2011年06月30日

黄金坂ハーフウェイズ(加藤実秋)

内容に入ろうと思います。
本書は、神楽坂をモデルにしたらしい、黄金坂という架空の町を舞台にした、五編の短編が収録された連作短編集です。
大まかに全体的な設定を書いておきます。
九州の大学に進学したものの、就職がうまくいかず黄金坂に戻ってきた隼人と、黄金坂の老舗香保「春薫堂」の跡取りで、現在は黄金坂の広報誌のようなものの記者を名乗ってはいるものの、基本ニートという楓太の二人は、高校時代の同級生。高校時代に事故死した朝美という女性のことで、二人ともまだもやもやを抱えている。
黄金坂に、HOLLOWSという、隼人に言わせれば「ボッタクリ」な会員制昼酒バーがある。雪乃とぼたんという芸者コンビが、バーのマスターであるイズミにキャーキャー言っている店だが、そこで隼人と楓太は、なんだかんだ丸め込まれて素人探偵のような真似事を始めることになるのだが…。

「春・月夜小路に猫たまる」
近所の猫の体にスプレーでイタズラ描きされる、犯人を捕まえてくれという依頼を受けた二人。慣れない張り込みなんぞしてみるものの…。

「夏・黄金坂まつり奔走」
フランス料理のシェフに、黄金坂まつりのギャルソンレースでどうしても優勝したから手を貸してくれないか、と頼まれる。そんなに難しくないだろ、と依頼を受けた二人だったが、どうもそのレースの裏にはある目論見があったようで…。

「秋・学校ジャージで鹿鳴館」
雪乃とぼたんから、この町の一大事だ、と協力を依頼される。しかし、どう考えても話が大きすぎて二人の手に終えそうにない。とりあえず正面突破してみる二人だったが…。

「冬・すずしろ町ゲッタウェイ」
隼人が何者かに嫌がらせをされるようになった。自転車のサドルを盗まれるとか、そういうレベルの話だが、恨みを買った記憶のない隼人は、唯一思い当たる、母親が探し出してきた隼人の就職先にどうかというNGOの事務所に行ってみるが…。

「ふたたび春・黄金坂ハーフウェイズ」
イズミが何者かにストーカーされている、隼人と楓太に監視してもらいたい、という依頼を受ける。イズミの知り合いであるヨーコという女性が失踪し、その件でほとんど見知らぬ男からあらぬ勘違いを受けているのでは、という。イズミを監視してても埒があかないので、そのヨーコという女性について調べることにしたのだが…。

というような話です。
なかなか面白い作品だったと思います。キャラクターで読ませるタイプの作品、という感じがします。一応軽目のミステリっぽいタッチになってるけど、ストーリー自体はまあよくある感じかな、という気がします。ギャルソンレースの話なんかは、なかなか設定が奇抜で面白かったですけどね。
キャラクターはなかなか魅力的だと思います。仲がいいんだか悪いんだかなんとも言えない隼人と楓太(この二人のやり取りは、女性が読んだら結構ハマったりするんだろうなぁ)、謎めいた男・イズミ、その場の雰囲気に合わせて七変化という感じの雪乃&ぼたんを始め、なかなかに個性的なキャラクターが出てきます。特にやっぱり、隼人と楓太のやり取りは読みどころの一つなんだろうと思います。色々紆余曲折ある二人で、本当に、仲がいいんだか悪いんだか、という感じ。腐れ縁、という表現がぴったり来ると思いました。素人探偵稼業を通じて、ぶつかり合ったり知らない一面を知ったりという過程を経て、二人の関係も若干変化を見せていくことになります。
ただ個人的にちょっとなぁと思ったのが、イズミについて。イズミは、なんだか色々突込みどころのあるキャラクターで、僕はそのイズミの謎めいた設定は、最後まで読めば説明がつくんだろうなぁ、と思いながら読んでたんです。でもイズミは結局、最後まで謎めいたよくわからない、どうしてそういう生活をしてるんだかさっぱりな人物のままでした。そこを放置しちゃうのはどうなのかなぁ、という感じがしました。まあ、シリーズ化を狙ってたりするのかもだから、だとするとそっちの方で謎が明かされる、という展開になるのかなぁ。でもやっぱり、イズミのキャラクターの謎は、本作中で明かされて欲しかったなぁ。
あと個人的に感じたのは、朝美に関する部分がうまくまとまってないような気がする、ということ。なんか結構いろんな描写とかつなげ方みたいなのが、無理あるような気がするなぁ、と感じちゃうようなそんな感じがしました。これも、続編を考えてて、そっちでしっかり繋げていく、みたいな感じなのかなぁ。朝美の話を書くなら、もう少しちゃんと突っ込んでしっかり書いた方がよかったんじゃないかな、と思いました。
キャラクターを楽しむ、という風に読めば割と楽しく読める作品な気がします。興味があれば読んでみてください。

加藤実秋「黄金坂ハーフウェイズ」




加藤実秋「黄金坂ハーフウェイズ」
 

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黄金坂ハーフウェイズ作者: 加藤 実秋出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 2011/07/01メディア: 単行本 タイトルにある「黄金坂」は本書の舞台となっている..
黄金坂ハーフウェイズ【本読みの記録】 at 2011年08月26日 21:46