内容に入ろうと思います。
舞台は、本土から離れた孤島。そこは既に限界集落であり、未来への希望など何も無いような環境だった。
島で唯一の医者だった熊亥永太郎氏の葬儀には、やはり薄井家の連中は来なかった。薄井家は宝くじに当たって大金持ちになって以来、島の人間すべてを泥棒であるかのように扱い、薄井家は島中の人間から嫌われていた。
その薄井家の次男、善貴ももちろん島で嫌われているのだけど、その善貴を心底嫌っているのが、石狩という、島で善貴についで若い男だ。父親の介護のために泣く泣く戻らなくてはならなかった石狩は、父親から引き継いだ畑から取れる作物で僅かながらの収入を得ているが、その畑に善貴はしょんべんをしやがったのだ。
どうにか善貴に復讐してやれないかと、善貴を見張ることにした石狩。後をついていく途中で気づかれ、一緒に善貴の隠れ家まで行くことに。話してみると実はそんなに悪い奴じゃないようだと思えてきて、石狩としては複雑な気持ちである。
善貴と別れた翌日、善貴の隠れ家に行ってみようと思い立った石狩は、隠れ家の近くで死んでいる善貴を発見してしまう。マズイ。どう考えてもマズイ。自分が疑われてしまう要素にまみれている。そう思った石狩は、色々工作しようと目論むも、ちょっと目を離した隙に善貴の死体が消えてしまったのだ!
なんで!どうして死体が消えるんだよ!
一方薄井家には、善貴を誘拐したというメッセージが届き…。
というような話です。
サクサク読むにはいいんじゃないかな、と思う作品です。
物語は、割とギャグ的に進んでいきます。特に堀部って刑事が出てきてからの脱力感はなかなかのもの。石狩を含む数名が、超とんでもない事態に巻き込まれているんだけど、なんでかユーモラスな感じで話が進んでいきます。
かなりドタバタなストーリーです。善貴の死をきっかけに、複数の人間の思惑が絡みあって、刑事の目からみると事件は単純ではない。実際は、善貴の死を巡って、複数の人間が暗躍しているので、全体としてはチグハグな感じになる。でも、堀部って刑事がそれに輪を掛けてちぐはぐな印象を与える刑事なので、もはやカオス。
そういうドタバタ感の演出はなかなか面白いなぁと思ったんですけど、孤島で誘拐っていう設定がもう少し活かされるストーリーだと面白かったかな、と思います。このストーリーだと、どうしても孤島でなければならなかった、という説得力が弱い気がします。孤島でなくても、どこか山奥の村とかそういう設定でも十分成り立つような気もしました。せっかく、孤島で誘拐、っていうなかなかに魅力的な設定なのだから、ちょっともったいないかなぁという気がしました。
ラストも、もう少しやりようがあるような気がしたなぁ、と思いましたけど、まああれはあれでいいのかもしれません。
スイスイと楽しく読める小説だと思います。
戸梶圭太「孤島の誘拐」