長野県のある山中で、後に"サイモン"と呼ばれることになるミイラが発見されたことから物語は始まる。発見された洞窟にはミイラの他には人の痕跡はなく、またミイラの右腕はない。そしてそのミイラはなんと、石器を背中に打ち立てられた殺人の被害者なのだ。
また発見された洞窟が、内側から石をくみ上げたようであり、死の間際に"サイモン"にそんなことが出来るわけもなく、「世界最古の密室殺人」の発覚となるわけだ。
ミイラについての学術的な検証や、派閥争いの掛かった話し合い、また政財界の思惑などが、個々の正確を際立たせつつリアルに描かれていくなかで、"サイモン"の第一発見者が死亡するという事態が発生し、混乱はなおも一層深まっていく。彼は事故なのか、または殺されたのか。現実の事件と"サイモン"にまつわる謎とが奇妙に交差しつつ描かれ、最後に両者が見事に解決される。
鮎川哲也賞に応募し落選したというこの作品は、やはり欠点があることは否めないと思う。"サイモン"に関する悲喜こもごもはかなり面白いだけに、現実に起こる事件の方がもう一つ、という感じだった。
それでも3000年前の密室殺人というロマン溢れる物語を紡いだ著者の豊かな想像力が、以後の作品でも発揮されていることを期待して、別の作品も読んでみようと思う。
柄刀一「3000年の密室」
3000年の密室光文社文庫