僕自身は、そういうものには全然興味が持てなくて、権力だとか地位なんて自分を縛り付けるだけだし、金はまあ生きていくのにそれなりに必要なぐらいあればまあいいかな、と思っているような人間だ。
何故人はそこまで、権力や金を追い求めるのだろう?
というような考察をまあするつもりはない。正直考えても僕にはわからないだろう。人種が違うということなのかもしれない。
金の場合はまだわからなくもない。欲しいものを満足いくぐらい充分に買いたい、という欲求も理解できないでもない。でも、本作に出てくるような四百億という金額になると、もはや使い道を想像するどころの話ではないだろう。金がそのまま権力にすらなりうる、というかなる。
そこまでのものを持ちたいという心理は、まあ僕にはわからないわけだけど、そういう人がいるということは理解できる。
ただ、やるならやるで、他人を巻き込まないでほしいな、とまあそんな感じですかね。例えば、警察を描いたドラマや小説なんかで、よくキャリアの足の引っ張り合いみたいのが描かれるけど、まあああいうのは別に身内というか内部でやっているわけだからいいけど、でもああいうものは、その家族にまで及んだりするわけで、それは止めるべきじゃないかな、とまあそんな感じなわけで。
相変わらず何を言いたいのかよくわかりませんが。
ということで早速内容に入りましょう。
先に宣言しておきますが、本作はかなり面白いですよ。いつもより感想は恐らく短くなるだろうとは思いますが、決してつまらないわけではないので。
元自衛官にしてカウンセラーの岬美由紀は、休暇で訪れた長野で、遭難者の救助に参加した折、雪崩に巻き込まれてしまう。
日本では、都知事の提唱するお台場カジノ計画をなんとか実現させようという動きがあり、法改正なども含めた上で国会議員があれこれと知恵を絞る。
強運につきまくった永幡という男は、パチンコから公営ギャンブルまで勝ちに勝ちまくって半年で10億という資産を作り上げた。
カジノで恐れられるイカサマの隙をなくすために、イカサマに詳しいという、元警部補の藍河の元を国会議員の一人が訪ね、協力を依頼する。
そうした動きの中で、建設の完了したカジノで、仮オープンの運びとなった。江戸時代を中心とした昔風の演出を施したテーマパークに、警察のトップ・国会議員などが招待され、実際に換金可能な状態での仮オープンとなった。マジシャンの里見沙希は、このカジノのショーでマジックショーを演じることになっていたし、藍河と永幡もオブザーバーとして呼ばれた。
そんな仮オープンの真っ只中、突如武装勢力が大挙してきた。彼等は、VIPたちを人質にとり、カジノ内にある四百億と原子力潜水艦を要求した。カジノ計画の裏に隠されたとてつもない陰謀とは…。
というような話です。
松岡圭祐が本作をハードカバーで出版するわずか一ヶ月前に、石原慎太郎都知事が実際にカジノ構想を打ち出す、という非常にタイムリーな作品だったようだ。そのことが、文庫版の前書きとして書かれている。その後と知事もカジノ構想を引き上げたらしいが、その際の法解釈も本作と同様だったらしい。先見の明があるとはまさにこのことだろう。
松岡圭祐が描く、岬美由紀の出てくる作品は、本作に限らずどれも面白い。本当に、一級のエンターテイメントという感じである。悪い言い方に聞こえるかもしれないけど、ものすごく出来のいい、エンターテイメントに特化したハリウッド映画を見ているような、そんな疾走感とストーリーを味わうことができる。
ただ、だからこそなのだろうけど、読んだ後に特にこれと言って残るものがない。あー、メチャクチャ面白かったな、だけで終わってしまう作品なのである。なんとも残念な話だが、まあ仕方ない。これが、本作の感想が短くなった要因である。
岬美由紀という特異中の特異なキャラクターが、いつでも魅力的に描かれる。この岬美由紀というキャラクターを創りだしたというだけで、松岡圭祐の才能が窺えるというものだろう。心理学やカウンセラーの知識を応用した場面でだけでなく、あらゆる場面で彼女は活躍する。本当に、これも変な喩えかもしれないけど、「名探偵コナン」に出てくる江戸川コナンみたいな存在で、何でも知っているし、何でも出来るというスーパーキャラクターなのである。読んでて爽快になる。
エンターテイメントとしては本当に一級品です。とにかく、千里眼シリーズ、一作目を読んでみてほしいな、といったところです。
松岡圭祐「マジシャンの少女」

マジシャンの少女文庫