西尾維新という、森博嗣に憧れて、氏のデビューのきっかけとなったメフィスト賞を、立命館大学在学中に受賞し(ちなみに今23歳)作家になった人物の作品を初めて読んだ。かなり期待はしていたけど、それ以上によかった。
話は「鴉の濡れ羽島」という絶海の孤島の、三日目の描写から突然始まる。語り部は、玖渚友(くなぎさとも、と読む。ずっとくさなぎだと勘違いしていた)という工学系の天才の付添い人である「いーちゃん」という人物で、その他この島には、超絶的な天才が集められている。伊吹かなみ・画家、佐代野弥生・料理人、園山赤音・七愚人(世界中の七人の天才のうちの一人)、姫菜真姫・占術師といった感じ。
「鴉の濡れ羽島」というのは、ある超大金持ち一族である「赤神家」というところの娘が所有する島であり、ある事情により勘当され、一生遊んで暮らせる金とこの島を与えられ、ある意味ここに「島流し」されたといってもいい。絶海の孤島から出られなくなったその娘・赤神イリアは、暇つぶしのために世界中の天才を島に招き、余暇をすごさせているというわけである。
そして唐突に事件は始まる。お決まりのように死体が発見される。しかも首なし。現場はある意味密室。そして絶海の孤島であり、主人であるイリアが警察の介入を拒んだため、警察の捜査もなし、というまさにミステリーではありがちであり、何でもありの世界。
事件は連続殺人に発展し、さまざまな謎が転がっているのだが、密室やらアリバイやらを「いーちゃんん」と「玖渚友」がそれなりに(これは重要)解き明かして、「人類最強の請負人」である「哀川潤」の介入を待たずして、島の生活を後にする。
事件解決後もいくつかの謎がさらに解明されていき、どんでん返しの連続。「それなり」の推理が「完全」になるのに、「人類最強の請負人」は一役買っている。
まあそんなミステリー的なところも確かにいいんだけど、それ以上に思想というかスタイルというか、登場人物たちの作り出す世界がとてもいい。スタイリッシュで洗練されていて、くどくなくて控えめ。天才であるが故の何かと、凡人であるが故の何か、あるいは犯罪者であるが故の何かが入り混じり、混沌としていく。それぞれのキャラクターが際立ちすぎるぐらいで、読んでいて笑ってしまうし心地いい。
森博嗣の小説が好きな人は間違いなく好きになれるだろうと思う。
ちなみに「いーちゃん」と俺はけっこうどんぴしゃで考え方が似ていたりすると思う。それもヒットの一員にはなっていると思う。消極的で状況に流され、積極的に死のうとは思わないけど、とりあえず生きている、みたいな。
ちなみに、本作では「犯人はなぜ首を切ったのか」という、首切断ものには必ず付随する理由がもちろん明らかにされるんだけど、まじ衝撃的だった。こんな理由で首を斬ろうという発想は、並みの犯罪者では出てこないだろうな、と。すごいです。
表紙だけみると、キャラ萌え系のライトノベルだと思われると思いますが、そしてカバーなしで人前で読むには多少恥ずかしいかもしれないけど(俺はそういうのは気にしないけど)、そういう抵抗を一切無視して読んでみてください。森博嗣好き、ミステリー好きは間違いなく楽しめると思います。それ以外の読書趣味を持っている人にも、ぜひお勧めしたいです。
西尾維新「クビキリサイクル−青色サヴァンと戯言遣い−」
クビキリサイクル―青色サヴ...講談社ノベルス