2005年10月22日

県庁の星(桂望実)

陳腐な評価になってしまうことは充分にわかった上で、本作の評価を表現してみようと思う。本作は、スーパーメチャクチャウルトラハイパースペシャルミラクルアンビリーバボーに面白かった!!!!!!!
実に陳腐な表現になったが、言っていることに嘘偽りは一切ない。本当に、めちゃくちゃ面白くて、ちょっとどうしようかと思ったくらい。
でもそれはもしかしたら、僕、だからなのかもしれない、とも思う。というのも、僕の今の状況は、本作の状況とかなり似ている、と言えるわけで…
この作品の舞台が、自分の働いている本屋とダブった。だからこそ、普通以上に面白く感じられたのかもしれない。
僕は、本屋でバイトをしている人です。一応文庫・新書担当なんかやってます。入って一年半ぐらいですが、店内の仕事はほとんどわかる、とまあそんな感じでしょうか。
ただ、いろいろな部分が酷すぎる。もう、なんでこんなこともできないのか、なんでこんなことも言えないのか、なんでこんなこともやらないのか…。もはや、あげればきりがないほど、うちの本屋はあちこちがひどいんです。
でも、まあそこそこ売上がいいのと、出来る数人のスタッフがひたこらと頑張っているお陰で、今のところなんとかなっているわけで…。
ってこのサイト、うちの店長も見てたりするんだな。まあ、いっかな。
とにかく、仕事のできないスタッフ、仕事をやらないスタッフが多すぎて、それを社員が改善しようとせず(というか寧ろ、社員の能力が低くて、仕事ができてないから、周囲の管理なんて目がいかない、という状況だけど)という感じ。つい最近、オープン当初からいた、ものすごくできるスタッフ(この人は社員だったけど)が退職して、それ以来店内の状況は益々最悪になってきた。
僕はほんと、本作に出てくる二宮さんみたいに、社員でもないのに、めちゃくちゃ頑張って、売り場を管理しようとしている。ほんと、疲れる。
そろそろなんとかしないとやばい、と本気で思っていて、実際にいろいろ動き出していたりする。僕の考えに賛同してくれる人も結構いたりして、でもそう簡単にうまくはいかないだろう、とも思う。ずっとぬるま湯に浸かっていた人間は、冷水や熱湯になった時、すぐに対応できないのだ。
最近は、ほんと細々としたことにも腹が立って、イライラしっぱなし。もうホント、どうにもならなかったら辞めちゃうしかないよな、ってまあそんな感じ。
以上、今の僕の現状でした。
組織(これは規模に関わらず、ある程度の同一の目的を持つ(はずの)集団により構成されるものを指すものとする)を変革するのは、本当に難しい、と改めて思う。僕は、大学時代に、かなり奇妙なサークル(実際は部活なんだけど)に入っていて、そこである時期かなり中心的な仕事をやっていたりした。その組織は、本当にあらゆることが厳格に論理的にかっちりと決まっているようなところで、僕らの代で変えようと努力したのだけど(まあ僕はあんまり頑張らなかったんだけど)、結局うまくいった、とは言えないような成果に終わったと思う。
組織は、時間と共にどんどんと硬直していく。それは、骨折をギブスで固めているような状況かもしれない。うまいことギブスで固定された状態で硬直するなら別にいい。でも、ギブスの巻き方に不備があって、そのままだと骨が正常に繋がらない、というような状況で硬直していく。それが、組織というものに課せられた宿命なのかもしれない。
硬直しきる前に何らかの処置を施せば、あるいはなんとかしようがあるのかもしれない。しかし、間違ったまま繋がってしまった骨は、そう簡単には元には戻らない。
ただ、不可能ではない。
有効な準備と、完璧な論理、そして認められた実績や隙のない行動などによって、かなり難しいけど不可能ではない。そして今僕は、それに挑もうとしている。かなり道のりは険しいけど、本屋というのが結構好きだから、なんとかしてみたいと思う。
まあそんな、自分に対する決意表明も兼ねながら…。
内容の紹介に移ろうと思います。
本作はまず、県庁である企画が立ち上がるところから始まる。それは、県庁の星(エリート)を民間企業に出向させ、そこで民間の手腕を学び、役人の仕事に役立てよう。そういう企画である。その栄えある第一回目の6人に選ばれた一人が、本作の主人公の一人、野村聡である。
聡は、あるスーパーに行くことになった。さて、やるぞと気合を入れて乗り込んだものの、店長に言われたのは、そのスーパーの長とでも言うべきパートの女性に仕事を教えてもらいなさい、ということ。その女性こそ、本作のもう一人の主人公、二宮泰子である。
二人のかみ合わなさは、月とすっぽんの喩えを軽く吹き飛ばすほどのものがある。やることなすことかみ合わない。聡は、役人的な発想の元に判断・行動をするのだが、それがいちいち二宮の気に障る。やることなすこと見当違いで、すっかり呆れた様子で聡と接する二宮。まあ最悪のコンビネーションと言えるだろう。
しかしこの二人、なんだかんだ言いながら、時と共にお互いを好きあうような関係になって…
というような恋愛ストーリーではまったくないが、でも二人の関係は徐々に変わっていく。聡は、自分に相応しい仕事を求め、あらゆる改善点を指摘し、店をよくしようと努力するが、周囲の協力を得られずにうまくいかない。「ケンチョウさん」と呼ばれ続けるように、役人的な発想から抜け切ることができない。二宮は二宮で、相変わらずぐうたらな社員に呆れ怒りながらも、そして聡の相変わらずのアホな仕事ぶりに呆れ怒りながらも、それでも一生懸命に仕事をしていく。
そんな二人の関係が変わっていく、というのだからすごい。
次第に聡は考えを改めるようになる。役人的な視点ではない、新たな視点を獲得し、その視点で様々な判断・行動をするようになる。元々頭はいいのだから、そのほんの少しの転換で、聡は周囲を動かしていく。そんな姿を見た二宮も、この店を変えるなら今しかない、と二宮なりの作戦で周囲を動かしていく。
そうして迎えるラスト。あなたはきっと感動し、ともすれば涙すら流してしまうかもしれません。
圧倒的なスピード感でストーリーを疾走させ、内容は抱腹絶倒、ラストは大感動、という、本当に素晴らしい作品なのでありました。
予想よりも遥かにいい作品で、びっくりしました。役所と民間ではここまで考え方に差が出るものなのか、という驚きもあるし、現実にスーパーってこんな感じなのかな、という驚きもあるし、こんなにも面白いなんて、という驚きもあった。かなり、読んで満足な作品だった。
僕は本当に今、二宮と同じような状況にいる。聡のような手腕も持っていると思っている。なんとなく読んでて励まされた。頑張ればなんとかなるぞ、って。よっしゃ、俺もいっちょ頑張ってみるか、ってそんな感じになった。
本作は映画化が決定だそうです。いつ誰がということは知りませんが。とても面白い作品になると思います。見るかどうかは別として、期待したいと思います。
是非書店で見かけたら手にとってください。数ページでもいいので読んでみてください。そして是非買ってください。いい一冊に出会えました。

桂望実「県庁の星」


県庁の星ハード

県庁の星ハード
 

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この記事へのコメント
織田裕二と柴崎コウらしいよ 来年2月
Posted by つよし at 2005年10月22日 23:56
俺には、柴崎コウが何役なのかがわからん。スーパーのパート長みたいなおばさん役か?にしては年齢が合わなそうだけど。

しかしよく知ってるな、そんなこと。
Posted by 通りすがり at 2005年10月24日 11:08
こんにちは。今年は梅雨前線の北上が連年より遅いらしいですよ。梅雨入りが遅れているのには、そんな理由があるそうです。

お知らせです!!  

今夜9:00〜フジTVでこの「県庁の星」が放映されます。織田裕二が県庁サンのようですね。一度何かの映画の時に予告編を見ました。コメディタッチで、面白そうです。もし好かったら、ご覧下さいね。私はDVDで予約しました。

これから出かけますので、取り急ぎお知らせまで…
Posted by dradonworld at 2007年06月09日 11:23
こんばんわです。

梅雨入りが遅いのは喜ばしいですけど、でもそのお陰でまたなんか全体に変な影響がありそうで怖いですね。

って…、これから出かけるって大丈夫ですか!いや、なんだかんだ結局雨は降ってないですけど、チャレンジャーですね〜。

「県庁の星」は悩みますね〜。とりあえず、初めの方だけ見てみようかと思います。で、眠さを吹き飛ばせそうな内容そうなら見てみることにします。土曜の夜は、何はともあれ眠いんです…。

教えてくれてありがとうございます!
僕はとうとうこれから、「カシオペア」に突入です!
Posted by 通りすがり at 2007年06月09日 20:20
見始めましたが、なかなか面白いドラマですね。原作にはない婚約者まで登場です。『鹿男あをによし』を読みながら、見ていましたが、この映画に気を取られて、読書は一時中断です(笑)。『鹿男〜』は『坊ちゃん』のような展開になりそうですね。こちらも、勿論面白いのですが、しばしTVに専念します(笑)。
Posted by dradonworld at 2007年06月09日 21:43
結局僕も全部見てしまいました。
思った以上に面白い映画でした。確かに原作を踏襲している感じだけど、映画は映画で映画らしさみたいなのがちゃんとあってよかったです。

個人的には、最後立ち入り検査が入るところのあの緊迫の場面、あれはよかったですね〜。店長やるじゃん、みたいな。思わず泣きそうになりました(笑)。でも言えるんなら、初めっから出てこいよ、って感じもしますけど(笑)

細かい部分がよくって、例えばその立ち入り検査の場面で、事務所の主みたいな人がもうダメだ!という感じでウイスキーを取り出そうとしますね。でもなんとか危機がさって、その後でミネラルウォーターを飲んでました。こういうさりげない部分が結構多くてよかったなと思います。

僕もまああれこれと文句を言う立場の人間で、どちらかと言えば県庁さんに近い感じの人間ですが、まあ僕の方にもきっと改めなくてはいけないところはあるんだろうな、という感じがしました。まあそうは言ってもすぐには変わらないでしょうけど。

「鹿男〜」は、間違っても「坊ちゃん」みたいな展開にはならないと思います(笑)いや、「坊ちゃん」をちゃんと読んだことはないんですけどね(笑)
Posted by 通りすがり at 2007年06月09日 23:50
こんばんは。やはり面白かったですよね。またお役所のご都合主義にも苦笑でした。県庁さんと柴崎コウの接近は原作にはなかったような気がしますが、でも好い結末だと思いました。ウイスキーからミネラルウォーターですか。よく観察なさいましたね。査察の場面も緊迫感があって、面白かったですよね。県庁さんはこの研修で多くのことを学べて、実に有意義な研修になりましたが、実際はどうなのでしょう?経費削減とか、本当に真剣に取り組んでいるのでしょうか? 談合は?と考えると、皆無とはいかないだろうなぁ、と苦い思いがします(泣)。民間の論理の方が理に適っているのが、お役人は納得できないのでしょうか? 年金問題もありますし、公務員よちゃんと働いてくれ!という思いがあります。

通りすがりさんは『カシオペアの丘で』を読書中でしたね。同時並行で楽しむのは、無理でしょうから、やはりしばし読書は中断でしたか。この『カシオペア〜』もかなり売れているようですね。私は『正義のミカタ』を読み終えて『カシオペア〜』に移りましたが、重松さんの安定した書きっぷりは、確かな筆力を感じました。本多さんも頑張って!と応援したい気持ちにさせられましたが、そんなことを読者に要求するようではまだまだ…かなぁ、と思いました。まずは、書きましょう!ですね(笑)。

今、私が最も読みたい本は、ドラえもん最終版(表紙の画像は新聞で見ました)です。大きな問題になっていますが、それだけ読み応えのある漫画なのでしょうね。小学館に売り上げの一部を払うことでケリが付きそうですが、当然市場には出回らないで回収なのでしょうね。非常に残念です。

『鹿男〜』は只今150ページです。女子校で生徒達にいびられる場面が『坊ちゃん』に似ていると思いました(「靴下4足千円」との落書きなど)が、だんだんその話題から離れてしまいました。そういえば、マドンナという言葉も『坊ちゃん』にはありましたね。

では、この辺で。明日(今日)は大荒れの天気とか…、ゆっくりお休み下さいね。
Posted by dradonworld at 2007年06月10日 01:16
お早うございます。

取り急ぎまたまたお知らせです。
雷雨が凄いのでPCの電源を切った方が好いかも知れませんよ。我が家の近所のお宅では、先日(先週)の雷でPCが壊れてしまい、大損害となってしまいました。コンセントに入れっぱなしの家電製品も気を付けてくださいね。では。
Posted by dradonworld at 2007年06月10日 10:26
おはようございます。やっと起きました。また寝るかもしれませんが(笑)

雨はすごいですね。僕が住んでる家はちゃちぃので、超ド派手な大雨(普通の大雨なら大丈夫)が降ると雨漏りがします。今日も雨漏りしてました。参りましたね、これは。

雷でパソコンが死にますか…。それはちょっとヤバいですねぇ。でも、そんなことは自分には起こらないだろう、とかやっぱり思ってしまいますね。こういうのがいけないんでしょうね。
雷がヤバい感じになってきたら電源を切ろうと思います。忠告ありがとうございます!

お役所の御都合主義と言えば、最後の方のシーンで市長が見積書みたいなのを捨てるシーンがありました。「私は前向きに検討すると言ったんです」とかなんとか言って。あれは驚きましたね。それでいいのか!とか思ったりしてしまいました。その後、コーヒーが1杯100円になっていたのが多少救われましたが。ホント、あの映画で描かれていた公務員の姿が正しいのだとしたら、本当になんとかして欲しいと思いますね。定型文がどうのとか予算を使い切れだとか、そういうアホなことをやっていないで、もっとちゃんとした仕事をして欲しいと思ってしまいます。
まあ、郵便局みたいになんでも民営化すればいいというわけではないでしょうけど、ホント民間のノウハウや発想をもっと取り入れてほしいと思います。

「県庁の星」の映画を観ながら何をしていたかと言えば、ブログの本の感想を書いていました。CM中とかにバーっと書くみたいな感じでやっていました。「カシオペア」は映画を観終わってから読み始めましたよ。
まだ100Pくらいしか読んでませんが、ホント安定した書きっぷりですよね。どの作品を読んでもいつもぶれていない感じがしてすごいと思います。さて自分にこんな文章が書けるかと言うと…まあ無理でしょうねぇ(泣)

ドラえもんの最終巻は僕も読みたいですね。相当高いクオリティのマンガみたいですね。僕はネットのニュースでそれをみましたが、そこにのっていたあらすじ(具体的には忘れましたが)もすごくドラえもんらしい最後でなるほどなと思いました。
まあネットオークションなんかで見てれば、恐らく出品されてるでしょうけどね。以前何らかの方法で入手した人が、今なら高く売れるぞ!なんて思ってきっと出品していることでしょう。まあネットオークションはやらないですけど…。

「鹿男〜」はだんだん女子高という設定から離れていきますね。どうせなら女子高でわいわいする話でもよかったですが、ありえない鹿の登場で物語はどんどん面白くなっていきますね。

ではでは。いつものことですが、大人しく部屋でうだうだと過ごそうと思います。雨だろうが晴れだろうがあまり関係ないのでした(笑)
Posted by 通りすがり at 2007年06月10日 12:35