とても不思議な物語である。
三つの短編からなっていて、その内表題作である「妊娠カレンダー」は、芥川賞を受賞している。
「妊娠カレンダー」
出産を控えた姉は、しばらくしてつわりになる。食べ物を受け付けなく、臭いに敏感になる。「わたし」は家中のあらゆる臭いを消し、食事は庭で作り庭で食べるという生活を始めることになる。
ある日突然姉のつわりが終わり、一転膨大な量の食事をするようになる。「わたし」はバイト先でひょんなことから大量にもらったグレープフルーツを使ってジャムを作る。姉は喜んでそのジャムを食べるのだが、「わたし」の脳裏には、『アメリカ産の果実、農薬まみれ』という、昔何かの授業で聞いた知識が浮かんでいる。それでもそのジャムを姉に食べさせ続ける・・・
「ドミトリィ」
いとこが大学進学にあたり上京することになったのだが、貧乏なためいい物件が見付からない。そんななか「わたし」にそのいとこから電話が掛かってくる。昔住んでいた学生寮を紹介してよ。そう言われて久しぶりにその学生寮を訪れる「わたし」。そこは右足しかない管理人のいる、ひどく寂れた学生寮だった。その管理人は、この学生寮は変性していると繰り返す。何度いとこを尋ねても会えない「わたし」は、ある日天井のしみに注意を向けるようになる・・・
「夕暮れの夕食室と雨のプール」
結婚を控えた夫婦が新居を見つけ、飼い犬とともにまずは「わたし」がそこに住み始めるようになる。三ヶ月後には結婚式。手を掛けるべきところの多い新居で、まず浴槽のペンキ塗りをしている時、子供づれの男性が訪問してくる。宗教関係の勧誘だと思ったが、しばらく会話をし、そして男性はあっさりと帰っていった。ある日散歩途中で再会するのだが、彼等は学校の給食室を眺めていた。男性は給食室と雨のプールにまつわる自分の話しを始めていく・・・
どの話も掴み所がない、という表現しかできない。おそらくどこにも「論理」が存在しないからだろうと思う。「理由」というか。何故?の部分がまるで説明されないから、なんか不安定な気がする。
最後の「夕暮れの給食室と雨のプール」はまったくわからなかったけど、「ドミトリィ」は結構最後はふーんって感じで終わるし、「妊娠カレンダー」は妹の「悪意」と呼んでいいのかよくわからない心理というのが面白いと思った。
かなり文学に近い(まあ芥川賞を取っているぐらいだし)から、そういうのが嫌いでない人は読んでみてください。
小川洋子「妊娠カレンダー」
妊娠カレンダー文春文庫