせて好ましい。
宗朝が山道で蛇や蛭に苛まれ、弧屋を取り巻く獣たちの気配に脅かされる場面では映像が挿入されていたが、少し・・・舞台の空気が途切れるような感じが・・・。確かに、じっとりと汗ばむような息苦しさ、悪夢のような一時をよく写した映像ではあったのだが・・・。
照明や、役者が操る蛇、蝦蟇、猿などの獣たちの怪しく生々しい動きが作る幻想的な舞台の雰囲気が良かっただけに、挿入される映像との感触のちょっとした違いが気になった。
忍夜恋曲者【将門】
崩れかけた古御所に怪火を連れて現れる美女・如月。古い絵草子の世界に引き込まれるよう。如月に相対する大宅光圀。袖や襟の縁に見える青が光圀の凛々しい美しさを引き立てる。
前半、光圀をかき口説く如月は、ほんのりと柔らかく、いじらしげで、籠絡しようという計算よりも、敵である光圀を心ならずも恋しいと思ってしまった滝夜叉の、娘らしい心のゆらぎが見えるよう。
しかし正体を見破られてからは、静かに冴えた表情に、目だけが冷たく光って怖ろしい。思わず足元にひれ伏したくなるその気高さに、「やたらと居丈高に鞭を振り回すよりも、無言でピシッと手の甲を打つ女王様の方が断然グッとくる」とか何とか言ってた佐野史郎さんの言葉を何故か思い出して苦笑い。
大袈裟に妖術を振り回すのではなく、小さな、しかしキレの良い動きの中に、人を竦ませるような気迫を飛ばす滝夜叉・玉三郎さん。その玉三郎さんの鋭さを、獅童さんが受けきれてないかな〜と見えるところもあったような。
崩れ落ちる古御所の屋根の上で、蝦蟇を従え将門の赤旗をかざす滝夜叉姫と、太刀を抜いた光圀が対峙する場面は、本当に息の止まるような妖しい美しさ。これを一枚の絵に描いてもらえないものだろうか・・・できれば山本タカトさんに。
人気blogランキングへ
宗朝(獅童)の寝床を整えようと立ち上がった拍子に、豊かな髪がばさりと首筋に崩れてかかり
「おや、どこかに櫛を落としたそうな」
と女(玉三郎)が独り言をもらすところ・・・その女の様子に、一瞬何だか訳がわからなくなり、グラッと眩暈が・・・。
しばらくして眩暈がおさまると、何かを少し納得したような気持ちになっている。宗朝が山深くの孤屋で出会ったいわくありげな女は、何事か怖ろしいことをたくらむのではない、ただ“そういう風に在る”女なのだ。
すっかり鏡花の世界の住人であるかのような玉三郎さんに比べて、宗朝を演じる獅童さんは、まだこの世界に落ち着かない感じがする。それでも、山道に迷って懐から地図を取り出す折り目正しい姿も、鏡花の小説そのままの台詞を朴訥と語る様子も、生きるのに不器用な若さと、山深くで出会った女を優しいとも、怖ろしいとも、哀しいとも、慕わしいとも思う宗朝の純粋さを思わせて好ましい。
宗朝が山道で蛇や蛭に苛まれ、弧屋を取り巻く獣たちの気配に脅かされる場面では映像が挿入されていたが、少し・・・舞台の空気が途切れるような感じが・・・。確かに、じっとりと汗ばむような息苦しさ、悪夢のような一時をよく写した映像ではあったのだが・・・。
照明や、役者が操る蛇、蝦蟇、猿などの獣たちの怪しく生々しい動きが作る幻想的な舞台の雰囲気が良かっただけに、挿入される映像との感触のちょっとした違いが気になった。
忍夜恋曲者【将門】
崩れかけた古御所に怪火を連れて現れる美女・如月。古い絵草子の世界に引き込まれるよう。如月に相対する大宅光圀。袖や襟の縁に見える青が光圀の凛々しい美しさを引き立てる。
前半、光圀をかき口説く如月は、ほんのりと柔らかく、いじらしげで、籠絡しようという計算よりも、敵である光圀を心ならずも恋しいと思ってしまった滝夜叉の、娘らしい心のゆらぎが見えるよう。
しかし正体を見破られてからは、静かに冴えた表情に、目だけが冷たく光って怖ろしい。思わず足元にひれ伏したくなるその気高さに、「やたらと居丈高に鞭を振り回すよりも、無言でピシッと手の甲を打つ女王様の方が断然グッとくる」とか何とか言ってた佐野史郎さんの言葉を何故か思い出して苦笑い。
大袈裟に妖術を振り回すのではなく、小さな、しかしキレの良い動きの中に、人を竦ませるような気迫を飛ばす滝夜叉・玉三郎さん。その玉三郎さんの鋭さを、獅童さんが受けきれてないかな〜と見えるところもあったような。
崩れ落ちる古御所の屋根の上で、蝦蟇を従え将門の赤旗をかざす滝夜叉姫と、太刀を抜いた光圀が対峙する場面は、本当に息の止まるような妖しい美しさ。これを一枚の絵に描いてもらえないものだろうか・・・できれば山本タカトさんに。
人気blogランキングへ
