とにかくあまりにもくだらない悪戯が次々に起こる。映画館で、いいシーンに笑い声を流したり、畑の芋を全て芋判に変えてしまったり、授業中携帯のバイブ機能が一斉に振動したりと、とにかく事件にもならないくだらないことが起こる。
誰がやっているかは、初めからはっきりしている。
<ZOKU>というグループ。正式には<Zionist Organization of Karma Underground>。黒古葉善蔵という、何かの企業のトップでありながら、<ZOKU>という完全非営利組織のトップにたつ男。まったくもって、他に表現のしようがない、どうしようもない「悪戯」を熱意を持って実行しようとする男。真っ黒なジャンボジェット機を基地とするも、費用が掛かりすぎるのであまり飛ばさない。
それに対し。
<ZOKU>の悪戯を調査し、その悪戯を止めさせようとする、<TAI>というグループ。正式名称は<Technological Abstinence Institute>、あるいは<科学技術禁欲研究所>。木曽川大安が所長を務める。
そして、木曽川と黒古葉は幼なじみで、よく顔をあわせる。真っ白な機関車を基地とし、木曽川は嬉々としてその運転をする。
<ZOKU>はひたすらくだらない悪戯をし続け、<TAI>はそれを阻止しようとし続ける。<ZOKU>があるから<TAI>がいて、<TAI>がいるから<ZOKU>がいる、みたいな関係。
とにかくそれ以外特にストーリーはない。
それぞれの組織では、まあ部下というべき人間達がいて、それぞれ面白おかしい会話だとかをし(特にストーリーに関係あるとは思えない)、トップ同士も意味のわからない悪戯を最後にし、そして唐突に終わる。
これが森博嗣の作品でなかったら、どうだっただろうな、と思う。別の作家が、その人の書き方で同じようなストーリーを書いても、成立しないだろうな、と。森博嗣が、彼独特の文体でこのストーリーを描くからこそ、作品として成立しているんだろうな、と。
でも、暇つぶしに軽く読む本としてはかなりいいけど、何かを期待して読むような本ではないことを言っておきましょう。まあ言ってしまえば、この本を読む時間があるなら、他の本を読んだ方がいいと思う。
森博嗣「ZOKU」
ZOKU
ZOKUカッパノベルス